- 作成日 : 2024年10月10日
一人社長に税理士は必要?メリット・デメリットや費用、依頼できる業務を解説
一人社長の会社でも、状況次第で税理士への依頼が必要なケースがあります。顧問税理士をつけるメリットとして、会計業務の手間を省ける点や、節税対策について相談できる点などが挙げられます。
一方で、コストがかかる点は依頼時に留意しましょう。本記事では、一人社長の会社にとっての税理士の必要性や、費用相場などについて詳しく解説します。
目次
一人社長が税理士に会計業務を依頼する必要性は?
一人社長が税理士に会計業務を依頼する必要があるかどうかは、置かれている状況によって異なります。ここから、一人社長が税理士に会計業務を依頼する必要性や具体的に依頼すべきケースについて、確認していきましょう。
なお、この記事では主に法人として登記するも従業員を雇わずに事業を営んでいる方を「一人社長」として解説しています。
法律的には税理士への依頼は必須ではない
法律上、税理士に依頼する義務があるわけではありません。そのため、自分で対応できる場合は税理士に無理に依頼する必要はないと言えます。
ただし、手続きが難しい、手続きに時間がかかるなどの理由で一人社長だけでは対応しきれないことがあり、その際は税理士との顧問契約を結ぶか、スポットで業務を依頼すると良いでしょう。なお、税務代理・税務書類作成・税務相談は、税理士のみができる独占業務であるため、税理士以外には依頼できません。
会計業務を税理士に依頼すべきケース
会社設立にあたって、税金面の知識に自信がない場合は税理士に依頼するとよいでしょう。
利益や資本金の額によって、立ち上げた会社にかかる税金が変わります。節税対策や税金の仕組みがよくわからない人でも、税理士に相談すれば何が納税額に影響を与えるのか理解し、節税対策を考えられるようになるでしょう。
また、税務調査が不安で立ち会ってほしい場合も、税理士に依頼すべきケースのひとつです。税務調査の概要については、のちほど解説します。
一人社長が税理士をつけるメリット
一人社長が税理士をつけるメリットは、主に以下のとおりです。
- 会計関連の作業工数を削減できる
- 法改正に合わせた申告を確実に行える
- 最大限の節税対策や助成金の活用が可能になる
- 資金繰りについて相談ができる
各メリットを紹介します。
会計関連の作業工数を削減できる
会計・税務関連の処理工数を削減できる点が、一人社長が税理士をつけることのメリットです。
一人社長の場合、会社に関することは基本的にすべて自分でこなさなければなりません。会計関連の作業工数を削減すれば、その分本業に集中できるでしょう。
また、会計処理には専門的な知識が求められます。税理士に依頼すれば、会計処理の方法で頭を悩ませる必要もありません。
法改正に合わせた申告を確実に行える
法改正に合わせて確実に申告できる点も、一人社長が税理士をつけることのメリットです。
基本的に、税制は毎年変更があります。しかし、専門家でなければ、毎年動向をチェックするのは難しいでしょう。
税制を把握しておらず誤った申告をすると、ペナルティを課される可能性があります。その点、税理士に依頼して最新の情報に対応しておけば、リスクを軽減できるでしょう。
最大限の節税対策や助成金の活用が可能になる
最大限の節税対策ができる点もメリットです。
一人社長として会社を設立すれば、個人事業主の頃よりも税金を抑えられる可能性がありますが、制度を正しく理解していないと法人化することでかえってコストや税金が高くなることもあります。その点、税理士に依頼すれば、どうすれば正しい節税対策をできるのかアドバイスを受けられるでしょう。
また、法人を設立するにあたって、さまざまな助成金や補助金を利用できることがあります。税理士に依頼すれば、自分一人で対応する場合に比べて、適用できる制度を見落とす心配もありません。
資金繰りについて相談ができる
資金繰りについて相談できる点も、一人社長が税理士に依頼することのメリットです。
資金繰りとは、手元資金が不足することを防ぐために収支の過不足を調整することを指します。一人社長で会社を経営していると、お金のことについて気軽に相談できる相手がいないため、「気づいたときには資金繰りが悪化している」という状況にも陥りかねません。
一般的に、税理士は財務分析や資金繰りなどの相談にも乗っています。そのため、資金繰りが悪化する前に対策を立てやすいです。
一人社長が税理士をつける際の注意点
一人社長が税理士をつける際の注意点は、以下のとおりです。
- 費用がかかる
- 一人社長に対応していない場合もある
それぞれの注意点を説明します。
費用がかかる
一人社長が税理士をつけるにあたって、費用がかかることが注意点として挙げられます。
税理士にかかる費用の代表例として、顧問料が挙げられます。一般的に、顧問料とは税理士と年間で顧問契約を締結した場合に発生する、毎月の定額料金のことです。
顧問契約を締結せず、記帳代行や確定申告代行といった作業のたびに税理士に依頼する場合は、都度料金が発生します。
一人社長に対応していない場合もある
一人社長の場合、対応してくれる税理士を探すことが難しい点も注意しましょう。自社の近くに税理士事務所があっても、一人社長の会社には対応していない可能性があります。
また、一人社長の会社からの依頼を受ける税理士事務所があったとしても、自社が抱える悩みを解決できる税理士に出会えるとは限りません。さらに、気軽に相談できる関係を築くためには、あらかじめ担当者との相性が合うか確認することが必要です。
税理士に依頼できる業務内容
一般的に税理士に依頼する場合は、顧問契約を締結するケースとスポット契約を締結するケースがあります。顧問契約は契約期間中に税理士が依頼者の代わりに税務業務全般を担当する契約で、スポット契約は期間・業務を限定して税理士が必要な税務サービスを提供する契約です。
