• 更新日 : 2024年8月8日

当座預金と普通預金の違いは?メリット・デメリットまで解説!

金融機関に金銭を預ける預貯金は、個人だけでなく法人も広く利用しているサービスです。事業を営む法人や個人事業主は、普通預金や定期預金以外に当座預金も利用できます。事業者向けの当座預金とは、どのような預金なのでしょうか。この記事では、当座預金の概要と普通預金との違いなどについて解説します。

当座預金とは?

当座預金とは、事業用の決済口座のことです。入出金には所定の手続きが必要で、普通預金のようにATMで自由に入出金ができません。銀行の当座預金口座に預け入れた後、支払いは小切手や手形を振り出す形で行います。以下の図は、銀行に預け入れた金銭が払い出されるまでの流れです。
当座預金とは?

当座預金には、他にも普通預金とは違ったさまざまな特徴があります。具体的な特徴を見ていきましょう。

当座預金と普通預金の違いは?

ここからは、よく使われる普通預金と当座預金との違いを見ていきます。

利息がつくかどうか

一般的な普通預金は預入金額と預入期間に応じて、金融機関から決められた期日に預金利息が支払われます。利率は変動し、市場金利を参考に設定されますが、金融機関ごとに利率は異なります。

一方で、当座預金には利息がつきません。臨時金利調整法(金利の最高限度額などについて定めた法律)により、利息をつけることが禁止されているためです。

元本(預入額)の保証はどうか

金融機関が破綻したときに備えて、預金等を保護する預金保護制度があります。預金保護制度に加入する金融機関(国内の金融機関は原則として加入しています)に預金等をすることで自動的に保険契約が成立し、保護が開始されます。

預金等の種類によっては預金保護制度の対象にならないものもありますが、普通預金と当座預金はどちらも保護の対象です。ただし、保護の対象範囲が異なります。

普通預金を含む一般預金等の保護の範囲は、合計1,000万円までの元本と破綻日までの利息です。一般預金等の合計額なので、普通預金だけでなく、定期預金や定期積金などを合算した額になります。

経営破綻した金融機関に普通預金900万円、定期預金500万円を預け入れていた場合は、1,000万円までしか保護の対象にならないのです。ただし、これはあくまで保護される額であり、金融機関が破綻しても財産が残っていれば、状況に応じて保護の範囲を超過した額も支払われる可能性があります。

一方で当座預金は決済用預金に分類されるため、預け入れている額にかかわらず全額が保護の対象です。

ATMを用いて入出金ができるか

金融機関内だけでなく、独立したATM(現金自動預け払い機)やコンビニエンスストアに設置されたATMで入出金ができる金融機関も少なくありません。普通預金であれば、ほとんどの金融機関がATMに対応しているため、ATMを使って自由にお金を出し入れすることができます。

一方、当座預金への預け入れと払い戻しには制限があります。原則的に、預け入れも払い戻しも取引店の窓口で行います。払い出しに関しては金銭ではなく、小切手や手形、口座振替などで行われます。ただし一部の金融機関では、当座預金であってもATMで預け入れや払い出しができるところもあります。

現金引き出し限度額があるか

普通預金は、ATMでキャッシュカードや通帳を使って取引ができます。しかし、ATMでの振込や現金の引き出しには限度額が定められています。金融機関ごとに限度額は異なりますが、ATMだと1日に100万円までしか取引ができないところもあります。

ATMの限度額を超える取引は、窓口で行うことになります。窓口であれば基本的に限度額はありませんが、大口の取引や多額の現金引き出しは事前の申し込みなどが必要です。窓口に出向いても、その日のうちに引き出せないこともあります。

一方、当座預金は流動性の高い決済用口座なので、現金引き出しについて限度額や制限はありません。

当座借越があるか

当座預金を開設していて当座借越契約を締結している場合は、当座借越を利用できます。当座借越とは、当座預金の残高が足りない場合でも、金融機関と契約した金額までであればマイナス分を金融機関が立て替えてくれる契約のことです。当座預金の残高がないときに手形の取り立てなどが行われると不渡りになりますが、当座借越を結んでいれば残高がマイナスになっても、一定額までは通常どおり手形や小切手の払い出しが行われます。

一方、普通預金には当座借越のような契約はありません。普通預金にも一定額までなら銀行が立て替えてくれる当座借越に似た契約はありますが、通常は定期預金などに預け入れている額を担保として提供しなくてはなりません。

当座借越については、以下の会計用語集で詳しく解説しています。

口座開設時の審査があるか

個人であれば、必要事項を記載して本人確認書類を提出すれば、普通口座を開設できます。法人は個人と比べると提出書類は多いものの、基本的に審査などは行われません。

一方、当座預金の開設には審査があります。会社としての実態はあるか、どのような事業を行っているか、代表者を確認できるかなどが審査されます。銀行が取引の責任の一部を負うため、誰にでも当座預金での取引を認めることはできないのです。当座預金の開設では、信用力が問われます。当座預金は個人事業主でも開設できますが、金融機関によっては審査の状況次第で口座を開設できないこともあります。

通帳の有無

普通預金は、基本的に通帳が発行されます。ATMなどで通帳の記帳を行うことで、取引の日付や金額、取引内容を確認できます。

一方で当座預金は、基本的に通帳は発行されません。代わりに、金融機関から当座預金取引照合表が発行されます。通帳の代わりに、金融機関が当座預金を開設している企業に送付します。通帳が発行されないのは、当座預金での取引量は膨大になることが多いからです。

しかし近年は、普通預金も当座預金も紙ベースの通帳や当座預金取引照合表をなくす金融機関が増えました。紙ベースの通帳を発行しない金融機関では、Web上で入出金明細表や帳票を確認できます。

