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  • 作成日 : 2019年4月19日
  • 更新日 : 2020年9月17日

軽減税率に向けた「業種別の影響と対応」 飲食や小売はどうなる?

2019年10月1日の消費税増税とあわせて始まる軽減税率。高齢社会の中で消費税の引き上げがやむを得ない一方、引き上げによって生活が著しく困窮することないよう一部は消費税8%に据え置かれます。

生活の影響についてはある程度は想像しやすいですが、企業側にはどのような影響が考えられるのでしょうか。消費税増税と軽減税率による影響と対策を、業種別に見ていきましょう。(執筆者:ファイナンシャルプランナー 本村結貴)

軽減税率適用の対象を整理しよう

軽減税率による消費税8%据え置き対象は、飲食料品が中心です。しかし、飲食料品すべてが対象になるわけではありません。同じ飲食料品でも、どのように提供されるかで軽減税率の対象にならないものもあります。この部分が、軽減税率の解釈を難しくして、企業が対策しにくい部分になるところでもあるでしょう。具体的に何が対象で、何が対象にならないのでしょうか。

軽減税率の対象にあたるもの

・食品表示法に規定された食品のうち、対象外を除いたもの
・週2回以上発行される定期購読の新聞(電子版は除く)

飲食料品などでも軽減税率対象外のもの

・酒類
・外食
・顧客依頼によるケータリング・出張料理
・一体商品の一部(※税抜き1万円以下で飲食品部分が3分の2以上あるものは対象)
・医薬品や医薬部外品

並べただけでは少しわかりにくいので、迷いやすい部分を交えて、軽減税率の対象を解説します。

飲食料品はどこまで軽減税率の対象となるか

軽減税率の対象となるのは、人が口にするための飲食料品です。つまり、同じ水であっても人が飲むためのミネラルウォーターは対象で、家畜や植物のための水は対象になりません。

判断が難しいのが、飲食料品とほぼセットの包装材です。多くの食品はそのまま提供されるのではなく、トレイや袋で包装されています。この場合は、通常必要と考えられる範囲については飲食料品とみなし、軽減税率の対象です。

外食やケータリング、テイクアウトの扱い

外食やケータリングについては対象外ですが、テイクアウトについては軽減税率の対象となります。テーブルや椅子など食べるスペースが用意されており、顧客がそれらを利用して食事をするかが判断基準です。ここも判断が少し難しいところと言えます。

例えば、屋台の場合、そのまま食事を持ち帰るだけならば軽減税率の対象になりますが、一方で屋台側が椅子やテーブルを用意していれば軽減税率が適用されません。例外として施設で提供される食事のうち、学校給食や老人ホーム(※制限付き)では軽減税率が適用されます。

軽減税率の業種別の影響と対策

飲食業やサービス業への影響

軽減税率の導入によって留意すべきなのは、ファーストフード店などの店内飲食とテイクアウトを同時に提供している店、またはイートインスペースのある店です。同じ飲食物の提供でも、店内飲食は税率10%、テイクアウトは税率8%なので、対策を決めておかないと混乱を招きます。提供する企業の混乱はもちろん、顧客も困らせてしまうので、すでにイートインスペースのあるコンビニエンスストアなどでは対策を公にしているところもあるほどです。

また、テイクアウトだけの店でも軽減税率の導入は無視できません。いくらテイクアウトで販売する商品に軽減税率が適用されても、仕入れの際は割箸や容器、酒類にあたる調味料は軽減税率の対象にはならないからです。仕入れ時にも目を向けて、軽減税率の対象となるもの、そうでないものを確認しておく必要があります。

<取るべき対策>

提供形態によっては複数税率に対応しているレジの導入やシステムの改修はもちろんのこと、仕入れ時の対策も必要です。

酒入り調味料のように、仕入れの段階で軽減税率の対象と対象外が入り混じる可能性があるためです。仕入れ先から区分記載請求書をもらうなどしてしっかり区分けする必要があるでしょう。

