- 作成日 : 2017年4月3日
法人事業概況説明書の提出は義務!記載内容と書き方を解説

法人は確定申告の際に、確定申告書とは別にいくつかの添付書類を提出しなくてはなりません。例えば貸借対照表や損益計算書などの財務諸表、勘定科目内訳明細書などです。
この添付書類の中に「法人事業概況説明書」という書類があります。ここではこの書類の概要と書き方について解説します。
法人事業概況説明書とは?
法人事業概況説明書は平成18年度税制改正以前は、提出義務のなかった書類です。
しかしこの改正に伴って法人税法施行規則35条の5号に「確定申告書の添付書類」として定められたため、現在は財務諸表や勘定科目内訳明細書などと一緒に確定申告書に添付する書類として、義務付けられています。
記載する内容は事業内容を始め、支店・海外取引状況、期末従業員等の状況やコンピューターの利用状況、主要な勘定科目を記載する欄などです。以下では国税庁が公表している「法人事業概況説明書」の記入用紙を見ながら、これらの記載項目について解説します。
法人事業概況説明書の書き方


法人事業概況説明書は表面(上)と裏面(下)で構成されています。各項目を拡大して、具体的な内容と記載時の注意事項を見ていきましょう。

項目名 | 注意事項 |
1 事業内容 | 経営している事業の内容を記載。詳細は裏面「事業形態」に記載する。 |
2 支店・海外取引状況 | 欄に従って支店数や子会社について記載。(2)子会社については海外子会社が複数ある場合、出資割合が最も高いものを記載する。(3)取引種類について、輸入と輸出両方の取引がある場合は、両方に○印を付ける。 |
項目名 | 注意事項 |
3 期末従業員等の状況 | 常勤役員以外の空欄には「工員」「事務員」などの職種を記載する。計のうち代表者家族数については、同居・別居を問わない。 |
4 電子計算機の利用状況 | 電子計算機とはパソコン、タブレット端末、ワークステーションなどを指す。 |
5 経理の状況 | (1)管理者については、現金出納・小切手振出それぞれの担当者名などを記載する。(4)消費税の当期課税売上高は単位に注意する。 |
6 株主又は株式所有異動の有無 | 特になし。 |
項目名 | 注意事項 |
7 主要科目 | 単位に注意しつつ記載する。 |
8 インターネットバンキング等の利用の有無 | インターネットバンキングはインターネットを利用した金融機関の取引サービス。ファームバンキングは1対1の専用(通信)回線を利用した金融機関の取引サービス。 |
9 役員又は役員報酬額の異動の有無 | 特になし。 |
10 代表者に対する報酬等の金額 | 単位に注意しつつ記載する。 |
項目名 | 注意事項 |
11 事業形態 | (2)事業内容の特異性とは、同業種の法人と比較した際の、事業内容の相違点を指す。 |
12 主な設備等の状況 | 事業用に使用している機械装置や倉庫、客室などの設備について名称・用途・型・大きさ・台数・面積・部屋数等を記載する。ただし申告書の内訳明細書等に記載がある内容については省略可。 |
項目名 | 注意事項 |
13 決済日等の状況 | 特になし。 |
14 帳簿類の備付状況 | 作成している帳簿類について記載する。 |
15 税理士の関与状況 | 複数の税理士が関与している場合は、主な1名について記載する。 |
16 加入組合等の状況 | 特になし。 |
項目名 | 注意事項 |
17 月別の売上高等の状況 | 複数の収入がある場合は、主な2つについて記載する。「源泉徴収税額」欄の右側の空欄には掲記以外の主要の科目の状況を記載する。源泉徴収税額の単位に注意する。また従業員数は、その月に俸給や給与、賞与を支払った従業員の数を記載する。 |
18 当期の営業成績の概要 | 経営状況や経営方針の変化に伴って特に影響のあった事項を記載する。ただし同様の内容を別の書類で提出する場合は省略可。 |
「出資関係図」とは?
出資関係図を提出しなければならない法人
平成18年の税制改正で提出が義務付けられた法人事業概況説明書に対して、出資関係図は平成22年度の税制改正によって新設された書類で、確定申告書及び法人事業概況説明書に添付して提出しなくてはなりません。
ただし全ての法人に提出義務があるわけではありません。その法人が内国法人であり、かつ完全支配関係を持つ他の法人がある場合にのみ、この関係を系統図にしたもの(出資関係図)の提出が必要となります。
完全支配関係とは以下の2つの条件のうち、いずれかに当てはまる場合を指します。
2.一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係
出資関係図の書き方
出資関係図を作成する際は、次の4点に留意する必要があります。
2.出資関係図は完全支配関係の最上位者(法人または個人)を頂点として、系統的に作成すること。
3.グループ内のすべての法人の決算期が同一の場合、各法人は同一の出資関係図を提出すること。
4.グループ内の各法人の所轄税務署、法人名、納税地、代表者氏名、事業種目、資本金等の額、決算期を記載すること。
これらに基づいて作成した出資関係図の例が以下の図です。


(出典:法人事業概況説明書の書き方 |国税庁)
この例のようにグループ内の法人数が多い場合は、系統図の中に所轄税務署、法人名、納税地、代表者氏名、事業種目、資本金等の額、決算期を記載するのは難しくなります。
そのため(2)のように系統図とは別に「グループ一覧」を作成することが認められています。なおこの図の「一連番号」と(1)の「一連番号」は対応させなくてはなりません。
まとめ
法人事業概況説明書の作成と提出は法人の義務です。ここで挙げた内容に留意して手書きで作成することもできますが、会計ソフトなどを使えばより簡単に作成が可能です。
ただしその分コストはかかるため、予算と相談しながら、あらかじめどのように対応するかを検討しておきましょう。
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