• 更新日 : 2024年9月6日

消化仕入れとは?具体例や会計処理、仕訳をわかりやすく解説

消化仕入れとは、主に百貨店や大型ショッピングセンターで採用される仕入形態の1つです。この記事では消化仕入れの基本事項および具体例やメリット・デメリット、仕訳例をわかりやすく解説します。消化仕入れによる取引を検討している方や、消化仕入れの仕訳が必要な経理担当の方などは、ぜひ参考にしてください。

消化仕入れとは?

消化仕入れとは、顧客に商品を販売した時点でその商品を仕入れたとする取引形態です。百貨店で多く見られ、売仕(うりし)や売上仕入れとも呼ばれます。消化仕入れと一般的な買取仕入れの特徴を以下で確認しましょう。

消化仕入れ買取仕入れ
概要商品が顧客に販売された時点で、販売者は商品を買い取り仕入れを計上商品が販売者の手元に到着した時点で商品を買い取り仕入れを計上
価格決定権サプライヤー(メーカー)販売者(百貨店など)
所有権サプライヤー(メーカー)販売者(百貨店など)
在庫リスクサプライヤー(メーカー)販売者(百貨店など)

消化仕入れでは、納品された商品を店頭で販売している時点の所有権や価格決定権、在庫リスクはサプライヤーに帰属します。この点が、買取仕入れとの大きな違いといえるでしょう。消化仕入れでは商品が売れたときに初めて仕入れが行われ、事前に設定した掛率分の手数料がサプライヤーから販売者に支払われます。

仮に、消化仕入れにより5万円の商品を掛率70で販売したとしましょう。販売者は1万5,000円(5万円×30%)を手数料として受け取り、メーカーは3万5,000円(5万円×70%)を売却代金として受け取ります。

消化仕入れと委託販売の違い

消化仕入れと似た取引形態に、委託販売があります。委託販売とは商品を仕入先から預かり、仕入先企業の代わりに販売する仕組みです。

預かった商品の販売実績に応じて、販売者はサプライヤーから販売手数料を受け取ります。富山の薬売りがルーツの取引方法で、現在では主に書籍販売で採用されています。

消化仕入れと委託販売の大きな相違点は、以下の2点です。

  • 委託販売に仕入れはない
  • 委託販売は納品後に保管責任が発生する

委託販売はあくまでサプライヤーから預かった商品を、サプライヤーに代わり販売する仕組みです。そのため、商品の仕入れ自体がありません。なお消化仕入れも委託販売も、納品時の所有権はサプライヤーにある点は共通しています。

消化仕入れ取引の具体例

消化仕入れでは、具体的にどのような取引が行われているのでしょうか。ここでは、消化仕入れの2つの例を紹介します。

例1.百貨店店舗にて顧客に販売

1つめの例は、百貨店店舗にて消化仕入れで納めた商品をお客さまに販売した場合です。1個1万4,000円の商品を、消化仕入れで仕入れたとしましょう。掛率70%とすると、販売価格は2万円(1万4,000円÷70%)です。

お客さまとの売買が成立すると、その時点でサプライヤーからの仕入れが発生します。売却が完了したら、原価である1万4,000円をサプライヤーに支払ってください。6,000円(2万円-1万4,000円)は、販売手数料として百貨店の利益になります。

例2.消化仕入れ契約で複数個の商品を仕入れ販売

2つめの例は、消化仕入れ契約で複数商品を仕入れて販売した場合です。仮に、1つ1万円の品物を消化仕入れで10個取引したとしましょう。その後、1個1万3,000円で4個売却した場合、販売会社は4万円(1万円×4個)を仕入代金としてサプライヤーに支払います。そして、1万2,000円(3,000円×4個)の販売手数料を受け取ります。

店舗に納品した商品は10個ですが実際に仕入れに計上する数は売却した4個分になる点が、消化仕入れのポイントといえるでしょう。なお売れ残った商品は、サプライヤーに返品可能です。

消化仕入れのメリット・デメリット

消化仕入れは、一般的な買取仕入れとは取引方法が大きく異なります。そのため、消化仕入れを導入するのであれば、ここで解説するメリット・デメリットをしっかりと確認したうえでスタートすることが肝心です。

消化仕入れのメリット

サプライヤーと販売者それぞれにおける消化仕入れの主なメリットは、以下のとおりです。

サプライヤーのメリット販売者のメリット
  • 商品を移動しやすい
  • 出品に必要な手間やコストを抑えられる
  • 在庫リスクがない
  • さまざまな商品を取り扱える

消化仕入れでは、納品時の所有権はサプライヤーが持ちます。そのため、納品後も商品を移動しやすいメリットがあります。消化仕入れによる取引をした店舗以外に、オンラインショップや他の店舗でも同じ商品を販売している場合、在庫状況に合わせて品物を動かせるため、ビジネスチャンスを逃すことなく販売ができるでしょう。

販売者のメリットは、在庫リスクを考慮せずにさまざまな商品を取り扱える点です。販売した分の仕入れ以外は発生しないため、多額の仕入れ資金が不要でコストを抑えながら取扱商品を充実させられます。

