• 更新日 : 2021年12月3日

役務収益と役務原価の仕訳方法とは

役務収益と役務原価の仕訳方法とは

商品売買に限らず、近年では、多種多様のサービスを提供する企業も増えてきました。「役務収益」や「役務原価」は、モノを販売するのではなく、サービスを商品として提供したときに使われる勘定科目です。

この記事では、役務収益や役務原価とは何か、どのように仕訳を行うか、仕掛品との関係や違いまで解説していきます。

役務収益とは

役務収益の「役務」は、サービスのことです。「役務収益」とは、サービスを提供したときの収益を表します。たとえば、サービスの提供の具体例には以下のようなものがあります。

  • 土木工事
  • 物品の運送や保管
  • 不動産売買などの仲介
  • パソコンや家電などの修理
  • ホテルや旅館などの宿泊先の提供
  • クリーニングや清掃
  • 演劇やイベントなどの興行
  • 弁護士など士業の顧問契約

以上のように、対価と引き換えに無形のサービスを引き渡す取引は、商品売買ではなく、サービス業です。サービス業を営んでいる場合は、商品売買業で使用する勘定科目である「売上(売上高)」の代わりに、「役務収益」の勘定科目を使用します。

役務収益の仕訳

2021年4月から「収益認識に関する会計基準」が適用されたことを受けて、「売上」と同じ収益である「役務収益」も、会計基準の以下5つのステップに従って収益認識をすることになりました。

  1. 顧客との契約を識別する(サービスの提供を認識)
  2. 収益認識の単位である履行義務を識別する(サービスごとに識別する)
  3. 取引価格を算定する
  4. 履行義務に取引価格を配分する(サービスごとに価格を配分する)
  5. 履行義務充足時、または充足に合わせて収益を認識する

役務収益の計上において特に重要なのが、どのように履行義務の充足が行われるかです。

一時で履行義務が充足されるケース

一時に履行義務が充足されるスポット的なサービスの提供では、以下のように仕訳を行います。

(例)当社は清掃業を営んでおり、賃貸不動産の退去後の清掃を依頼(一時的な依頼)されたため、清掃料金である5万円を現金で受け取って清掃を完了させた。

仕訳例では、すでに清掃が完了しています。収益認識は履行義務充足後、つまりサービス提供が完了したときに行いますので、清掃完了時に役務収益を計上します。

なお、退去後の清掃は一時的な依頼であるため、履行義務充足時に一時に役務収益とするのが適切です。一時に履行義務が充足される今回のようなケースでは、全額を一時に収益に計上します。

借方
貸方
現金
50,000円
役務収益
50,000円

仕訳例では、すでに清掃が完了しています。収益認識は履行義務充足後、つまりサービス提供が完了したときに行いますので、清掃完了時に役務収益を計上します。

なお、退去後の清掃は一時的な依頼であるため、履行義務充足時に一時に役務収益とするのが適切です。一時に履行義務が充足される今回のようなケースでは、全額を一時に収益に計上します。

継続して履行義務が履行されるケース

一時的なサービスの提供ではなく、継続してサービスを提供する場合は、履行義務の充足(進捗)に合わせて役務収益に計上します。履行義務の充足において、進捗度を測る方法は、アウトプット法(顧客に提供された価値で見積もる方法)とインプット法(社内のインプットから見積もる方法)の2つです。アウトプット法であれば達成した成果やマイルストーン、インプット法であればコストや労働時間、経過期間などが指標になります。

以下は、継続してサービスを提供したときの仕訳例です。

(例)当社はコンサル業を営んでおり、A社とコンサルサービスの契約(全体で100万円の契約)を結んでいる。当初の契約の20%のマイルストーンまで進捗したため収益として計上する。なお、契約金はまだ支払われていない。

借方
貸方
売掛金
200,000円
役務収益
200,000円

会計基準では、履行義務の進捗に合わせて収益を計上しますので、マイルストーンが完了した段階で、コンサルサービスの進捗分を役務収益として計上します。

役務原価とは

役務原価とは、サービスを提供するために直接的に要した費用のうち、役務収益に計上される額に対応する費用のことです。商品売買業でいうところの「売上原価」と同じで、役務収益に直結する費用を表します。

サービス業においては、役務収益から役務原価を差し引いて、売上総利益を算出します。

役務原価の仕訳

具体例を取り上げながら役務原価の仕訳を解説していきます。

(例)当社は清掃業を営んでいる。清掃サービス提供のために、清掃で必要な薬剤(サビ落とし剤など)を10万円分購入し、すべて現金で支払った。

借方
貸方
仕掛品
100,000円
現金
100,000円

サービスを提供するのに直接的に必要な費用であっても、仕訳例のように、モノを購入した段階ではサービスが提供されていないため、役務原価にはできません。サービスの提供に必要な費用は、一旦、仕掛品(しかかりひん)に計上します。

また、仕訳例では薬剤を購入した費用を仕掛品に計上していますが、消耗品(この場合はブラシやふきん)など、サービス提供に直接必要なものもすべて仕掛品に計上します。

(例)当社は清掃業を営んでいる。顧客からの依頼に対して、単発で清掃サービスを提供した。今回の清掃サービスの料金は5万円、薬剤などサービス提供に直接要した費用は全部で1万円であった。

借方
貸方
役務原価
10,000円
仕掛品
10,000円

役務原価は、役務収益が立った段階ではじめて計上されます。計上する役務原価は、その役務収益に対して要した額です。

仕掛品との違い

役務原価の仕訳でも取り上げましたが、サービス業の役務収益と役務原価の仕訳では、「仕掛品」という勘定科目が使用されます。

仕掛品は、すでに費用として発生し、かつ、サービスの提供で将来必要になってくるものではあるものの、まだ収益には貢献していないもののことをいいます。将来の役務収益には関係のある額ですが、すでに計上されている役務収益にはかかわってこない額です。

役務原価と仕掛品は、役務収益に対応した費用かどうかが異なります。役務原価は、売上原価のように役務収益に対応していますが、仕掛品は未提供のサービスにかかわる部分であるため、役務収益には対応しません。

サービス業が押さえておきたい役務収益と役務原価

サービス業では、売上や仕入(または売上原価)の代わりに、役務収益や役務原価といった勘定科目を使って仕訳を行います。役務収益の計上は、商品売買業などと同じです。役務原価は、役務収益に対応する部分を、履行義務充足の都度、仕掛品から振り替える処理を行います。サービスを提供する企業も増えてきましたので、基礎的な部分だけでも押さえておきましょう。

よくある質問

役務収益とは?

サービスの提供による収益のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

役務原価とは?

サービスを提供するために直接要した費用のうち、計上される役務収益に対応する費用をいいます。詳しくはこちらをご覧ください。


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