当座預金のメリット

当座預金を保有することのメリットを3つ紹介します。

小切手や手形を振り出せる

当座預金を開設していれば、現金の代わりに小切手や手形を振り出せます。小切手は、あらかじめ当座預金の口座に必要な金額を入金しておくことで、小切手を受け取った個人や法人が銀行で額面を受け取れる仕組みです。

手形は、記載の支払期日までに振出人(手形を振り出した人)が額面金額を入金し、受取人が支払期日到来後に銀行で受け取る仕組みです。お金の直接的な受け渡しがないため、高額な取引などに向いています。

元本保証がある

金融危機に備えて、預金保護制度が設けられています。金融機関が破綻した場合であっても、預金の一定額が保護される仕組みです。

預金の分類によっては保護範囲に限度が設けられることもありますが、決済用である当座預金は全額が保護の対象となります。万が一の事態が起きても元本が保証されることも当座預金のメリットです。

当座借越契約で一時的に融資を受けられる

当座預金では、当座借越契約を結ぶことで、現金が不足した場合であっても契約の上限に達するまでは利用できます。当座借越契約により、不足分を自動的に融資してもらえるためです。決済用の当座預金は資金が不足することも考えられるため、当座借越契約があれば、不足があっても取引を滞りなく済ませることができます。

当座預金のデメリット

当座預金を保有することのデメリットを3つ取り上げます。

口座開設時に審査がある

当座預金を開設するにあたって注意したいのは、開設できない可能性もあることです。金融機関によって求められる書類や審査は異なりますが、当座預金を開設するには、金融機関の審査に通過しなければなりません。口座開設にあたって、取引状況に関する書類などの提出や面談が必要になることもあります。

利息が付かない

当座預金は利息がつきません。法律により利息の付与が禁じられているためです。そのため、いくら当座預金に資金があっても利息による恩恵は受けられません。

通帳がない

当座預金は、基本的に通帳が発行されません。そのため、取引履歴がわかる当座勘定照合表を金融機関から発行してもらう必要があります。通帳をよく利用している場合は、当座預金との手続きの違いにデメリットを感じる可能性もあるでしょう。なお、一部はインターネットバンキングにも対応しています。

普通預金のメリット

普通預金を保有することのメリットを3つ紹介します。

当座預金と比べて開設しやすい

普通銀行の開設にも審査はありますが、当座預金よりも開設しやすいとされています。当座預金はビジネス用の口座であり、法人の実態や資本金の額、事業内容まで、細かく審査が行われる可能性があるためです。当座預金は審査に時間がかかることもあるため、普通預金の方が手軽に開設しやすい面でもメリットがあります。

お金を出し入れしやすい

入出金の自由度の高さも普通預金のメリットです。普通預金であれば、銀行の窓口まで行かなくても最寄りのATMやCD(現金自動支払機)で入出金ができます。店舗内だけでなく、コンビニエンスストアのATMなどにも対応しているケースが多いため、必要に応じてお金の出し入れができます。なお、当座預金は、普通預金のようにATMでの入出金はできません。

利息を受け取れる

普通預金は、当座預金とは異なり利息が付きます。そのため、預金残高が多いほど利息の恩恵を受けられるでしょう。国内では、マイナス金利政策により長らく預金利息がほとんど付かない状態が続いていました。しかし、マイナス金利の解除が行われて以降、金融機関の一部では預金利息の引き上げも行われ始めています。

普通預金のデメリット

普通預金のデメリットを2つ取り上げます。

元本保証に限度がある

普通預金口座に預け入れている現金も預金保護制度の対象になります。しかし、当座預金とは異なり全額は保証されない可能性があることに注意しましょう。

普通預金の場合、元本保証を受けられるのは1,000万円までです。定期預金や定期積金などの利息が付く預金口座を同一の金融機関で保有している場合は、普通預金と合算して1,000万円までの元本と破綻日までの利息が対象となります。

元本1,000万円を超える金額は、破綻した金融機関の財政状況に応じて支払われるかどうかが決まるため、超過した分が保証されない可能性もあります。

ATMは取引限度額がある

普通預金では、ATMの利用にあたり、1日の取引額や1回の取引額に限度額が定められています。金融機関にもよるものの、50~100万円程度がおおよその目安です。生体認証などを利用して上限額を上げられる場合もあります。しかし、高額なやり取りにはATMでは対応できない可能性があります。

当座預金と普通預金、どちらが良い?

当座預金と普通預金、どちらが良いかは利用状況によって異なります。ここでは、それぞれの口座の特徴から、それぞれに向いている人を紹介します。

当座預金が合っている人

当座預金の利用に向いているのは、取引先の多くが法人である場合です。当座預金は小切手や約束手形を振り出せることから、高額な取引がある事業者や企業間の取引の頻度が高い事業者に向いています。また、当座預金に預け入れている現金は全額が預金保護の対象となることから、金融機関が破綻した場合にも備えられます。

普通預金が合っている人

普通預金の利用が向いているのは、ATMを利用して取引をしたい場合です。少額の払込みを1日に何度も行う場合、必要に応じて現金の入出金を行いたい場合は便利に利用できる普通預金の利用が向いています。

当座預金と普通預金を上手に使い分けよう!

金融機関で開設できる預金口座の代表は普通預金ですが、企業や事業者向けに当座預金もあります。普通預金と当座預金は特徴が異なるため、必要に応じて開設し、使い分けるとよいでしょう。

取引額や取引数が少ない個人事業主や小規模企業は、普通預金だけでも十分対応できます。当座預金の開設時には審査もあるので、必要性が高くない場合は無理して開設する必要はないでしょう。


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