• 更新日 : 2020年9月17日

10%増税に備えよう!消費税転嫁対策特別措置法まとめ

消費税が5%から8%に上がってから、間もなく1年が経過しようとしています。さらに、平成31年10月には10%に引き上げられる予定です。今回は、増税に備えて特に関連性の高い「消費税転嫁対策特別措置法(通称:消費税転嫁法)」に関する知識を改めて復習しておきましょう。

消費税転嫁対策特別措置法とは?

「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」を消費税転嫁対策特別措置法としています。

消費税転嫁対策特別措置法ではさまざまな禁止事項や緩和項目がありますが、当記事では「消費税の転嫁拒否等の行為の禁止」に関して重点的に解説していきます。

消費税の転嫁拒否等の行為の禁止 とは?

消費税の転嫁拒否行為をわかりやすくするために、転嫁を「上乗せ」と言い換えてみます。「消費税の上乗せ拒否行為」とするとイメージしやすくなったのではないでしょうか。つまり、消費税の増税分を支払わない行為のことを指します。

具体的には、あなたの会社に納品・納入している業者が仕入価格を108円から110円に値上げしたいと思っているにも関わらず、あなたの会社が、「いままでどおりの108円じゃないと仕入れない」と減額を要求したり、「消費税額を加えた総額表示の見積書でないと受領できない」と税抜き価格での交渉を拒否したりするといった、増額の上乗せを拒否する行為、またはその報復行為が禁止になりました。

どういった事業者が対象となるのか

規制対象となる特定事業者は、以下の2つがあります。

・大規模小売事業者
・大規模小売事業者以外

大規模小売事業者とは、「一般消費者が日常使用品の小売業を行なうものであること」という小売業要件と、前年度の小売販売売上が100億円以上という規模案件等を満たす事業者です。

大規模小売事業者以外の事業者として、継続して商品や役務の供給を受ける事業者が該当します。個人事業主や地方公共団体、独立行政法人であったとしても、事業を行なって継続的に商品を仕入れたりサービスを受けているのであれば、特定事業者に該当します。

特定事業者に対し商品を納品したりサービスを提供する事業者を特定供給事業者といいます。ここでは、以下のように設定し、拒否する側がどのような行為をしたときに禁止とされるのかを解説します。

・特定事業者:消費税増税分を拒否する側(加害者)
・特定供給事業者:消費税増税分を拒否される側(被害者)

もしあなたが拒否される側の立場であれば、これらの行為をされたら消費税転嫁対策特別措置法違反になるのだとお読み替えください。

禁止されることは4パターン

禁止事項

これら4つの行為が禁止されています。実際にどのような行為が禁止類型に該当するのか詳しくみていきましょう。

1.減額、買いたたき

事業者間で取引されるものは、物品以外にも役務(えきむ)やサービスの提供が考えられます。たとえば清掃業務やリース・レンタル業務、アウトソーシング業務などが挙げられます。仕入に関する物品でなくても、役務やサービスの対価について消費税分を据え置いて10%にすべき価格を8%のままで取引することは禁止されます。

また消費税が10%に引き上げられるのは、平成31年10月1日からの予定となっていますが、10%を見越した取引が発生することが考えられることから、経過措置として平成31年4月1日から転嫁措置法の対象となります。

たとえば、平成31年10月以降に納品される発注を平成31年5月に行なった場合、消費税率を10%に上げずに8%のままの価格で対応すれば、買いたたきに該当することになります。他にも、1kg108円の商品を増税に伴い0.7kgに容量を変更し、これまで通りの108円で販売しようと仕入れ先に商品仕様の変更を依頼した場合に、仕入業者の製造ラインを変更などによってコストが増えてしまうような時には、買いたたきとなってしまいます。

減額に該当する事例として、事後的に減じた金額で支払う行為が挙げられます。既に取り決めた価格があるにも関わらず増税分を減じた価格で支払う行為そのものが禁止されます。減額した分は消費税増税分だと暗に意図していることになると判断されるためです。

他にも、価格交渉の際に消費税率8%の価格に増税分を上乗せした価格よりも低い価格を定める場合は、暗に消費税増税分の引き下げであると明示しなくても、合理的な理由がない限り買いたたきと判断されてしまいます。

