• 更新日 : 2023年8月1日

立替経費精算を解説!改正電子帳簿保存法への対応まで

立替経費精算を解説!改正電子帳簿保存法への対応まで

会社が支払うべき経費を従業員が立て替えた経費を立替経費といいます。国税関係の帳簿書類の電子保存を認める法律に電子帳簿保存法がありますが、立替経費に関わる書類も電子帳簿保存法の対象となるのでしょうか。

この記事では、立替経費の概要を踏まえ、立替経費と電子帳簿保存法との関係、仮払との違い、立替経費の精算の流れについて詳しく説明していきます。

立替経費とは

立替経費とは、本来は会社の経費であるものの、すぐに決済できないなどの理由で従業員などが一時的に自己負担で支払った場合の経費です。取引先での営業で発生した接待飲食費の立替分、取引先訪問時の交通費、出張で発生した宿泊費などが立替経費になりやすい経費といえます。従業員が立替経費として支払った時点では会社の経費には計上されませんが、その後精算が行われることによって会社の経費に振り替えられます。

立替と仮払の違い

経費精算に関わる用語には、立替のほかに仮払があります。仮払とは、経費の名目や金額が確定できないときに概算で従業員に前もって現預金を支払うことをいいます。仮払は、従業員の一時的な負担を避けるために行われることが多く、出張にかかる交通費や宿泊費など、支払いの金額が大きくなりやすい場合などに使われます。従業員などに対して仮払が行われた分は、費用が確定した後、従業員からの申請によって精算されます。

立替と仮払の違いは、一次的な支払いの原資です。立替の場合は、直接の支払いは従業員の財産から行われますが、仮払が行われたときは会社の現預金から支払いが行われます。

立替経費精算の流れ

従業員などが経費を立て替えている状態のままでは会社の経費として計上できませんので、会社はその立替経費を精算して従業員に立替分を支払わなければなりません。一般的に立替経費精算はどのような流れで行われるのか、4つのステップに分けて説明します。

従業員が経費申請を出す

立替経費は、仮払いと異なり会社が事前に把握できない場合があります。会社が立替経費の存在を把握するためにも、経費を立て替えた従業員には速やかに経費申請をしてもらうのが第一ステップです。

領収書や明細書など、立替経費に関わる書類の提出はもちろん、従業員に具体的な経費の内容がわかるように申請してもらう必要があります。この申請の内容の書式が請者によって異なると、経費精算に必要な情報の不足や管理の手間が増大するおそれがあるため、あらかじめ会社側が作成した経費申請書で申請してもらうのが一般的です。

マネーフォワードクラウド経費では、立替経費精算に使える申請書のテンプレートを複数ご用意しています。立替経費精算のルールが定まっていないようなら、ぜひこれらのテンプレートをご利用ください。

管理者が承認する

従業員から立替経費申請が行われたなら、立替経費の内容が適切であるか、申請者の上司などの管理者が内容を確認して承認するのが一般的です。管理者において承認された立替経費精算書は、精算のため経理担当者へと回されます。

経理担当が内容を確認し、仕訳する

承認された立替経費精算書を経理担当者が確認し、適切な経費に振り分ける仕訳を行います。立替分の仕訳を行いますので、借方は旅費交通費などの経費の科目、貸方は立替金(未払金での処理も可)です。これにより、会社の経理上も立替金が認識されることになります。

従業員への精算金の支払い

給料支給日など、会社の規則に従い立替経費分を支払う処理を行います。支払い時に会計上発生している立替金は消滅することになりますので、借方に立替金(未払金での処理も可)、貸方に預金など、立替金支払い時の経理処理もあわせて行うようにしましょう。

