- 更新日 : 2026年4月22日
香典は経費にできる?勘定科目と仕訳の書き方を解説
事業に関わる相手への香典は多くの場合経費にでき、相手によって勘定科目を使い分けます。
高額すぎる香典や、領収書がないときの証拠書類の保管には気をつけましょう。
事業に関わる相手の葬儀で香典をお渡しした場合、その費用は経費に計上できます。ただし、相手が従業員か取引先か、また法人か個人事業主かによって、使う勘定科目や仕訳の書き方は変わります。本記事では、香典の勘定科目と仕訳例、経費にできない場合の見分け方、領収書のない支出を経費として証明する方法までを実務目線で整理します。
目次
香典は何費?経費にする際の勘定科目
事業上の関係者に渡した香典は経費に計上でき、勘定科目は一般に福利厚生費か接待交際費のいずれかを使います。
亡くなった方との関係性によって、使う勘定科目が変わります。基本の使い分けは以下のとおりです。
香典の仕訳に使える勘定科目は2つ
香典の勘定科目には、福利厚生費と接待交際費の2つがあります。
- 福利厚生費:従業員やその家族、退職した元従業員などへ渡す香典
- 接待交際費:取引先、得意先、仕入先、その関係者へ渡す香典
国税庁のタックスアンサーでも、従業員やその親族の不幸などに際して一定の基準に従って支給される香典は、福利厚生費として扱う旨が明記されています。
経費計上できる香典の主なケース
香典が経費として認められるのは、会社が支出主体となって事業関係者へ渡したケースに限られます。
経費にできる主な場面は次のとおりです。
- 従業員に不幸があり、会社から遺族へ香典を渡した場合
- 従業員の家族に不幸があり、会社から従業員へ香典を渡した場合
- 取引先の役員やその家族に不幸があり、会社から香典を渡した場合
従業員が個人の判断で支出した香典を後から経費精算する場合は、原則として経費にできません。会社の慶弔規程など、社内の支給基準に基づくことが要件となります。
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香典を福利厚生費で仕訳する方法と仕訳例
従業員やその家族へ渡す香典は、福利厚生費の勘定科目で処理します。
福利厚生費は、会社が従業員のために給与以外で支出する費用です。慶弔見舞金規程など全従業員を対象とした一定の基準に従って支給することが、税務上の要件になります。
福利厚生費として処理できる対象者の範囲
福利厚生費としての香典は、現役の従業員や役員だけでなく、その家族や退職者まで対象になります。
香典の支給対象として認められやすい関係者は、次のとおりです。
- 自社の役員・従業員本人
- 役員・従業員の家族(配偶者、子、父母など)
- 過去に役員・従業員だった人(OB・OG)
慶弔見舞金規程で支給範囲を明文化しておくと、税務調査でも説明しやすくなります。
福利厚生費で仕訳する場合の摘要欄の書き方
摘要欄には「相手の氏名や立場+香典代」の形式で記載しておきます。
副社長のご家族が亡くなったため、50,000円の香典をお渡しした場合の仕訳例です。
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 福利厚生費 50,000円 | 現金 50,000円 | 副社長 ご令室 香典代 |
摘要欄に「誰の」「いつの」香典かを残しておくと、出納帳を見返したり税務調査で説明したりするときに役立ちます。
香典を接待交際費で仕訳する方法と仕訳例
取引先や事業に関わる社外の相手へ渡す香典は、接待交際費の勘定科目で処理します。
接待交際費は、得意先や仕入先など、事業に関係のある相手への接待や贈答にかかる費用です。現に取引している相手だけでなく、近い将来取引が見込まれる関係者への香典も含めることができます。
接待交際費として処理できる対象者の範囲
接待交際費の対象は、事業上の関係者と認められる相手に限られます。
該当するケースは次のとおりです。
- 取引先の経営者・役員・従業員本人
- 取引先の経営者・役員・従業員の家族
- 取引候補先の関係者(近い将来の取引が見込まれる場合)
取引先の役員に不幸があり、30,000円の香典をお渡しした場合の仕訳例は次のとおりです。