消化仕入れのデメリット

消化仕入れの主なデメリットは、以下のとおりです。

サプライヤーのデメリット販売者のデメリット
  • 入金までのタイムラグが長い
  • 販売量が読みにくい
  • 利益率が買取仕入よりも低い
  • 価格決定権がない

消化仕入れでは、サプライヤーに現金が支払われるまでに時間がかかるといった注意点があります。一般的に消化仕入れでは月末に在庫を締め、翌月以降に代金が支払われます。そのためサプライヤーの手元に現金が入るのは、早くても翌月以降になるケースがほとんどです。資金繰りが苦しくなることがないよう、サプライヤーはある程度の余裕資金を用意しておくことが重要です。

また消化仕入れは、販売者の在庫リスクや管理責任が発生しません。買取仕入よりも販売者側の負担が少ないぶん、利益率は一般的に低く設定されることは覚えておきましょう。

収益認識基準における消化仕入れ

収益認識基準とは「顧客との契約から生じた収益(売上)を、いつ、いくらで計上するか」を定めた会計基準です。2018年に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」が公表され、2021年4月以降開始事業年度において本格的に適用がスタートしています。

収益認識基準では、消化仕入れの会計処理も明確化されました。収益認識基準適用後の消化仕入れの考え方のポイントは、以下のとおりです。

【収益認識基準適用後の消化仕入れの会計処理】

  • 消化仕入れは代理人取引とし、収益は総額ではなく純額で計上する

消化仕入れの会計処理においてポイントとなるのは、販売者が自らサービスを提供しているといえるかどうかです。消化仕入れにおいて販売者は、在庫リスクや価格決定の裁量権を有していません。そのため収益認識基準適用後は、販売者は自らサービスを提供しておらず、代理人として商品を販売する立場とみなされます。

代理人とされた場合、販売者は販売手数料として受け取る金額以外を、売上高として計上できなくなりました。収益認識基準適用前は商品の販売により得られた対価のすべてを売上高として計上していたため、消化仕入れを導入していた販売者の多くは、基準適用に伴い売上高が減少しています。

売上が減少したことで、経営指標に影響がでたケースもあるようです。ここでは、売上高減少の影響を受けた経営指標の一例を以下で紹介します。

指標概要計算式
売上高総利益率
  • 売上高に対する利益の割合で、収益性を示す
  • 適正な値は業種によって異なるが、一般的に高いほどよいとされる
(売上高-売上原価)÷売上高×100(%)
総資本回転率
  • 資産の運用効率を示す指標
  • 適正な値は業種によって異なるが、高いほうが経営はうまくいっているとされる
売上高÷総資産

売上高の減少により経営指標が変わると、経営状況が悪化したと判断される可能性もあります。場合によっては取引先や投資家、株主等の信頼低下につながる恐れがあることは押さえておきましょう。

参考:国税庁 「収益認識に関する会計基準」への対応について
参考:厚生労働省 経営指標の読み方

消化仕入れの仕訳例

最後に、消化仕入れの仕訳例を解説します。消化仕入れは、収益認識基準の適用により代理人取引とされることが多くなりました。ここでは、本人取引と代理人取引のそれぞれの仕訳例を確認しましょう。

仕訳例.1:本人取引の場合

消化仕入れによりA商店から納品した商品を売価10万円(掛率70%)で顧客に販売したときの仕訳は、以下のとおりです。

借方貸方適用
現金100,000円売上100,000円顧客に商品を販売して得た売上
売上原価70,000円買掛金70,000円商品の販売によって発生した、A商店からの仕入代金

本人取引では、売却代金の10万円すべてが売上として計上されます。

仕訳例.2:代理人取引の場合

消化仕入れによりA商店から納品した商品を、売価1万円(掛率80%)で顧客に販売したときの仕訳は、以下のとおりです。

借方貸方適用
現金10,000円買掛金8,000円商品の販売代金のうち、A商店に支払う仕入代金
手数料収入(売上)2,000円商品の販売代金のうち、販売者の収益となる手数料額

代理人取引では、売上から仕入値を引いた手数料収入(純額)が収益となります。

消化仕入れの概要と仕訳のポイントを押さえ、正しい会計処理を実現しよう

消化仕入れとは、主に百貨店で採用される取引形態です。売上仕入れまたは売仕(うりし)とも呼ばれ納品時に仕入れは行わず、顧客に商品を販売した時点でその商品の仕入が発生します。

消化仕入れでは、価格決定権や所有権、在庫リスクはサプライヤーに帰属します。販売者はリスクを抑えてさまざまな商品の取り扱いができる一方で、利益率は一般的な買取仕入れよりも低くなる傾向があることは押さえておきましょう。

2021年4月から収益認識に関する会計基準が適用されたことで、消化仕入れの仕訳は代理人取引として行うことになりました。消化仕入れを検討している方は、代理人取引での仕訳方法を事前にしっかりと確認してください。


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