• 作成日 : 2024年7月19日

掛売りとは?意味や使い方、始め方とリスクについて解説

掛売り(読み方:かけうり)とは、現金売りと異なり、支払期日にまとめて代金を受け取る後払いのシステムです。具体例として、請求書払いやクレジットカード払いが挙げられます。

掛売りと売掛の違いは「仕組み」か「状態」か、ツケ払いとの違いはより厳格かという点です。本記事では、掛売りのメリット・デメリットも解説します。

掛売りとは?意味や使い方

掛売りとは、商品やサービスを提供した段階では代金を受け取らず、期日になってからまとめて受け取る売買方法のことです。「かけうり」と呼びます。

請求書払いが掛売りの具体例です。また、クレジットカード払いも掛売りに含めることがあります。

ここから、掛売りとツケ払いの違いや、売掛との違いについて確認していきましょう。

掛売りとツケ払いの違い

掛売りとツケ払いの主な違いとして含める範囲が挙げられます。

ツケ払いとは、商品・飲食・サービスなどの代金をその場で支払わず、店の帳簿につけてもらい後でまとめて支払う方法のことです。どちらも後から支払うという点で共通していますが、ツケ払いには口約束が含まれるのに対し、掛売りは基本的に契約に基づく取引に限定される点が異なります。

掛売りと売掛の違い

掛売りも売掛も、後払いに関する言葉である点は共通しています。一方で、掛売りが仕組みやシステム、商習慣などを指す言葉であるのに対し、売掛が主に代金未回収の状態を示す点は大きな違いです。

「売掛」に関連する用語として、「売掛金」があります。売掛金とは、提供している商品やサービスの代金を後払いで回収できる権利や勘定科目のことです。

なお、掛売りのことを売掛払いと表現することもあります。

掛売りの事例、ケース

掛売りの事例(ケース)は、主に以下のとおりです。

  • 請求書払い
  • クレジットカード払い

それぞれ具体的な内容について説明します。

請求書払い

請求書払いとは、事業者が商品やサービスの提供時点では代金を回収せず、締日に一定期間の取引をまとめた請求書を発行し、期日までに代金を回収する方法です。主に、企業間取引における支払方法のひとつとして位置付けられています。

A社がB社に対して、4月10日に10万円の商品、同月17日に20万円の商品を提供したと想定しましょう。

請求書払いの場合、4月10日、17日に代金は受け取りません。その代わり、前月の締日翌日から今月の締日までの取引をまとめ、B社に請求書を発行します。仮に期日が5月25日であれば、B社はその日までに合計30万円を支払わなければなりません。

クレジットカード払い

クレジットカード払いとは、クレジットカード加盟店の事業者が、顧客に商品やサービスを提供した後に、クレジットカード会社を通じて代金を受け取る方法です。

Cさんが、4月1日(2万円)と4月10日(3万円)にクレジットカード加盟店のD社で買い物をしたと仮定して、クレジットカード払いについて考えましょう(締日:毎月15日、引き落とし日:翌月10日と想定)。

D社はCさんがカード払いした際に取引情報をカード会社に送り、問題がなければあらかじめ決められた日に代金を受け取ります。この際、売上額から手数料を引いた額が入金される点に注意が必要です。

また、5月15日(締日)にCさんが登録した銀行口座から、利用代金(D社以外に取引がなければ5万円)が引き落とされます。

掛売りのメリット

掛売りは買い手にも売り手にもメリットがあります。主なメリットは、以下のとおりです。

  • 業務の効率化(買い手・売り手)
  • 手元資金がなくとも取引可能(買い手)
  • 購入総額の増加(売り手)

それぞれ解説します。

業務の効率化(買い手・売り手)

買い手も売り手も、業務の効率化につながる点が、掛売りのメリットです。

買い手は、取引の都度支払わずに一度の支払いで済むため、振込などの手続きの手間を省けます。同様に、毎月まとめて金額を請求する分、売り手も関連する業務にかかる時間や労力を軽減できるでしょう。

また、書類を発行する回数・量を減らせる点も、掛売りを利用する強みです。

手元資金がなくとも取引可能(買い手)

買い手は、手元資金がなくても比較的大きな額の取引をできる点もメリットです。

掛売りは取引から一定期間経過してから支払う方法のため、取引時点で手元に十分な資金がなくても商品を購入したり、サービスを利用したりできます。必要なときにすぐ購入・利用できるため、買い手はビジネスチャンスを逃さず対応できるでしょう。

購入総額の増加(売り手)

売り手は、買い手の購入総額が増加しやすい点もメリットです。

すでに紹介したとおり、買い手は手元資金が十分でなくても、掛売りを利用することで高額の取引ができる可能性があります。結果的に、売り手の売上アップを期待できるでしょう。

