- 更新日 : 2024年8月8日
法人税申告書とは?初心者向けに書き方を解説!
法人税申告書とは、法人が事業年度ごとに行う税務手続きに関する書類のことです。法人は、所得に対して課せられる法人税の額を計算し、税務署に申告書を提出する義務があります。
法人税の申告書と聞くと難しいイメージを持つ人が少なくありません。しかし、基礎的な理解があれば、あとはその法人によくある取引をマスターするだけです。
この記事では決算から法人税申告書に至る作成手順をベーシックな部分を中心に解説します。
目次
法人税申告書とは
法人税申告書には「別表1~20」までがあり、そのうち別表1は「確定申告書」と呼ばれています。それ以外の別表は、確定申告書の「明細書」として取り扱われており、「確定申告書」と「明細書」を総称して法人税申告書と呼んでいるのです。
法人税は各法人の経営成績・会社規模などによってその額が異なります。そこで、法人税が「どうしてその金額なのか」という理由を説明する必要があり、その説明書に当あたるのが「明細書」なのです。
別表・明細書の主な種類
法人税申告書の明細書は、別表1〜20まであります(2023年度)。それぞれの書類は以下のとおりです。
- 別表1ー「各事業年度の所得に係る申告書」(内国法人の分)
- 別表1の2ー「各事業年度の所得に係る申告書」(外国法人の分)
- 別表2ー「同族会社等の判定に関する明細書」(同族会社を判定する際に使用)
- 別表3ー「特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書」など
- 別表4ー「所得の金額の計算に関する明細書」(課税所得金額を計算する際に使用)
- 別表5ー「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」(法人の税務上の純資産を記載するもの)など
- 別表6ー「所得税額の控除に関する明細書」など
- 別表6の2ー「外国法人の外国税額の控除に関する明細書」
- 別表7ー「欠損金の損金算入等に関する明細書」など
- 別表7の2ー「通算対象欠損金額又は通算対象所得金額の計算及び通算対象外欠損金額の計算に関する明細書」
- 別表8ー「受取配当等の益金不算入に関する明細書」など
- 別表9ー「保険会社の契約者配当の損金算入に関する明細書」など
- 別表10ー「沖縄の認定法人の所得の特別控除及び要加算調整額の益金算入に関する明細書」など
- 別表11ー「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書」など
- 別表12ー「海外投資等損失準備金の損金算入に関する明細書」など
- 別表13ー「保険金等で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」など
- 別表14ー「寄附金の損金算入に関する明細書」など
- 別表15ー「交際費等の損金算入に関する明細書」
- 別表16ー「旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」など
- 別表17ー「国外支配株主等に係る負債の利子等の損金算入に関する明細書」など
- 別表17の2ー「保険会社の投資資産不足額に係る投資収益の益金算入に関する明細書」など
- 別表18ー「各通算法人の所得金額等及び地方法人税額等に関する明細書」など
- 別表19ー「法人税法第七十一条第一項の規定による予定申告書」など
- 別表19の2ー「法人税法第百四十四条の三第一項又は第二項の規定による予定申告書」など
- 別表20ー「退職年金等積立金に係る申告書」
- 特別償却の付表ー「特別償却等の償却限度額の計算に関する付表」
別表1の中に加えて別表1の2があったり、別表6に加えて別表6の2があったりします。
今回は、法人税申告書の明細書のうち、とくに重要とされる別表1〜7の内容や、注意点を中心に解説します。
参考:国税庁 令和5年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)
\法人税申告前の決算書作成をラクに/
別表1:各事業年度の所得にかかる申告書(法人税申告書)
※画像引用:国税庁「令和5年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)」(以下同様)
法人の基本情報の記載と申告がなされる書類です。
別表1には青色申告書と白色申告書とがありますが、ここでは、「普通法人等の青色申告」について、概要と注意点を解説します。
別表2:同族会社の判定に関する明細書
法人が「同族会社」、あるいは「特定同族会社」に該当するかどうかを判断するための明細書で、特定同族会社に該当する場合には納税額が異なる場合があります。判断材料は「株主との関係性」と「保有株式比率」となり、判定基準は以下のとおりです。
