- 作成日 : 2025年4月30日
リース満了後の買取仕訳は?税務・会計処理をわかりやすく解説
会社でリース契約していたコピー機やパソコンなどを、リース期間の満了後にそのまま買い取るというケースはよくあります。業務に慣れた機器を継続して使いたいときや、新たな投資を抑えたいときに有効な方法です。ただし、会計処理としては「リース取引」と「固定資産の取得」が交差するため、勘定科目の選び方や仕訳に迷うこともあるでしょう。この記事では、リース満了時の買取に関する仕訳を、契約の種類や資産の内容ごとにわかりやすく解説します。
目次
リース満了後の買取仕訳とは?
リース契約が終了し、そのリース物件を買い取る場合は、リース資産として扱っていたものを新たに固定資産として取得する処理が必要になります。
リース期間中の処理と、買取時の処理では勘定科目も仕訳も異なるため、それぞれを分けて考えることが大切です。
このときの会計処理には、次のような内容が含まれます。
- リース期間満了によりリース債務が消滅する
- 残存物件の買取代金を資産として記録する
なお、買取価格が少額であったり、物件が使用済みで価値が下がったりしている場合は、「固定資産」とせずに少額減価償却資産として一時に費用処理することもあります。
リース満了で買取る仕訳の流れ
リース契約が終了したとき、会社がそのリース物件を買い取る場合は、これまでのリース会計処理とは別に、固定資産の新規取得として扱う必要があります。
このときの処理は、以下の3つのステップで進めると考えやすくなります。
ステップ1:リース期間中の処理を終了する
リース契約が満了する時点で、リース債務の返済やリース資産の減価償却が完了していることを確認します。
この段階では、特別な仕訳は発生しませんが、リース会計処理がきちんと完了していることが前提となります。
- 所有権移転外ファイナンス・リースであれば、リース資産の残存簿価とリース債務残高がゼロになっている
- オペレーティング・リースであれば、資産計上はされていない
この確認ができたら、次のステップに進みます。
ステップ2:買取代金を資産として記録する
リース満了後に物件を買い取った場合、その金額が固定資産の取得価額になります。
例)パソコンを1台 22,000円(税込)で買い取った場合(税抜処理)
借方(費用・資産) | 貸方(負債・資本) | ||
---|---|---|---|
備品 | 20,000円 | 普通預金 | 22,000円 |
仮払消費税 | 2,000円 |
買取価格が10万円未満であれば、少額減価償却資産として一時に費用処理することもあります(次項で解説)。
ステップ3:償却資産として管理を開始する
取得した資産は、自社の固定資産として管理・減価償却の対象となります。償却方法は、取得金額や耐用年数に応じて定め、減価償却費として計上します。なお、取得した資産はあくまで中古資産のため、中古資産の耐用年数とすることができます。
たとえば、20,000円の備品で耐用年数4年とした場合:
- 減価償却費(定額法):5,000円/年
- 残存価額は基本的に1円
このように、リース満了後の買取は、「通常の資産取得」と同じ仕訳が必要です。
リース満了後の買取仕訳|契約の種類ごとの具体例
リース契約には大きく分けて2つの種類があります。それぞれ会計処理の考え方が異なるため、買取時の仕訳も変わってきます。
ファイナンス・リースの場合
ファイナンス・リースとは、実質的に購入と同じような形で、リース資産とリース債務を貸借対照表に計上するタイプのリースです。
リース期間中は減価償却やリース債務の返済・利息の支払いの処理が必要で、リース物件の所有権が移転しない所有権移転外ファイナンス・リースの場合、満了時には資産の残存簿価がゼロになるのが一般的です。
満了後に少額で買い取る場合、次のような仕訳になります。
例)パソコンをリースしていたが、満了後に1,100円(税込)で買い取った(税抜処理)
借方(費用・資産) | 貸方(負債・資本) | ||
---|---|---|---|
備品 | 1,000円 | 普通預金 | 1,100円 |
仮払消費税 | 100円 |
リース資産の残存価額がゼロである場合、実質的に「新規取得」として扱います。
取得価額が10万円未満であるため、少額減価償却資産として一時に費用処理することも可能です。
オペレーティング・リースの場合
オペレーティング・リースは、賃貸借取引と同じ考え方で、リース資産や債務を帳簿に計上しないリース契約です。月々のリース料を経費として処理します。。