また、掛売りでの取引を希望する企業も少なくないため、現金取引だけに対応するよりも、取引先の幅を広げられます。

掛売りのデメリット

掛売りを始めることで、売り手には以下のデメリットがあります。

  • 代金回収できないリスク・支払遅延のリスク
  • 与信管理が必要

それぞれ確認していきましょう。

代金回収できないリスク・支払遅延のリスク

売り手は、掛売りを始めることで代金回収できないリスクや支払い遅延のリスクを抱える点がデメリットです。

掛売りで期日を定めていても、買い手が必ず支払うとは限りません。たとえば、買い手の経営が悪化して倒産すると、貸倒れ(売掛金などが回収不能になり損失が発生すること)になってしまいます。

また、相手に支払う意思があっても、さまざまな事情で遅れることもあるでしょう。入金が遅れると、自社の資金繰りが悪化し、必要な資金を払えなくなる可能性があります。

与信管理が必要

掛売りの開始に伴い、買い手に対する与信管理が必要になる点も、売り手のデメリットです。与信管理とは、取引先から代金を回収できなくなるリスクを抑えるための作業を指します。

たとえば、掛売りにあたって買い手に対する事前のヒアリングや財務状況の確認などが必要です。代金回収に懸念がないと判断した会社とのみ取引することにより、貸倒れや支払い遅延が発生するリスクを軽減できます。

掛売りの始め方

掛売りを始める際の流れは、主に以下のとおりです。

  1. 与信調査を行う
  2. 現金取引で始める
  3. 掛売りの契約を交わす
  4. 定期的に与信管理する

各手順について、詳しく解説します。

①与信調査を行う

掛売りを希望する取引先・新規先に対して、まず与信調査を実施します。

与信調査(信用調査)とは、相手の信用度を分析することです。相手に直接ヒアリングする、法務局で相手の登記簿謄本(法人、土地・建物)を取得する、信用調査会社に依頼するなどの方法があります。

与信調査を通じて、掛売りを始めても取引回収に懸念はないのかを判断しやすくなるでしょう。

②現金取引で始める

与信調査だけで判断がつかない場合は、まず現金取引から始めるとよいでしょう。一定期間現金での取引を続け、信頼できそうであれば掛売りを検討します。

なお、現金取引から掛売りへの移行を検討する場合、与信限度額の設定が必要です。与信限度額とは、会社ごとに債権の与信に限度を設けることを指します。与信限度を超える場合、リスクを軽減するため掛売りを避けて現金取引をうながすことが原則です。

③掛売りの契約を交わす

掛売りを始めることになったら、売り手と買い手の間で契約を交わします。

掛売りの契約書に、法律で決まったものはありません。契約書には、取引期間や支払期日などを盛り込むことが一般的です。

支払期日までの期間を長くとると、買い手は支払いに余裕をもたせられます。その分、売り手の回収サイトが長くなり、資金繰りが悪化しかねません。

④定期的に与信管理する

掛売りを始めてからも、定期的な与信管理が必要です。与信管理を怠ると、取引開始時と比べて買い手の経営が悪化していることを見逃し、貸倒れや支払い遅延が発生するリスクがあります。

また、定期的に取引状況を確認し、懸念がある先には与信限度額の引き下げを検討しましょう。また、信用できる相手に対しては与信限度額を引き上げることで、売上のアップを期待できます。

掛売りで注意したいポイント

掛売りを導入する際は、代金回収までに期間や手間がかかることに注意が必要です。自社の資金繰りが悪化しないことを確認したうえで、掛売り導入の是非を判断しましょう。

導入後、掛売りにかかる手間やリスクを軽減したい場合には、主に以下の対策があります。

  • ファクタリングの利用
  • 請求代行サービスの利用

ファクタリングとは、ファクタリング業者が掛売りの代金を買い取り、現金化するサービスのことです。売り手は、ファクタリングを利用することで期日まで待たなくても代金を回収できます。

請求代行サービスとは、掛払いを保証したり、請求業務を代行したりするサービスのことです。掛払いの保証がある場合、万が一回収が不能に陥っても代金を得られる可能性があります。

なお、いずれも手数料が発生する点には注意が必要です。

掛売りは業務効率化につながる手段のひとつ

掛売りとは、商品やサービスを提供した段階では代金を受け取らず、期日になってからまとめて受け取る方法のことです。掛売りで取引すれば、買い手も売り手も業務効率化につながります。

ただし、売り手は期日に回収できない可能性がある点に注意が必要です。そこで、掛売りを導入する際は、相手先のことを信頼できるか、回収に懸念はないかなどを分析しなければなりません。

与信管理を徹底したうえで、掛売りの導入を検討しましょう。


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