- 更新日 : 2024年8月8日
法人税申告書の別表3とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人税申告書の別表3は、該当する法人が記載・提出する必要のある申告書です。特定同族会社に該当する場合、土地の譲渡利益金額がある場合に作成します。今回は、別表3の種類や書き方を紹介します。
目次
法人税申告書の別表3とは
別表3は、留保金課税や土地等の譲渡利益金額に関する法人税申告書です。以下のように(1)~(7)まで複数の種類が存在します。
番号 | 表名 | 役割など |
---|---|---|
3(1) | 特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書 | 特定同族会社は一定額を超えた留保金額に対して課税を受けます。特定同族会社に該当する場合に作成が必要な書類で、留保金額の課税額を計算するための明細書です。 |
3(1)付表一 | 特定同族会社の留保金額から控除する留保控除額の計算に関する明細書 | 3(1)に付随する書類で特定同族会社に該当するときに作成します。 |
3(1)付表二 | 通算法人の留保金額又は所得基準額の調整計算に関する明細書 | 特定同族会社に該当する場合で、グループ通算制度を利用する法人が作成する書類です。 |
3(2) | 土地の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額の計算に関する明細書 | 土地の譲渡を行った法人の特別課税に関する明細書です。 |
3(2の2) | 優良住宅地等のための譲渡に該当しないこととなった土地等の譲渡に係る譲渡利益金額に対する税額の計算に関する明細書 | 土地の譲渡に関して該当する場合に作成する明細書です。 |
3(2の3) | 確定優良住宅地等予定地のための譲渡に該当する土地等及び優良住宅地等のための譲渡に該当することとなった土地等に関する明細書 | 土地の譲渡に関して特別課税の適用除外に該当する場合に作成する明細書です。 |
3(2の3)付表 | 確定優良住宅地等予定地のための譲渡に係る直接又は間接に要した経費の額等の計算に関する明細書 | 3(2の3)が必要な場合に作成します。 |
3(3) | 短期所有に係る土地の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額の計算に関する明細書 | 特別課税の対象となる短期所有(取得日の翌日から譲渡日の属する年の1月1日までの所有期間が5年以下)の土地の譲渡益にかかわる明細書です。 |
3(4) | 課税除外とされる短期所有に係る土地等(面積1,000平方メートル以上のもの)の譲渡に係る対価の額等に関する明細書 | 譲渡した短期所有の土地のうち、適用除外の一定規模の土地を譲渡した場合の明細書です。 |
3(5) | 課税除外とされる短期所有に係る土地(面積1,000平方メートル未満のもの)の譲渡に係る対価の額等に関する明細書 | 譲渡した短期所有の土地のうち、適用除外の一定規模以下の土地を譲渡した場合の明細書です。 |
3(6) | 課税除外とされる買取仲介に係る短期所有に係る土地等の譲渡益に関する明細書 | 土地等の譲渡益に関して該当する課税除外の適用を受ける場合に作成する書類です。 |
3(7) | 課税除外とされる不動産特定共同事業契約に係る事業参加者から取得した短期所有に係る土地等の譲渡益に関する明細書 | 土地等の譲渡益に関して該当する課税除外の適用を受ける場合に作成する書類です。 |
別表3は、特定同族会社の課税留保金額や土地の譲渡にかかわる譲渡利益金額に関連する書類です。特定同族会社など一定の条件に該当する場合に作成します。別表3の各種明細書や付表は、国税庁のサイトやe-Taxソフトなどからダウンロード可能です。
今回は、別表3の中でも作成・提出頻度が高いと考えられる、別表3(1)と別表3(1)付表一の書き方を解説していきます。
個別の別表ではなく、法人税申告書の全体的な作成方法については、以下の記事を参照ください。
法人税申告書の別表3に記載する主な項目と書き方
法人税申告書の別表3の中でも、特定同族会社の留保金額(通算法人が作成する付表二を除く)に関する明細書の作成方法を説明します。
別表3(1)特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書
別表3(1)は特定同族会社に該当する場合に作成する書類です。作成手順としては、下部の「課税留保金額の計算」を作成後、上部の「課税留保金額に対する税額の計算」を作成します。
■当期留保金額の計算
出典:特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書|国税庁