- 「特定同族会社の判定割合(17)」が 50%超かつ資本金1億円超の場合は特定同族会社
- 「特定同族会社の判定割合(17)」が 50%超かつ資本金1億円以下の場合は同族会社
- 「特定同族会社の判定割合(17)」が 50%以下で「同族会社の判定割合(10)」が50%超の場合は同族会社
- 「同族会社の判定割合(10)」が 50%以下の場合は非同族会社
別表3(1):特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書
別表2で特定同族会社に該当した場合には、「特定同族会社の特別税率の規定」が適用されます。
特定同族会社は一握りの株主によって支配されており、同族株主に対する所得税の総合課税の超過累進税率の適用を避けるために、法人側で所得を意図的に内部留保することが多々あるため、間接的に配当を促し、所得税回避を防止しようとする目的の規定です。
別表4:所得の金額に関する明細書
会社上の利益と税務計算における所得とは異なっています。そこで、損益計算書の利益(損失)をもとに、一定の調整を加えて税務計算上の所得金額あるいは欠損金額等を計算します。
<「加算」欄>
会計上は収益ではないが税務上は益金に当たるもの、会計上は費用だが税務上は損金に当たらないものが対象(減価償却超過額・役員給与と交際費の一部等)
<「減算」欄>
会計上は収益だが税務上は益金に当たらないもの、会計上は費用ではないが税務上は損金に当たるものが対象(還付法人税・受取配当金等)
ここでの調整が「別表1(法人税申告書)」で行う納税計算の基礎となるため、重要な明細書と言えるでしょう。通常は「簡易様式」を使いますが、特別な所得特別控除や特例に該当する法人の場合には様式が異なりますので注意が必要です。
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別表5(1):利益積立金額及び資本金などの計算に関する明細書
別表5は税務上の貸借対照表の機能を有しています。別表4で記載したとおり、企業会計の利益と税務計算による所得は異なります。ここでも期首の利益積立金額から当期の所得金額計算の異動を加減算(別表4の「加算」「減算」により調整)をして期末の利益積立金額を割り出します。
別表6(1):所得税額の控除に関する明細書
期中に支払いを受ける利子・配当・償還差益等に課税された所得税の税額控除を受ける場合の明細書です。
別表7(1):欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書
繰越欠損金の繰越期間は7年間だったものが9年間に延長されました。適用は、平成20年4月1日以後に終了する事業年度となります。
法人税申告書の書き方を画像付きで解説
法人税申告書に関する書類はいくつもありますが、手順に沿っていけば難しくありません。たとえば、設立2年目以降の法人で利益が黒字の場合、以下の順番で進めていくとよいでしょう。
- 別表2を記載する
- 別表5を記載する
- 別表4を記載する
- 別表7を記載する
- 再び別表4を記載する
- 別表1を記載する
- 再び別表5を記載する
- 再び別表4を記載する
ここから、各手順ですべきことについて、わかりやすく解説します。
\法人税申告前の決算書作成をラクに/
STEP1.別表2を記載する
※画像引用:国税庁「令和5年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和5年4月1日以後終了事業年度等分)」(以下同様)
別表2の「同族会社等の判定に関する明細書」に記載しましょう。まずは、下部にある「判定基準となる株主等の株式数等の明細」に記入していきます。
たとえば、株主がひとりの場合、左側の「順位」にある「株式数」に記載するのは「1」(1位の意味)です。続いて、「住所又は所在地」「氏名又は法人名」に株主の情報を記載します。この場合、「株式数又は出資の金額」は「100」です。
次に、上にある「同族会社の判定」の1〜17に記載しましょう。ただし、「特定同族会社の判定」(11〜17)は、大法人の100%子会社(間接支配を含む)に該当しない限り、資本金1億円以下の会社は記載不要です。
最後に(10)(17)に記載した数字を確認した上で、判定結果(18)に記載しましょう。(17)が 50%超の場合は「特定同族会社」、50%以下かつ(10)が50%超の場合は「同族会社」、(10)が50%以下の場合は「非同族会社」に◯をつけます。
STEP2.別表5を記載する
会計における繰越処理と同じく、法人税申告書においても前回提出した申告書から転記する項目があります。別表5は(1)と(2)がありますが、まずはどちらも前期繰越額の転記をします。
