- 更新日 : 2024年9月27日
決算書のもらい方は?何をもらうべきか、どう伝えるべきか解説
決算書のもらい方は、電話や対面、またはメールなどの文書で依頼し入手する、もしくは閲覧する方法が一般的です。ただし、決算書は企業にとって重要な情報が記載された書類であるため、誰にでも気軽に見せられるわけではありません。本記事では、取引先などの決算書が欲しい際にどのようにもらえばよいのか、決算書のもらい方について具体的に解説します。
目次
決算書のもらい方
決算書のもらい方は、メールや口頭でお願いしてもらう方法が一般的です。すでに関係性があるかどうかなど、取引先によってもらい方は異なるため、それぞれの取引先に合わせた方法で決算書をもらえるようお願いする必要があります。
すでに良好な関係を築いている取引先の場合
長年取引があり、すでに良い関係を築いている取引先や、営業担当が頻繁に先方に行く機会があり、相手方と比較的気楽に話ができる取引先の場合は、決算書をもらうハードルが比較的低いでしょう。これまでにも決算書をもらったことがある取引先も同様です。
先方を訪問したタイミングで、担当者に決算書が欲しい旨を伝え相談してみましょう。決算書は企業にとっての重要な書類なので、顔なじみの取引先であっても改めて丁寧にお願いする姿勢が大切です。
取引をはじめて間もない取引先の場合
取引を始めて間もない場合や、ある程度の取引実績はあっても初めて決算書の提出をお願いする場合は、もう少し慎重になる必要があります。
訪問する前にメールでアポイントを取る際に、可能であれば決算書をもらいたい、ということも一緒に知らせておきましょう。まだ十分に関係性が出来上がっていない取引先の場合、訪問時に突然決算書の提出をお願いすると警戒されるかもしれません。
訪問前にいったん決算書が欲しいことを打診しておき、訪問時に改めて担当者に決算書をもらえるようにお願いします。先に知らせておくことで、担当者があらかじめ上層部に話を通しておいてくれる可能性もあります。
取引をするか検討している場合
新規に取引をするかどうか検討している場合では、相手先が決算書の開示には慎重になるケースも多くあります。近年は、ビジネスの透明性が重視され、社内外ともに意識して情報公開をしていく流れがあるのも事実です。
新規取引先において、決算書の開示を求められるのはある程度予想できることのため、最初からあきらめずに打診してみましょう。ただし、決算書を求めるタイミングには注意が必要です。これから取引を始めようかという話が出た程度の初期段階など、具体的な契約についての話が出ていない状態でいきなり決算書の開示を求めると唐突に感じられるかもしれません。
条件交渉など取引開始にあたって話を進め、ある程度お互いに落としどころが見つかり、契約が視野に入っている段階で条件のひとつとして決算書の提示をお願いすることが望ましいでしょう。
決算書をもらうケースとは?
決算書はその企業の情報が詰まった重要書類です。開示にはリスクも伴うため、要求されたからと言って誰にでも見せられるものではありません。そのため決算書をお願いする十分な理由がないと、開示してもらうのは難しいといえます。
ここでは、決算書をもらえるようお願いするに足りるのはどのようなケースか、詳しく見ていきましょう。
取引先の与信状態の把握
新規取引先に対し決算書の開示を求めるのは、不自然なことではありません。特に、上場企業など一定以上の規模の企業になると、取引を検討している会社に対して与信状態の把握のために決算書の開示を要求するのは、ごく一般的です。
取引先の財務状況を決算書で確認し、健全な経営であるか、返済能力は十分かなどを判断します。リスクヘッジのために、新規取引先に決算情報をもらえるよう依頼するのは無理筋ではなく、自然な流れです。
場合によっては、決算書の開示を契約の条件とするケースもあります。
定期的な確認のため
どの企業においても、経営状態は刻々と変化しています。ある時点で健全な経営状態であっても、それ以降もずっと良い状態が続いているとは限りません。そのため、定期的に取引先の経営状態をチェックするために、決算情報の開示を求めることもあります。
一定の頻度で決算書類を確認し、キャッシュ・フローの変動を確認しておくことが取引の安全性にもつながるでしょう。
また、定期的に決算書類の確認を行っていない取引先において、社会情勢の変化や業界内で大きな動きがあったとき、業界に大きな影響を与える事件があった場合などに決算書の提出を求めるケースもあります。リーマン・ショックやロシアによるウクライナ侵攻、極端な円安、円高などが例として挙げられます。
取引先から決算書をもらう際はどの書類が必要?
決算書は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4種類で構成されます。上場企業の場合、このほかにキャッシュ・フロー計算書も必要ですが、非上場企業ではキャッシュ・フロー計算書の作成義務はありません。
特に重要視されるのは、「財務三表」と呼ばれる貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書です。中小企業の場合は、キャッシュ・フロー計算書を除きます。
決算書類をすべてもらえるのであればそれがベストではありますが、難しい場合は最低限貸借対照表、損益計算書をもらうようにしましょう。
可能であれば税務申告書一式をもらう
入念な確認が必要なケースなどにおいては、可能であれば税務申告書一式をもらえるようにお願いしてみましょう。税務申告書類は法人税など納税申請のために税務署に提出する書類で、申告書の後半部分に決算書と同じ内容が添付されています。
財務三表の内容に加え、各項目の詳細な内容まで確認できます。売掛金や未収入金、受取手形は相手先や金額、借入金は借入先や利息、担保の有無までわかるため、決算書のみをもらうよりも多くの情報が入手できます。
その分取り扱いには、細心の注意を払いましょう。機密扱いでコピーをもらえない場合でも、その場で書類を出してもらって内容を確認し、気になるポイントについて質問するという方法もあります。
取引先から決算書をもらうにはどう依頼すべき?
