• 作成日 : 2021年6月18日

後入先出法とは?廃止理由やメリット、計算例などわかりやすく解説!

後入先出法とは?廃止理由やメリット、計算例などわかりやすく解説!

後入先出法とは在庫金額の計算方法の一つで、「新しく仕入れた商品から出庫して売れたことにし、古く仕入れた商品は在庫として残る」という考え方に基づいて在庫を計上する方法のことです。

後入先出法は平成22年4月1日以降開始する事業年度から廃止されていますが、適用することのメリットや具体的な計算方法、廃止された理由などを具体例を挙げてわかりやすく解説します。

後入先出法とは?

「後入先出法(LIFO、Last In First Out)」は、棚卸資産を評価する方法の一つであり、「後から仕入れたものを先に出庫する」という考え方がベースとなります。

つまり後から仕入れた商品が優先的に出庫され、先に仕入れた商品は在庫として残るということです。

製造業でいえば、先に仕入れた原材料で製品を製造し、後から仕入れた原材料は在庫として残るという認識になります。

先入先出法との違いは?

同じく棚卸資産の評価方法の1つに「先入先出法(FIFO、First In First Out)」というのがありますが、両者は全く正反対の捉え方をします。

「後入先出法」が「後から仕入れたものから先に出庫する」のに対し、「先入先出法」はその名の通り「先に仕入れたものから先に出庫する」と考えるのです。

評価方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。また、業種によって適した評価方法がありますので、どれが正しいとは一概には言えません。

例えば、生鮮食料を扱うコンビニやスーパーなどの実際の商品の流れからいえば、「後入先出法」より「先入先出法」の方が実態に即した評価方法であるといえます。

「先入先出法」についての詳細は以下のリンクを参照してください。

後入先出法は廃止された?その理由は?

「棚卸資産の評価に関する会計基準」の改正により、「後入先出法」は平成22年4月1日以降開始する事業年度から廃止となっています。

「棚卸資産の評価に関する会計基準」の改正

詳しくは後述しますが、「後入先出法」を採用する最大のメリットとして「利益が商品の市場価格に左右されにくい」という点が挙げられます。

このメリットを生かして石油業や繊維業など、ごく一部の企業で「後入先出法」が採用されていました。

しかし、商品の市場価格が在庫に反映されにくいので、棚卸資産が持つ「含み益」を財務諸表に正しく表記することができません。

「市場価格に左右されない」という損益面でのメリットが、「市場価格を反映していない」という資産面でのデメリットと認識されるようになったわけです。

また、実務においては「後から仕入れたものを先に出庫する」というのは一般的ではありません。

このような流れから「後入先出法」は廃止されることとなりました。

後入先出法のメリット・デメリット

以上のことをふまえた上で後入先出法のメリット・デメリットについて説明します。

後入先出法のメリット

棚卸資産の増減は、損益計算に直結しています。

後入先出法を採用するメリットとして、物価が激しく上昇している時に、会社の財政状態、特に損益計算を適切に保つことができます。
例えば、A商品の仕入価格が@500から@2,000に上昇したとしましょう。
後入先出法1

「後入先出法」を採用した場合、出庫されるのは3月→2月→1月の順番です。

仮に20個出庫したとすれば、3月末の在庫金額は5,000円ですが、1月の在庫金額@500×10個=5,000円と同額になり、商品の価格変動に影響されていないことがわかります。

同様のケースで「先入先出法」を採用してみましょう。
後入先出法

「先入先出法」を採用した場合、出庫されるのは1月→2月→3月の順番です。

仮に20個出庫したとすれば、3月末の在庫金額は20,000円となり、1月の在庫金額@500×10個=5,000円より増加しています。

商品の価格変動に影響されていることを示しています。

「先入先出法」についての詳細は以下のリンクを参照してください。

このように、損益計算を安定させることができるのが「後入先出法」の最大のメリットであるといえます。

後入先出法のデメリット

このように損益計算においてはメリットのある「後入先出法」ですが、棚卸商品を資産として見た場合には、市場価格に左右されない点が逆にデメリットとなります。

上記の例で「後入先出法」と「先入先出法」の棚卸金額を比較して考えてみましょう。

後入先出法

同じA商品でも15,000円の差が出てきます。

市場価格の変動を反映している「先入先出法」に対して、市場価格の変動が反映されにくい「後入先出法」では実際より低い評価額で資産計上されることになります。

棚卸の評価額が実際の市場価格とかけ離れてしまうわけです。

結果として株主や投資家、金融機関等の利害関係者が正しい判断をする際の弊害になりかねません。

このような資産価値の乖離が「後入先出法」廃止の1つの要因となっています。

後入先出法の計算例

では「後入先出法」の具体的な計算方法を詳しく解説していきます。
「後入先出法」を採用してA商品の商品有高帳を記帳してみます。

商品有高帳
この例でポイントとなるのが「6月4日の売上」にかかる棚卸残高の計算です。

先にも述べたとおり後入先出法は「後から仕入れたものを先に出庫する」ことになります。

出庫する順番は「6月2日の仕入のうち10個」が先になりますので、棚卸残高として残るのは「6月2日に仕入れた20個のうち残り10個」と「6月1日に仕入れた10個」です。

6月2日仕入分 10個 × @110 = 1,100円
6月1日仕入分 10個 × @100 = 1,000円

したがって棚卸残高は「1,100円+1,000円=2,100円」となります。

後入先出法について理解できましたか?

通常の商取引では「古いものから先に出す」というのが一般的です。数ある棚卸資産の評価方法のなかでも「後入先出法」はかなり特殊な評価方法であるといえます。
まずは「後から入れたものを先に出す」という基本的な考え方からしっかりと理解し、商品有高帳を使って正しい評価計算を行うようにしましょう。

よくある質問

「後入先出法」とは?

棚卸資産の評価方法の1つで「後から仕入れた商品を先に出庫する」という考え方に基づいて在庫計算をします。 詳しくはこちらをご覧ください。

「後入先出法」のメリットは?

棚卸資産の評価額が仕入商品の市場価格に影響されにくいため、安定した損益計算をすることができます。詳しくはこちらをご覧ください。

「後入先出法」のデメリットは?

棚卸資産の評価額が市場価格より低く(あるいは高く)評価されてしまうので、市場価格とかけ離れた金額となるリスクがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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