- 更新日 : 2021年6月10日
売上高経常利益率で収益力が決算書からわかる!計算式や業界平均・目安とは?

経営指標にはさまざまなものがあります。が、その会社の概要がある程度把握できて、計算がしやすいものの一つに「売上高経常利益率」があります。なんとなく、その名称から計算方法が想像つきそうですね?この記事では、売上高経常利益率について解説します。
目次
売上高経常利益率とは?
売上高経常利益率とは、収益性を見るための指標の中でも、「売上高に対する利益と費用の割合をあらわしたもの」の一つです。損益計算書には5つの利益が出てきますが、税引前当期純利益を除く4つの利益と売上高の関係を表した指標は次のようになります。
経営指標 | 計算式 | 主な着目点 | 備考 |
---|---|---|---|
売上高総利益率 | 売上総利益÷売上高×100% | 商品・サービスの収益性 | 高いほどよい |
売上高営業利益率 | 営業利益÷売上高×100% | 営業活動の効率 | 高いほどよい |
売上高経常利益率 | 経常利益÷売上高×100% | 営業活動全般の効率 | 高いほどよい |
売上高当期純利益率 | 当期純利益÷売上高×100% | 会社全体の収益力 | 高いほどよい |
売上総利益率は粗利率(あらりりつ)とも呼ばれ、損益計算書に最初に表示される利益と売上高の割合を示しています。
上の表の着眼点にもあるように、下にいくほど商品やサービスから、営業活動、そして会社全体へとより、対象範囲が広くなっているのがわかるかと思います。そして、最終的には売上高当期純利益率において、当期の利益が純資産の増加にどの程度結びついたかを示していると言えます。
これらすべての利益や利益率は利益追求する会社にとって、高いほどよいことはいうまでもありません。
そもそも経常利益とは?
売上高経常利益率を理解するには、「経常利益」が何かを正しく理解することです。

経常利益は、5つの利益のちょうど真ん中にあり、会社の本業で得た収益・費用と会社の本業以外の収益・費用を加えた企業の収益力を示す指標であると言えます。
したがって、経常利益は継続して安定的な利益獲得をめざす企業にとって、企業の経営成績を最も把握しやすい数値です。
経常利益について詳しくは、次の記事を参照ください。
そして、売上高経常利益率とは会社本来の能力を判断するための指標のことを指します。
過去の損益計算表と比較し、売上高経常利益率の推移を見た場合、売上高計上利益率が上がっていれば、2つの要因が考えられます。
- 売上高が伸びたこと
- 原価や販管費の効率化が進んだこと
しかしながら、営業外収益や営業外費用に売上高経常利益率変動の要因がある場合には、一過性のものなのか、将来にわたって影響があるかなどを分析します。
売上高経常利益率の計算は損益計算書があれば可能であるため、同業他社などとの比較も容易です。
高い水準を保った営業収益に、資産の運用などで得られる営業外収益が加わるのが、理想的な経営状態とされます。反対に営業利益が非常に低く、経常利益において営業外収益の占める割合が大きい場合には注意が必要になります。
売上高経常利益率の計算方法
売上高経常利益率の計算は冒頭でもご紹介しましたように、
の式で計算することができます。
残念ながら損失の場合にはマイナス値となり、利益の場合との正しい比較はできません。
会社全体の収益力を測る指標として一般的によく利用される指標です。
売上高経常利益率の業界平均・目安
ここでは中小企業の売上高経常利益率について、業界別にランキング形式に調べてみました。
業界によって差があることがわかります。
さらに、この中で5位の製造業に着目して、製造業界における売上高経常利益率をクローズアップした上位10位までのランキングが次の表です。
【参考】中小企業庁 | 中小企業実態基本調査
この表にはでてきませんが、食料品製造業などの売上経常利益率は2%程度となり、同じ業界でも大きな差が見られます。したがって、売上高経常利益率は、会社の業種・業態などにより目安となる指標が大きく異なることに注意しましょう。
売上高経常利益率を用いた財務分析の活用方法
売上高経常利益率は、損益計算書のデータがあれば比較的容易に計算できるため、次のような財務分析に利用することをおすすめします。
当期分析
当期の損益計算書を中心に分析します。
売上高経常利益率を上げるには、売上高を伸ばすか費用を減少させるかですが、どちらに着目すべきか、売上高や各種費用の内訳を分析します。また、売上高総利益率など他の利益率についても求め、どの利益率について問題があるのかを明らかにします。
予実比較
当期の損益計画と比較します。予算と実績の比較は部門ごとや細目ごとにも分析しますが、売上経常利益率での予算比較で生じた差異は、次回の予算策定の大きなヒントにもなります。
期間比較
自社の昨年度の業績と比較します。ただ、昨年度との差異を求めるのではなく、それぞれの値を比較して変動した部分を分解します。さらに、年度単位だけでなく、半期、四半期などでも分析を行えば、各期間における傾向が掴めてきます。
業界比較
自社と業界平均と比較します。視野を広げてで業界平均と比較することで、自社を客観視できます。
売上高経常利益率を改善するには?
売上高経常利益率は経営指標の一つであるので、冒頭にも挙げましたように各種の利益率と連動します。
例えば、売上高経常利益率が一時的に落ち込んでしまう期間があったとしても、計画時から予想されている場合や、いつ回復するかの見当がつくような場合は、大きな改革は必要ないと言えます。
ただし、売上高経常利益率は営業外損益を含んでいるため、ある期間における全社で1つの数値と言えます。売上高経常利益率が例え前期と同じであったとしても、他の利益率は大きく変動していることがありますので、分析時には売上高経常利益率だけに頼らないことも忘れてはなりません。
各種の売上高利益率を上げるためには、費用を可能な限り低く抑え、売上を可能な限り大きくするということが大前提です。また、そのために受注残の管理、不良在庫の整理、固定資産の管理強化等々にどのように結びつけるかは、経理部門だけでなく全社的な課題となってきます。
全社が一つになって地道な改善を繰り返し、そのたびに有効な経営指標をフィードバックすることで最終的に売上高経常利益率を向上させることにつながります。
売上高経常利益率は収益力を示す重要な指標
売上高経常利益率は、英語で簡単に「Rate of Sales:ROS」と呼ばれたり、「Ordinary rate of return on sales」、「Ratio of ordinary profit to sales」などと訳されたりするようです。
会社の売上高に貢献した費用で得られた利益が売上高のどれぐらいを占めているかというのは、経営者も非常に気になるところです。経理担当として、会社全体の収益力を示す売上高経常利益率を活用したわかりやすい資料を作成するのもいいかもしれません。
売上高経常利益率とともに理解しておきたい売上高営業利益率については、次の記事を参照下さい。
よくある質問
売上高経常利益率とは?
収益性を見るための指標の中でも、「売上高に対する利益と費用の割合をあらわしたもの」の一つです。詳しくはこちらをご覧ください。
売上高経常利益率の業界平均・目安は?
中小企業の売上高経常利益率について、業界別にランキング形式で調べてみました。詳しくはこちらをご覧ください。
売上高経常利益率を用いた財務分析の活用方法は?
当期分析、予実比較、期間比較、業界比較などの財務分析に利用することをおすすめします。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。