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  • 作成日 : 2021年10月8日

工事未払金の使い方や仕訳、未成工事支出金との関係

未成工事支出金との関係

建設業会計では、一般の商業簿記で使われる勘定科目とは別に、特殊な勘定科目が使われます。「工事未払金」も、建設業会計で用いられる勘定科目の一種です。工事未払金はどのような場面で使われるのか、未払金、買掛金、未成工事支出金との違い、具体的な仕訳や税務上の扱いまで解説していきます。

工事未払金とは?

材料を仕入れて、建設を行い、完成物を引き渡す建設業では、一般的な商業簿記とは異なる勘定科目が使われます。「完成工事高」「完成工事原価」など “工事”がつく勘定科目です。

工事未払金も建設業などにおける事業活動の中で発生する勘定科目で、該当の工事の原価に算入される未払いの労務費材料費、外注費などを表したものです。一般の商業簿記で使われる勘定科目に当てはめると、買掛金の概念に近い科目になります。

工事未払金と未払金の違い

「未払金」は、物品は受け取ったものの、まだ支払いが済んでいない対価を表します。直接的な営業取引に該当する商品や材料などの棚卸資産には使用されず、非継続的な固定資産や消耗品の購入などで使われる勘定科目です。

工事未払金と未払金は、すでに取引を終えたものの、こちらからの金銭の支払いが完了していない点が共通しています。

両者を分ける違いは、取引内容にあります。工事未払金は建設業などでの営業取引による未払いになりますので、営業取引以外の未払いを表す未払金勘定とは前提が異なるのです。

工事未払金と買掛金との違い

「買掛金」は、一般企業での仕入(販売する商品の購入費や製品を製造するための材料費など)に対する未払額を表す勘定科目です。金銭の引き渡しが行われていない点では「支払手形」も同じですが、支払手形は金融機関を通して振り出した手形を指しており、手形を介さない営業取引における未払額を扱う買掛金とは区別されています。

工事未払金と買掛金は、営業取引による未払い分という意味では同じですが、使用される業界が異なります。買掛金は、小売業や飲食業など、幅広い業界の営業取引で使われる勘定科目です。一方、工事未払金の使用は、建設業など特定の業種に限定されます。

工事未払金と未成工事支出金との違い

「未成工事支出金」は、すでに着手している工事に計上された材料費や外注費などの費用全般を指す勘定科目です。すでに支払いが済んでいる費用だけでなく、金銭的な支出が行われていない工事未払金で計上されたものも含みます。該当の工事においてどの程度の原価が発生しているかを示す勘定科目です。一般会計では仕掛品に該当します。

一方、工事未払金は工事に関してまだ支払っていない額のみを表します。

なお、未成工事支出金は、従来の工事完成基準(現行の収益認識基準においては役務提供などの履行義務が一時にわたり充足されるもの)に該当する場合に限り使用される科目です。工事の履行義務が一定期間に充足される(従来の工事進行基準)場合は、未成工事支出金の勘定科目は使わず、完成工事原価に直接計上します。

工事未払金の仕訳例

「工事未払金」の勘定科目はどのように使用するのか、具体的な数値を使った仕訳例で説明していきます。

仕訳例1

建物建設のために、材料50万円の引き渡しを受け、全額を掛けとした。なお、当社は建設業を営んでいる会社で、注文を受けて建物を建設中である。

借方
貸方
材料費
500,000円
工事未払金
500,000円

材料費50万円はすべて建設業者である当社の建設工事(事業活動)に関わるものです。また全額を受取時に支払わず掛けとしていることから、貸方は負債項目の「工事未払金」で処理します。

仕訳例2

建物建設のため、一部を外注した。外注費30万円のうち5万円は現金で支払い、残りは掛けとした。なお、当社は建設業を営んでいる会社で、注文を受けて建物を建設中である。

借方
貸方
外注費
300,000円
現金
50,000円
工事未払金
250,000円

この事例では、外注費は建設業である当社の建物建設のために支出されていることから、事業活動で発生した支出と考えます。仕訳のやり方は上の材料費と同様です。異なるのは、一部現金での支払いがあること。このケースでは、外注が発生した際に支払った額を差し引いて、残りの未払い分を工事未払金に計上します。

仕訳例3

以前、工事未払金として計上した材料費のうち50万円を当座預金から支払った。

借方
貸方
工事未払金
500,000円
当座預金
500,000円

最後は、工事未払金を決済したときの仕訳です。工事未払金は、発生時に貸方で仕訳しますので、借方に仕訳することで、その分の工事未払金の残高が解消されることになります。

工事未払金の税務上の取り扱い

工事未払金に計上する当期の支出について、税務上の扱いで注目すべきポイントは、確定債務かどうか、履行義務の充足はどのように行われているかです。

ひとつめは確定債務かどうかについてです。確定債務とは、事業年度末までにすでに債務の原因となる事実が発生し成立している債務であり、かつその金額を合理的に算定することができる債務のことをいいます。工事未払金に限らず、その債務が損金に算入できるかどうかは確定債務に該当するかで判断します。工事未払金に計上する当期の支出については、材料費の未払いなど確定債務に該当するケースが多いため、例外を除いて、基本的に当期の損金に算入できると考えて問題ないでしょう。

もうひとつ、税務で気を付けたいのが履行義務の充足がどのように行われたかです。原則として、税務上は完成・引き渡しに合わせて益金に算入し、未払い分を含めた工事原価もこれに合わせて計上します。この場合、確定債務であっても、収益認識が行われない限り損金には算入しません。ただし、工事の進捗度を測定できる場合は、工事の進捗に合わせた益金や損金の算入を行います。

工事未払金は主に建設業で使用される勘定科目

工事未払金は、建設業など特定の業種において使用される勘定科目であり、小売業などの工事を伴わない業種では使われません。通常の商業簿記で使われる、買掛金と近い性質の勘定科目です。今回紹介したように、建設業で仕訳を行う際は、仕訳の形とパターンだけでも押さえておきましょう。

工事未払金に関連して建設業会計については以下で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。

よくある質問

工事未払金とは?

建設業会計で使用される勘定科目で、建設工事における材料費や外注費の未払額を表します。詳しくはこちらをご覧ください。

工事未払金の税務上の取り扱いは?

確定債務にあたる場合は税務上損金として扱いますが、収益認識において履行義務が一時に充足される場合は、収益を認識するまで損金に算入しません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。