- 更新日 : 2025年2月4日
請求書払いとは?支払いの流れやメリット・デメリット、導入時の注意点を解説
取引の際、どのような支払い方法を選択したらよいのか迷うことはないでしょうか。特に頻繁に取引する取引先の場合、品物やサービスをやり取りするたびに代金を支払ってもらう方法にすると、事務作業が大変になるという悩みも出てくるかもしれません。
今回は、同じ取引先と頻繁に取引する場合におすすめの「請求書払い」について詳しくご紹介します。
目次
請求書払いとは
請求書払いとは、購入代金をまとめて後日決まった日に支払う(支払われる)ことです。「後払い」「掛け払い」と呼ばれる取引は、請求書払いにあたります。現在、企業間での取引は多くが請求書払いで行われています。
具体例を挙げると、「毎月末日締め翌月末日払い」のように1カ月分の取引を末日でまとめ、その代金を請求し、翌月の末日までに銀行振込で支払うという方法です。
なお、新規の取引先から請求書払いを求められた場合、無条件で認めることはあまりありません。審査を行い、基準をクリアした企業に請求書払いを認めています。
請求書払いの流れ
請求書払いの流れは以下の通りです。
- 与信審査
- 請求書の発行・送付
- 入金確認・消込処理
- 督促・回収
与信審査
請求書払いでは、1カ月分の代金を後日まとめて支払います。期日までに確実に支払ってもらえる取引先かどうかを確認するため、信用できる取引先か、支払能力があるかを確認する与信審査を行います。
与信審査は、自社にある取引先の情報を精査するだけでなく、外部の企業情報データベースなども利用して行います。支払能力や倒産リスク、経営状態を確認し、与信限度額を決定しましょう。与信限度額とは、債務の上限額のことです。
与信限度額まで決定したら、締め日、支払期日、請求書の受け渡し方法なども決め、契約を締結します。
与信審査の方法や与信限度額の決定方法は、以下の記事もご参照ください。
請求書の発行・送付
企業間で実施する請求書払いでは、一定期間の取引をまとめて請求することが一般的です。たとえば、1ヶ月に1回請求することに決めているなら、「2024年8月分」のように当月内に発生した取引額を合算して請求します。
請求書は従来は紙タイプが一般的でしたが、近年ではオンラインで送付できる電子タイプも使われています。主な送付手段は以下の通りです。
- 郵送
- 電子メール
- クラウドサービス
- 請求代行サービス経由での送付
いずれの場合も、以下の要素を記載し、取引相手がスムーズに支払えるようにしておきましょう。
- 請求書の発行日、請求金額
- 請求する側の企業名・担当者名
- 取引相手の企業名
- 取引年月日
- 取引内容(商品、数量、単価など)
- 支払い方法(振込先金融機関名、どちらが振込手数料を負担するかなど)
- 支払い期限
請求書を発行した後は、取引相手に送付します。電子データとして送付する場合は、電子印鑑や電子署名などを活用して、請求書が信用できるものであることを担保しておきましょう。
入金確認・消込処理
支払い期限後に入金確認を行います。振込で代金を受け取る場合は、金融機関側で入金を反映するのにタイムラグがあることも考慮し、数営業日待ってから入金確認するほうが良いでしょう。
正しく入金されていた場合は、消込処理をします。企業会計の根幹に影響を与えることもあるため、取引件数が多い場合でも、入金有無・入金額・取引相手を1件ごとに正確に確認してから消込処理をしてください。
消込処理の作業は、担当者の手作業で行う方法以外に、会計ソフトのシステムで自動的に行う方法もあります。
督促・代金回収
取引相手から期日までに入金されないケースもあるかもしれません。単に入金忘れのケースもありますが、取引相手の経営状況が悪化したことから入金されていないケースも想定されます。時間が経過するとさらに状況が悪化する可能性も高いため、迅速に督促を行うことが必要です。
