- 更新日 : 2024年8月8日
【公益法人会計基準とは】法人税が非課税になるのには理由があった
公益法人は税制面で優遇されています。法人なら支払うべき法人税がなぜ非課税になるのでしょうか?
公益法人は税制面で優遇されるため財務状況が厳しく審査されています。(これを公益法人会計基準といいます)
税制優遇の光と影について解説します。
目次
公益法人とは?特色と特典
どんな団体でも公益法人になれるわけではありません。「自分たちで社会を良いものにしたい」という理念が必要です。定められた審査で理念が認められた場合にのみ、公益法人を名乗り、税制優遇を受けるができます。
申請も厳しい
申請には2つの手順が必要です。
まず、一般社団や財団法人を設立した後、公益認定の申請をします。一般社団・財団法人の設立では準則主義(じゅんそくしゅぎ)が原則で、法律の定める要件さえ満たせば法人となります。
次に、民間有識者から構成される第三者委員会による公益性の審査を経て、内閣府または都道府県からの認定を受け、こうして公益法人になれるのです。理念・目的は「公益」であることが前提ですが、一体どんな内容が要求されているのでしょうか? 主な3つのポイントを挙げます。
1.公益事業が主な目的であること
2.収益事業は、公益事業に影響を及ぼさない程度なら認められています。
目的を遂行する能力があること、理念が崇高でも実行できなければ意味がないということです。
3.特定の人・法人に特別の利益を与えないこと
あくまで「公(おおやけ)」のためでなければなりません。
公益法人会計基準の特典は
公益法人として認定されると、公益法人の会計基準が適応され、税制優遇を受けることができます。税制優遇は公益法人だけでなく、該当する法人に寄付をした個人や法人も優遇されます。
公益法人への優遇
・法人税:公益目的事業の法人税が非課税(収益事業は課税対象)
・源泉所得税:支払いを受ける一定の利子等に係る源泉所得税が非課税
寄付をした個人への優遇
・所得税・個人住民税:寄附金控除か寄付金税額控除により税負担を軽減することができます
・相続税:寄附した財産を相続税の非課税とすることができます
寄付をした法人への優遇
・法人税:寄附した金額のうち一定額を損金(経費)にすることができます
公益法人会計基準のポイントは正味財産
公益法人会計基準と営利企業の会計には違いがあります。公益法人会計基準には「正味財産」という特殊な項目があり、これは営利企業でいう純資産にあたり、つまりは法人の財力のことです。公益法人においては、この財力が「どこから来たのか」を重視します。
正味財産とは
正味財産は財源により3つに区分されます。
「基金」とは、何かの目的のための積み立てだと考えるかもしれませんが、公益法人会計基準における基金にそういった意味合いはありません。資本金のようなものですが、営利法人とは違い株式を発行したりはしませんし、配当もありません。ですから、「資本金」という名称は使用しません。
ということで、正味財産を特徴づける3つの区分を紹介しました。そもそもどうして財源ごとに区別する必要があるのでしょうか。「3. 基金」についてはすでに説明しましたので、今度は1と2を詳しく見てみましょう。
財源を重視する理由は?
平成24年に公益法人が受け取った寄付の平均額は1法人あたり約3900万円にのぼります(平成26年8月内閣府「法人制度改革の進捗と成果について」より)。
重要な財源である寄付金は、公益法人が行っている事業や理念に共感した方々(あるいは法人)から託されたお金です。いわば寄付した方の思いが詰まった財源ということになります。そこで、「寄付した人の思いに沿って使いましょう。そのために他の財源とは区別してくださいね。」という指針により、財源ごとに区分されることとなりました。
以上のような理由で、公益法人会計基準では、「3. 基金」以外の財産を「1. 一般正味財産」「2. 指定正味財産」に分けて区分しています。
例えば、復興のために寄付されたお金が運転資金に使われてしまうということがないようになっているのです。理由が分かれば難しい事ではありません。
ただし、寄付した人が「〇〇の事業のため」ではなく「自由に使ってください」と制約を課さずに寄付した場合は、一般正味財産に含めることができます。
まとめ
公益法人は税制において優遇されます。
それは、その法人の持つ「理念」が公に認められた証しであり、その理念のためにお金を使うからこその優遇だと言えるのです。特別な会計処理の理由は、そういった公益法人会計基準から見ることができます。
公益法人会計基準に手こずっている方は、初心に戻って、「公益法人とは?」と考えてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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