- 更新日 : 2024年9月18日
仮受金と預り金の違いは?仕訳例を用いてわかりやすく解説
一時的に受領した金額について、どのような勘定科目で処理をすべきかわからないと悩んだことはないでしょうか。一時的な処理として、仮受金や預り金の勘定科目が使われることがあります。なぜ使い分ける必要があるのでしょうか。今回は、仮受金と預り金の違いについて、仕訳例も用いながら解説します。
目次
仮受金と預り金の定義の違い
仮受金(かりうけきん)とは、入金があった際、その入金の内容がわからないときに使われる勘定科目です。一時的に取引を記録する仮勘定に含まれます。
一方、預り金(あずかりきん)は、その会社が本来支払いを行うべき個人や法人に代わって、その当事者から金銭を預かった場合に使われる勘定科目です。
仮受金と預り金はどちらも会社に入金があることが共通していますが、入金の内容に違いがあります。
仮受金を使用するケース
仮受金は以下のようなケースで使われます。
- 取引先から入金があったものの売掛金に対応するものか不明な場合
- 出張先の従業員から内容のわからない入金があった場合
- 取引前に受領した金額の内容がわからない場合
- 売掛金のうち、一部のみが入金された場合
など
預り金を使用するケース
預り金は以下のようなケースで使われます。
- 従業員の給与から源泉所得税を徴収した場合
- 従業員の給与から従業員負担分の社会保険料を徴収した場合
- 従業員の給与から寮費を徴収した場合
- 取引先から営業保証金の差し入れがあった場合
など
仮受金と預り金の返還義務の違い
預り金は、あくまでも会社が一時的に預かっている金銭です。返還の申し出があれば、請求された金額を返還しなければならない場合もあります。ただし、社会保険料・雇用保険料などを従業員から預り会社が納付するものも預り金として扱うため、このような場合は基本的に返還できません。
一方、仮受金はどのように処理すべきか不明な金額を一時的に処理するための勘定科目です。そのため、仮受金の内容によっては返還の義務が生じることもあれば、返還の義務が生じないこともあります。
例えば、取引先が誤入金した場合、本来受け取るべきでない金銭を受け取っているため返金する必要があります。一方、商品の引き渡しの対価として受け取った金銭を仮受金とした場合、取引は成立しているため、基本的には返還の義務は生じません。ただし、法律に契約解除ができる規定がある場合などはその限りではありません。
仮受金と預り金の税務上の取り扱いとの違い
預り金については、原則として課税関係が生じません。取引先や従業員など、金銭を預かった相手が支払うべき費用などであって、会社は一時的に預かっているだけに過ぎないためです。そのため、預り金については、消費税や法人税などが課税されないことになります。
仮受金については、内容によって対応が異なります。注意したいのは、仮受金が会社の収益に計上すべき内容であったときです。売上高は、商品やサービスの引き渡しをもって計上されます。そのため、引き渡しが行われていない段階では課税関係は生じません。一方、引き渡しが行われた場合には、消費税や法人税などが課されます。収益として認識しなければならないため、仮受金勘定から売上勘定への振替が必要です。
仮受金と預り金の会計処理の違い
仮受金と預り金では会計処理も異なります。仮受金は「仮受金」の勘定科目をもって、預り金は「預り金」の勘定科目をもって仕訳をします。仮受金、預り金のいずれにも共通しているのは負債項目であることです。そのため、発生時には貸方、解消時には借方で仕訳をします。
仮受金の仕訳例
仮受金はどのような場面で使われるのか、仕訳例とともに仮受金の利用例を紹介します。
内容不明の入金があったとき
(仕訳例)当座預金に内容がわからない入金が50万円あった場合。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
当座預金 | 500,000円 | 仮受金 | 500,000円 |
仮受金勘定がよく使われるのは、内容のわからない入金があったときです。借方勘定には、仕訳例のように当座預金や現金などの金銭をどのように受け取ったかわかる勘定科目を置きます。また、取引の内容が判明しないため、貸方には一時的な勘定科目として「仮受金」を用います。
内容不明な入金の取引内容が判明したとき
(仕訳例)仮受金として計上していた50万円が顧客との取引における内金と判明した場合。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仮受金 | 500,000円 | 前受金 | 500,000円 |
「仮受金」で仕訳をしたものにつき、その内容が判明したときは、仮受金から正しい勘定科目への振替の仕訳が必要です。仕訳例では、売買取引での内金であることが判明したため、仮受金を前受金に振り替える仕訳をします。
取引先から過大な入金があったとき
(仕訳例)当座預金に取引先からの誤入金が5万円あった場合。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
当座預金 | 500,000円 | 仮受金 | 500,000円 |
取引先から過大な入金や誤入金があったときは、入金額を一時的に処理する勘定科目として「仮受金」を使います。過大入金額や誤入金を後日返還した場合は、仮受金を借方にもってきて仮受金を相殺する仕訳をします。
預り金の仕訳例
預り金はどのような場面で使われるのか、仕訳例とともに預り金の利用例を紹介します。
従業員から社会保険などを天引きしたとき
(仕訳例)従業員に給料30万円を普通預金から支払い、うち6万円が給与天引き額の源泉所得税・社会保険料・雇用保険料の場合。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
給与 | 300,000円 | 預り金 | 60,000円 |
普通預金 | 240,000円 |
従業員の給与支払時に給与から天引きする源泉所得税・社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料など)・雇用保険料は、従業員から預かって、会社が納付するものです。そのため、預り金として仕訳をします。なお、預り金の内訳がわかるように、源泉所得税、社会保険料、雇用保険料などそれぞれ補助科目を付けて会計処理をすることもあります。
外注で源泉徴収を行ったとき
(仕訳例)個人事業主にWebデザインを依頼し報酬として50万円(うち51,050円は源泉所得税)を普通預金から支払った場合。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
外注費 | 500,000円 | 預り金 | 51,050円 |
普通預金 | 448,950円 |
個人事業主に業務を委託した場合の報酬や税理士のように特定の業務を行う専門家への報酬などについては、源泉徴収が必要です。源泉徴収した所得税は徴収した会社が納めるため、預り金として仕訳をします。
取引先から営業保証金を受け取ったとき
(仕訳例)取引先から預り保証金として現金により30万円の差し入れがあった場合。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 300,000円 | 預り金 | 300,000円 |
取引先から受け入れた預り保証金は、取引の担保として受け取ったもので、いずれ返還するものです。そのため、一時的にお金を預かったものとして、預り金として仕訳をします。
仮受金・預り金と混同しやすい勘定科目
仮受金や預り金と仕訳を間違いやすい科目として、立替金と前受金について紹介します。
立替金
立替金は、会社が金銭の立て替えた(本来支払わなければならない人に代わって一時的に金銭を負担すること)ときに使われる勘定科目です。従業員に給与の前貸しをしたときや、取引先から送られてきた商品の配送料を自社で一時的に負担した場合などに使われます。一時的に会社が負担しているだけのため、その後返還されるのが特徴です。
前受金
前受金とは、取引において、商品やサービスを引き渡す前に受領した金額を表します。受注生産で手付金を受け取ったとき、契約締結時に内金を受け取ったときなどに使われます。商品やサービスの引き渡し時に前受金は相殺され、残りの代金とともに売上高に計上される仕組みです。
預り金と仮受金は意味も会計処理も違う
預り金も仮受金も負債項目で、一時的に使われる勘定科目です。しかし、預り金と仮受金では勘定科目の意味も使われる場面も、さらには会計処理も異なります。正しく会計処理をするためにも、預り金と仮受金の違いを理解しておきましょう。
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