まずは電話やメール、手紙などで、入金がまだであることを知らせ、支払いの意志があるのかを確認します。支払いの意志があるときは、新しい支払い期日を定めましょう。また、支払いの意志が見えないときや新しい支払い期日を過ぎても支払われないときは、早急な対応を促すことが必要です。経営状況の悪化で支払えないという場合は、督促状で入金がない場合の法的手続きについて伝えましょう。
請求書払いのメリット
請求書払いを利用すると、取引が発生したときに代金を受け取るケースとは異なり、請求書の発行や送付、入金確認などの業務が必要になります。
しかし、請求書払いには多くのメリットがあり、実施により取引の幅が広がることも少なくありません。請求書払いのメリットを請求側・支払い側に分けて見ていきましょう。
請求する側のメリット
請求する側のメリットは以下の通りです。
取引先を増やせる可能性がある
請求書支払いは取引先にとっては支払いが簡便化できる方法のため、商品やサービスを購入しやすいと感じてもらえるでしょう。ニーズに応えることで取引先が増えるだけでなく、購入頻度も増え、売上増につながるかもしれません。
1カ月分をまとめて請求でき、入金確認も1回で済む
月に数回取引がある場合、その都度請求、入金となれば、経理担当者の負担が大きくなります。請求書払いにすることで、請求・入金確認業務をまとめられるので、業務の効率が上がります。
支払う側のメリット
支払う側のメリットは以下の通りです。
支払業務を効率化できる
インターネットバンキングを利用したり、複数の取引先にまとめて支払ったりできることから、支払い業務が効率化できることもメリットです。
資金繰りに余裕ができる
請求書払いの場合、支払いは翌月以降になることもあるため、その間の資金繰りに余裕ができます。
請求書払いのデメリット
請求書払いにはデメリットもあります。主なデメリットを、請求側・支払い側に分けて紹介します。
請求する側のデメリット
請求する側のデメリットは以下の通りです。
代金を回収できないリスクがある
1カ月分がまとめて支払われるので、代金を回収できないおそれがあります。そのため、取引先の経営状態をきちんと把握しておく必要があります。
督促・回収に手間がかかる
期日までに入金されない場合は、督促や回収の業務も必要です。取引相手の経営状況が悪化しているときや倒産したときなどは、貸倒れになる可能性もあります。
支払う側のデメリット
支払う側のデメリットは以下の通りです。
支払い忘れにより信用を失う可能性がある
入金期日まで数週間空くこともあるため、支払いを忘れてしまうおそれもあります。支払い忘れが生じると、企業の信用にかかわるため注意が必要です。
請求書を管理する負担が増える
請求書の管理負担が増えることも、デメリットに感じる場合があるでしょう。
請求書払いの導入を見送る背景
請求書払いは多くの企業で採用されている一方、導入を見送る企業も少なくありません。その背景には、作業プロセスの煩雑化や与信管理の難しさなど、複数の要因が存在します。これらの課題について詳しく見ていきましょう。
作業プロセスの煩雑化
請求書払いの導入を見送る背景には、作業プロセスの煩雑化が大きな要因のひとつです。請求書払いを採用すると、各取引ごとに請求書の発行、入金確認、消込作業などが必要です。取引先や取引回数が増えるほど業務負担が大きくなり、効率的な管理が難しくなります。
特に、取引先ごとに精密な与信管理を行う必要があり、正確性を保つためのノウハウが必要です。これらの作業は、経験と手間がかかるため、請求書払いを導入する企業にとっては大きな障害となる可能性があります。
与信管理の難しさ
請求書払いの導入が見送られる背景には、与信管理の難しさも挙げられます。与信管理では、取引先の信用状況を調査し、リスクを評価しなければなりません。これには高い専門知識が求められます。
特に、適切な与信基準の設定は難しく、基準が不適切であれば未回収リスクが増大します。また、取引が増えると与信管理の作業量も増え、管理の精度を維持するのは困難です。このような理由から、請求書払いの導入が進まない場合もあります。
請求書払いを導入する場合の注意点
請求書払いを導入する場合の注意点を押さえておきましょう。
与信管理を継続的に行う
