• 更新日 : 2024年8月8日

経理にはどんなキャリアパスがある?AI時代に必要なスキルも解説

ここ数年、人手不足が指摘されている経理職。売り手市場のこのタイミングで経理職に就きたいという方もいるのではないでしょうか。

今回は経理を目指す方のために、仕事内容やAI時代に必要なスキル、将来のキャリアプランを紹介します。(執筆者:ファイナンシャルプランナー 本村結貴)

経理の主な仕事内容

経理とは企業のお金の流れを管理する仕事です。会計や給与の事務処理を中心に、次のような業務をまかされています。

・伝票処理や会計ソフト入力
・決算関連書類作成
・支払いや入金確認
年末調整
・その他(給与計算、請求書発行など)

ただし、企業によって業務の担当が細かく分かれていたり、一部を税理士に委託していたりと業務範囲はさまざまです。

伝票処理や会計ソフト入力

経理職の日々の主な仕事です。法人や個人事業主は、取引の記録と、記録した帳簿書類の保存が法律によって義務付けられています。このうち、取引の記録にあたるのが、伝票処理や会計ソフトへの入力です。

現金や預金の出入りをはじめ、売上や仕入れの処理、従業員への仮払い(出張などでの先払い)など日々のあらゆる取引を、決まった勘定科目に当てはめ仕訳、記録していきます。近年は会計ソフトの普及もあって、紙の伝票に直接書くことは少なく、電子的に処理することが多くなりました。

決算関係書類作成

企業も個人も、事業を営んでいる場合は支払う税金を計算して、税務署に申告(確定申告)しなければなりません。この確定申告で必要なのが決算作業です。決算に必要な貸借対照表損益計算書の作成のほか、在庫(棚卸資産)の確認、決算仕訳(資産の減価償却など年1回の仕訳処理)を行っていきます。

基本的には年に1度の作業になりますが、株主向けに情報を公開している上場企業などでは月次決算や四半期決算で、年に何度も決算処理を行わなければならないこともあります。

支払いや入金確認

源泉徴収税(従業員の所得税天引き分)の支払いや給与関連など通帳の入出金に関わる銀行への提出書類、通帳や現金の入出金の確認などを行います。通帳は記録が残りますが、現金は過不足が起こることもあるので、日々しっかり記録、管理することが大切です。

年末調整

年末調整とは、従業員に支払われた給与や賞与を再計算して、正しい所得税と毎月天引きされていた所得税(源泉徴収税)の過不足を精算する作業です。従業員に所得税の払い過ぎがあれば給与で還付し、不足があれば給与から差し引きます。

経理に向いている人&これからの経理に必要なスキル

ここまで経理の仕事内容を紹介してきましたが、経理職には向き不向きもあります。どういった人が経理に向いているのでしょうか。

細かいことに気付ける人

まずは細かいことに気付ける人です。たとえ些細な数字のミスであっても大問題につながりかねないのが経理の仕事。実際と帳簿上の取引金額が合わない、現金の計算が合わないとなると、企業の信用にかかわるためです。多少の時間がかかっても、細かい作業をいとわず正確に仕事ができるタイプの人が向いています。

計算が苦にならない人

表計算ソフトなどの関数や会計ソフトで自動計算できる部分もありますが、場合によっては電卓で手計算することも少なくありません。そのため、計算や数字が苦にならない人が向いています。

粘り強さのある人

日々正確に記録を行っていても、仮払い精算ができていなかったり、連結決算で漏れがあったり、計算が合わない場面は出てくるものです。しかし、計算が合わないからそのままにしておくことは基本的に許されないため、1つ1つ原因を探って解明していく必要があります。

仮にそのまま雑収入や雑損失で処理すると、税務調査などで損金にできない可能性があり、会社の損益のバランスが変わってしまうためです。そのため、原因を突き止める粘り強さが経理には必要になります。

これからの経理に必要なスキル

ITツール、そしてAIやRPAの導入によって経理の業務は変化しています。AIやRPAがルーティン作業を代行してくれる分、これからの経理はより高度なアウトプットを求められるようになるでしょう。

例えば、RPAなどを扱うITリテラシー、それらの活用により自動化されたデータを読み解く分析スキル、その分析内容を的確にわかりやすく伝える資料作成スキル、そして経理視点から他部署に提言できるプレゼンテーションスキルなど、経理知識以外の付加価値を問われるようになるでしょう。