留保金課税にかかわる当期留保金額を計算する項目です。
9.留保所得金額
当期の課税所得金額のことです。所得の金額を計算する別表4「52の②」から転記します。
10.前期未配当等の額(通算法人間配当等の額を除く。)
前期に提出した別表3に記載の「11」から転記します。
11.当期未配当等の額(通算法人間配当等の額を除く。)
当期中に当期基準日が到来している配当金で、当事業年度終了から決算確定日までに配当決議のあった額を記載します。
12.法人税額及び地方法人税額の合計額
別表1と別表6を参照して、該当する法人税額と地方法人税額の合計額を記載します。金額がマイナスになる場合は「0」と記載します。
13.住民税額
後述する別表3「28」の金額を転記します。
14.外国関係会社等の係る控除対象所得税額等相当額
外国子会社に課税される税金のうち、法人税の控除対象となる所得税額のことです。別表17(3の6)の「1」から転記します。
15.法人税額等の合計額
「法人税額と地方法人税額」+「住民税額」-「外国関係会社等の係る控除対象所得税額等相当額」の計算結果を記載します。マイナスになるときは「0」と記載します。
16.通算法人の留保加算金額
グループ通算制度を利用する通算法人の留保加算金額(課税所得に加算する金額)に関する項目です。別表3(1)の付表二「5」より転記します。
17.通算法人の留保金控除額
グループ通算制度を利用する通算法人の留保控除金額(課税所得に減算する金額)に関する項目です。別表3(1)の付表二「10」より転記します。
18.他の法人の株式又は出資の基準時の直前における帳簿価額から減額される金額
後に説明する別表3(1)付表一「19」より転記します。
19.当期留保金額
当期の留保金額を示す項目です。「9」の留保所得金額に「10」と「16」を加算、「11」と「15」と「17」と「18」を減算した金額を記載します。
20.留保控除額
後に説明する別表3(1)付表一「33」から転記します。
21.課税留保金額
「19」の当期留保金額から「20」の留保控除額を控除した金額から千円未満を切り捨てて記載します。
■住民税額の計算
出典:特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書|国税庁
22.中小企業者等以外の法人
住民税額の計算の基礎となる法人税額を記載する項目です。適用除外を除く中小企業者に該当しないときに記載します。記載にあたり、別表1と別表6記載の金額が必要です。
23.中小企業者等
「22」同様に計算の基礎になる法人税額を記載する項目です。中小企業者に該当するときに記載します。別表1と別表6に記載された金額より計算します。
24.住民税額
「22」または「23」に対応する住民税額です。10.4%を乗じた計算結果を記載します。
25.特定寄附金等の合計額に係る控除額
「25」~「27」は、特定寄附金(国や特定公益増進法人などへの寄附)を支出した場合に記載が必要な項目です。特定寄附金の合計額の40%相当額を記載します。
26.調整地方税額に係る控除額
住民税の調整額です。記載にあたり、別表1と別表6(2)付表6に記載の数値が必要です。マイナスのときは「0」と記載します。
27.住民税額から控除される金額
別表3(1)の「25」または「26」のうち、いずれか少ない金額を記載します。
28.住民税額
別表3(1)の「24」の住民税額から「27」の金額を控除した金額です。
■留保金額に対する税額の計算
出典:特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書|国税庁
明細書の下部で計算した課税留保金額に対する税額を計算する項目です。
1.年3,000万円相当額以下の金額
別表3(1)の課税留保金額、3,000万円×(当事業年度の月数÷12)の、いずれか少ない金額を千円未満切り捨てで記載します。
2.年3,000万円相当額を超え年1億円相当額以下の金額
別表3(1)の課税留保金額から「1」を控除した金額、1億円×(当事業年度の月数÷12)の、いずれか少ない金額を千円未満切り捨てで記載します。
3.年1億円相当額を超える金額
別表3(1)の課税留保金額から「1」と「2」を控除した金額を千円未満切り捨てで記載します。
4.計
「1」と「2」と「3」の合計額を千円未満切り捨てで記載します。
5.(1)の10%相当額
「1」に10%を乗じた計算結果を記載します。
6.(2)の15%相当額
「2」に15%を乗じた計算結果を記載します。
7.(3)の20%相当額
「3」に20%を乗じた計算結果を記載します。
8.計
「5」と「6」と「7」の合計額を記載します。
別表3(1)付表一「特定同族会社の留保金額から控除する留保控除額の計算に関する明細書」
出典:特定同族会社の留保金額から控除する留保控除額の計算に関する明細書(付表)|国税庁