与信審査を行って請求書払いを許可した取引先でも、その状態が永続的に続くとは限りません。赤字状態に陥り、支払いが困難になるケースも想定しておきましょう。
代金の未回収を防ぐためには、年に1回など定期的に与信管理を行い、取引先に問題が生じていないかを確認してください。
契約内容を事前にすり合わせる
与信審査後に契約を交わす際は、内容を事前にすり合わせましょう。特に、締め日や入金日についてはしっかり確認してください。
請求側のミスを防止するためにも、締め日や入金の期日は他の取引先と同日にすることをおすすめします。
忘れずに押印する
請求書への押印は法的に義務付けられているわけではありませんが、実務上は押印することが一般的です。押印をすることにより請求書の信頼性を高め、取引先とのトラブルを未然に防ぎます。
なかには押印がない請求書を受け付けない企業も存在するため、取引先との関係性を良好に保ちスムーズな取引を行うためには、請求書に押印しておく方が無難といえるでしょう。
内税・外税を明記する
支払う側に混乱を与えないためにも、内税・外税を明記しましょう。また、請求書内で内税・外税を統一しておくだけでなく、消費税額についても明記しておくと、支払う側の会計業務の負担を軽減できます。
手数料の負担者を決めておく
金融機関への振込によって代金を受け取る場合は、手数料の負担者を決めておきましょう。また、どちらが手数料を負担する場合でも、請求書に明記しておくと混乱を回避しやすくなります。
入金消込は漏れなく行う
取引先から入金があったら、消込を漏れなく行いましょう。入金を確認せずにいると、誤った入金催促につながりかねません。
入金のない場合は催促状(督促状)で対応する
期日までに入金がない場合は直ちに催促を行い、急いで入金してもらいましょう。それでも入金がない場合は、催促状(督促状)などの法的手段で対応します。
取引先から入金がない場合の督促の進め方についても、事前に決めておいてください。
偽造防止対策を実施する
支払う側によって請求書が偽造されるケースも想定されます。万が一に備えるためにも、通し番号や捺印などによる偽造防止対策が必要です。電子請求書を作成する場合は、電子署名や電子印鑑なども利用し、偽造や二重発行を防ぐようにしましょう。
必要に応じて外部サービスを利用する
「請求書払いを取り入れたいが、与信審査や管理の方法がわからない」という企業もあるのではないでしょうか。また、取引先が増えてくると、請求業務や入金確認業務に多大な時間を取られることも予想されます。
与信審査や管理のノウハウを知りたい、また請求の手間やミスを防止したいという場合は、請求書代行サービスの利用も検討しましょう。
請求書払いの悩みを解消する4つの方法
ここでは、請求書払いの悩みを解消する方法として、次の4つを紹介します。
- 請求代行サービス
- 与信管理システム
- 売掛保証サービス
- ファクタリングサービス
請求代行サービス
請求代行サービスは、請求業務の負担を大幅に軽減する効果的な解決策です。請求代行会社によってサービスの内容は異なりますが、例として以下の5つが挙げられます。
- 与信審査
- 請求書の作成・送付
- 入金状況の管理
- 未入金時の連絡
- 未入金時の保証
これらの機能により、企業は次のようなメリットを享受できます。
- 請求関連業務の時間と労力削減による業務効率化
- 手作業によるミスの減少
- 未回収リスクの軽減による資金繰りの安定化
特に、請求件数が多い企業や今後の増加が見込まれる企業、未回収金による経営リスクを抱える企業にとって、請求代行サービスは有効な選択肢となるでしょう。導入を検討する際は、自社のニーズに合わせてサービス内容や決済手段の多様性を比較し、現在の状況に適したサービスを選択することが重要です。
与信管理システム
与信管理システムは、取引先の経営状況や与信限度額などの情報を一元管理するシステムです。主な機能として、「取引先情報の自動収集」「モニタリング」「アラート通知」などがあります。
これらにより、与信判断の精度とスピードが向上し、リスク管理の効率化が図れます。具体的なメリットは以下のとおりです。
- 取引開始時の与信審査が容易になる