経理のキャリアパス

経理のキャリアパスとしては、主に企業に残って上位職に昇進する方法、キャリアを生かして転職する方法、上位資格の取得で独立開業する方法が考えられます。

経理主任や最高財務責任者(CFO)など上位職へ

同じ企業で、経理の上位職を目指すキャリアパスです。他にも、経理の仕事を足がかかりに、経理から上がってきた貸借対照表や損益計算書をもとに資金調達や資金管理を行う財務職への移動、財務の上位職であるCFOを目指すこともできます。

経営企画や役員など経営に携わる上位職へ

経理は、会社の財務諸表を作成したりすることから、経営状況を良く知ることができる職種でもあります。そうした会社での位置関係や経験を生かして、将来、経営に近い経営企画などを目指すことも可能です。

中小企業から大企業の経理職へ転職

はじめから希望の大企業への就職が叶わなくても、中小企業で経験を積み、資格を取得することで大企業に転職することもできます。自分の可能性を広げるために新しい業界に転職するのもひとつの方法ですが、使用する勘定科目や主な取引は、同じ経理でも業種によって大きく変わってしまいます。これまでの経験を活かすなら、同じ業種の大企業に転職した方が強みを活かせるでしょう。

外資系企業や海外企業の経理職へ転職

よりグローバルに活躍したいなら、外資系企業や海外企業の経理職に転職するのも選択肢の1つです。この場合は、国際的な会計知識があるという証明のため、米国公認会計士(USCPA)など国際的に通用する資格を取得してからの転職がおすすめです。

上位資格を取得して士業で独立開業

経理に関係する上位資格のうち、税理士や公認会計士の資格は独立開業が望める資格です。多くの企業の財務諸表を見ることになるため、1つの企業で経理職として勤めるのとは、また違った経験ができるでしょう。開業までしなくても、税理士法人などに転職することも可能です。

経理に関連する資格

一部企業では採用の応募要項に資格や経験を必須にしていることがあるものの、資格や経験を問わない企業も少なくありません。

未経験から経理職に就いたとしても、業務において簿記の知識が必要になります。そのため、すでに簿記や簿記関連の資格を持っていると就職の場面でも有利でしょう。経理職にプラスになる資格をいくつか紹介します。

日商簿記検定

経理処理に必要な商業簿記の知識を測る日本商工会議所主催の資格試験。レベルは1~3級まであり、応募条件に資格を必要としている企業の多くは、日商簿記2級以上を評価対象にすることが多いです。2級には、原価計算という製造業では必要な簿記の知識が出題範囲に含まれているほか、決算処理などより実務に近い内容になっているためです。

日商簿記検定と似た資格として、商業高校生を主な対象にした全国商業高等学校協会主催の簿記実務検定試験(全商簿記)も同様に評価されることがあります。これは、全商簿記1級が、日商簿記2級と同程度のレベルにあるためです。

経理・財務スキル検定(FASS)

経済産業省の経理・財務部門の人材育成事業によってはじまった検定です。FASSは債権・債務の管理、連結決算(本社・子会社等を合わせた決算)、税務申告業務など、より実践的な知識を問う内容になります。資金管理など財務分野も試験範囲に含まれているのが特徴です。実務経験がなくても、実務経験に匹敵するような経理・財務の知識があることを証明できます。

税理士試験

税理士試験とはその名の通り、税理士資格を得るための試験です。会計科目の2科目と税法科目の3科目、合わせて5科目に合格する必要があります。

企業の経理職であれば1科目合格でも優遇・評価される可能性があります。業務に関連するような科目、例えば簿記論や財務諸表論、消費税法や法人税法などが評価の対象になることが多いでしょう。

国際会計検定(BATIC)

東京商工会議所主催の検定です。範囲は英文簿記と国際会計理論で、すべて英語で出題されます。
階級別ではなくスコア式(0~1000)になっているのも特徴です。日商簿記2級と同等の「アカウンティングマネジャーレベル」は700~879スコア、日商簿記1級と同等の「コントローラーレベル」は880~1000スコアが必要になります。グローバルな会計知識が問われるため、外資系や海外進出企業などの就職にプラスに働くでしょう。

米国公認会計士(USCPA)

アメリカで公認会計士をするための資格のため、すべて英語で出題されますが、難易度的には日本の公認会計士試験よりも易しいとされています。BATICと同様に、グローバルな会計知識を証明することができる資格です。海外に進出している企業など一部で大きく評価される可能性があります。

経理職に就くならキャリアプランを考えて

経理職は、どんな経験を積むか、どんな資格を在職中に取得するかで、さまざまなキャリアプランが考えられます。経理職でキャリアアップを狙うなら、将来、自分がどのような人物になりたいのかをイメージして、そのイメージに合った選択肢を選んでいきたいですね。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

経理の関連記事

新着記事

会計の注目テーマ