別表3(1)付表一は、特定同族会社の課税留保金額を構成する要素のうち、留保控除額を計算するための書類です。
1.期末資本金の額又は出資金の額
当期末の資本金または出資金の額を記載します。
2.同上の25%相当額
期末資本金の額又は出資金の額の25%の金額を記載します。
3.期首利益積立金額
別表5(1)と別表3(1)が必要です。別表5(1)の「31の①」の金額から別表3(1)の「10」の金額を控除した金額を記載します。
4.適格合併等により増加した利益積立金額
被合併法人や分割法人から引き継ぎを受けた利益積立金額などを記載します。
5.適格分割型分割等により減少した利益積立金額
分割承継法人に引き継いだ利益積立金額などを記載します。
6.期末利益積立金額
「3」の額に「4」を加算、「5」を減算した金額を記載します。
7.積立金基準額
課税留保金額を構成する留保控除額にかかわる項目です。「2」から「6」の期末利益積立金額を控除した金額を記載します。
8.定額基準額
課税留保金額を構成する留保控除額にかかわる項目です。2,000万円×(その事業年度の月数÷12)の金額を記載します。
9.所得金額
別表3(1)の付表一の「9」以降の項目は、課税留保金額を構成する留保控除額のうち、所得基準額の計算にかかわる項目です。所得金額は別表4「52の①」から転記します。
10.非適格合併による移転資産等の譲渡利益額又は譲渡損失額
非適格合併を行った場合に記載する項目です。別表4「38」より転記します。
11.受取配当等の益金不算入額
内国法人から受け取った配当金のうち益金不算入となる金額のことです。別表8(1)「5」の金額から、通算法人間の配当等の金額を控除した金額を記載します。
12.外国子会社等から受ける剰余金の配当等の益金不算入額
別表8(2)「26」に別表17(3の7)「27」の金額を加算した額を記載します。
13.受贈益の益金不算入額
完全支配関係のある内国法人から受けた受贈益の額です。別表4の「16」から転記します。
14.法人税額の還付金等(過誤納及び中間納付額に係る還付金を除く。)
別表4の「19」に別表4付表「7」の金額を加算した額を記載します。
15.欠損金等の当期控除額
当期において欠損金等の繰越控除があるときに記載する項目です。別表7(1)の4の計に別表7(3)の「9」(または「21」もしくは別表7(4)「10」)を加算した金額を記載します。
16.中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金の益金算入額
該当する金額を別表4の「37」より転記します。
17.通算法人の所得基準額加算額
グループ通算制度を適用する法人が記載する項目です。別表3(1)付表二の「13」から転記します。
18.通算法人の所得基準額控除額
グループ通算制度を適用する法人が記載する項目です。別表3(1)付表二の「17」から転記します。
19.他の法人の株式又は出資の基準時の直前における帳簿価額から減算される金額
該当する金額があるときに記載する項目です。別表10(3)の「43」から転記します。
20.新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除額
鉱業にかかわる記載項目です。別表8(3)の「13」の合計額を転記します。
21.対外船舶運航事業者の日本船舶による収入金額に係る所得の金額の損金算入額
船舶運航事業者にかかわる項目です。別表10(4)の「20」より転記します。
22.対外船舶運航事業者の日本船舶による収入金額に係る所得の金額の益金算入額
「20」同様に船舶運航事業者にかかわる項目です。別表10(4)の「21」または「23」より転記します。
23.沖縄の認定法人又は国家戦略特別区域における指定法人の所得の特別控除額
特定の法人に該当する場合に記載する項目です。別表10(1)の「15」もしくは、別表10(2)の「10」から転記します。
24.沖縄の認定法人又は国家戦略特別区域における指定法人の要加算調整額の益金算入額
「22」同様に特定の法人に該当するときに記載する項目です。別表10(1)の「16」もしくは、別表10(2)の「11」から転記します。
25.収用等の場合等の所得の特別控除額
土地収用法に基づき国などの収容により土地等を譲渡したときにかかわる項目です。別表10(5)より、「22」「37」「42」「47」「52」を合計した金額を記載します。
26.特定事業活動として特別新事業開拓事業者の株式の取得をした場合の特別勘定繰入額損金算入額
該当する場合に記載する項目です。別表10(6)の「12」より転記します。
27.特定事業活動として特別新事業開拓事業者の株式の取得をした場合の特別勘定繰入額益金算入額
該当する場合に記載する項目です。別表10(6)の「18」と「20」の合計を転記します。