- 取引先の状況変化を継続的にモニタリングできる
- 財務状況の変化時に通知される
さらに、判断基準の明確化により、属人化や判断ミスの防止にもつながる可能性があります。また、与信管理の流れや判断基準の可視化により、社員の意識向上や理解の深まりも期待できるでしょう。
売掛保証サービス
売掛保証サービスを利用することで、未入金リスクの低減が期待できます。売掛保証サービスは売掛金が回収できない場合に保証を受けられるサービスで、高額取引や取引先の資金繰りに不安がある場合に有効です。
たとえば取引先の倒産や支払い遅延などが発生した際に、保証会社が売掛金の100%を支払ってくれるため、企業のキャッシュフローや業績の悪化を防げます。手数料は発生しますが、これにより未回収のリスクを軽減し、安心して取引を進めることが可能です。
ファクタリングサービス
ファクタリングサービスは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取るサービスです。これにより、取引先からの入金を待たずにキャッシュフローの改善が可能です。特に急な投資や資金繰りが必要な際に有効といえるでしょう。
なお、ファクタリングは融資ではないため、負債を増やすことなく資金調達ができます。また、審査も売掛先の信用力に基づくため、中小企業や個人事業主でも利用しやすいのが特徴です。迅速に現金化できる点と、少額からの取引も可能な場合がある点もメリットといえるでしょう。
請求書払い以外の支払方法
請求書払い以外の支払い方法も把握しておきましょう。
口座振替
商品の代金やサービス利用料が、銀行口座から自動で引き落とされるという支払方法です。事務所などの賃貸料や月極駐車場代、公共料金など、継続的に利用するサービスの支払いでよく使われています。
口座振替のメリットは以下の通りです。
【請求側のメリット】
- 代金を確実に回収できる
- 請求業務に時間をかけなくて済む
- 継続的に利用してもらえる可能性が高くなる
【支払う側のメリット】
- 口座に残高があれば、入金の手間がかからない
- クレジットカードの登録が不要
口座振替のデメリットは以下の通りです。
【請求側のデメリット】
- 口座振替開始まで時間がかかる
- 振替から自社への入金までに時間がかかる
【支払う側のデメリット】
- 口座振替手続きが必要
- 振替日までに口座にお金を入れておかないと引き落としができず、未入金扱いになる
クレジットカード決済
企業と個人間での取引で使われるイメージが強いクレジットカード決済ですが、最近では、割合は小さいながらも企業間の取引で使われるようになっています。
クレジットカードは、少額取引や多数の取引先を抱える企業にはメリットが大きい決済方法といえます。請求側、支払う側双方のメリット・デメリットを確認しておきましょう。
【請求側のメリット】
- 代金を確実に回収できる
- 請求業務に時間をかけなくて済む
【支払う側のメリット】
- 商品購入やサービス利用後、すぐに代金を支払わなくてもよい
- 支払いの一元管理ができる
- クレジットカードのポイントが貯まる
【請求側のデメリット】
- クレジットカード加盟店になる必要がある
- 決済手数料が発生する
【支払う側のデメリット】
- 限度額が決まっているため、高額の取引には向かない
- クレジットカードの請求日に間に合うよう、銀行にお金を入れておかなければならない
請求書払いのメリット・デメリットを理解してから導入を進めよう
請求書払いにすることで、請求や回収に関する業務を効率化できます。取引先も入金業務を効率化できるだけでなく、資金繰りに余裕が生まれるはずです。しかし、請求書払いには、入金期日が後日になるため回収できないおそれがあるというデメリットもあります。
取引先と請求書払いで取引をしたい場合は与信管理をしっかり行い、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
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