- 更新日 : 2024年8月8日
法人税、住民税及び事業税の勘定科目・仕訳は?租税公課についても解説!
法人である会社が納める税金にはさまざまなものがあります。最も代表的なのは、法人税(法人所得税)、法人住民税、法人事業税です。これらは、法人税等の勘定科目を使って仕訳します。ほかにも、消費税や租税公課で仕訳される各種税金もあります。これらの税金を支払ったとき、中間納付したとき、還付金を受け取ったときはどのような仕訳をするのが適切なのでしょう。また、費用にできるのでしょうか。この記事では、法人税、住民税及び事業税にあたる法人税等を中心に仕訳を解説していきます。
目次
法人の利益にかかわる税金の種類
法人に課せられる税金のうち、所得に関連する金額を課税標準(税金計算の基準)とする税金を「法人税等」といいます。法人税等の代表例は、法人税(法人所得税)、法人事業税、法人住民税です。
法人税(法人所得税)
法人税(法人所得税)は、法人の所得に課される税金です。課税所得金額に、一定の税率をかけて計算します。法人税の税率は、普通法人(事業活動により利益獲得を目的とする一般的な会社)や人格のない社団等で23.2%です。大企業の子会社などに該当しない、資本金1億円以下の中小企業のうち、適用除外を受けない会社は、所得800万円以下の部分については税率15%が適用されます。
法人税については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
法人税については、以下の記事で詳しく解説しています。
法人事業税
法人事業税は、事業を営んでいる会社のうち、都道府県に事務所や事業所を設けている場合に課される税金です。法人事業税は、法人が事業を継続するために利用する公共サービスなどの一部を負担する目的で課税され、公共法人や一部の団体などで課税対象外となる所もあります。
法人事業税には、業種によって異なり、いくつかの種類があります。法人の所得を対象とする所得割のほか、資本割や付加価値割などの種類があります。
中小企業の場合は、課税は所得割のみのことが多いため、法人事業税すべてを法人税等に含めて問題ありません。しかし、資本金や出資金の額が1億円を超えるような普通法人は、所得割のほかに付加価値割と資本割分を負担しなければなりません。付加価値割と資本割を合わせて、外形標準といいます。外形標準に関しては、所得に対する課税ではありませんので、法人税等に含めることはできませんので、通常は販売費及び一般管理費の中の「租税公課」などで処理します。
法人住民税
法人住民税は、都道府県や市区町村から課される税金で、事務所や事業所を構えている法人を対象とした税金です。法人住民税は、法人税を課税標準として計算した法人税割と課税対象の法人の資本金等や従業員数に応じて均等に課税される均等割の2段階構造になっています。
法人税、法人事業税、法人住民税については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
法人税の勘定科目・仕訳
法人税等の概要について説明してきましたが、実際の仕訳ではどのように取り入れられているのでしょうか。ここでは、法人税等のうち、法人の主たる税金といえる「法人税」にスポットを当てており、法人税を中間申告により納付したとき、決算が到来したとき、確定申告により納付したときの3つに分けて会計上の考え方と仕訳のしかたを解説します。
なお、「法人税」の仕訳のしかたによって法人税の確定申告書の記載にも影響が出ます。ここで示す仕訳はあくまで一例であって、いろいろな計上方法が考えられます。
まずは、自社の確定申告書で従来の計上方法を確認しておくほうがよいでしょう。
中間申告時
法人税の確定申告は年1回ですが、確定申告までの期間が1年開くため、それまで国や地方自治体はその企業から税収を得られません。そのため、法人税などは一事業期間の途中に中間申告と中間納付を行うようになっています。
中間申告や中間納付は、会計処理の負担を軽減するために、実績の場合前事業年度の確定納税額の概ね半分を納付します(予定申告の場合)。また、仮決算を行い納付することも可能です。
予定申告とは前事業年度の法人税額を基礎として予定納税額を計算する方法であり、仮決算とは事業年度開始から6カ月間を1事業年度とみなして仮決算を行い、法人税を計算する方法です。