このタイプのリースでも、満了後に物件を買い取る場合は、通常の資産取得と同様に仕訳します。
例)コピー機を22,000円(税込)で買い取った(税抜処理)
借方(費用・資産) | 貸方(負債・資本) | ||
---|---|---|---|
備品 | 20,000円 | 普通預金 | 22,000円 |
仮払消費税 | 2,000円 |
オペレーティング・リースでも、物件の買取は「新規の取得」になります。
先ほどの例と同様に、この取得価格が10万円未満であれば、少額減価償却資産として一時に費用処理することも可能です(次の章で詳しく解説します)。
このように、リースの種類によって「それまでの扱い」は違っても、満了後に物件を買い取った時点での処理は基本的に固定資産の取得と同じになります。
リース満了後の買取仕訳|商品や金額ごとの具体例
リース満了後の買取では、対象となる物件の種類や金額によって、勘定科目や仕訳の処理に少し違いが出てきます。ここでは代表的な5つのパターンを見ていきましょう。
コピー機・プリンターの買取
例:3年間リースしていたコピー機を、満了後に33,000円(税込)で買い取った(税抜処理)
借方(費用・資産) | 貸方(負債・資本) | ||
---|---|---|---|
備品 | 30,000円 | 普通預金 | 33,000円 |
仮払消費税 | 3,000円 |
備品として資産計上します。10万円未満の少額の減価償却資産であるため、一時に費用処理することも可能です。
パソコンの買取
例)リース満了後にパソコンを11,000円(税込)で買い取り、消耗品費として即時費用処理を選択(税抜処理)
借方(費用・資産) | 貸方(負債・資本) | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 10,000円 | 普通預金 | 11,000円 |
仮払消費税 | 1,000円 |
取得価格が10万円未満の場合、「少額減価償却資産として一時に費用処理も可能です。
社用車の買取
例)5年リースしていた社用車を220,000円(税込)で買取(税抜処理)
借方(費用・資産) | 貸方(負債・資本) | ||
---|---|---|---|
車両運搬具 | 200,000円 | 普通預金 | 220,000円 |
仮払消費税 | 20,000円 |
20万円以上のため、原則として固定資産に計上し、耐用年数に応じて減価償却を行います。なお、30万円未満のため、要件を満たす場合、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例により一時に費用処理することも可能です。
倉庫・事務所の買取(建物扱い)
例)リース満了後、倉庫を880,000円(税込)で買取(税抜処理)
借方(費用・資産) | 貸方(負債・資本) | ||
---|---|---|---|
建物 | 800,000円 | 普通預金 | 880,000円 |
仮払消費税 | 80,000円 |
固定資産に計上した倉庫は、構造や用途により区分して建物や器具及び備品として記録します。
少額資産(10万円未満)の買取
例)シュレッダーを8,800円(税込)で買い取り、即時費用処理(税抜処理)
借方(費用・資産) | 貸方(負債・資本) | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 8,000円 | 現金 | 8,800円 |
仮払消費税 | 800円 |
10万円未満のため、原則として費用処理。資産計上せず、減価償却も不要です。消耗品費、雑費など用途に応じた科目を使います。
このように、資産の内容・金額・使用目的によって、会計処理や仕訳の方法が変わることがあります。
リース満了で買取する会計処理や仕訳のポイント
リース物件の買取処理は、一見すると通常の固定資産取得と変わらないように見えますが、リース期間中の処理とのつながりや、金額・用途ごとの勘定科目の選び方によって仕訳に差が出てきます。
実務で処理をスムーズに進めるために、次のようなポイントに注意しましょう。
買取価格が少額の場合、費用処理も検討できる
取得金額が10万円未満の資産であれば、備品などに資産計上せず、「消耗品費」や「雑費」などで費用処理することが可能です。
これにより、減価償却の必要がなくなり、帳簿管理の手間も軽減されます。
