- 更新日 : 2025年6月19日
割引手形とは?種類や不渡手形になるまでのプロセスを解説
販売代金を現金ではなく約束手形で受け取った場合に「受取手形」で仕訳を起こすことは良く知られていますが、「割引手形」や「裏書手形」、「不渡手形」がどういった種類の手形であるのか意外と知らない人が多いのではないでしょうか?
ここでは、割引手形と裏書手形はどういう種類の手形なのか、割引手形から不渡手形になるまでの理由やプロセスなどを解説していきます。
※政府は、2026年までの約束手形の利用廃止、小切手の全面的な電子化の方針を示しております。詳しくは以下の記事をご確認ください。
割引手形と裏書手形は一体どういうものなのか
割引手形とは、得意先から受け取った約束手形を支払期日より前に現金化する場合に、銀行に買い取ってもらう手形のことを指します。
裏書手形とは、得意先から受け取った約束手形で代金の支払いを行なう場合に他人に譲渡する手形のことを指します。

割引手形と裏書手形を使うためには、約束手形を収受している必要があります。いくら割引手形と裏書手形を使いたくても、受け取った約束手形が手元になければ使用不可能です。
またすぐに使える現金があれば、約束手形を割引手形や裏書手形にする必要はありません。
したがって割引手形と裏書手形を使用する状況とは、「すぐに使える現金はない(もしくは現金が不足している)が、受け取り済の約束手形はある」と推察することができます。
受取手形を支払期日より前に現金化すると「割引手形」になってしまう理由は、支払期日よりも前に銀行で換金してもらうことが原因です。すぐに現金化せずに支払期日まで待つことができれば、受取手形に記載された全額を手に入れることができます。
下記の手形の場合、平成24年11月10日まで待つことができれば額面100万円を手に入れることができますが、支払期日より前に現金を手に入れたい場合は銀行に手数料を出費することによって現金に変えることができます。
額面金額から手数料を割引くために、割引手形と呼ばれているのです。
約束手形 表面

また「裏書手形」は約束手形の裏面に支払った履歴を記入してから譲渡するため、裏書手形と呼ばれています。
A社からB社、B社からC社というように、譲渡人が連続していることが裏書手形として利用するための要件となります。
「白地式裏書」という被裏書人名に何も記載しなくても連続譲渡していると見做される方法もあります。
約束手形 裏面

割引手形や裏書手形が不渡手形になるプロセス
約束手形とは、会社同士の売買取引で選択する決済方法です。
約束手形で支払って商品を購求した場合は「支払手形」となり、約束手形を受け取ることによって商品を販売した場合は「受取手形」となります。

約束手形は支払期日までに金銭を支払うことを約束した有価証券であるため、すぐに使える現金がない場合であったとしても商品売買が可能となります。
たとえば来月末までに売掛金を回収できる見込みがあれば、今は支払えなくても支払期日までに代金を弁済することが可能です。
しかし支払期日までに支払代金を調達することができず、銀行が約束の支払期日に手形発行人の口座残高を引き落とすことができなかった場合に不渡手形となってしまいます。
そのため、以下のケースが考えられます。
- 受取手形から不渡手形
- 割引手形から不渡手形
- 裏書手形から不渡手形
約束手形が不渡手形になるまでのプロセス

不渡手形になってしまったら
受取手形や裏書手形、割引手形が不渡手形になってしまった場合であったとしても、手形の発行人に対して支払いを請求することができます。
しかし、手形の支払請求権は支払期日を起算日として3年で時効消滅するため、支払ってもらえるまで請求できない点で注意が必要です(手形法第70条)。
また裏書手形は譲渡人が連続しているため、A社→B社→C社→D社の順に譲渡した場合、所持人であるD社がC社に支払を遡及請求するだけでなく、D社がC社を飛ばしてB社に遡及請求したり、D社がB社とC社の全員に同時に遡及請求したりすることもできますが、遡及権を行使するには様々な要件を満たす必要があります。
手形の遡及請求権は、満期日もしくは拒絶証書作成日より1年後に消滅時効を迎えます(手形法第70条第2項)。
支払請求や遡及請求によって回収した手形代金は受取利息と合わせて記帳しますが、一部回収することのできた不渡手形や回収不能となった不渡手形は、貸倒れ処理を行ないます。
貸倒れ処理において貸倒引当金で充当しきれなかった金額は、貸倒損失として計上します。
割引手形のリスクに注意しましょう
売掛金と買掛金も支払いを先延ばしにするという点で手形での決済方法と同じ意味を持ちますが、売掛金と買掛金は当事者間での債権と債務になることと比較すると、約束手形での支払いは市場流動性があるため当事者以外の人でも譲り渡すことができる点で違いがはっきりしています。
割引手形や裏書手形はすぐに現金がない状況を解決するために便利なものですが、不渡手形になってしまう場合のリスクを適切に考慮する必要があります。
なお、政府は2026年度末(2027年3月末)をもって、紙の約束手形・為替手形・小切手の利用を廃止する方針を示しています。割引手形や裏書手形もこの制度の一部であるため、今後は電子的な決済手段への移行が求められます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
電子記録債権とファクタリングの違いは?どちらを選ぶかわかりやすく解説
電子記録債権とファクタリングは、ともに売掛債権を利用した資金調達の手段です。しかし、貸し倒れのリスクや管理・契約締結の手間などが異なります。それぞれ向いている会社は異なるため、メリット・デメリットをよく把握しておくとよいでしょう。 本記事で…
詳しくみる口座振替・収納代行とは?仕組みや選び方を解説
集金業務の負担を軽減する方法として、口座振替とコンビニ払いの2つが代表的です。いずれも手間なく入金確認まで完了できるため、煩雑な業務から開放され、本業に注力しやすくなります。仕組みやメリット、選び方を紹介するので、ぜひ参考にしてください。 …
詳しくみる黒字倒産とは?原因や回避方法の解説
黒字倒産とは、商品やサービスの販売で利益が出ているにもかかわらず、決済資金が不足して支払いが滞り、倒産してしまうことです。決して珍しいものではなく、倒産する企業は高い割合で黒字倒産しています。この記事では、黒字倒産の原因と回避法、および作成…
詳しくみる集金と徴収の違いとは?集金の手段や未払い対策を解説
集金は、企業が提供した製品やサービスに対する対価を回収する行為です。日々の業務に欠かせない集金ですが、徴収との違いや、効率的な集金方法について疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。 本記事では、集金と徴収の違いやさまざまな集金手段…
詳しくみる残高確認状が届いた!売掛金の残高確認の対応方法を解説
自社で売掛金の残高確認を実施することになったとき、あるいは取引先から残高確認状が届いたとき、どのように対応するべきなのでしょうか。この記事では、売掛金の残高確認の意義や手順、取引先から残高確認の依頼があったときの対処について解説します。 売…
詳しくみる企業間決済代行サービスは利用すべき?仕組みとメリット、選び方を解説
企業間決済代行サービスとは、企業間で発生する決済を代行し、請求管理を一元化するサービスです。利用することで、請求業務を効率化できるだけでなく、代金の未回収リスクも下げられます。利用に適したケースや注意点、サービス会社の選び方を解説します。 …
詳しくみる