• 作成日 : 2024年10月10日

決算説明会の流れは?開催時期や方法、準備内容も解説

決算説明会とは、企業が投資家やアナリストに財務状況などを詳細に説明する機会であり、株主総会や決算発表とは異なります。開催に法的義務はないものの、企業にとって重要な場であるため準備を整えておくことが重要です。

本記事では、決算説明会について詳しく解説するとともに、決算説明会の準備や当日の進行の流れについてもご紹介します。

決算説明会とは

決算説明会は、企業が投資家や報道機関に財務状況を説明する機会です。企業にとっては重要な場であり、決算発表や株主総会とは異なります。以下で、詳しく見ていきましょう。

決算説明会は投資家やアナリストに業績・戦略を伝える機会

決算説明会は、企業が機関投資家、アナリストやメディアに業績や経営戦略を詳細に説明する場です。

経営陣が企業の現状や将来の展望を直接株主や投資家に伝えることで、透明性が高まり、信頼関係が構築されます。また、決算説明会においては特に質疑応答の場が重視される傾向があります。

質疑応答は企業と投資家、アナリストが双方向のコミュニケーションを図れる貴重な機会であり、多くの時間が割かれることが多いです。

決算発表との違い

決算発表は企業が財務情報を公開する場であり、証券取引所の上場規程で義務付けられています。売上、利益、資産状況などのデータが公表され、上場企業の場合は四半期決算時と本決算時の開催が原則です。

対して決算説明会には法的な義務はなく、決算発表で提示された数字やデータの背景にある戦略や、今後の経営方針について詳細に説明する場です。経営陣が戦略の具体的な内容をプレゼンテーションし、さらに将来の見通しについても参加者に共有されます。

投資家やアナリストからの鋭い質問にも経営陣が直接回答するため、企業の透明性や信頼性を強化する機会でもあります。

株主総会との違い

株主総会は議決権を持つ株主、またはその代理人を対象に、重要な経営判断に関して承認を得る場です。株主総会では、組織再編や経営陣の人事、役員報酬の決定、配当の設定など、企業の経営に関する重要な決議が行われます。年一回の開催義務があるほか、必要があれば臨時で開催することも可能です。

一方決算説明会は、投資家・アナリスト・メディアが主な対象です。財務状況や業績、今後の戦略を説明し質疑応答を通じて投資家とのコミュニケーションを図る場であり、目的や参加者に大きな違いがあります。

決算説明会の流れ

決算説明会の一般的な流れを紹介します。

挨拶

決算説明会は、司会者や企業の代表者による開会の挨拶で始まります。挨拶では、説明会の目的や進行スケジュールが説明され、参加に対する感謝の意が伝えられます。参加者に対して説明会の趣旨を理解したうえでの質疑応答などについて、積極的な参加を促すことが一般的です。

また、挨拶を通じて企業の姿勢などについて軽く触れられることもあります。

財務結果や業績の報告

企業の四半期や中間決算、年度決算の財務状況が詳しく説明されます。売上高や利益、純資産などに加え、事業ごとの業績や市場の動向などの詳細も報告されることが多いです。この財務報告はCEO(最高経営責任者)など、経営幹部によって行われるのが一般的です。

さらに、セグメントごとの詳細な分析、課題についても触れられます。

事業戦略や投資計画の説明

財務状況に続いて、企業の今後の成長戦略や事業計画、投資計画などが説明されます。新規事業の展開、既存事業の強化、また市場の変動に対するリスク管理など具体的なビジョンが示されるため、特に投資家たちの注目を集めるパートといえるでしょう。

今後企業がどのように成長していくのか、どの分野に注力していくのかが明らかになります。

質疑応答(Q&Aセッション)

財務情報や経営戦略などの情報共有後には、参加者からの質問に経営陣が回答する質疑応答の時間が設けられます。

質疑応答は投資家の関心事や懸念を把握する貴重な機会であり、企業が非常に重視する部分です。また投資家にとっても、質問に対し的確な回答が得られるかどうかによって企業の信頼性や、今度の見通しについて判断するひとつの基準となります。

締めの挨拶

財務情報や今後の事業計画などの共有、質疑応答など一連の流れがすべて終了すると、最後に司会者や企業の代表が参加者への感謝を述べ、閉会の挨拶を行います。

この流れによって、企業は投資家とのコミュニケーションを通じて自社の透明性や信頼性をアピールしつつ、決算発表や株主総会では得られない投資家のシビアな意見を把握できます。

決算説明会を行うメリット

決算説明会を行うメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。

情報提供により透明性が向上する

決算説明会を通じて財務状況や将来の戦略を明確に説明することで、投資家に対する透明性の向上が期待できます。特にステークホルダーの注目度が高い上場企業において、業績の良し悪しに関係なく定期的な情報開示を行うことは信頼性確保のためにも重要です。

また、近年は企業の透明性が重視される傾向があります。義務ではない決算説明会を積極的に実施していることが透明性の確保につながり、企業イメージの向上も期待できるでしょう。

経営の健全性や将来性をアピールできる

決算説明会は、企業が経営の健全性や将来性をアピールする場としても機能します。業績の報告に加えて事業戦略や投資計画についても説明することで、企業の持続的な成長や将来性を強調できるでしょう。

財務情報のほかにも、ビジョンやミッションなどその企業の魅力をステークホルダーにアピールすることで企業価値向上や同業他社との差別化につなげられます。

市場の反応を知ることで今後の経営に活かせる

決算説明会における質疑応答では、企業は投資家やアナリストからの質問や意見を直接受けることによって、経営に活かせるフィードバックが得られます。

企業にとって、市場の反応を正確に把握し、戦略の修正や改善を検討する機会となるでしょう。市場が特に注目しているリスクや成長分野に関する指摘を受けることで客観的な視点からの経営判断が可能となり、今後の経営方針に反映させることが可能になります。

