- 更新日 : 2024年8月8日
カーポートの耐用年数と減価償却費計算を解説
カーポートは車を日差しや雨風から守るための設備です。四方を壁で囲んだ施設であるガレージに比べ、屋根と柱だけを設置するカーポートは設置が簡易的であり、設置する場所を問わないメリットがあります。
社用車を保護するためにカーポートを設置することもありますが、どのような会計処理が必要になるのでしょうか。この記事では、カーポートの耐用年数や仕訳、減価償却の計算、固定資産税との関係について解説していきます。
カーポートは減価償却が必要?
カーポートは本体価格10万円代で購入できる低価格帯のものもありますが、積雪などに対応しているもの、2台以上に対応しているものなど、高額なものもあります。さらに、カーポート本体の価格に加えて工事費も必要になるため、全体の支出が100万円以上になることもあります。
少額の減価償却資産(取得価額10万円未満、または使用可能期間1年未満)に該当するときは一括で費用にできますが、上記の点を踏まえると、基本的には資産計上するものと考えた方が良いでしょう(ただし、少額減価償却資産の特例により青色申告書を提出する中小企業者であれば、30万円未満の資産については合計300万円(※合計額にはほかの特例対象になる減価償却資産を含む)まで費用に計上できます)。
なお、カーポートは、時の経過により価値が減少していく減価償却資産ですので、資産計上したものは減価償却(耐用年数に応じて費用に計上する手続き)が必要です。
減価償却については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
カーポートの耐用年数
カーポートは、固定資産のうち構築物に分類されます。構築物とは土地の上に固定されて建設された建物以外の設備を指します。
構築物の中にカーポートという分類はありません。そのため、構築物の金属造のもののうち、「その他のもの」に分類されます。この場合の法定耐用年数は45年です。
しかし、カーポートは簡易的な構築物になりますので、耐用年数45年は、実態とはややかけ離れた印象です。
法定耐用年数が実態とは合わない場合、かつ使用可能期間が法定耐用年数のおおむね10%以上短くなる場合、耐用年数の短縮制度を利用できます。資産取得後、所轄の税務署長に申請を行い承認されれば、使用可能期間を耐用年数とできる制度です。
構築物の金属造のもののうち、カーポートに造りが似た「露店式立体駐車設備」の耐用年数は15年ですので、カーポートの構造によっては、申請によって耐用年数を15年程度まで短縮できる可能性があります。
【構築物の耐用年数(一部抜粋)】
金属造のもの(鉄道業用や発電用などを除く) | 露店式立体駐車設備 | |
その他のもの (橋、サイロ、送配管、ガス貯そう、薬品貯そう、水そう及び油そう、浮きドック、飼育場、煙突、へい、など以外) |
参考:「減価償却資産の耐用年数表|佐賀市」をもとに作成
カーポートの減価償却費計算と仕訳例
カーポート取得時の仕訳と減価償却時の仕訳や計算について解説していきます。ここでは、耐用年数の短縮を受けなかったものとして、耐用年数45年を用いた減価償却の計算を見ていきましょう。
(取得時仕訳例)
2022年10月1日に1つ150万円(設置工事費込みの価額)のカーポートを小切手を振り出して取得した。当社の会計期間は4月1日から翌年3月31日である。
1つ150万円(設置工事費込み)で少額減価償却資産の対象とならないため、「構築物」として資産計上します。また、設置工事費はカーポートを使用するために必要な費用であるため、カーポート本体価格に工事費を含めて取得価額とします。
(減価償却仕訳例)
決算日2023年3月31日を迎えたため、当期に150万円で取得したカーポートの減価償却を行うこととした。間接法(減価償却累計額または構築物減価償却累計額の勘定科目を使用)により減価償却費を計算するものとする。
(※償却率は下部の償却率表を参照のこと)
※減価償却の定額法は、毎年一定の額を減価償却する方法のこと。減価償却の間接法は、構築物などの資産科目から直接的に減価償却費を控除するのではなく、減価償却累計額という科目に減価償却費を累積させて、間接的に資産から減価償却費の累計額を控除する方法のことをいいます。
(減価償却費の計算)
2016年4月1日以後に取得した構築物の減価償却方法は定額法のみが選択できます。今回の仕訳例では期中にカーポートを取得していますので、定額法の償却率を用いて計算した後、月割りで減価償却費を算出します。
【2007年4月1日以後取得の減価償却資産 定額法の償却率等表(一部抜粋)】
参考:「減価償却資産の償却率等表|国税庁」をもとに作成
カーポートに固定資産税はかかる?
カーポートは、固定資産税の対象資産(土地、家屋、償却資産)のうち、償却資産に分類されます。事業用に使用している償却資産で、かつ損金(法人税の場合)または必要経費(所得税の場合)に算入しているものは、原則として地方自治体に償却資産の申告を行わなくてはなりません。ただし、課税標準額が150万円未満のときは固定資産税の課税はありませんので、償却資産を申告する必要もありません。
事業用で使用しているカーポートは、償却資産として申告することで固定資産税が課税されることがあります。償却資産の固定資産税の税額は次の通りです。
固定資産税額(償却資産)=課税標準額(※1)×税率(通常は100分の1.4(※2))
※1 課税標準額は、取得価額、取得年月、耐用年数に基づいて計算した額です。
※2 固定資産税率は各市区町村によって定められています。一般的には1.4%ですが、異なる税率を設定している市区町村もあります。例:鳥取市では1.5%、箱根町では暫定的に1.58%
カーポートは減価償却の短縮も念頭に
カーポートを構築物として資産計上する場合の法定耐用年数は45年です。実態と比較すると耐用年数が大きくかけ離れてしまうこともありますし、除却までに減価償却が進まないことも想定されますので、カーポートを取得する際は、必要に応じて減価償却の短縮の申請も検討すると良いでしょう。
よくある質問
カーポートは減価償却が必要?
少額の減価償却資産に該当しない資産計上を行ったカーポートについては減価償却が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
カーポートの耐用年数は?
カーポートは、構築物の金属造のもののうち、その他のものに該当することから、原則的には45年が耐用年数となります。ただし、管轄の税務署長へ耐用年数の短縮制度の適用を申請すれば、15年に短縮できる可能性があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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