• 更新日 : 2024年8月8日

「税理士が何も提案しない」当然の理由 上手に付き合うコツは?

社長と話をしていると、「うちの税理士は何も提案してくれない……」という不満を聞くことがあります。こう聞くと「怠慢な税理士がいるんだなぁ」と思う方もいるかしれませんが、本当にそう言えるのでしょうか。

そもそも、税理士は税務に関する集計を行うことが本来の役割であり、経営コンサルタントではありません。今回は、税理士にお願いできることをご説明しておきたいと思います。(執筆者:タックスコム代表取締役 山下健一)

税理士にお願いできることは“3つ”

税理士にお願いできることは、主に「記帳代行」「税務顧問」「決算申告」の3つに分けることができます。

①一昔前は全て手書きでやっていた記帳代行

一昔前は、記帳代行が税理士の主な仕事でした。振替伝票の記入から全て手書きでやっていた時代の名残で、記帳代行は税理士に任せるものだという認識は今も残っています。しかし、最近では会計ソフトも進化していますし、それこそクラウド会計を活用することでかなりの手間を減らし、税理士の手を借りずとも自社で会計ソフトに入力できるようになりました。それでも、記帳代行は税理士にお願いしたいという方もまだまだ多いのです。

報酬については、記帳代行は実際に手を動かす作業なので、時間給もしくは作業量で金額提示をする税理士が多いです。税理士が人を雇って記帳をさせる場合は、その人件費が原価となるため赤字にならないための最低金額は決まってきます。

②目に見えない税務顧問サービス

記帳代行とは変わり、税務顧問サービスは目に見えないため、そこにお金を払うことを躊躇する方もいるようです。しかしながら、消費税など改正が多い税法を踏まえてどのような対策が必要か、企業が独自で研究し実行することはそう簡単ではありませんよね。

税務顧問サービスの利用は、税理士が持つその知識と経験を“お金で買っている”と言えます。ところが、記帳代行と税務顧問サービスを混合している人が多いのです。というのも、毎月払っているのは記帳代行費用だけであり税務顧問サービスの報酬を払っていないにも関わらず、「税理士が何もアドバイスをしてくれない」と勘違いしている人がいるのです。

税理士側からすれば、記帳代行費用しかもらっていないので、税務顧問サービスを提供するはずがありませんよね。ただ、これを事前に説明する税理士、説明できる税理士が少ないことも誤解を生んでいる原因と言えます。

③決算申告は1年間の集計作業

決算時には、毎月の報酬とは別に費用がかかることがほとんどです。決算報酬の中には決算対策や節税対策なども含まれているのですが、前回のコラムでも述べたように、しっかり決算対策をしてくれる税理士と申告時期に納付書だけを送ってくる税理士に分かれます。

同じ決算書の作成だとしても、お願いする税理士によって充実度は大きく変わります。あとは決算申告とは別に、年末調整法定調書の作成などの金額が多少加算されます。

税理士報酬の相場はいくらぐらい?

税理士にお願いできる3つのサービスが分かったところで、金額設定の話にも少し触れておきたいと思います。

税理士報酬の相場は月1万~10万円程度

税理士報酬は月1万~10万円程度が相場になっています。一般的には年商規模が大きくなるにつれて金額も上がりますが、取引数が少なかったり、事業内容に変化がなく税理士の手間がかからなかったりする場合は、相場よりも安くなる場合があります。もし、詳しい金額を知りたい場合は、我が社が提供する無料診断ツールをご活用ください。

①記帳代行は費用削減しやすい

記帳代行は、お願いすればその分費用がかかりますが、ご自身で行えば費用は抑えられます。「会計ソフトへの入力は素人の自分にもできる?」という質問をもらうことも多いですが、簿記の知識があるかどうかよりも、あなたが細かい作業をまめにできるタイプなのかどうかが大きく関係すると思います。

領収証を一枚一枚見ながら、何費に該当するのかを考え入力する作業を、定期的に行う必要があります。細かい作業が面倒に感じる方は、作業が面倒で後回しになり、結局決算時に何もできていないことになるからです。

②税務顧問サービスの費用を抑えるポイント

税務顧問サービスは、税務に関する疑問や質問に答えてもらえるサービスなので、ご自分で一から勉強する時間と労力を“買っている”という認識を持ってもらいたいです。

ただし、年商が2,000万円以下の会社だと税理士による大きな差は生まれず、頻繁に訪問してもらう必要もありません。数カ月に一度税理士に訪問してもらう、もしくはこちらから伺うスタイルでよいでしょう。時にこちらから訪問すれば顧問料が下がる場合もあります。なぜなら、行き来の移動時間も税理士の中では作業時間に入ることになるためです。

逆に、年商規模が億を超えてくると、税理士とのミスコミュニケーションが後々大きな見落としやリスクにつながる可能性があるため、月1回の打ち合わせはお願いしたいところです。

税理士は「聞いたことにはちゃんと答える」

税理士にお願いできることが分かったら、次は付き合い方についてご説明したいと思います。

これまでの説明で、「こうしたら会社の売上は伸びますよ」といった税理士からのアドバイスは期待できないとお分かりいただけたかと思います。まれにマーケティングが得意で集客などのアドバイスができる税理士もいますが、そういう方は逆に税務がそこまで……という場合もあります。そもそも、本業のことはそのことを毎日考えている社長が一番分かっていると思います。

税理士に積極的に何かをやってもらえると思って付き合うと、解決できない漠然とした不満が溜まることになります。では、そのまま税理士が計算してくれるのを待っていたらいいのかというと、ここに上手な付き合い方のコツがあります。

それは、②の税務顧問サービスで税理士と打ち合わせする際に、自社がやりたいことや考えていることについて、どんな税務リスクがあるのかを全て洗い出してもらうようにするのです。税理士は自ら提案してこない場合が多いですが、聞いたことにはちゃんと答えてくれます。その特性を知った上で、税理士が持っている知識と経験を上手に活用するには、こちらから聞くことです。

そして、ここで重要なポイントは「会社の最終的な責任は全て社長にある」ということです。そんな当たり前のこと分かっていると言われそうですが、「税理士にこう言われたから……」「税理士の指示に従っただけなのに……」という不満を抱える社長が少なくないのは、税理士に責任を転嫁していることが原因と考えられます。

税務リスクを出してもらうのは税理士の役割で、出してもらった税務リスクを踏まえ、最終的な決断をするのは社長以外いません。税理士の中には経営に口を出してくる、決めつけてくる方もいるようですが、その決断に責任を持てない相手のアドバイスを聞く必要はありません。税理士のアドバイスで判断を迷ったとしても、最終的な責任は社長にあることを忘れないで税理士と上手に付き合ってもらえたらと思います。

山下健一氏の執筆記事一覧

■2019年1月8日掲載:
納税額も変わる? 税理士によってサポート内容は“ここまで違う”

■2018年12月13日掲載:
“良い税理士”を見極めるたった一つのポイント 「近所」「紹介」の落とし穴も


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