- 更新日 : 2024年8月8日
法人税の節税対策は?社宅や保険・車など効果的な方法10選を紹介
法人税は法人が事業を行ううえで必要な費用ですが、適切な費用計上によって節税に結びつく方法があります。法人税を節税すれば、法人の利益を増やすことが可能です。この記事では、法人税の効果的な節税対策10選を紹介します。
目次
法人税とは
最初に法人税についておさらいしておきましょう。
法人税とは、法人の事業活動によって得られた所得に対して課される国税です。税額は所得金額に所定の税率をかけ、税額控除を差し引くことで算出されます。
所得金額とは、益金の額(商品・製品などの販売による売上収入や、土地・建物の売却収入など)から損金の額(売上原価や販売費、災害等による損失など、費用や損失に当たるもの)を差し引いた金額です(実際は、企業会計上の税引前当期純利益を基礎に、法人税法の規定に基づく所要の加算または減算を行い、所得金額を算出します。したがって、売上高が直接的に益金の額となるわけではありません)。
法人税が課されるのは、株式会社や有限会社、医療法人などの普通法人、および協同組合などがあります。また、公益法人等や人格のない社団等についても、収益事業から生じた所得は課税対象です。
法人税の申告・納付は、定款で定めた事業年度ごとに計算し、各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に行うことが必要です。期限までに法人税を申告・納付しなかった場合には延滞税が課せられます。
なお、法人税について詳しくは、以下の記事でも詳しく解説しています。
法人税の節税対策10選
法人税は、法人が事業を行ううえで必要な費用です。しかし、適切な費用計上を行うことで法人税を節税すれば、法人の利益を増やせます。ここでは、特に効果的な法人税の節税対策10選を紹介します。
1. 役員報酬を増やす
法人税の節税対策の代表的なものとして、役員報酬を増やすことが挙げられます。役員報酬は賞与も含めて、一定の要件を満たせば損金として計上が可能です。現在の役員報酬の増額、あるいは新たな役員の追加により役員報酬を増額すれば、課税所得を減額できます。
ただし、役員報酬を増額すれば、役員個人の所得税や住民税、社会保険料の金額が増えるため、トータルな納税額はかえって増えてしまうこともあります。役員の報酬額は税理士などと相談し、適正な金額とすることが重要です。
役員報酬の変更は、事業年度開始から3ヶ月以内であれば全額損金として計上できます。また、株主総会での決議も必要となるため、手続きに間違いがないよう注意しましょう。
2. 法人名義で車を所有する
法人名義で車を所有することで、車の取得費用や維持費、燃料費、保険料、高速料金などを損金として計上できます。
ただし、社用車をプライベートでも使用する場合には、利用規定を作成し、一定の利用料を会社に支払うなどをする必要があるでしょう。
3. 経営者の自宅を社宅にする
経営者の自宅を社宅にすれば、家賃のうち一定の金額を損金計上可能です。会社が受け取る必要がある賃料の額は、住宅の規模や所有者によって異なります。
4. 中小企業倒産防止共済に加入する
中小企業倒産防止共済(経営セーフティー共済)とは、取引先が倒産した際の連鎖倒産や経営難を防ぐための制度です。掛金を損金計上できるため、加入すれば節税できます。無担保・無保証人で、倒産による被害額と掛金総額の10倍の、いずれか少ない金額(上限8,000万円)まで借り入れができるほか、取引先の倒産により売掛金の回収が困難になった場合には、速やかな借り入れが可能です(ただし、この共済は業種によって加入できる基準が異なるため、注意が必要です)。
5. 福利厚生を充実させる
福利厚生を充実させ、かかった費用を損金として計上すれば節税が可能です。福利厚生の具体例には以下のようなものがあります。
・社員旅行
社員旅行の実施は社員のモチベーション向上につながります。社員旅行の費用を福利厚生費用とするためには、会社負担金額の一般的な目安として従業員一人当たり10万円以内、宿泊日数は4泊5日以内、従業員の50%以上が参加、といった条件を満たすことが必要です。
・健康診断
従業員の健康管理は企業を経営していくうえで重要です。従業員の健康診断にかかる費用は、一定年齢以上の希望者がすべて健診を受けられるものであれば、損金として計上できます。また、やはり希望者の全員を対象とする人間ドック費用も損金計上可能です。
・社宅の提供
従業員に社宅を提供すれば、かかった費用を損金として計上できます。ただし、社宅の固定資産税の課税標準額や総床面積などから計算される賃貸料相当額を従業員から受け取らないと、賃料相当額が給与とみなされ課税されるため注意しましょう。
・保険の加入
社員の養老保険・年金保険に会社として加入すれば、支払う保険料の一部を損金として計上できます。保険の加入は、退職金制度の一環として利用されることも多くあります。
・飲食費の負担
新年会や忘年会・送別会など従業員を対象とした食事会や、社内での従業員の食事の提供にかかった費用は、一定の要件を満たせば福利厚生費として計上できます。
6. 赤字分を繰り越す
赤字分を翌年度以降に繰り越せば、繰り越された赤字分を翌年度以降の所得と相殺できます。赤字分の繰り越しは、その期の所得金額の50%を限度に損金算入でき、法人の場合には10年まで可能です。法人税が膨らみそうな年度に備えて残しておくのも良いでしょう。
7. 貸倒引当金を損金として計上する
回収が見込めない売掛金を貸倒引当金として計上すれば、損金の扱いになるため、法人の所得が減額できます。ただし、貸倒引当金についても繰越限度額がありますので注意しましょう。
8. 古い在庫を処分する
古くなって売れなくなった在庫を不良在庫として処分すれば、以下のような方法で損金計上が可能です。
- 売却損:原価より安く売却した場合、原価との差額を損金計上
- 廃棄損:売却できずに廃棄した場合、原価の全額を損金計上
- 評価損:評価額が原価より下がった場合、原価との差額を損金計上
ただし、いずれも損金算入できるものは一定の基準があるため、要件の確認が必要です。
9.固定資産の実地調査による廃棄漏れの確認
費用が発生していても支払いは来期になる未払費用を今期内で計上すれば、今期の法人税が節税できます。未払費用の具体例は以下のようなものです。
・従業員の給与・賞与
今期内に締日があった従業員の給与・賞与の、支払いが来期になる場合には、未払費用として今期内での経費計上が可能です。
・固定資産税
固定資産税は市町村から課税の通知があった時点で、未払費用として計上できます。
10. 30万円未満の減価償却資産を一括計上する
青色申告をしている中小企業(ただし、資本金や従業員人数などの要件があります)は「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を利用して、30万円未満の減価償却資産については一括で損金として計上できます(年間合計300万円が限度)。償却期間で償却していくことと比べて、減価償却資産を取得した年度の課税所得の減額が可能です。
効果的な対策で法人税を節税しよう
法人税の節税対策には、役員報酬を増やす、経営者の車を社用車にする、あるいは経営者の自宅を社宅にするなどさまざまな方法があります。それぞれの要件を確認したうえで効果的な対策を実施して法人税を節税しましょう。
よくある質問
法人税とは?
法人税とは、法人の事業活動によって得られた所得に対して課される国税です。税額は所得金額に所定の税率をかけ、税額控除を差し引くことで算出されます。詳しくはこちらをご覧ください。
法人税の節税対策とは?
法人税の節税対策には、役員報酬を増やす、経営者の車を社用車にする、経営者の自宅を社宅にする、中小企業倒産防止共済に加入する、福利厚生を充実させる、などさまざまな方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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