ただし、10万円を超える場合や、継続的に使用する設備については、固定資産として計上し、減価償却を行うのが原則です。
ファイナンス・リース契約なら「再取得」として扱う
ファイナンス・リース契約では、すでにリース期間中にリース資産・債務が帳簿に計上されているため、買取時にはそれをいったん終了したうえで新規取得する形で処理します。
そのため、「ファイナンス・リースの会計処理」を行っていたことを忘れずに確認しておく必要があります。
消費税の処理も忘れずに
リース満了後の買取でも、消費税は課税取引として処理されます。
税込価格で購入した場合でも、税抜処理を採用している場合は、仮払消費税を分けて仕訳することが必要です。
また、少額減価償却資産であっても、消費税の控除対象となるため、税区分の判断を間違えないようにしましょう。
勘定科目は資産の用途や性質に合わせて使い分ける
パソコンやコピー機などは「器具及び備品」
社用車は「車両運搬具」
倉庫は「建物」または「器具及び備品」
上記のように、資産の種類や構造・用途によって正しい勘定科目を選ぶことが大切です。
処理に迷ったときは、固定資産台帳を見直すと、分類の参考になることもあります。
過去のリース処理との整合性を確認する
リース資産だった物件を買取する場合、リース期間中にどのような会計処理がされていたかを事前に確認することが重要です。
- オペレーティング・リース → リース料として費用処理のみ
- ファイナンス・リース → 資産・負債として記録済み
減価償却のスタートも忘れずに
固定資産として記帳する場合は、買取月(使用開始日)から減価償却がスタートします。償却開始月に応じて月割り計算を行い、正確な固定資産台帳を作成しましょう。
【2027年4月から】新リース会計基準が導入された後はどうする?
2027年4月以降、企業会計基準委員会(ASBJ)による新しいリース会計基準が適用される予定です。この新基準では、これまでオフバランス(帳簿外処理)だったリースも、原則として貸借対照表に計上することが求められます。
現在は、オペレーティング・リースとファイナンス・リースに分けて処理されていますが、新基準ではそれによる会計処理の差がなくなり、ほぼすべてのリースが「使用権資産」として資産計上されるようになります。
新基準のポイント
- オペレーティング・リースも資産計上の対象になる
- 使用権資産とリース負債をバランスシートに計上
- 減価償却と利息費用を分けて損益計算書に表示
- 短期リース・少額リースのみ簡便的な処理(オフバランス)が可能
これにより、従来リース料を費用として計上していた会社も、固定資産台帳や仕訳の内容が大きく変わることになります。
リース満了後の買取仕訳にどう影響する?
新基準下では、リース契約の内容によらず、原則として「固定資産の勘定科目(建物及び構築物、機械装置及び運搬具など)」か「使用権資産」としてリース物件を管理していくことになります。
リース終了時に物件を買い取った場合でも、
- 使用権資産・リース負債の整理(リース満了)
- 物件の新規取得(買取処理)
というように、「リース物件から自己所有物件への切り替え」のための仕訳が必要になります。
したがって、仕訳例としては以下のようなステップが想定されます。
- 使用権資産の帳簿からの除却
- 新たな固定資産の取得として資産計上(買取価格で)
- リース負債の消滅処理
実務で今から準備できること
- 現在のリース契約を一覧化し、2027年以降に影響が出る契約を洗い出しておく
- 買取オプション付きのリース物件があるかどうか確認する
- 会計ソフトや固定資産台帳の設定等(勘定科目の追加や資産登録など)を準備しておく
今のうちから、リース満了時の会計処理が新基準下でどう変わるのかを想定しておくことが、移行時の混乱を減らすポイントになります。
リース買取の仕訳はパターンを押さえよう
リース満了後の買取仕訳は、「固定資産の取得」として処理するのが基本です。契約の種類や買取金額によって勘定科目や費用計上の方法が変わるため、会計処理に一貫性をもたせるにはパターンごとに仕訳を整理しておくことが大切です。一時償却や消耗品費扱いで済む少額減価償却資産から、社用車や倉庫のような高額資産まで、仕訳ルールを明確にしておくことで、日々の記帳と決算処理の精度が自然と高まります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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