立替経費精算と電子帳簿保存法との関係

立替経費は本来会社の経費であるため、社員から立替経費の証拠となる領収書なども申請と同時に添付してもらう必要があります。領収書など立替経費に関わる書類は取引を証明する書類として国税関係帳簿書類に該当するため、会社は保存する必要があります。ここでは、国税関係帳簿書類の電子保存に関わる電子帳簿保存法との関係について解説します。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、社会のデジタル化に対応するために国税関係帳簿書類の電子保存を認めた法律です。電子帳簿保存法は、電子データで作成した国税関係帳簿書類の電子保存に関わる電子帳簿等保存、紙で受領したデータの電子保存に関わるスキャナ保存、インターネット上で授受したデータの電子保存に関わる電子取引、の3つに区分されます。

電子帳簿等保存の対象になる国税関係帳簿書類には、帳簿作成に関わる契約書や領収書などの取引を証明するような書類も含まれます。そのため、立替経費精算で従業員に提出してもらった領収書も電子帳簿保存法の対象です。

電子帳簿保存法について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

紙の領収書を受け取った場合

国税関係帳簿書類の保存は、原則、原本での保存または紙に出力しての保存になります。そのため、従業員から紙で受領した領収書を電子帳簿保存法に則って電子保存しないときは、原本をそのままファイリングするなどして保存しなければなりません。

取引先から受領した紙の領収書を電子保存するときは、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件に従って保存を行います。領収書は、スキャナ保存の中でも、資金やものの流れに直結する重要書類に分類されますので、その他の書類よりも厳格な要件が求められます。

具体的には、入力期間の制限(最大2カ月とおおむね7営業日以内)を満たした保存やタイムスタンプの付与、検索機能の確保などの複数の要件を満たした保存が必要です。

電子データで領収書を受け取った場合

電子取引によりやり取りをした電子データは、2022年1月1日より電子保存することが義務付けられました(2024年1月1日からはプリントアウトした書面の保存のみでは対応不可となります)。

したがって、2024年1月以降は、従業員がインターネット上で予約や購入を行ってWeb領収書などを受領したときは、紙に印刷をして会社に提示しても電子取引の電子保存を行ったことになりません。

電子データで受領した領収書のデータは、立替経費精算を申請した従業員から会社に送ってもらう必要があります。ただし、すぐに会社がデータを収集できない場合もありますので、会社側で日付・金額・取引先に紐づく検索ができる状態で管理していれば、従業員が一定期間自身のパソコンなどに保存しておくことも認められます。

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)問10参照

会社側としては、電子データで領収書を受領した際の申請手続きやデータの保管についてあらかじめ取り決めを行い、従業員にフローを周知しておくとスムーズでしょう。

紙データのスキャナ保存も、電子取引データの電子保存も、それぞれ一定の保存要件が定められています。適切に保存を行うなら、電子帳簿保存法に対応したシステムを利用した保存が便利です。

ただし、2023年度改正によって次の猶予措置が整備されました。次の①と②の両方を満たしている場合、タイムスタンプや検索機能の要件は不要で、取得した電子データを保存することのみが求められるものです。

  1. 本来の要件により電子取引データを保存できないことを税務署長が「相当の理由がある」と認める場合
  2. 税務調査等の際、電子取引データの「ダウンロードの求め」などに応じることができる場合

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁電子帳簿保存法の内容が改正されました|国税庁

立替経費精算は電子取引の場合には電子保存が必須になる

立替経費精算では、従業員に立替の根拠になる領収書などを提出させる必要があります。この領収書が紙の領収書であれば原本のままで保存しても問題はありませんが、社員が電子メールなどで受領したWeb領収書などは電子取引に該当するため、電子帳簿保存法に則った電子保存が必要です。

電子取引は2022年1月1日より電子保存が義務化、猶予期間終了後の2024年1月1日からは完全な義務化となりますので、経費精算のフローの見直しなど、会社として電子取引の電子保存へ対応するための対応を進めておきましょう。

よくある質問

立替と仮払の違いは?

立替は従業員などが自身の財産で会社の経費などを立て替えることで、仮払は従業員が立て替えなくても良いようにあらかじめ概算分の現金等を支払うことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。

電子帳簿保存法とは?

国税関係帳簿書類の電子保存にかかる法律で、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つの区分があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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