28.肉用牛の売却に係る所得の特別控除額
畜産業(肉用牛)にかかわる記載項目です。別表10(7)の「22」から転記します。
29.超過利子額の損金算入額
対象純支払利子等にかかわる課税の特例を受ける金額のうち対象の金額をいいます。別表17(2の3)の「10」から転記します。
30.課税対象金額等の益金算入額
外国関係会社にかかわる項目です。別表17(3の2)の「28」、別表17(3の3)の「9」、別表17(3の4)の「11」の合計額を記載します。
31.所得等の金額
別表3(1)付表一より、以下の計算結果を記載します。
32.所得基準額
「30」の所得等の金額に40%を乗じた額を記載します。
33.留保控除額
別表3(1)付表一のうち、「7」、「8」、「32」のいずれか多い額を記載します。
法人税申告書の別表3を書く際の注意点
別表3(1)は、特定同族会社に該当する場合に作成が必要な書類です。特定同族会社とは、同族会社でもさらに少数の株主に支配されている会社のことです。
同族会社は、3以上の株主グループに発行済み株式または議決権の50%超が保有されている会社のことをいいます。特定同族会社は、1人の株主及び関係する個人または法人に発行済み株式または議決権の50%超が保有されている会社のことです。
特定同族会社は、特定の株主の意思が経営に反映されやすい特徴があります。そのため、税制上の規定がいくつか設けられています。
別表3(1)で作成する留保金額に対する税額の計算の明細書は、特定同族会社の税制上の規定のうち、留保金課税にかかわるものです。
付表では留保金課税の計算に必要な留保金控除の金額を算出し、別表3(1)で課税留保金に対する特別税額を算出します。特定同族会社に該当する場合は作成が必要になるため注意しましょう。
なお、別表3(1)に「当期未配当等の額」の項目があります。株主資本等変動計算書に記載の額とは異なるため注意が必要です。該当項目でも触れたように、配当基準日が到来している配当金で決議があった未配の配当金を記載します。
別表3は特定同族会社の留保課税や土地の譲渡に関する申告書
法人税申告書の別表3は、特定同族会社の判定を受けたとき、土地等の譲渡益があったときに明細を記載する書類です。すべての法人で作成が必要な申告書ではありません。特定同族会社にかかわる別表3は、特定同族会社の留保課税にかかわるもののため、留保課税の概要についても押さえておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
法人住民税とは?計算方法や納付時期、納付方法を解説
法人住民税とは、事業所のある自治体に納める地方税です。個人の住民税と同じく、都道府県民税と市町村民税に分かれています。計算方法やほかの税金との違い、納付時期についてまとめました。また、実際にどの程度の税額になるのか、具体的なケースで説明しま…
詳しくみる法人税申告書の別表2とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人税申告書の別表2は、同族会社に関連する判定を記載する書類です。判定結果を記載するだけなく、なぜその判定に至ったのかまで詳細を記載します。今回は、別表2の役割や各項目の書き方について解説していきます。 法人税申告書の別表2とは 法人税申告…
詳しくみる軽減税率の対応をしなかった事業者の末路。今からでもやるべき対応
軽減税率が始まって混乱しているのは、消費者だけではありません。お店や事業を行う個人事業者と法人は、さらに面倒な手続きに悩まされています。 レジを軽減税率対応のものに変更し、キャッシュレス還元事業の登録をするだけでなく、新しく導入された「区分…
詳しくみる法人税は電子申告が義務化!申告のやり方やe-Taxでの納付方法も解説
令和2年度より、大法人で法人税の電子申告が義務化されています。電子申告が可能になることで申告や納付が進めやすくなっていますが、きちんと理解していないと作業が増えた感覚になるでしょう。この記事では、大法人で義務化された法人税の電子申告について…
詳しくみる法人税とは?税率の計算や節税方法などを解説
法人税とは、法人が事業によって得た所得に対して課税される国税です。株式会社や有限会社などの普通法人と、協同組合などは法人税を納めなければなりません。 この記事では、法人税の概要と種類、課せられる法人と課せられない法人、「所得」の意味、計算方…
詳しくみる仕入税額控除とは?意味やインボイス制度での変更点をわかりやすく解説
仕入税額控除は、課税事業者にとって納税額を大きく左右するポイントです。 計算方法を間違えるとキャッシュフローが悪化し、経営に支障をきたす場合もありますので注意が必要です。 本記事では、仕入税額控除とは何かをはじめ、仕入税額控除の対象となる項…
詳しくみる