- 更新日 : 2024年8月8日
法人税減税の影響とは?日本の国際競争力と減税の関係
近年、法人税減税実施とその効果について、さまざまな論議がされています。法人税減税の主な目的は、海外企業の日本誘致を促進し、日本企業の国際競争力を高めることです。
この効果によって日本経済全体の活性化を図ることが期待されています。
ではなぜ、法人税を減税すると国際競争力が高まることになるのでしょうか。ここで、詳しく説明していきます。
目次
日本の法人税は高いのか?
では、本当に日本の法人税は高いのでしょうか。各国の法人税の比較には実効税率を使用します。
実効税率は企業が支払う法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人特別税を合計した税率です。
財務省の「国・地方合わせた法人税率の国際比較」によると日本の実効税率は平成31年3月期以降29.74%で、主要国のなかではアメリカ・カリフォルニア州の40.75%、フランスの33.33%などに比べると低い水準になりました。。
日本の実効税率は、一時期に比べ、低くなりましたが、それでもなお、ドイツの29.79%、イタリア24%、イギリス20%などヨーロッパの国と比較しても高水準です。
アジアの国と比較すると、韓国は24.20%、シンガポールは17%で、日本の法人税はかなり高いといえます。
(出典:財務省HP、「国・地方合わせた法人税率の国際比較」、2017年3月現在)
法人税引き下げが世界経済の流れ
ヨーロッパ各国でも、ここ数年法人税率は引き下げられる傾向にあります。なぜなら、自国の優良企業の海外流出を防ぐためと、海外の企業に進出してもらうためです。
タックスヘイブンという言葉を聞いたことがあると思います。税率を極端に下げて企業をひきつけるタックスヘイブン政策を取っている国もあります。
ドイツを例にとると2008年から10%近く法人税率を引き下げています。
このように各国は数年前から法人税の引き下げ競争を行っています。
法人税減税と国際競争力の関係
ここでは、具体的に減税が及ぼす国際競争力への効果を考えてみましょう。
日本企業の国際競争力を高める
法人税とは企業のもうけにかかる税金です。もちろん企業にとっては支払う税金が安いほうが資金力は高まります。
同じ業種で1億円もうけた日本の企業とお隣の韓国の企業を比べてみましょう。韓国企業が支払う税金は2,420万円、一方日本企業は2,974万円も支払うことになります。
法人税の支払いで500万円以上の差があるということは、企業にとっての負担も大きくなります。
まずは、法人税率を主要国と同率にするのが国際競争への第一歩なのです。
海外企業の日本進出
日本の企業にとって低い法人税が資金面で有利であるように、海外の企業にとっても大変魅力があります。日本企業同様に支払う税金が安くできるからです。
企業が海外に進出する際は、その国の法定実効税率を重要事項としていることが多くなっています。
日本経済と国際競争力の関係
では、なぜ法人税を下げてまで国際競争力を高める必要があるのでしょうか。まず、日本企業の国際競争力が高まると日本国内の経済が活性化され、結果的には税収が増加すると見込まれているからです。
法人税等の金額が減少した分、社内留保される資金が増加するため、経済活性化が期待される設備投資や個人の消費意欲を向上させる配当金増加、給料増加などに回せるからです。
このように、国内経済にとって多くのメリットがあります。これは、国内に進出した海外企業にも当てはまります。海外企業も当然日本に税金を払います。
しかも、海外企業がくれば、国内での設備投資や雇用が拡大します。こちらも日本経済にとって大変有利です。
今回の法人税引き下げの目的は、日本経済の活性化にあるといえるでしょう。
法人税減税の問題点
1.代替財源の確保
法人税減税で一番問題になるのは代替財源の確保です。法人税減税による効果で国内経済が活性化するまでには時間がかかります。その間、国の税収入が減るので、当然別のところから資金を調達しなければなりません。
そこで、日本企業の64.2%(国税庁統計「平成28年度における法人税の申告事績の概要」)が赤字決算といわれていますが、その赤字法人にたいして課税を強化するなどの方法が考えられています。
2.法人税減税だけで国際競争が抜き出るわけではない
法人税を引き下げて主要各国と同じラインに並んだだけでは国際競争には勝てないということです。海外企業にとって魅力がある進出先は、生産したものをその場で消費できる国です。
企業はこの「消費地生産」を戦略として進出先を考えます。法人実行率を下げるとともに、日本の国内需要を高め海外企業にとって魅力的な消費地になる必要があります。
まとめ
法人税の実効税率を下げ主要各国との税格差を減らすための近年の法人税減税は、海外企業の対日進出と日本企業の競争力アップという2つの効果が期待されています。
これが日本経済活性の起爆剤となるか、これからの動向がおおいに注目されます。
よくある質問
世界経済の法人税の流れとは?
法人税の引き下げがここ数年のトレンドです。詳しくはこちらをご覧ください。
法人税減税の問題点は?
主に、「代替財源の確保」「法人税減税だけで国際競争が抜き出るわけではない」という2点が大きな問題点です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
法人税の関連記事
新着記事
利子補給金とは?仕訳や勘定科目、消費税の扱いをわかりやすく解説
企業や個人事業主が金融機関から借入をしたあと、利息の負担を軽くする目的で「利子補給金(りしほきゅうきん)」が支払われることがあります。これは、国や自治体が利息の一部を助成してくれる仕組みです。ただし、この補給金を受け取ったときの会計処理や仕…
詳しくみる有償支給取引の仕訳とは?会計処理や消費税の扱いをわかりやすく解説
製造業や委託加工を行っている企業では、「有償支給」の取引がよく行われます。しかし、実際に仕訳をしようとすると、「どの勘定科目を使えばいいの?」「消費税はどう処理するの?」など、悩ましい場面が多いのではないでしょうか。 この記事では、有償支給…
詳しくみる役員借入金の返済方法と仕訳はどうする?現金・相殺・振替のケースをわかりやすく解説
会社のお金が一時的に足りなくなったとき、経営者や役員が自分のお金を会社に貸すことがあります。これを「役員借入金」といいます。借りたお金はあとで返す必要がありますが、その返し方や会計処理は、経理の現場で迷うポイントのひとつです。 この記事では…
詳しくみる免税事業者からの仕入れを仕訳するには?インボイス制度での会計処理を解説
さまざまな事業者から商品やサービスを仕入れることは頻繁にあります。とくに個人事業主や中小企業など、免税事業者から仕入れるケースも少なくありません。しかし、2023年10月1日に導入されたインボイス制度によって、免税事業者からの仕入れに関する…
詳しくみる外注費を売上原価に計上するには?ケース別の仕訳例を解説
外注費は、社外に業務を依頼したときに発生する費用ですが、そのすべてが売上原価になるわけではありません。売上原価として扱うには、外注作業が売上に直接関係しているかどうかが判断ポイントになります。この記事では、売上原価に該当する外注費の見分け方…
詳しくみる当期純損失の仕訳方法は?会計処理を具体例でわかりやすく解説
会社の会計年度が終わると、当期の損益が決算として確定されます。通常は「利益」を計上することが理想ですが、売上が減少したり費用・損失が増加したりした場合には、「当期純損失」として赤字を計上することになります。損失が出たときは、その金額をどのよ…
詳しくみる