- 更新日 : 2024年10月29日
法人事業概況説明書の提出は義務!記載内容と書き方を解説
法人は確定申告の際に、確定申告書とは別にいくつかの添付書類を提出しなくてはなりません。例えば貸借対照表や損益計算書などの財務諸表、勘定科目内訳明細書などです。
この添付書類の中に、法人事業概況説明書という書類があります。ここでは、法人事業概況説明書の概要と書き方について解説します。
目次
法人事業概況説明書とは?
法人事業概況説明書は、平成18年度税制改正以前には提出義務がなかった書類です。しかしこの改正に伴って、法人税法施行規則35条の5号に「事業等の概況に関する書類」として定められたため、現在は財務諸表や勘定科目内訳明細書などと一緒に確定申告書に添付する書類として、提出が義務付けられています。
記載する内容は、事業内容をはじめとするその事業年度における会社についての詳細です。以下では国税庁が公表している「法人事業概況説明書」の記入用紙を見ながら、これらの記載項目について解説します。
法人事業概況説明書の書き方
引用:法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)|国税庁、「法人事業概況説明書」
法人事業概況説明書は表面(上画像参照)と裏面(下画像参照)で構成されています。各項目を拡大して、具体的な内容と記載時の注意事項を見ていきましょう。
項目名 | 注意事項 |
---|---|
1 事業内容 | 経営している事業の内容を記載。詳細は裏面「事業形態」に記載する。 |
2 支店・子会社の状況 | (1)支店 (国内)国内の支店、営業所等の総数を記載する。 (海外)海外に所在する支店等の総数を記載する。 (2)子会社 |
3 海外取引状況 | (1)取引種類 海外取引の有無を表示し、取引の区分ごとに相手国、商品等を百万円単位にて記載する。 (2)輸出入以外の海外取引 |
項目名 | 注意事項 |
---|---|
4 期末従業員等の状況 | 常勤役員以外の空欄には「工員」「事務員」などの職種を記載する。計のうち代表者家族数については、同居・別居を問わない。 |
5 PC利用状況 | (1)PCの利用 PCとはパソコン、タブレット端末、ワークステーションなどを指す。 (2)PCのOS (3)~(4) |
6 販売形態 | (1)電子商取引 電子商取引の有無と内容を記載する。 (2)販売チャネル |
7 株主又は株式所有異動の有無 | 株主の異動又は株主間の持ち株数の異動の有無等を記載する。 |
8 経理の状況 | (1)管理者 現金出納・小切手振出それぞれの担当者名などを記載する。 (2)試算表の作成状況 (3)源泉徴収対象所得 (4)消費税の当期課税売上高は単位(千円)に注意する。 (5)社内監査 |
9 役員又は役員報酬額の異動の有無 | 役員の異動や役員報酬額の異動の有無を記載する。 |
項目名 | 注意事項 |
---|---|
10 主要科目 | (1)~(14)まで記載要領に注意しつつ記載する。 |
11 代表者に対する報酬等の金額 | 千円単位で記載する。 |
項目名 | 注意事項 |
---|---|
12 事業形態 | (1)兼業の状況 2種類以上の事業を営む場合に記載する。 (2)事業内容の特異性 (3)売上区分 売上高に占める現金売上、かけ売上の割合を記載する。 |
13 主な設備等の状況 | 事業用に使用している機械装置や倉庫、客室などの設備について名称・用途・型・大きさ・台数・面積・部屋数等を記載する。ただし申告書の内訳明細書等に記載がある内容については省略可。 |
項目名 | 注意事項 |
---|---|
14 決済日等の状況 | 特になし。 |
15 帳簿類の備付状況 | 作成している帳簿類について記載する。 |
16 税理士の関与状況 | 複数の税理士が関与している場合、主な1名について記載する。 |
17 加入組合等の状況 | 主な加入組合等を記載する。 |
項目名 | 注意事項 |
---|---|
18 月別の売上高等の状況 | 複数の収入がある場合は、主な2つについて記載する。「源泉徴収税額」欄の右側の空欄には、掲記以外の主要の科目の状況を記載する。源泉徴収税額の単位に注意する。また従業員数は、その月に俸給や給与、賞与を支払った従業員の数を記載する。 |
19 当期の営業成績の概要 | 経営状況や経営方針の変化に伴って特に影響のあった事項を記載する。ただし同様の内容を別の書類で提出する場合は省略可。 |
20 年末調整関係書類の電子化の状況 | 「16 税理士の関与状況」の税理士の関与に「源泉徴収関係事務」の表示がある場合は、(1)から(6)の各該当項目に表示する。 |
「出資関係図」とは?
