• 作成日 : 2023年4月7日

定額法と定率法による減価償却費の計算方法を解説

定額法と定率法による減価償却費の計算方法を解説

減価償却費は、償却期間に応じて毎期の償却額を決めます。この償却額を決める方法には定額法と定率法などの償却方法があり、状況に応じて正しい方法で計算しなくてはいけません。減価償却費の計算方法について具体例を挙げてわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。

定額法と定率法がある減価償却計算

減価償却費は、耐用年数と取得価額を用いて計算します。減価償却の計算に必要となる用語をいくつか紹介します。

<減価償却費>

減価償却することによって計上した費用のことで、固定資産の取得価額を耐用年数で按分し、その期の費用として計上するため、帳簿へ記載するときに用いる勘定科目です。

<法定耐用年数>

法定耐用年数とは、資産によって経済的な利益がもたらされると考えられる年数のことです。資産ごとに決まっており、国税庁のホームページで調べられます。

<取得価額>

資産の取得にかかった費用のことです。その資産そのものの価格だけでなく、購入手数料や運送保険料、関税なども含めた合計額をさします。

そもそも減価償却とは

減価償却とは、年月が経つことで価値が減っていく固定資産の価値を帳簿上に反映することを指します。例えば、建物は年数が経てば経つほど劣化するだけでなく、機能も低下し、価値は下がることが一般的です。減価償却を行うことで、本来の価値から下がったことを帳簿上に反映することが可能になります。

また、建物などの固定資産以外にも、ソフトウェアや特許権などの無形固定資産も減価償却の対象となります。

減価償却の主な計算方法は2種類

減価償却費を計算する方法としては、定額法、定率法、生産高比例法、級数法の4つの償却方法があります。しかし、実務で用いるのは主に定額法か定率法の2つです。

そのため、定額法と定率法の2つの特徴と計算方法を押さえておくと、減価償却を算定できるようになります。

定額法と定率法それぞれの特徴や計算方法

定額法とは、毎年同額の減価償却費を計上する計算方法です。一方、定率法とは減価償却費が固定資産を取得した初めの年が一番多く、時が経過していくにつれて減少していく計算方法です。定額法と定率法の利用するケース、特徴、計算方法をご紹介します。

定額法定率法
利用するケース
  • 個人事業主
  • 建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアは個人事業主・法人を問わず常に定額法
  • 法人(建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアを除く)
  • 定率法を利用するための届出書を税務署へ提出した個人事業主
  • 機械設備、車両運搬具、工具器具備品については法人も届け出れば定額法で計算することが可能
特徴毎年同額を償却する
  • 当初の償却額は定額法よりも多い
  • 償却額は原則として毎年減る
  • 計算上の償却額が償却保証額を下回るときは毎年定額を償却する
計算方法取得価額×定額法の償却率
  • 未償却残高×定率法の償却率
  • 償却保証額を下回るときは改定取得価額×改定償却率

大まかに分けると、定額法は個人事業主が利用する計算方法、定率法は法人が利用する計算方法です。ただし、個人事業主であっても定率法を利用して減価償却費を計算したい場合は、あらかじめ税務署に「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出しておくことで定率法での計算が可能になります。

しかし、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアに関しては、常に定額法で計算することが義務付けられています。法人や、税務署に定率法の利用を届け出た個人事業主も、一様に建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアについては定額法で計算しなくてはいけません。

また、機械設備、車両運搬具、工具器具備品については、個人事業主は定額法、法人は定率法で計算しますが、あらかじめ届出書を提出しておくことで法人も定額法での計算が可能になります。

定額法と定率法のどちらで計算するか決めかねるときは、それぞれの計算方法の特徴を知っておくことが役立ちます。定率法では当初の償却額は定額法よりも多くなるため、開業したばかりのタイミングでは赤字が増えすぎてしまうかもしれません。毎年コンスタントに減価償却する定額法のほうが向いていることはあります。

なお、定額法では取得価額と償却率をかけるだけで一律に減価償却費を算出できますが、定率法では未償却残高をベースに計算するため、1年ごとに別個に計算しなくてはいけません。また、後述しますが、償却保証額を下回ると計算方法が変わる点にも注意が必要です。

減価償却費の具体的な計算例

減価償却費は、定額法・定率法のいずれも「減価償却資産の償却率」を参考にして求めます。ここでは、ある不動産事業者が接客用のソファーを新品で30万円で購入した場合について、定額法・定率法の計算例を確認しておきましょう。

参考:国税庁「減価償却資産の償却率等表」

定額法による計算

不動産事業者が個人事業主、あるいは、工具器具備品について定額法で計算することを税務署に届け出ている法人の場合は、接客用ソファーは定額法で減価償却できます。

接客用ソファーを新品として購入した場合の耐用年数は5年になるため、毎年の償却額は以下の計算式より6万円となります。

取得価額×定額法の償却率=30万円×0.20=6万円

定率法による計算

定率法で計算することを届け出た個人事業主、あるいは計算方法に関して特に届出を行っていない法人は、接客用ソファーは定率法で減価償却します。

新品の接客用ソファーの耐用年数は5年なので、以下のように毎年の償却額を求めます。

  • 1年目の償却額:未償却残高×定率法の償却率=30万円×0.40=12万円
  • 2年目の償却額:(30万円-12万円)×0.40=72,000円
  • 3年目の償却額:(30万円-12万円-7.2万円)×0.4=43,200円

なお、定率法では、償却保証額を下回ると常に改定取得価額×改定償却率で減価償却費を求めることになります。償却保証額は取得価額×償却保証率で求めるので、この場合であれば30万円×0.108=32,400円となります。

3年目までは32,400円を上回るため、通常の計算方法で求めますが、32,400円を下回る4年目以降は改定取得価額×改定償却率である32,400円ずつ償却(5年目は1円残す)することが必要です。

  • 4年目の償却額:(30万円-12万円-7.2万円-4.32万円)×0.5=32,400円
  • 5年目の償却額:32,400円-1円=32,399円

※参考:5年のときの償却率:0.40、改定償却率:0.50、保証率:0.108

減価償却費の計算時に注意すべきポイント

有形固定資産・無形固定資産に関わらず、定額法・定率法が最初から決められているものがあるため注意は必要です。また、年度途中で購入した場合は、月割計算が必要になります。

中古の場合は以下の計算式で計算しましょう。

【法定耐用年数の一部を経過している場合】

使用可能年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)

【法定耐用年数の全部を経過している場合】

使用可能年数=法定耐用年数 × 20%

耐用年数を超えて資産を使用するときは、残存価額を0円ではなく1円にしておくことを忘れないようにしましょう。

減価償却費を正しく計算しよう

減価償却費の計算には、細かなルールが多数あります。しかし、適正な期間損益計算を行うためには、正しい減価償却費を計算することが必要です。ルールを覚え、正しく計算しましょう。

よくある質問

減価償却の計算における定額法とは何ですか?

毎年同額ずつ減価償却費を計上する計算方法のことです。個人事業主は基本的に定額法で計算しますが、法人も建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアに関しては定額法で計算します。詳しくはこちらをご覧ください。

減価償却の計算における定率法とは何ですか?

減価償却費が毎年逓減する計算方法のことです。ただし、法人であっても建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアについては定額法で計算します。詳しくはこちらをご覧ください。


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