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  • 作成日 : 2021年10月8日

純額表示と総額表示の違いをわかりやすく解説

純額表示と総額表示の違いをわかりやすく解説

2021年4月1日から「収益認識に関する会計基準」が適用されたことによって、収益の表示方法が変更されました。強制適用を受ける上場会社や大会社などでは、これまでの収益認識の仕訳を会計基準に合わせて変更しなければならなくなったのです。

新たに適用された純額表示(純額処理)は、従来の総額表示(総額処理)とどのような違いがあり、どのような影響を受けるのでしょうか。純額と総額の違いを説明するとともに、それぞれの仕訳例を紹介します。

純額とは?

損益計算書を項目別に見たとき、それぞれの勘定科目は「売上」などの収益項目、「仕入」などの費用項目、「固定資産売却益」などの利益項目、「営業外損失」などの損失項目に分けられます。収益は利益を増やす項目、費用は利益を減らす項目です。

純額表示または純額処理とは、収益と費用が同時に発生しているとき、それぞれを発生した額で表示するのではなく、収益から費用を引いた利益(または損失)のみを表示する会計処理をいいます。

純額処理と総額処理の違い

純額処理は、収益から費用を引いた利益のみを計上する方法と説明しました。そんな純額処理と対照的な処理を行うのが、総額処理です。

総額処理では、収益とそれに対する費用をそれぞれ総額で計上することによって、その差額となる利益を認識します。純額処理も総額処理も、収益の額と費用の額が同じであれば、差額として計上する利益の額は同じになるはずですから、処理の違いにより利益や損失の額が変動することはありません。

日本では長らく、収益の認識において、純額処理と総額処理の採用基準を明確に定めていませんでした。しかし、2021年4月1日から適用開始された「収益認識に関する会計基準」で、国際的な会計基準である IFRS(国際財務報告基準)やUSGAAP(米国会計基準)で収益認識に関する基準の統一が図られたことを受けて、純額処理と総額処理の採用基準が明確に定められることとなりました。

収益認識に関する会計基準では、企業が本人として取引をするのか、代理人として取引をするのかによって認識する収益の額が異なります。純額処理と総額処理のどちらを採用するかが収益の認識に差を生みますが、採用の論点になりやすいもののひとつに、仕入形態の一種である「消化仕入」が挙げられます。

消化仕入とは、仕入先から商品が到着した時点では買取処理をせず、該当の商品を外部へ販売した時点で買い取りを行い、仕入に計上する仕入形態です。

消化仕入のうち、総額で収益を認識するのは本人取引です。本人取引とは、企業自らが、顧客に対して履行義務を負うような取引を指します。

一方の代理人取引は、仲介を行うだけで、顧客への履行義務は本元の企業が負うような取引をいいます。収益認識に関する会計基準では代理人取引に対し、報酬(仲介手数料)のみを収益として認識すること、つまり純額処理を行うことと定められています。

純額処理と総額処理の仕訳例

収益認識に関する会計基準で明示された、総額処理の本人取引、純額処理の代理人取引を例に、それぞれの仕訳を解説していきます。

消化仕入 本人取引の場合

(仕訳例1)小売業のB社は、A社と消化仕入の契約を行っている。本日、A社の商品50,000円(売価80,000円)を掛で売り上げた。本契約は、消化仕入のうち、在庫リスクを負う本人取引に該当するものである。また、A社は商品販売時に、過去の返品状況から返品分を3,125円(売価5,000円)と見積もった。

借方
貸方
売掛金
80,000円
売上
75,000円
返金負債
5,000円
売上原価
46,875円
買掛金
50,000円
返品資産
3,125円

消化仕入 代理人取引の場合

(仕訳例2)小売業のB社は、A社と消化仕入の契約を行っている。本日、A社の商品50,000円(売価60,000円)を掛で売り上げた。本契約は、消化仕入のうち、在庫リスクや履行の主たる責任を負わない代理人取引に該当するものである。

借方
貸方
売掛金
60,000円
売上
(手数料収入)
10,000円
買掛金
50,000円

消化仕入の代理人取引は、以下すべてに該当するような取引です。

  • 履行の主たる責任を負わない(仕入先が負う)取引
  • 在庫リスクを負わない(仕入先が負う)取引
  • 価格設定の裁量権がない取引

代理人販売は、商品を購入して販売するようなリスクをともなう取引とは異なるものです。代理人販売は、会計上、販売の仲介をしたと考え、仲介手数料として売上から仕入を差し引いた純額を売上(または手数料収入)として計上します。

純額処理は利益や損失のみを認識する会計処理

純額処理とは、収益と費用を相殺して利益(または損失)のみを認識する会計処理です。従来はすべての取引額を省略せずに表示する総額処理が認められていましたが、2021年4月1日以後に適用される「収益認識に関する会計基準」によって、今後は純額処理による表示が義務づけられます。

今までの取引慣行として、代理人取引であっても総額処理を行っていた上場会社などは、売上高・仕入高の表示が大きく異なります。利益や納税額には影響しないものの、売上高を基準としていた経営指標などに影響がでますので、今後の財務分析には十分な注意が求められます。

よくある質問

純額とは?

収益から費用を引いた利益(または損失)のみを表示する会計処理のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

純額処理と総額処理の違いは?

純額処理は利益(または損失)のみを表示しますが、総額処理は利益だけでなく、利益の根拠となる収益と費用など取引全体の総額を表示します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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監修:岡 和恵 (税理士 / CFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。