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 接待交際費 30,000円 | 現金 30,000円 | 株式会社○○ 代表取締役 香典代 |
接待交際費の判断に迷うケース
社員と同等の業務を担っている取引先への香典は、税務上は接待交際費として認められない場合があります。
下請企業、業務委託先、フランチャイズ加盟店などは、通常は会社とは別の独立した事業者です。その経営者・従業員等へ事業上の関係に基づいて香典を渡した場合は、一般に接待交際費として処理します。
ただし、契約上は業務委託であっても、実態として会社の指揮命令下で勤務するなど、雇用関係に近い事情がある場合は、香典以外の報酬や福利厚生の取扱いも含めて個別に確認する必要があります。
「下請企業だから給与」「フランチャイズ先だから福利厚生費」と一律に判断することはできない点には留意が必要です。
個人事業主が香典を支払った場合の勘定科目と仕訳
個人事業主やフリーランスが事業に関わる相手へ渡した香典は、接待交際費で経費計上できます。
法人とは異なり、個人事業主の場合は接待交際費の損金算入に上限が設けられていません。ただし、事業との関連性が説明できない香典は経費にできない点に注意が必要です。
事業に関わる相手への香典は接待交際費で計上できる
取引先や仕入先、業務上関わりのある相手の葬儀で渡した香典は、接待交際費で処理できます。
たとえば、主要な取引先の代表者の葬儀に参列して10,000円の香典を渡した場合、事業用の現金から支出した仕訳例は次のとおりです。
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 接待交際費 10,000円 | 現金 10,000円 | ○○商店 代表 香典代 |
個人事業主は法人のような損金算入の上限はありませんが、社会通念上の相場を大きく上回る金額は、税務調査で経費性を否認されやすくなります。
事業主借や事業主貸を使い分けるケース
事業用以外の現金から香典を出した場合は、貸方に「事業主借」を使います。
取引先の葬儀で個人の財布から10,000円の香典を支出した場合の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 接待交際費 10,000円 | 事業主借 10,000円 | ○○商店 代表 香典代 |
反対に、事業用の口座や現金からプライベートな関係の友人や親族への香典を出した場合は、経費計上できないため借方に「事業主貸」を使います。事業とプライベートの線引きを意識して仕訳しましょう。
経費にできない香典のケース
事業との関連性が認められない香典や、会社の支給基準に基づかない個人的な支出は、経費にできません。
経費計上が認められない代表的なケースを整理しておくと、仕訳のミスや税務調査での否認リスクを抑えられます。
役員や従業員が個人として渡した香典
社員が個人の判断で出した香典を、後から会社の経費に振り替えることはできない場合が多いです。
香典が経費として認められるのは、会社が支給主体となって渡したケースに限られます。慶弔見舞金規程など、会社として支給する基準が定められていることが前提となります。
個人事業主が身内や友人に渡した香典
事業と関係のない親族や友人への香典は、プライベートな支出として扱います。
個人事業主の場合、事業上の付き合いがない相手への香典は、家事費として「事業主貸」で処理します。事業に関わる相手かどうかを明確に区別したうえで、帳簿に残しておきましょう。
香典返しや後日の法要費用
香典を渡した側で、相手の香典返しや法要費用を負担することは原則として想定されません。
会社が施主となる社葬の費用は別ですが、後日の四十九日法要や一周忌などにかかる費用は、会社の経費に含めないのが一般的です。香典返しや法要は、香典を受け取った遺族側が執り行います。
香典の相場と経費計上時の注意点
香典は社会通念上相当な金額に収め、消費税の扱いや証拠書類の保管にも気を配りましょう。
ここでは、相場の目安、消費税の課税区分、領収書のない香典をどう証明するか、という3つの実務上の論点を整理します。
役職別の香典額の相場
香典額には、税務上の一律の上限や安全基準はありません。社会通念上相当かどうかは、次の事情を踏まえて判断します。
・故人や遺族と会社との関係
・役職や取引上の重要性