どちらの方法にせよ中間納税の金額を仮払にする方法を次に紹介しますが、この仕訳のほかにも「法人税等」などの費用科目を使用する仕訳もあります。
仕訳は、確定申告により納税額が確定していない状態で行いますので、仮の勘定である「仮払法人税等」を使います。
(仕訳例)法人税の中間納付50万円を当座預金から行った。
この仕訳方法は、仮払金勘定を使用することと同じです。まだこの50万円は会社にとって確定債務ではないため、負債の部に計上せず資産の部において仮払いとして計上しておき決算における精算待ちとなります。
なお、中間申告にも期限があります。普通法人は、原則として事業年度開始日から6か月を経過した日より2カ月以内に中間申告書を提出することとされています。この提出がなかった場合には、前年度実績を基準とする予定申告があったものとみなされます。
決算時
法人の決算から確定申告は通常、次のように進みます。
→確定した決算に基づく法人税申告書作成→法人税申告納税
法人税の確定申告は決算の翌日から2カ月以内ですので、定時総会などで間に合わない場合には、法人が提出期限を延長することができます(ただし、利子税がかかります)。
したがって、決算時点では、法人税の納付は通常はありませんので以下のような仕訳を行います。
(仕訳例)法人税の確定年税額は130万円だった(※外形標準などは考慮していない簡易的な仕訳です)。
この仕訳には2つの意味があります。まず上段において、仮払処理の精算です。中間納付において支払済みの50万円を損益計算書末尾の「法人税等」と振り替えます。
次に、決算における法人税の計算において求めた税額で、未計上の金額を未払として計上します。
このように、申告額として求めたものの一部を仮払い部分と精算し、未払い部分を計上するという仕訳となります。
ただし、赤字や業績の悪化などで仮払法人税等の額が法人税等を上回るときは、未払法人税等は使用しません。差額は還付金になるためです。この場合は、差額を「未収金」として借方に計上します。
確定申告時
確定申告をすることによって、翌事業年度においてはじめて法人税などの税額を納付することになります。納付するときは、未払法人税等として計上していた分を負債から消去します。
(仕訳例)未払法人税等として計上していた確定年税額の残りの額80万円を、確定申告と同時に当座預金より支払った。
(※上場企業に多い未払法人税等の過大計上などは考慮していない簡易的な仕訳です。)
決算時に計上していた未払法人税等は、翌事業年度にそのまま繰り越され、法人税の支払によって債務が消滅する形となります。
法人税の確定申告や法人税申告書の作成については、以下の記事で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。
その他の税金の勘定科目・仕訳
法人税等に含まれる、法人税や法人事業税、法人住民税などは、法人が支出する税金の一部です。法人が納付する税金はほかにもあります。ここでは、租税公課に分類される税金、消費税、従業員の給与支払時に徴収する税金の3つに分けて、使用する勘定科目や仕訳を解説します。
租税公課
国や地方自治体に支払う税金などは、「租税公課」として会計上処理します。ただし、税金のうち法人税等で処理する税金や消費税(ただし税込方式の場合は決算時に租税公課を使った仕訳を行います)は含まれません。租税公課に含まれる税金の具体例は以下のとおりです。
- 固定資産税や都市計画税
- 印紙税
- 自動車税
- 法人事業税の外形標準課税(付加価値割、資本割)
- 利子税
など
以下の仕訳例のように、税金の支払時などに借方に「租税公課」(費用)を計上する会計処理を行います。
(仕訳例1)収入印紙1万円分を現金で購入した。
(仕訳例2)決算にあたり、法人税等を計上することになった。法人税等の確定年税額は150万円で、中間納付により確定年税額のうち75万円をすでに納付している。なお、申告書の提出期限延長につき利子税が2,000円かかった。
法人税等 | 1,500,000円 | 仮払法人税等 | 750,000円 |
租税公課 | 2,000円 | 未払法人税等 | 802,000円 |
租税公課については、以下の記事で詳しく解説しています。
消費税
消費税は、商品やサービスの消費について公平に課税される税金です。消費税の負担者は最終的に商品やサービスを消費する消費者で、事業者は消費者が負担した消費税を預かり、仕入などにかかった消費税を差し引いた額を納税します。