別表5(1)の期首現在利益積立金額や期首現在資本金等の額については、前期の申告書から転記します。また、別表5(2)期首現在未納税額や当期中の納付税額等について記入します。
先に、別表5(2)「租税公課の納付状況等に関する明細書」から記載するとよいでしょう。
前期末の別表5(2)を確認し、「法人税及び地方法人税」「道府県民税」「市町村民税」の「期末現在未納税額」を、当期の「期首現在未納税額」(2・7・11)に転記してください。また、下部の「納税充当金の計算」で、前期の「期末納税充当金」を当期の「期首納税充当金」に転記しましょう。
次に、期中に納付した金額を「当期中の納付税額」の該当欄に記入していきます。そして、記載されている計算式に従って、「期末現在未納税額」を記入してください。
続いて、別表5(1)の「期首現在利益積立金額」「期首現在資本金等の額」「当期の増減」に記入していきます。当期の「期首現在利益積立金額」には、前期の「差引翌期首現在利益積立金額」を転記してください。
STEP3.別表4を記載する
次に別表4「所得の金額の計算に関する明細書」に当期利益又は当期欠損の額を転記します。ここで法人税を計算しないと会計が締まらず最終利益が求まらない・・・と考えている方は、次の「法人税申告書作成のポイント」をご一読ください。別表4への加算、減算額を算出するのは各明細書であり、別表4に転記するとともに必要な項目は別表5にも転記します。
まず、損益計算書の「当期純利益金額」を一番上の「当期利益又は当期欠損の額」の「総額」に記入しましょう。期中に配当があれば「社外流出」の「配当」欄に記載します。「留保」の欄に記載する金額は、「総額」ー「配当・その他」の金額です。
そのほかにも、別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」で「損金不算入額」がある場合や、減価償却の償却超過額がある場合(別表16(1)(2)に記載)などで、該当項目に記入することがあります。
続いて、「加算」の「小計」と「減算」の「小計」を求めてから、「仮計(23)」を計算しましょう。さらに、書式に記載されている数式に従い、「仮計(26)」「合計」「差引計」まで計算していきます。
ここまでで別表4の作成を一旦終了し、別表7の記載に移りましょう。
STEP4.別表7を記載する
別表7(1)「欠損金の損金算入等に関する明細書」は、過去と現在の損失や利益を相殺するために必要な書類です。
過去の別表7を確認し、「翌期繰越額」が記載された行の「事業年度」と「区分」をそのまま当期の書類に転記しましょう。「翌期繰越額」は、「控除未済欠損金額」に記入します。別表7(1)の各行を記載する際は、直近の決算期(事業年度)を下から2行目、以降さかのぼるにつれて上の行に記載していくことがポイントです。
当期の行の「控除未済欠損金額」には、前年度で「青色欠損金」「翌期繰越額」に記載された額を記入します。
続いて、別表4で「差引計」に記載した金額を、別表7(1)の「控除前所得金額」に転記しましょう。そして計算式に従い、「所得金額控除限度額」を記入します(中小法人の場合は「控除前所得金額」と同額)。
次に、計算式に従い「当期控除額」を記入します。その後、各行で「控除未済欠損金額」から「当期控除額」を引いた金額を「翌期繰越額」に記載しましょう。
最後に各行の「計」を求め、「計」の「翌期繰越額」と、「青色欠損金」の「翌期繰越額」を合計した値を「合計」の「翌期繰越額」に記入すれば、別表7(1)の完成です。
STEP5.再び別表4を記載する
別表7(1)の記入を終えたら、再び別表4を記載しましょう。
別表7(1)の「当期控除額」の「計」を別表4の「欠損金等の当期控除額」の行に記入します。続いて、「差引計」の行と「欠損金等の当期控除額」の行を加算して、「総計」に記載してください。
さらに、「総計」と「所得金額又は欠損金額」の間の行に該当する項目がない場合は、「総計」の数字をそのまま下ろして「所得金額又は欠損金額」に記入します。
STEP6.別表1を記載する
各明細書で計算した金額を別表1にまとめ、法人税額及び地方法人税額を計算します。
ここから、別表1で法人税を確定しましょう。別表1の記載にあたって、別表1次葉の記入が必要です。
別表1次葉では、別表4の「所得金額又は欠損金額」と800万円を比較し、少ない金額を左上の欄「(1)のうち中小法人等の年800万円相当額以下の金額」に記載します。次に、記載した額に所定の税率をかけて、隣の欄「(50)の15%又は19%相当額」に記入しましょう。
「その他の所得金額」には、別表4の「所得金額又は欠損金額」から「(1)のうち中小法人等の年800万円相当額以下の金額」を引いた額を記入します。その隣の欄「(47)の19%又は23.2%相当額」に、所定の税率をかけた数字を記載しましょう。
