• 更新日 : 2024年9月27日

決算調整とは?具体的な調整内容や申告調整との違いを解説

決算調整は、減価償却費の計上仕訳等を作成して当期の決算書を確定させる処理です。この記事では、決算業務における決算調整の概要や実際にどういった調整方法なのかを解説します。

本記事で、決算調整の具体的な調整内容や申告調整との違いについても確認していきましょう。

決算業務における決算調整とは

決算業務における決算調整は、貸倒引当金の繰入や減価償却費の計上などの期中では行わない処理です。期中では、変動のある取引に沿って仕訳を計上していくのに対して、決算調整では1年の取引を整理した後でしか仕訳できないものについて計上していきます。

決算調整の仕訳は必ずしも仕訳パターンをすべて覚える必要はありません。基本的な決算調整の仕組みを重点的に理解することで、企業に必要な決算調整をすることが可能です。

決算業務の流れ

決算業務は一定の期間の収益と費用から損益を求めて、決算日時点の資産・負債・純資産の状況を確定させる手続きです。

決算には、本決算と中間決算、四半期決算の3種類に分けられます。本決算はすべての企業で行いますが、中間決算と四半期決算は任意で実施します。

決算業務の詳しい流れは下記記事をご覧ください。

決算を行う理由や決算業務の流れ、具体的な決算書を構成する書類の紹介がされています。

決算調整で確認・調整する項目

企業が年に1回実施する決算作業の一つに決算調整があります。決算調整は簿記の手法にのっとって、期中では行わない仕訳の作成をすることです。

決算調整の中で主要な項目を4点ご紹介していきます。

  • 減価償却資産や繰延資産の償却費
  • 一括償却資産の償却費
  • 少額減価償却資産および少額の繰延資産
  • 貸倒引当金

減価償却資産や繰延資産の償却費

繰延資産は企業が支出した費用の中で、効果が1年以上の長期に及ぶものです。繰延資産の中には創立費開業費、ノウハウ提供の費用などがあります。

繰延資産は通常、費用に分類・処理されるものですが、長期間収益を生み出し続ける可能性があることから一時的に資産として計上することが認められています。繰延資産は一度資産に計上してから、適切な期間にわたって償却していく流れです。

【例】期中に営業権50万円を支払っていて、決算調整で償却期間5年の均等償却をした。

借方貸方摘要
営業権償却100,000円営業権100,000円償却費計上

一括償却資産の償却費

一括償却資産は取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産のうち、リース資産や少額減価償却資産以外のものです。一括償却資産は取得した年から3年間にわたって、資産の取得価額の3分の1を必要経費にできます。

通常の減価償却と一括償却資産として3年で経費にするかは選択できるため、決算期間の利益に応じて選択しましょう。

【例】期中に15万円の一括償却資産を取得して、決算調整で償却期間3年の均等償却をした。

借方貸方摘要
減価償却費50,000円一括償却資産50,000円償却費計上

少額減価償却資産および少額の繰延資産

少額減価償却資産の特例は、中小企業者等に認められた制度で30万円未満の減価償却資産は年間300万円を限度として、全額経費にできる制度です。

中小企業者等は以下のすべての要件を満たす法人となります。

  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下の青色申告法人であること
  • 常時使用する従業員の数が500人以下であること
  • 通算法人に該当しないこと
  • 適用除外事業者に該当しない中小企業者または農業協同組合等に該当すること

【例】期中に20万円の工具器具備品等を取得して、決算調整で経費の消耗品費に振替をした。

借方貸方摘要
消耗品費200,000円工具器具備品等200,000円振替計上
少額減価償却資産

参考:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

貸倒引当金

貸倒引当金は貸し倒れになるリスクに備えて、積み上げておくお金のことです。貸倒引当金の金額計算には、一括評価と個別評価の2つの手法で行いますが、実務では一括評価を使う機会が多いでしょう。

一括評価は期末時点の売上債権等の帳簿価額に対して、業種ごとに異なる一定の割合を乗じて貸倒引当金として設定します。

【例】100万円の貸金に対して1%(卸売業および小売業)の1万円を、決算調整で貸倒引当金に設定した。

借方貸方摘要
貸倒引当金繰入10,000円貸倒引当金10,000円繰入額計上

決算調整と申告調整の違い

申告調整は、企業の利益と法人税課税所得を一致させるための調整です。課税所得は益金から損金を差し引いて求められ、純利益の金額とは異なります。

そのため、損益計算書で求められた利益と課税所得との差異を調整するうえで、申告調整は必須業務です。決算調整は仕訳を起こして損益計算書で調整しますが、申告調整は法人税の申告書で調整することが大きな違いです。

申告調整は必ず調整を行わなければならない必須申告調整事項と、任意で調整するか決められる任意申告調整事項の2つがあります。必須申告調整は忘れた場合でも税務署で更正してくれますが、任意申告調整は税務署による更正が行われないため注意して確認しましょう。

決算調整で頻出する4つの仕訳を覚えよう

決算調整で頻出する仕訳は下記の4つです。

  • 減価償却資産や繰延資産の償却費
  • 一括償却資産の償却費
  • 少額減価償却資産および少額の繰延資産
  • 貸倒引当金

決算業務における決算調整は、貸倒引当金の繰入や減価償却費の計上などの期中では行わない処理です。今回、紹介した4点の決算調整仕訳は中小企業が経費を効率よく計上することで、適切な節税につながるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事

会計の注目テーマ