• 更新日 : 2021年6月11日

固定比率とは?計算式や目安、改善方法までわかりやすく解説

固定比率とは?計算式や目安、改善方法までわかりやすく解説

「固定比率」とは、会社の長期的な支払能力を表す指標です。一般的な目安は「100%以下」になることが望ましいですが、業種によってはこの数字が参考にならない場合もあります。そこで今回は、固定比率の基本的な計算式からその意味、固定比率が高い場合にはどう改善していけばいいのかなどについて解説します。

固定比率とは

固定比率とは、自己資本に対して固定資産がどの程度あるかという安全性(支払能力)を示す指標です。
自己資本と固定資産を比較することによって、その時点の会社の長期的な支払能力を分析することができます。

具体的には、「決算日から1年以内に回収が予定されていない資産」を指し、土地や建物、設備機械、無形固定資産などが該当します。短期的に現金化できる「流動資産」とは違ってすぐには回収できないため、返済義務のない自己資本または、長期的に返済する固定負債資金調達することが望ましいです。固定比率では特に、返済義務のない自己資本を重視します。

また、固定比率は100%以下が望ましく、これによって「長期的な支払能力がある」と判断できます。

しかし、計算の上では負債を無視しているため、100%を多少超える場合は固定比率に関連する指標の流動比率や固定長期適合率を加味するべきであることや、実際に金額で中身を見ないと安全性がわからないというデメリットがあります。

固定比率の計算方法

固定比率の計算式は以下の通りです。

【固定比率の計算式】

固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100 (%)

※自己資本 = 純資産 - 新株予約権 - 非支配株主持分(連結財務諸表

以下の例を使って固定比率を計算します。

貸借対照表(B/S)
流動資産90流動負債70
固定負債30
固定資産110自己資本100
合計200合計200

固定比率の計算

固定比率は以下の通り110%になります。

固定資産 110 ÷ 自己資本 100 × 100(%) = 110(%)

上記の例では、固定比率が100%を超えているため、安全性に少し問題があるとされます。しかしこれを精査すると、固定負債30と自己資本100の合計130が固定資産110を上回っているため、安全性にそこまで問題はないという判断ができるでしょう。

なお、ここでは数値を使いましたが、後述する「流動比率」「固定長期適合率」を使って精査することも可能です。

固定比率の目安

固定比率は一般的に100%以下を目安として安全性を判断します。
「100%」は、自己資本と固定資産が同じであるということです。つまり、返済義務のない自己資本で、長期的に回収していく固定資産を運用できていることになります。

反対に、100%を超えると安全性に問題があると判断でき、数値が高ければ高いほど危険性があることになります。
ただし、すぐに危険と判断するのではなく、関連する指標や、固定負債の金額を見る必要があります。上述した例でも解説した通り、自己資本と固定負債の合計金額が固定資産の金額を上回っている限りは、危険ではない可能性が高いためです。この状態は、返済義務のない自己資本と長期的に返済する固定負債で、固定資産を運用されている状態であるため、支払能力(安全性)に問題ないことが多いです。

固定比率が高い場合の改善方法

固定比率が高い場合の改善方法としては、上述した計算式に沿って考えると、固定資産を減少させる、または自己資本を増加させることになります。

固定資産を減少させる

固定資産を減少させるには「除却・売却を行う」または「そのまま使用を続ける」のどちらかの方法になります。固定比率が高い原因を固定資産に求めると、遊休資産が多い、または高額な固定資産を購入した初期段階である、この2つのどちらかです。

「除却・売却を行う」に関しては、事業上で使用していない固定資産(遊休資産)がその対象になります。しかし、不動産などは簡単に売却できません。固定比率が高い原因に、遊休資産が多い場合は、長期的な計画の上で除却・売却を行っていくことになります。

「そのまま使用を続ける」についてはまず、固定資産は基本的に金額が高く、長期的に使用していくことを前提に購入した資産がほとんどであることを理解しておきましょう。一部の固定資産は、減価償却を通じて毎年一定額が減少していきます。従って、固定資産をそのまま使用し続けることで固定比率は下がっていくのです。