続いて、別表1次葉の数値を別表1に転記していきます。別表1は青色申告する場合は、右上に「青色申告」と記載されたものを使用してください。
まず、上部に納税地・法人名などの基本情報を記入します。また、法人区分や添付書類に◯をつけましょう。その隣の「税務署処理欄」にある「売上金額」の記入も必要です。
「所得金額又は欠損金額」には、別表4の該当部分を転記します。「法人税額」では、別表1次葉の該当項目の数値を使って計算してください。以降も、別表1に記載されている計算式を使って残りの「この申告書による法人税額」に記入していきましょう。
また、計算式に従って「この申告書による地方法人税額の計算」の「所得の金額に対する法人税額」や「課税標準法人税額」に記入します。そして、右側の「欠損金等の当期控除額」には別表7(1)の該当箇所を記入してください。
今度は、別表1次葉の「所得の金額に対する法人税額」に、別表1の該当部分を記入しましょう。記入した数字に10.3%をかけた金額を「(56)の10.3%相当額」に記載すれば、別表1次葉の完成です。
別表1次葉「56の10.3%相当額」を別表1の「地方法人税額」に記入したら、残りの部分も計算式に従って記入していってください。後は、「剰余金・利益の配当(剰余金の分配)の金額」に別表4の「配当」部分を記入し、「決算確定の日」「還付を受けようとする金融機関等」に必要情報を記載すれば別表1の完成です。
STEP7.再び別表5を記載する
別表1が完成したら、再び別表5に記載します。
別表5(2)に、「道府県民税」や「市町村民税」の当期発生税額を記入しましょう(今回、道府県民税や市町村民税の計算方法の説明は省略)。
また、「法人税及び地方法人税」の「当期発生税額」と「期末現在未納税額」には、別表1の「差引確定法人税額」と「差引確定地方法人税額」を加算した数字を記載します。
「納税充当金の計算」では、「期首納税充当金」に期首の未払法人税等の残高、「損金経理をした納税充当金」に費用として処理した未払法人税等を記入してください。残りは、書式に記載されている計算式に従って記入していきます。
別表5(1)では、「繰越損益金」の「当期の増減 増」に貸借対照表の「繰越利益剰余金」を記入します。また、別表5(2)を参考に、「納税充当金」や「未納法人税等」の行の記載も必要です。
さらに、「差引合計額」で縦に合計した金額を記入しましょう。
STEP8.再び別表4を記載する
別表4の「当期利益又は当期欠損の額」が損益計算書の「当期純利益金額」と一致しているか確認しましょう。
また、「損金経理をした納税充当金」に、別表5(2)の数字を記入します。さらに、加算部分の小計を再度計算すれば、別表4の完成です。
なお、今回は2023年度の法人税申告書を想定して解説しました。年度によって、書式が一部異なることはあるため注意しましょう。
法人税申告書をスムーズに作成するポイント
法人税申告書をスムーズに作成するポイントは、以下のとおりです。
- 関連資料を一緒に準備しておく
- ミスなく正確に情報を整理する
- 申告ソフトを使って事前に法人税額を求める
ここから、各ポイントについて詳しく解説します。
関連資料を一緒に準備しておく
法人税申告書を作成するにあたって、関連資料を準備しておきましょう。関連資料の代表例は以下のとおりです。
- 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書
- 勘定科目内訳明細書
- 法人税事業概況説明書
関連資料は、法人税申告書を記載する際に参考にしたり、ミスがないかチェックしたりするのに役立ちます。用意するのに時間を要するため、早めに取りかかることが大切です。
ミスなく正確に情報を整理する
法人税申告書でミスを防ぐため、正確に情報を整理することを心がけましょう。
とくに発生しやすいのが、計算ミスです。また、いくら計算を正確にしていても、転記ミスがあることで数字に狂いが生じることもあります。
ミスを防ぐためには、チェック体制を整えることが大切です。属人化によるミスのリスクを軽減するため、チェックする人をあらかじめ決めておきましょう。
申告ソフトを使って事前に法人税額を求める
会計ソフトや法人税申告ソフトを活用すれば、スムーズに法人税額を計算できます。ソフトを使えば、計算ミスや転記ミスなどのヒューマンエラーを未然に防げる点がメリットです。
なお、Excelを使って法人税・地方税を求める方法でも計算ミスは防げます。しかし、税の仕組みを十分に理解していないと活用は難しいでしょう。
法人税申告書作成でよくあるジレンマ
法人税申告書作成には、「損益計算書末尾の法人税等は、実際に申告書で確定させないとわからない。でも、法人税申告書は確定した決算に基づいて作成しなければならない」というジレンマがあります。
損益計算書末尾の「法人税等」を繰り入れるに当たって概算で計上するという方法もあります。法人税、地方税ともエクセル等で計算して概算額で計上する方法もあります。
