- 更新日 : 2024年10月17日
個人事業主が国民年金を支払った際の勘定科目は?仕訳方法を解説
個人事業主の場合、国民年金の保険料を経費に計上はできませんが、社会保険料控除の対象となりますので、所得から控除はできます。また、国民年金保険料を事業用口座から支払っている場合、その際に使用する勘定科目は「事業主貸」です。
今回は個人事業主が国民年金を支払った際の会計処理や仕訳例について解説します。
国民年金を仕訳する際の勘定科目
国民年金は日本の公的年金制度のことを指します。老齢・障害・死亡を理由として、働けなくなった場合や収入が減少したときでも、加入者本人やその家族が暮らしていけるよう国が経済的に支援する制度です。
日本の年金制度は「国民皆年金」と呼ばれ、原則として20歳以上60歳未満の人は全員国民年金に加入し、保険料を支払わなくてはいけません。国民年金は保険料の支払期間に応じて、受け取る年金額が異なります。満額で受け取れるのは、「780,900円×改定率(物価や賃金の変動を考慮した調整率)」で算出された金額(年間)です。
日本の年金制度は、働き方に応じて加入する年金の種類や支払方法が異なります。個人事業主が加入義務を負うのは国民年金のみなのに対して、会社員は厚生年金にも加入するのが基本です。また会社員は年金保険料が給与から天引きされるのに対して、個人事業主は納付書や口座振替などで自ら支払の手続きを行います。
プライベートな口座から国民年金の保険料を支払った場合は仕訳の必要はありません。一方、事業用の口座から支払った場合、仕訳の必要があります。事業に関係があるとはいえないものの、事業用の資金額に変動が生じているためです。
年金保険料は事業に関係のない個人的な支出なので、勘定科目には「事業主貸」を使用してください。
個人事業主にとって国民年金は老後の備えになるだけでなく、節税にもつながるので保険料はきちんと納付しましょう。
国民年金の支払いは社会保険料控除になる
国民年金の保険料として拠出した金額は全額「社会保険料控除」に算入できます。つまり、確定申告において年間に支払った保険料を所得から控除する処理が認められます。
国民年金の保険料は、20歳以上であれば会社員や個人事業主など立場にかかわらず納める必要があるものです。事業上の経費には算入できない一方、所得控除の一種として所得税の負担を減らす一定の効果が認められます。
国民年金以外も、社会保険料控除の対象は厚生年金、健康保険、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療保険などの保険料も含まれます。
個人事業主はじめ確定申告を行う人は、国民年金の保険料を所得控除に含めるかどうかで納税額が大きく変化する可能性もあるので、忘れないように注意が必要です。
控除の対象となるのはその年の12月31日までに納付した保険料なので、未納分がある場合は年内に納付した方が良いでしょう。また控除の対象となるのは、自己の分だけに限りません。
居住者が、自己と生計を一にする配偶者およびその他親族の分の保険料も支払っている場合、その保険料も社会保険料控除の対象とすることが可能です。
確定申告の際は証明書類として「社会保険料控除証明書」の添付が必要なので注意してください。社会保険料控除証明書は10〜11月の間に対象者の自宅に届けられるので、確定申告の時期までなくさず保管しておきましょう。ただし、e-Taxで電子申告する場合、添付は不要です。
個人事業主で国民年金の控除を受けるための必要書類や申告書の書き方については、次の記事で詳しく解説しています。
国民年金を事業主貸で仕訳する場合
事業に使用している口座から国民年金の保険料を支払う場合、必要経費としてではなく「事業主貸」で仕訳してください。事業主貸は自身の生活費をはじめ、事業とは関係ない費用を支払うために事業用口座から預金を引き出した場合に使用する勘定項目です。
(仕訳例)
事業用の口座から国民年金の月額保険料1万6,610円を支払った
ポイントは事業用の口座から保険料を拠出した場合にのみ、仕訳が必要であることです。個人用の口座や現金から国民年金を支払ったときは、事業資金に影響がないため、仕訳を行う必要がありません。
65歳に達し、年金を受け取る際も同様、仕訳は不要です。
国民年金は事業用口座から支払った場合のみ仕訳の必要あり
国民年金の保険料は、プライベートの口座や現金から支払った場合、仕訳の必要はありません。事業との関係性がないため、日々の食費と同様、個人的な支出とみなされるためです。
しかし事業用口座から国民年金を拠出したのであれば、事業用資金に移動が生じるので、記帳の必要があります。
普通預金と対になる勘定科目として使用するのは「事業主貸」です。国民年金は厚生年金がなく、老後の保障が薄い個人事業主のセーフティーネットとして重要な制度です。会計処理の必要・不要にかかわらず、保険料をきちんと納付し続けることをおすすめします。
よくある質問
個人事業主が支払った国民年金の勘定科目は?
事業用口座から事業用以外の費用を支払ったときの勘定科目である「事業主貸」を使用します。詳しくはこちらをご覧ください。
国民年金の支払いを仕訳する必要はある?
国民年金の保険料を事業用口座から支払った場合は仕訳の必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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