自己資本を増加させる

自己資本を増加させるには「増資を行う」または「配当金を減らす」のどちらかです。

まず「増資を行う」は、新たに株式を発行することや出資金を増やすことが考えられます。資本金資本準備金を増加させると、固定比率の低下につながります。

次に「配当金を減らす」については、配当金を払うと利益剰余金が減少するため、結果として自己資本の減少につながります。そのため、配当金を払わない、または配当金を減らすという方法を採ることになります。なお、配当金を減らして会社の資金とすることを「内部留保(ないぶりゅうほ)」といいます。

固定比率に関連する比率
固定比率には「負債を無視し自己資本を重視している」というデメリットがあります。このデメリットを補足するものとなる「流動比率」と「固定長期適合率」について説明します。

流動比率

流動比率は、流動負債に対して流動資産がどの程度あるかという短期的な支払能力を表す指標です。

【流動比率の計算式】

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100(%)

流動比率は200%あると短期的な支払能力に問題がないと判断でき、高ければ高いほど望ましいです。逆に、100%を下回ると支払能力に問題があるとされます。

固定長期適合率

固定長期適合率は、自己資本と固定負債に対して固定資産がどの程度あるかという長期的な支払能力を表す指標です。

【固定長期適合率の計算式】

固定長期適合率(%) = 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債) × 100(%)

固定長期適合率は100%以下であることが望ましいです。
逆に100%を超えると支払能力に問題があります。この場合、固定比率よりも危険度が高いです。

さらに、固定長期適合率には「流動比率」とトレードオフの関係性があります。
望ましいのは、流動比率が大きく固定長期適合率が小さい状態です。反対に、流動比率が小さく固定長期適合率が大きい場合(100%超)は、支払能力の観点から問題があります。

固定比率の業界平均

固定比率の業界平均は以下の表の通りです。
参考として流動比率と固定長期適合率も計算しています。

業種固定比率
(%)
流動比率
(%)
固定長期適合率
(%)
建設業79.8179.254.3
製造業99.1184.363.3
情報通信業65.9250.747.9
運輸業・郵便業158.2165.276.3
卸売業79.3167.654.4
小売業150.4138.575.4
不動産業・物品賃貸業162.1158.583.2
学術研究・専門・技術サービス業114.9194.973.2
宿泊業・飲食サービス業486.5112.495.5
生活関連サービス業・娯楽業204.3130.690.0
その他のサービス業85.0195.858.7

出典:「中小企業実態基本調査」(経済産業省)を加工して作成
計算の注意点:上記表では、計算に自己資本を含む指標は、純資産を自己資本とみなして計算しています(小数点以下第2位を四捨五入)。

上記表は中小企業の貸借対照表の平均値より分析しているため、当然のことながら支払能力に問題があるとはいえません。

参考までに、分析の観点で業種別の平均値を見ると、固定比率が100以下の業種は支払能力に問題がないと一目で判断できます。

しかし、建物や車、施設、機械などの固定資産が多そうな業種は、固定比率が100%以上と高くなる傾向があります。この場合は、固定長期適合率を参考にするとすべての業種で100%を下回っています。従って長期的な支払能力に問題はありません。

また、流動比率をみると200%以上の業種は情報通信業のみです。しかし逆にいえば、流動比率は100%未満にならなければよいともいえます。

宿泊業・飲食サービス業は特に流動比率が低く、固定比率が高くなり、固定長期適合率が100%に近づいています。ただし、このような場合でも直ちに支払能力に問題があるとはいえません。

固定比率は長期的な支払能力を表す指標

固定比率は、固定資産と自己資本を比較した、長期的な支払能力を表す指標です。
目安は100%以下が望ましい状態とされますが、100%を超えた場合は、流動比率と固定長期適合率を参考にすることで、支払能力の分析をさらに深掘りすることができます。

よくある質問

固定比率とは?

自己資本に対して固定資産がどの程度あるかという安全性(支払能力)を示す指標です。詳しくはこちらをご覧ください。

固定比率の目安は?

一般的に100%以下を目安として安全性を判断します。詳しくはこちらをご覧ください。

固定比率が高い時に改善する方法は?

固定資産を減少させたり、自己資本を増加させる方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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