- 更新日 : 2024年8月8日
手形とは?小切手との違いや種類、取引の流れを解説
手形とは、一定期間後に現金化できる証書のことです。現金化できる証書としては小切手もありますが、小切手はすぐに現金化できる点が異なります。手形の種類や取引の流れ、メリット・デメリット、使用する際の注意点についてまとめました。また、政府が実施している手形廃止の動きについても紹介します。
目次
手形とは?小切手との違い
手形とは、一定期間後に現金化できる証書のことです。その場では現金化できませんが、手形に記載されている支払日以降に金融機関に持っていくと、額面金額を受け取れます。手形には、金額や日付、支払日などを記載します。
手形は手元に現金がないときだけでなく、銀行口座などにも支払える金額がないときでも利用することが可能です。別の取引先などから入金される日がわかっているときは、その日以降を支払日に設定し、手形を渡した相手への支払いに活用します。
一方、小切手も、現金化できる証書のことです。金額、振出日、振出人、銀行届出印を記し、銀行などの金融機関で現金化できます。
小切手は、受け取ったその日から現金化することが可能です。支払日が決まっている手形とは異なり、受け取った側は待たされることなく現金を受け取れます。
手形の種類とそれぞれの取引の流れ
手形にはいくつか種類があります。種類ごとに特徴だけでなく取引の流れも異なるため、注意が必要です。代表的な手形の種類を紹介します。
支払手形
支払手形とは、支払う側の立場から見た手形のことです。同じ手形であっても、受け取り側から見れば受取手形と呼びます。支払手形は、支払う側(振出人)と受け取る側(受取人)の2者の関係で成り立ちます。取引の流れは以下をご覧ください。
- 【振出人】受取人に必要事項を記載した手形を渡す
- 【受取人】支払期日以降に金融機関で手形と代金を引き換える
- 【振出人の金融機関】代金を振出人口座から引き落とす
振出人は手形を渡すだけ、受取人は手形を金融機関に渡すだけで、代金の受け渡しが可能です。より詳しくは、次の記事をご覧ください。
約束手形
支払手形には、約束手形と為替手形の2つの種類があります。約束手形は、将来の一定期日に代金を支払うことを約束した有価証券です。振出人が受取人に振り出すことで代金決済が完了します。
- 【振出人】受取人に必要事項を記載した手形を渡す
- 【受取人】支払期日以降に手形を金融機関に持ち込み、取立を依頼する
- 【受取人の金融機関】【振出人の金融機関】手形を交換する
- 【振出人の金融機関】代金を振出人口座から引き落とす
- 【振出人の金融機関】受取人の金融機関に送金する
- 【受取人の金融機関】受取人に支払う
一般的な支払手形と比べると、手続きの工程が多く、複雑にみえます。しかし、実際に振出人・受取人が実施することは、通常の支払手形と変わりがなく、手間はかからない取引方法です。より詳しくは、次の記事をご覧ください。
為替手形
為替手形とは、三者間の取引における支払方法に用いられる手形のことです。振出人と受取人に加え、手形の券面金額を指定の日付に支払う支払人が関わり、支払いを実現します。
- 【振出人】受取人に必要事項を記載した手形を渡す
- 【支払人】手形代金支払の引受けをし、支払人の金融機関に入金する
- 【受取人】支払期日以降に支払人に手形を渡し、取立を依頼する
- 【支払人の金融機関】受取人に支払う
三者が関わりますが、手続きは複雑ではありません。ただし、受取人は支払人に手形を渡すという行為だけでなく、金融機関に出向いて代金を受け取るという手間がかかります。より詳しくは、次の記事をご覧ください。
手形取引のメリット
手形取引のメリットを振出人・受取人に分けて説明します。
【振出人】現金がなくても支払いができる
手元に現金がないときだけでなく、口座に資金がないときでも、手形取引を利用すれば支払いが可能です。キャッシュフローを調整したいときにも活用できます。
【振出人】社会的信用を示せる
手形取引を実施できるのは、金融機関の審査を通過した場合のみです。そのため、手形取引を利用することで、金融機関の審査に通過した社会的信用の高い事業者であることを示せます。
手形取引のデメリット
手形取引には、デメリットもあります。振出人と受取人に分けて説明します。
【振出人】印紙税がかかる
手形を振り出すときに、額面金額に応じた収入印紙を貼付しなくてはいけません。現金で支払えば印紙税はかからないことと比べると、手形はコストがかかる支払方法です。
【振出人】手形帳代がかかる
手形取引をするときは、金融機関から手形帳を受け取ります。手形帳は有料です。金融機関によっても異なるため、確認しておきましょう。
【受取人】不渡りになることもある
支払日までに振出人や支払人の口座に適切な金額が入金されていないときは、手形を金融機関に持っていっても代金を受け取れません。なお、このような状態を「不渡り」といいます。
【受取人】代金受取のタイミングが遅くなる
手形を受け取ったときは、代金は手形に記載されている支払日まで受け取れません。そのため、現金や振込により代金を受け取る場合と比べると、受け取るタイミングが遅くなってしまいます。場合によっては、資金繰りに影響を及ぼすこともあるかもしれません。
【受取人】代金受取の手間がかかる
現金や振込で受け取るときであれば、特に手間はかかりません。しかし、手形が振り出されたときは、指定の金融機関に出向くなどの手間がかかってしまいます。
手形取引の注意点
手形取引は、以下のポイントに注意が必要です。
- 金額改ざん対策を実施する
- 不渡りを出すと会社の信用が著しく低下する
それぞれの注意点を説明します。
金額改ざん対策を実施する
紙面に記載された金額が根拠となるため、改ざんされるとその金額を支払う義務が発生します。電子手形なども検討し、改ざんされにくいように対策を実施することが必要です。
不渡りを出すと会社の信用が著しく低下する
振出人は、手形に記載した支払日までに口座に入金することが大切です。不渡りを出すと、取引先からだけでなく金融機関からも信用を失くすことになります。
手形取引は廃止になる?
政府主導で、2026年を目処に手形取引を廃止しようとする動きがあります。
手形取引は、現金が手元に入るまでの期間が長引くことから、受取人の負担が大きい支払方法です。受取人の負担を軽減するためにも、現金か振込、難しいときは電子手形(電子記録債権)で支払うことがすすめられています。
支払方法を見直そう
手形取引は、受取人の負担が大きく、受取人の資金繰りが悪化するリスクもはらんでいます。
また、振出人にとっても印紙税の負担が発生するため、負担に感じることもあるかもしれません。取引相手との良好な関係を築くためにも、一度、支払方法を見直してみましょう。
よくある質問
手形とは?
一定期間後に現金化できる証書のこと。振り出す側から見れば支払手形、受け取る側から見れば受取手形となります。直接支払いを行う約束手形と、第三者を支払人とする為替手形があります。詳しくはこちらをご覧ください。
手形取引は廃止になる?
政府主導で、2026年を目処に手形取引をなくす動きがあります。手数料が高く中小企業の資金繰りを圧迫していることなども、廃止の流れにつながっています。電子手形などの方法も検討しておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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