出資関係図とは、法人間の資本関係を整理してわかりやすく模式図に表したものです。完全支配関係の有無によって適用される税制が異なるため、正確な出資関係を示して確定申告書に添付する必要があります。
出資関係図を提出しなければならない法人
「出資関係図」の提出を求められる法人は、完全支配関係をもつ他の法人がある場合であり、確定申告書に添付して提出します。
完全支配関係とは以下の2つの条件のうち、いずれかに当てはまる場合を指します。
- 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係(当事者間の完全支配の関係)
- 一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係
出資関係図の書き方
出資関係図を作成する際は、次の4点に留意する必要があります。
- 記載内容は決算期末時点の状況を基に作成すること。
- 出資関係図は完全支配関係の最上位者(法人または個人)を頂点として、系統的に作成すること。
- グループ内のすべての法人の決算期が同一の場合、各法人は同一の出資関係図を提出すること。
- グループ内の各法人の所轄税務署、法人名、納税地、代表者氏名、事業種目、資本金等の額、決算期を記載すること。
これらに基づいて作成した出資関係図の例が以下の図です。
引用:法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)|国税庁、「法人事業概況説明書」
この例のようにグループ内の法人数が多い場合は、系統図の中に所轄税務署、法人名、納税地、代表者氏名、事業種目、資本金等の額、決算期を記載するのは難しくなります。
そのため(2)のように系統図とは別に「グループ一覧」を作成することが認められています。なおこの図の「一連番号」と(1)の「一連番号」は対応させなくてはなりません。
法人事業概況説明書の提出方法
法人事業概況説明書は、確定申告書の添付資料として提出します。提出期限は、法人税確定申告書と同タイミングとなります。例えば、3月末決算の会社で延長を申し出ていない場合は、2カ月後の5月末が期限です。
この記事ではOCR用紙イメージで説明してきましたが、法人の多くは電子申告によるため、e-Taxにおいて添付資料として提出します。申告ソフトの多くには、法人事業概況説明書の作成機能が搭載されているので、利用することをおすすめします。
法人事業概況説明書は、もちろん書面による提出も可能ですが、提出の際は他の申請書等と一緒にホチキス止めなどをせず、確定申告書に挟んだ状態で提出します。
また、出資関係図を提出する場合にはe-Taxにおいてイメージデータで提出することができます。
参考:e-Tax法人税確定申告等|国税庁、「e-Taxで利用可能な法人税確定申告等手続」、e-Tax利用可能手続一覧|国税庁、「イメージデータで提出可能な添付書類」
法人事業概況説明書を提出しないとペナルティはある?
法人事業概況報告書が未提出の場合、特に罰則が設けられているわけではありません。
しかしながら、冒頭で述べたように法人税法施行規則第35条として5つめに法人事業概況説明書についての記載があり、出資関係図についても記載されています。
(確定申告書の添付書類)
第三十五条 法第七十四条第三項(確定申告)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げるもの…(中略)…とする。
一 当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書
二 当該事業年度の株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書又は損益金の処分表…(中略)…
五 当該内国法人の事業等の概況に関する書類(当該内国法人との間に完全支配関係がある法人との関係を系統的に示した図を含む。)
最初に「法第74条」とあるのは、内国法人における確定申告の義務を定めた法人税法の条文です。この施行規則第35条の中では、法人事業概況報告書は貸借対照表や損益計算書と同じような扱いで記載されているものであり、確定申告における添付書類を構成する書類となります。
添付を失念した場合には、後日になっても提出することをおすすめします。
確定申告書の仕上げとして、法人事業概況説明書を記載しよう!
法人事業概況説明書は、法人が提出すべきとされている書類です。ここで挙げた内容に留意して手書きで作成することもできますが、会計ソフトなどを使えばより簡単に作成が可能です。
ただしその分コストはかかるため、予算と相談しながら、あらかじめどのように対応するかを検討しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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