また、

・単価はそのままで仕入れ量を増やすこと
・今後の取引の継続を条件に暗に増税前の価格で同意させること

などは、合理的な理由とはなりません。

ではどのような場合が合理的な理由に該当するのかというと、

・仕入先にもコスト削減が生じていると客観的に判断できること
・コスト削減分だけ値下げしていること
・仕入先などの業者が納得していること

が必要となります。

仕入先から積極的に「いつもお世話になっているので、8%の価格のままでいいですよ!」と提案される分には問題ないということになります。つまり、あなたの会社からの要求要望によって仕入れ先に負担が生じる場合、買いたたきと判断されてしまうことになるのです。

2.購入強制または役務の利用強制、不当な利益提供強制

購入強制の事例として、不良在庫をすべて買い取ることを条件に10%の増税価格に応じることなどをいいます。また、「10%の価格にしたいなら、値札の貼り付け作業を全部お願いします」と負担させることは、不当な利益提供強制となります。

しかし仕入れ先が「10%で取引してくれるならお手伝いしますよ」と自ら作業することは、利益提供強制行為とはなりません。

3.税抜き価格での交渉拒否

たとえ消費税が導入された当初から税込価格で仕入先と取引していたとしても、今回の転嫁対策特別措置法が導入されたことにより、税抜き価格での交渉を拒むことは禁止されることになりました。それまで税込価格で取引していたとしても、取引先が本体価格や税抜き価格で交渉を希望するのであれば、応じる必要があります。

4.報復行為

仕入先から公正取引委員会に通報されたからといって、その仕入先との契約を打ち切ったりするなどの報復行為は禁止されています。

違反した場合の罰則

Photo By Connor Tarter

Photo By Connor Tarter

違反した場合に与えられる特定の罰則等はありません。しかし違反行為があると認められた場合には、指導・助言、勧告・公表といった取り締まりが行われます。公正取引委員会によって公表されれば、業界内だけでなく誰でも閲覧できる状態で公開され、企業イメージを大幅に損なうことが考えられます。

また勧告に従わず、独占禁止法に違反する行為ともなれば、独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令が下されることもあります。

違反に関する相談窓口の紹介

相談窓口として、公正取引委員会、中小企業庁、商工会議所や弁護士などが挙げられます。

[公正取引委員会]
公正取引委員会事務総局 取引部 取引企画課 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為及び転嫁を阻害する表示に関する相談・違反情報の受付)
Tel 03(3581)3379

北海道事務所 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為及び転嫁を阻害する表示に関する相談・違反情報の受付)
Tel 011(271)8481

東北事務所 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為及び転嫁を阻害する表示に関する相談・違反情報の受付)
Tel 022(217)4260

中部事務所 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為に関する相談・違反情報の受付)
Tel 052(961)9493

近畿中国四国事務所 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為に関する相談・違反情報の受付)
Tel 06(6941)2206

近畿中国四国事務所中国支所 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為に関する相談・違反情報の受付)
Tel 082(228)1520

近畿中国四国事務所四国支所 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為に関する相談・違反情報の受付)
Tel 087(812)5760

九州事務所 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為に関する相談・違反情報の受付)
Tel 092(437)2756

内閣府 沖縄総合事務局 総務部 公正取引室 消費税転嫁対策調査室
(転嫁拒否等の行為及び転嫁を阻害する表示に関する相談・違反情報の受付)
Tel 098(866)0034

[中小企業庁]
中小企業取引ホットライン
Tel 03(3501)7061

[日本商工会議所]
消費税価格転嫁対策支援

[弁護士]
下請け駆け込み寺
Tel 0120(418)618

まとめ

消費税転嫁対策特別措置法は、平成31年3月31日まで続けられます。いままで税込価格で取引していたにも関わらず、消費税転嫁対策特別措置法によって違反行為となってしまったり、値下げ交渉も消費税増税分とは関係なく行われたのであれば当然明示しないことになりますが、買いたたきだと判断されてしまうなど、無自覚のまま違反行為を行なってしまうことが考えられます。

前回消費税が5%から8%に引きあがったとき同様に、10%に引きあがるタイミングでも引き続き消費税転嫁対策特別措置法は適用されるため、十分な注意と配慮が必要です。

(2015年2月2日:消費税増税の時期について日付を訂正させていただきました。)
(2018年3月20日:消費税増税の時期について日付を訂正させていただきました。)


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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