決算説明会の開催時期

決算説明会は、決算発表の当日から1週間以内に開催するのが一般的です。開催にあたっては日程調整のうえで会場・オンライン配信の手配、資料準備や会場設営など、早めに準備を整えることが求められます。

その他、株主や投資家などへの案内、リハーサルの必要もあります。以下の表は、決算説明会の開催にあたってのスケジュールの流れです。

期間(決算発表前)内容
日程調整2ヶ月前決算発表のタイミングに合わせ、開催日を設定
資料作成開始1ヶ月前財務諸表やプレゼン資料のフォーマットの作成開始
会場・配信準備1ヶ月前オンラインツールや会場の手配を開始
招待状送付日程・開催方法などが決まりしだい株主や投資家への招待状送付、参加方法の案内
リハーサル1週間前資料とシステムの最終確認、リハーサル実施
説明会開催決算発表当日~1週間以内決算発表の直後に説明会を実施

決算説明会の開催方式

決算説明会の開催方式としては、「リアル開催」「オンライン開催」「ハイブリッド開催」「オンデマンド配信」の4つの方法が一般的です。

リアル開催

リアル開催は、ホールや会議場などに参加者を招き、対面での説明会を実施する従来の開催方法です。リアル開催では企業と投資家などとの直接のコミュニケーションが図れるため、信頼関係の強化に役立ちます。

一方で参加できる人数に制限があることに加え、遠方からの参加者には不便な場合があることなどがデメリットといえるでしょう。また設備や人員の手配が必要であり、準備には時間とコストがかかる傾向があります。

オンライン開催

オンライン開催は、ZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどのウェビナーツールを活用して行う方法です。リアル開催と違い物理的な場所や参加者数に制限がなく、遠方、特に海外の投資家にも参加しやすいことは特筆ポイントといえます。

また、会場を借りて行う場合よりもコストが抑えられ、準備が比較的容易です。

ただし、場合によってはインターネット環境の整備が課題となることがあります。また、オンライン開催は企業側の一方的な配信になりがちな傾向があるため、事前に質問や意見を募っておき説明会で回答する、チャット機能での質疑応答を行うなどの対策が必要です。

リアルとオンラインのハイブリッド

ハイブリッド形式は、リアル会場での決算説明会をオンラインでライブ配信する方法です。リアル開催のメリットと、遠隔地からの参加者も参加しやすいというオンラインのメリット両方が活かせます。

リアルとオンラインの参加者との差が生じないよう、リアル会場同様にチャットでも質疑応答に対応するなどの工夫が必要です。また、リアル開催とオンライン開催どちらの環境も整える必要があるため、開催準備に手間がかかる点はデメリットといえるでしょう。

オンデマンド配信

オンデマンド配信は、ライブ配信された決算説明会の映像を録画し、いつでも視聴可能な状態にして配信する方法です。説明会にリアルタイムで参加できなかった投資家や、異なるタイムゾーンにいる海外の投資家にも後から情報を提供できます。

オンデマンド形式では、チャプター分けなどにより投資家が関心のある情報や、重要な情報にすぐアクセスできるようにしておくといいでしょう。

決算説明会までの準備内容

決算説明会までの準備には、目的設定や日程・会場の調整、資料作成、参加者への案内などが含まれます。

以下で詳しく解説します。

目的と目標を明確にする

決算説明会の成功には、明確な目的と目標の設定が欠かせません。目的は投資家やアナリストに対して企業の財務状況だけはなく今後の経営戦略を明確に伝えることであり、それに沿った資料作成が必要になってきます。

また決算説明会では投資家やアナリストとのコミュニケーションも目的のひとつになるため、質問される事項をある程度想定して備えておくことも必要でしょう。

ほかにも参加者数や質疑応答の数、説明会後の株価動向といった具体的な目標を設定し、それに基づいた準備を進めます。

日程・場所の調整

決算説明会は決算発表後できるだけスムーズに開催する必要があるため、早い段階で適切な日時を設定し、関係者のスケジュールを押さえておきましょう。

リアル開催の場合は、開催規模に応じた会場を選定し座席の配置を検討、音響設備なども手配します。オンライン開催の場合は使用するウェビナーツールの選定やインターネット環境の確認、配信テストなどが必要です。

資料作成・配布

決算説明会では、財務数値や事業戦略をわかりやすくまとめたプレゼンテーションが必要です。視覚的に理解しやすいグラフやチャートを用いるなど、投資家が企業の業績や将来の計画を理解しやすいように工夫しましょう。プロのデザイナーなどに資料作成を依頼するのも、ひとつの方法です。

企業によっては、決算説明会で配布する資料を事前にウェブサイトなどで公開するケースもあります。

参加者への案内

決算説明会の参加対象者には、早めに案内状(招待状)を送付し、参加方法について案内します。日時のほか、リアル開催の場合は会場の場所やアクセス方法、オンライン開催の場合は使用するウェビナーツールや接続方法を含めた詳細が必要です。

また、投資家やアナリストから事前に質問を受け付ける場合はその旨と方法も案内しましょう。

決算説明会の流れをつかんで万全な準備を

決算説明会は、企業の業績や今後の方向性を投資家やアナリスト、メディアに正確に伝え、透明性や信頼性を向上させる重要な場です。また、経営幹部と投資家やアナリストが直接コミュニケーションできる数少ない機会でもあります。

企業にとっても、参加者にとっても有意義な場とするために、目的と目標を明確にし、資料や会場の準備を徹底しましょう。


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