しかしながら、こちらは法人税や地方税のしくみをエクセルに落とし込める法人税への理解力が必要となり、どちらかというと上級者向けです。
会計ソフトだけでなく、法人税の申告ソフトがある方限定となりますが、次の方法があります。
法人税等とは、国税の法人税だけでなく、地方税の法人住民税や法人事業税がプラスされていますが、地方税については、所得金額や法人税額等が確定すれば申告ソフトでは比較的簡単に求まります。
ここでは申告ソフトを使って事前に法人税額を求め、地方税についてはその後申告ソフトから算出される地方税額を参照し、合計するという方法を紹介します。
(別表4 一部)
仮に、税引前当期純利益が200万円だとします。法人税等を計算する直前の利益です。
別表4では、次の計算で所得金額を求めます。
すると、上の例では下線部の計算は、200万円 + 23万円となります。
これに対し本来の計算では、法人税等の額をXとすると、(200万円 – X)が当期利益の額になり、
本来であれば、下線部の計算は(200万円 – X) + (23万円 + X)として求めます。
結局、納税充当金として損金経理した額は加算されるため加算項目は(23万円 + X)となり、結果としては、200万円 + 23万円と同じことになります。
したがって、法人税等を計上する前での法人税の計算は、上の図のように税引前当期純利益を別表4に入れて、「損金経理をした納税充当金」をゼロにしたうえで所得金額を求めればよいのです。
さらに申告システムで地方税も算出すれば、最終的に「法人税等」の額が求まります。
そのようにして求めた法人税等を会計システムに入力して決算確定へすすめることができるわけです。
まとめますと、次のようになります。
- 決算の最終段階において、税引前当期純利益を別表4に入れて(仮)申告書を作成
- (仮)申告書から求めた確定税額(法人税等)を未払計上する
- 当期純利益を求め、決算確定
- 申告書を本作成(別表4を正しく入れなおす)
別表4での申告調整について
別表4を記載するステップにおいて申告書上で加算・減算した場合に税務上有効となるものを「申告調整」と呼びます。
申告調整には、「任意的申告調整事項」と「必要的申告調整事項」とがあります。
任意的申告調整事項とは、申告書で調整するかしないかは法人の任意によるもので、調整しなければ税法上の摘要を受けられません。
(例)別表4では受取配当等の益金不算入など(別表1では所得税額控除など)
また、必要的申告調整事項とは、申告書で必ず調整しなければならないもので、調整しなければ税法上の更正処分となるものです。
(例)別表4でよくあるものは次のとおりです。
- 減価償却費や引当金の超過額(減算及び加算)
- 役員給与の損金不算入
- 寄付金や交際費の損金不算入
- 各種引当金・準備金等の超過額(減算及び加算)
法人税申告書を提出する方法
確定申告書と同様に、税務署に持ち込む・郵送する・e-Taxで送信することにより、法人税申告書を提出できます。ただし、e-Taxを利用する場合は、あらかじめ利用者識別番号や電子証明書の取得が必要です。
また、法人税申告書には提出期限が定められています。確定申告書は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内と定められているため、失念しないようにしましょう。
参考:国税庁「C1-1 法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)」
まずは別表4と別表5をよく見て、申告書の形式に慣れること
別表4は損益計算書に似ていて、別表5は貸借対照表に似ているというのは、別表4と別表5の関係性が損益計算書と貸借対照表に似ているという意味です。
したがって、別表4や別表5に書いてある内容は決算書とは全く異なり、初めて見た人は戸惑ってしまうかもしれません。
まずは、過去2~3年分の確定申告書を見てみましょう。その中でも、別表4、5と決算書を見比べることから始めましょう。
よくある質問
法人税申告書とは?
「確定申告書」と「明細書」を総称して法人税申告書と呼びます。詳しくはこちらをご覧ください。
法人税申告書の作成手順は?
前期繰越額・決算利益等の転記、所得金額の計算、法人税額の計算の手順で作成します。詳しくはこちらをご覧ください。
法人税申告書作成のポイントは?
申告ソフトを使って事前に法人税額を求め、地方税についてはその後申告ソフトから算出される地方税額を参照し、合計する方法がおすすめです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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