また、店内飲食とテイクアウト両方ができる場合は、精算時に客に確認するなど企業内で明確なルールを設けて、さらに、従業員に周知することも大切です。

製造業、農業など生産者への影響

先にも触れましたが、同じ商品であっても目的によっては軽減税率の対象にならないことがあります。

水の例もそうですが、植物の種子、重曹(食用、非食用)など、人の飲食料品にもなれば、ならないものもある商品を扱っている製造業者は対策が必要です。

また、同じく生産者である農家も、トウモロコシや米(ワラ)など、人用でも家畜用にでもなるものもあるため場合によっては対策を考えなくてはならないでしょう。

<取るべき対策>

製造元である以上、軽減税率施行後、販売先から問い合わせがある可能性が考えられます。すぐに対応できるよう従業員への教育を行いましょう。

また、相手が見てわかるように請求書や領収書を軽減税率対応のものに移行する準備を行わなければなりません。

卸売業や小売業への影響

雑貨屋などある種の商品に特化しているなら別ですが、飲食料品含め幅広いものの取り扱いがある卸売業や小売業では大幅な対策が求められます。消費税10%と軽減税率8%のどちらも計算できるように対応する、適切な商品の表示価格にするなど、取り扱う商品によっては大きな影響は避けられないでしょう。

<取るべき対策>

特に幅広い種類の商品を扱っているスーパーなどでは、仕入れから販売、値段の変更、経理に至るまで多くの影響が考えられます。便利なシステムを導入することはもちろん、余裕をもって準備をしておくことが重要です。まずは、店内で扱う商品を洗い出し、何が軽減税率の対象になるか確認しておくことから始めましょう。

そのほか食事が提供される施設なども注意

学校給食や老人ホームで提供される食事は軽減税率が適用されますが、全額が対象になるわけではありません。1食税抜き640円以下、1日の累計1,920円までという上限があります。対象の施設であっても、上限を超えた部分は軽減税率が適用されません。

<取るべき対策>

軽減税率が適用される施設においても、1食あたり、1日あたりの提供金額の上限が敷かれることになります。特別なメニューを用意する場合を除き、多くは軽減税率の上限以内で提供することになるでしょうから、これまで以上のコスト意識が求められます。

これまで提供していた食事の原価と提供額を洗い出し、今後どのようにしていくか方針を立てましょう。仕入れに関しても、何が軽減税率の対象になるか確認しておきましょう。

飲食業以外の企業にも影響あり

直接関係のない企業においても、軽減税率の影響は多少なりともあるものです。たとえば、来客用に用意する茶菓子や飲食料品にあたるお歳暮などの贈り物は軽減税率の対象になります。

また、消費税が課税されない免税事業者(原則年間の課税売上1,000万円以下の事業者)であっても、取引先から区分記載請求書を求められることもあるため、全く関係ないと言い切れません。

<取るべき対策>

いくら軽減税率との関連が薄くても、少なくとも区分記載請求書の記載の方法、経理上の対応の仕方は確認しておきたいです。

業種によって利用できる補助金などのサポート

ここまで業種別の軽減税率の影響と対策を紹介してきましたが、消費税率が2つに分かれるわけですから、的確で幅広い対策が必要になります。

しかし、軽減税率の導入が差し迫る中、十分な資金を用意して対策を打つことはできるでしょうか。企業の規模や業績によっては細部まで対策するのは厳しい部分もあるでしょう。

そこで活用したいのが補助金です。中小企業のうち対象の業種であれば、対応レジの導入、受発注システムの改修、請求書管理システムの改修で補助を受けられる可能性があります。

慌てず対策を練っておこう

消費税増税まで残り半年を切りました。業種によっては大きな影響が考えられるからこそ早めの対策がカギを握ります。まずは、会社で何を取り組むべきか洗い出し、大きな影響があると考えられる部分を中心に対策を講じていくことが大切です。※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:本村 結貴(もとむら ゆき)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士
そのほか、中学英語教諭免許等保有、一時仕事の関係で生命保険募集人に登録する。一般企業に就職後、主に経理を担当し、その後会計事務所へ転職して個人と法人の確定申告補助を経験する。2014年からライターとして活動。

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