決算書はどの企業にとっても重要な書類であり、中には「見せたくない」と考えている企業もあるかもしれません。決算書をもらえるようにお願いする際には、ビジネスマナーにのっとり失礼のないように依頼することが大切です。
以下で、口頭で依頼する場合と、メールなどの書面で依頼する場合の具体例をご紹介します。
対面・電話など口頭で依頼する場合
電話や対面など、口頭で依頼する場合は以下のようにお願いしてみましょう。新規契約を検討している相手先に対する例文です。これを基本に、状況に合わせてアレンジしましょう。
「この度のご契約につきまして、積極的に検討させていただきたいと考えております。つきましては、もし可能でございましたら御社の決算書類を拝見することは可能でしょうか。」
即答できず、いったん持ち帰っての検討となるケースも少なくありません。その場合は、「お忙しいところ大変恐縮ではございますが、ご検討いただけますよう何卒よろしくお願いいたします」と、検討してもらえるようにお願いすることを忘れないようにしましょう。
対面の場合は、言葉遣いや言い回しだけでなく態度、表情も大切です。また、電話は相手の顔が見えない分より丁寧な対応を心掛けましょう。
メールなど書面で依頼する場合
メールなどの書面でお願いする場合の文面をご紹介します。決算書のやり取りを希望する場合、取引がない状態であるとしても契約の前段階などで何度か顔を合わせたことがあるケースがほとんどでしょう。
決算書が欲しい旨を伝え、その説明のためアポイントをお願いする内容の一般的な文面をご紹介します。宛名、署名部分は省略します。
お世話になっております。
株式会社〇〇の△△でございます。
先日はお時間をいただき、ありがとうございました。
この度は、貴社とのご契約に向けた準備を進めさせていただきたく、ご連絡させていただきました。ご契約手続きに際して、貴社の最新の決算書類(損益計算書、貸借対照表など)をご提出いただければと存じます。
また、詳細について直接お話しさせていただきたく、可能でございましたら今月中にお打ち合わせのお時間を頂戴できれば幸いです。ご都合の良い日時をいくつかご教示いただけますでしょうか。
ご多忙のところ恐縮ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
決算書類で必要なものは業種などによって異なるため、決算書類として一般的な財務三表のほかに必要なものがあれば明記しておくとよいでしょう。
決算書を確認する際に注意すべきポイント
決算書からはその企業の経営状態や財務状況が把握できます。ここでは、決算書で最低限チェックするべき点をご紹介します。
純利益がマイナスになっていないか
貸借対照表は「バランスシート」とも呼ばれ、「資産」「負債」「純資産」を表す書類です。決算時点のその企業の財務状況がわかります。また、事業年度の利益を表した書類である損益計算書と合わせると、企業の資産や利益といった財務状況が見えてきます。
損益計算書で確認できる当期純利益はその事業年度の最終的な利益であり、ここがマイナスになっていないかをまず確認しましょう。ただし、当期純利益がプラスで黒字であったとしても、営業利益が赤字であれば要注意です。本業で儲けを出せておらず、本業以外で得た営業外収益で補うことで黒字にしているため、あまり良い経営状況とはいえないためです。
損益分岐点をチェックする
損益分岐点を把握することで、黒字か赤字かを把握できます。損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じ金額になる点、つまり利益がゼロになる売上を指します。
損益分岐点で売上がゼロの状態は黒字でも赤字でもなく、事業を運営するのに最低限の経営状態を維持している状態です。損益分岐点を超えていれば黒字で、下回っていれば赤字と判断できます。
営業キャッシュ・フローに注目
相手先がキャッシュ・フロー計算書を作成している場合は、貸借対照表、損益計算書に加えてキャッシュ・フロー計算書も併せて入手したいところです。
キャッシュ・フロー計算書は、当該事業年度における企業の現金の流れを把握できる書類です。貸借対照表や損益計算表からはわからない現金の流れや、増減の原因を読み取れます。
税務申告書を入手できた場合は税務署印を確認する
税務申告書類一式が入手できた場合、または閲覧が可能な場合は、決算書類による財務状況の確認の前に、表紙に税務署印が押されているかどうかを確認しましょう。
税務署印があれば、その申告書類一式は実際に税務署に提出されたものの写しであるため、問題はありません。問題となるのは税務署印が押されていないケースです。
税務署印が押されていないものは、実際に税務署に提出された書類ではない可能性があります。なお、e-Taxで提出している場合は「受信通知」という画面が受付印の代わりになりますので、「受信通知」の画面コピーも入手しましょう。
決算書をもらう際は、必要書類を明確に伝えよう
一般的に決算書をもらう際には、財務三表と呼ばれる重要書類のうち貸借対照表、損益計算書は欠かせません。キャッシュ・フロー計算書を作成していれば、併せて入手しておきましょう。そのほかにも必要な書類がある場合は、何が必要かを明確に伝えることが大切です。
場合によっては、決算書をもらうことにハードルの高さを感じることがあるかもしれません。しかし決算書によって相手方の経営状況を知り安全な取引が可能になるなど、メリットが多いため相手方を不快にさせないもらい方を身に付けておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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