消費税の会計処理は、税抜処理と税込処理の2つがあります。免税事業者(基準期間における課税売上が1,000万円以下の事業者)については消費税の会計処理は必要ありません。
以下より、税抜処理と税込処理の仕訳を見ていきましょう。
税抜処理
(仕訳例1-仕入時の処理)50万円(税込55万円)の商品を仕入れ、代金は掛けとした。消費税は10%とする。
(仕訳例2-売上時の処理)100万円(税込110万円)を売り上げた。代金はまだ支払われていない。消費税は10%とする。
(仕訳例3-決算時の処理)消費税の確定納付額は158.99万円、仮受消費税は800万円、仮払消費税は550万円で、中間納付額は91万円(期中は仮払金にて処理)だった。
以上のように、税抜処理によるときは、消費税負担分を「仮払消費税」、預かった消費税分を「仮受消費税」で処理します。決算時には、仮受消費税と仮払消費税、中間納付分の精算と未払消費税の計上が必要です。消費税の計算では端数処理が発生することから、差額が生じることがあります。貸方に生じた差額は「雑収入」、借方に生じた差額は「雑損失」として処理します。
税込処理
(仕訳例1-仕入時の処理)50万円(税込55万円)の商品を仕入れ、代金は掛けとした。
(仕訳例2-売上時の処理)100万円(税込110万円)を売り上げた。代金はまだ支払われていない。
(仕訳例3-納付時の処理)消費税の中間納付額80万円を当座預金から支払った。
税込処理では費用や収益の科目に消費税分を含めて、シンプルに会計処理を行います。消費税を納付する際に使用する勘定科目は「租税公課」です。通常は決算時に未払消費税等を計上し、納付により決済します。
給与や報酬の支払い時に発生する税金など
従業員に支払う給与から、会社が天引きするものもあるかと思います。たとえば、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)や源泉徴収税、住民税、雇用保険料などです。これらは、従業員から回収し、会社が代わりに納めるものもありますが、社会保険料については会社の費用となるものもあります。
従業員から回収するものについては、預り金などの勘定科目を使って処理します。このうち、税金に分類される「源泉所得税」「個人住民税」も同様です。天引き後、徴収した分を会社が代わりに納める必要がありますので、一時的な科目として預り金を使用します。
(仕訳例)従業員の給料500万円を普通預金より支払った。うち、社会保険料100万円、源泉所得税額60万円、住民税50万円、雇用保険料2万円を給与から天引きしている。
(社会保険料) | |||
(源泉所得税) | |||
(住民税) | |||
(雇用保険料) | |||
※実務上も補助科目で分けることが多いため、同じ科目ですが、便宜上、預り金と立替金を()書きで何に対するものか記載しています。
従業員から預かっている源泉所得税を納めたときは、以下のように仕訳をします。
(仕訳例)従業員の給料から天引きした源泉所得税60万円を普通預金から納付した。
なお、会社負担分と従業員負担分のある健康保険料などは次のような仕訳になります。
(仕訳例)従業員から預かった健康保険料550,000円に会社負担分550,000円を加えて支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預り金(健康保険料) | 550,000円 | 普通預金 | 1,100.000円 |
法定福利費(健康保険料) | 550,000円 |
法人税等の勘定科目・仕訳について理解できましたか?
法人税等に該当するものは、支払時に費用処理するのではなく、会計上は、決算時に確定年税額の計上と未払額の計上を行います。租税公課に分類されるほかの税金の処理とは異なりますので注意しましょう。
よくある質問
法人税等に含まれるのは?
代表的なのは、法人所得税、法人住民税、法人事業税です。詳しくはこちらをご覧ください。
法人税等関連の仕訳はどんな場面で必要?
法人税等を中間納付したとき、決算時、確定申告により納付したときです。 詳しくはこちらをご覧ください。
法人税等に含まれない税金は?
納付時に租税公課などで処理します。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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