それぞれ、依頼できる業務内容をまとめました。
税理士との契約 | 費用 | 依頼できる業務 |
---|---|---|
顧問契約 | 毎月一定額を支払い |
|
スポット契約 | 依頼する業務ごとに支払い |
|
顧問契約を締結すれば、1年間いつでも相談できる点や、月次決算の会計処理のサポートを受けられる点が特徴です。ここから、税理士に依頼できる業務のうち、税務代理・税務書類の作成・税務相談・税務調査の立会いについて簡単に紹介します。
税務代理
税務代理とは、税務署への申告や申請などの業務を依頼者の代わりに税理士が進めることを指します。税務代理の具体例は、法人税の確定申告手続きなどです。
税務書類の作成
税務書類の作成とは、税理士が専門家としての知識や判断に基づき、国税庁などに提出する書類を作成することです。具体例として、源泉徴収票をはじめとする法定調書や確定申告書の作成などが挙げられます。
法定調書や確定申告の金額は、正確に計算しなければなりません。計算や処理には、複雑な作業や知識が必要となるため、税理士による代理が認められています。
税務相談
税務相談とは、税理士が税金・税法などに関するさまざまな相談にのることです。税理士事務所によって、電話・メール・対面などさまざまな相談方法があります。
税務調査の立ち会い
税務調査の立ち会いとは、依頼人が受ける税務調査に税理士が同席することを指します。
税務調査とは、税務署などが納税者の提出した税務に関する申告内容が適切か確認するために実施する調査のことです。税理士に立ち会いを依頼する目的として、一人社長の税務調査に対する不安を軽減することや、事前準備の負担を軽減することなどが挙げられます。
なお、税務調査の立ち会いは「税務代理」のひとつです。税務代理・税務書類作成・税務相談は、税理士のみができる独占業務と税理士法で規定されています。
一人社長が税理士をつける費用
一人社長が税理士をつける際にかかる費用は、状況によってさまざまです。ここからは、税理士費用の変動要素や相場について紹介します。
税理士費用の変動要素
売上が多い会社は、税理士費用も高くなる可能性があります。なぜなら、取引の数が増えて、税理士の作業が多くなる傾向にあるためです。
また、税理士に移動の手間がかかるため、こまめに面談を求める場合も費用が高くなることがあります。そのほか、一人社長の会社でも自社が属する業種によって、税理士に依頼する際の費用が異なることがあるでしょう。
税理士費用の相場
月額1〜5万円程度が、一人社長が税理士をつける際にかかる顧問料の目安です。
また、記帳業務を税理士が担う「記帳代行」を依頼するか、自分自身で進めるかによっても費用が異なります。売上規模も小さい一人社長の会社なら、記帳代行を含めない場合は月額2万円程度で顧問契約を締結できることもあるでしょう。
なお、顧問契約を締結していても、決算申告時に別途費用が発生することがあるため、あらかじめ確認が必要です。
一人社長も必要に応じて税理士への依頼を検討しよう
法律的には税理士への依頼は必須ではありませんが、一人社長の会社でも税理士が必要になることはあります。知識に不安がある場合やスムーズに仕事を進めたい場合などが、依頼を検討すべきケースです。
一方で、依頼することのデメリットとして顧問料などの費用が発生する点が挙げられます。コストだけでなく業務の効率性や誤った申告をすることのリスクなどを総合的に勘案し、税理士に依頼すべきか判断しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
借金返済の減額に活用できる補助金とは?資金繰りに困ったら会計事務所に相談しよう!
中小企業及び個人事業主(以下、中小企業)にとって、資金繰りは最も重要な経営課題の1つと言えます。 今回は、中小企業が借金返済の減額をしたい場合に、条件を満たせば、借金返済を減額するためのコンサルティング費用の一部が補助される制度をご紹介しま…
詳しくみる請求額と入金額が違う?主な原因や仕訳方法、消込をパターン別に解説
請求額と入金額が違う場合は、まず原因の特定が必要です。その上で処理方法を決め、仕訳を行いましょう。金額が違う原因は、請求書のミスや振込金額の入力ミスなどさまざまです。 本記事では、請求額と入金額が違う場合について、入金額が多いケースと少ない…
詳しくみる費用とは?原価や損金との違いを解説
費用は会計上の基本的な概念で、損益計算書にも関連する項目です。そもそも費用とは、どのようなものを指すのでしょうか。この記事では費用の概要、原価や損金との違い、費用の計上タイミングについて、基本的な内容を解説します。 費用とは 費用は損益計算…
詳しくみる美容室の会計業務を解説!おすすめの会計ソフトは?
「本業が忙しく会計業務に時間をかけたくない」「毎月の仕訳入力が面倒くさい」という方向けに、この記事はクラウド型会計ソフトで会計業務を効率化するための方法を解説しています。 結論からお伝えすると、クラウド型会計ソフトの自動連携機能でほとんどの…
詳しくみるものづくりを行う中小企業が抱える課題とは?ものづくり企業への支援策を紹介
戦後の混乱期以降から現在に至るまで日本経済の基盤を支え続けてきたのが、自社の技術を突き詰めて新しい製品を開発、製造している「ものづくり企業」です。ものづくり企業には大企業も存在していますが、多くは町工場のようなところを含めた中小企業であり、…
詳しくみる預り証とは?記載項目や書き方をテンプレート付きで解説
物品や金銭を預かった際、その証拠書類として預り証を発行します。預り証の書き方には明確なルールはないため、記載内容や書き方で迷う人も多いでしょう。本記事では、預り証に記載すべき項目や書き方を解説します。金銭を預かった場合に活用できる預り証のテ…
詳しくみる