・会社の規模
・地域や業界の慣行
・慶弔見舞金規程の支給基準
・過去の同様の支給例
役員・従業員への香典は、慶弔見舞金規程に続柄・役職等に応じた支給額を定め、継続的に運用するとよいでしょう。取引先への香典も、社内の交際費基準や決裁権限を設定しておくと、支給額のばらつきを抑えられます。
インターネット上の相場表を掲載する場合は、税務上の上限ではなく、あくまで民間調査・慣行上の参考値であることと、出典を明示してください。
香典は消費税の不課税取引でインボイスの対象外
香典は事業の対価ではないため、消費税の不課税取引として処理します。
仕訳時の消費税区分は「不課税」を選択し、課税仕入には含めません。香典は対価性のない支出であるため、インボイス制度(適格請求書等保存方式)における適格請求書の受領も不要であり、仕入税額控除の対象にもなりません。
参照:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁
領収書がないときの代替書類と保存方法
香典は領収書が発行されないため、代わりに支出を裏付ける書類を残しておきましょう。
代替書類として残しておきたいものは、次のとおりです。
- 香典袋のコピーまたは写真
- 会葬御礼状や葬儀の案内状
- 訃報のお知らせ(社内回覧や新聞のお悔やみ欄など)
- 出金伝票(支出日、金額、相手先を記載)
これらに加えて、出納帳や仕訳の摘要欄に「誰の葬儀で」「いくら」「どの立場で」渡したかを残しておくと、税務調査時にも経費性を説明しやすくなります。
香典の仕訳など勘定科目の判定は経理担当者の負担に
香典を経費計上する際、相手が従業員であれば福利厚生費、取引先であれば接待交際費というように、状況に応じた適切な勘定科目の使い分けが必要となります。日々の取引において、こうした勘定科目の判定に悩む経理担当者は少なくありません。
株式会社マネーフォワードが実施した調査で、仕訳作業の工程において最も工数がかかっている作業を尋ねたところ、最も工数がかかっているのは「適切な勘定科目や消費税区分(課税・非課税等)の判定」で、36.8%でした。次いで「銀行明細やクレジットカード明細と帳簿の突合作業」が34.5%、「インボイス制度への対応」が27.2%と続いています。
仕訳作業で最も工数がかかるのは勘定科目等の判定
この結果から、多くの経理担当者にとって、個別の取引内容から正しい勘定科目や税区分を自ら判断する作業が、実務上の大きなボトルネックとなっていることが読み取れます。香典の仕訳を含め、日々の経費精算にかかる負担を削減するためには、あらかじめ社内の仕訳ルールを明確に整備しておくことや、勘定科目を自動で推測して仕訳を行うクラウド会計ソフトを活用することなどが有効な対策となります。
出典:マネーフォワード クラウド、仕訳作業の工程において最も工数がかかっている作業【勘定科目に関する調査データ】(回答者:881名(有効回答:仕訳業務に関与する707名)、集計期間:2026年3月実施)
香典を渡す相手との関係性によって勘定科目を使い分ける
今回は、会社や個人事業主が香典を経費に計上する際の勘定科目と仕訳の書き方を解説しました。事業に関わる相手へ渡した香典は、従業員側であれば福利厚生費、取引先側であれば接待交際費の勘定科目で処理します。個人事業主の場合も、事業関係者への香典であれば接待交際費で計上できます。
社会通念上の相場から大きく外れる金額は経費として認められにくくなるため、相場の目安や領収書がないときの証拠書類の整え方もふまえて、適切に処理しましょう。
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よくある質問
香典は経費にできる?
自社の従業員やその家族、取引先に対して会社として渡す香典については経費に計上でき、福利厚生費や接待交際費として処理します。詳しくはこちらをご覧ください。
香典を福利厚生費で仕訳するポイントは?
従業員やその家族、退職した従業員の香典については福利厚生費として処理し、摘要欄に香典代と記載しておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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