• 作成日 : 2023年1月20日

貸倒引当金戻入とは?仕訳から解説

貸倒引当金戻入とは?仕訳から解説

貸倒引当金戻入は前期に計上していた引当金を減らす場合に用いる勘定科目です。戻し入れる際の会計処理は、貸倒引当金の計上方法によって異なります。似た勘定科目が何度も出てくるので、仕訳時にミスが発生しやすいのも特徴です。今回は貸倒引当金戻入や貸倒引当金の特徴、決算時の仕訳処理や仕訳例を紹介します。

貸倒引当金戻入とは

貸倒引当金戻入とは貸倒引当金の勘定残高がある場合、前期の引当金を取り崩すために使用する勘定項目です。貸倒引当金の設定は毎年度決算時に行われますが、毎年貸し倒れが発生するわけではないため、前期に積み立てた引当金が残っているケースもあります。

上記の場合、前期に設定した貸倒引当金を全額取り崩すことが可能です。取り崩しの際に用いるのが「貸倒引当金戻入」勘定です。

具体的には概算額を計上していて後に見積もりが過剰だと発覚した場合や、債務者の経営状態の見積もりを上方修正して概算額を下げる必要があるケースで使われます。戻入額は前期に計上した貸倒引当金の残額から、貸倒見積額を控除することで算出できます。

そもそも貸倒引当金とは

貸倒引当金戻入益の処理を正しく行うためには、貸倒引当金に対する正確な理解が必要です。貸倒引当金とは、将来生じる可能性が高い貸し倒れに備えて、あらかじめ計上しておく勘定科目です。

事業活動では売上に対する売掛金受取手形、貸付金、未収金などさまざまな債権が発生します。回収不能になった時点で貸倒損失を計上してしまうと、企業会計の大原則となる適正な期間損益の考え方からは好ましくありません。

なぜならば、貸し倒れの原因である収益が生じた年度に費用を計上しなくてはいけないためです。たとえば、翌年に貸し倒れが見込まれているケースで、実際に債権の未回収が確定した年度に処理するのは正しい方法だといえるでしょうか。

翌年度の利益が落ち込む一方、本年度はコストが少なくなり、利益が過大に計上されることに他ならないでしょう。こうした問題は、貸倒引当金の計上によって解決します。

引当金は未来を予測して費用を見込める数少ない科目です。その性質上むやみやたらと設定する行為は認められておらず、税務上、利用できるケースには制限が設けられています。

貸倒引当金の要件は、将来の費用あるいは損失の原因が当期以前に発生している・発生の可能性が高い・金額が合理的に見積もり可能なことです。

なお、貸倒引当金は通常、事業年度末に保有している各債権の金額に応じて設定します。

参考:国税庁 第2款 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金

貸倒引当金戻入の仕訳

前期末に積み立てていた貸倒引当金を減らす場合「貸倒引当金戻入」の仕訳が必要です。

貸倒引当金の設定方法に応じて、具体的な仕訳処理が異なることに注意してください。

洗替法の場合は前期に設定した貸倒引当金の全額を戻し入れる際に、差額補充法の場合は当期に設定する貸倒引当金が前期末時点の金額より少ない場合に仕訳が必要です。

洗替法による仕訳

洗替法とは、前期に計上した貸倒引当金を全額取り崩し、あらためて当期の概算額をすべて繰り入れる方法です。

仕訳例)前期に貸倒引当金を500,000円設定し、当期末残高として残っている。当期末で新たに1,000,000円の貸倒引当金を計上した

借方貸方摘要
貸倒引当金500,000円貸倒引当金戻入500,000円貸倒引当金の戻入
借方貸方摘要
貸倒引当金繰入1,000,000円貸倒引当金1,00,000円貸倒引当金の計上

まず、前期末時点で計上済みの貸倒引当金をすべて「貸倒引当金戻入」勘定を使用して、ゼロにします。その上で当期末に計上するべき貸倒引当金を「貸倒引当金繰入」で処理します。

洗替法の目的は、実際に動きがあった取引額で資産・負債を見積もることです。客観的な証拠があるので主観による恣意性を除外でき、株主や債権者などの第三者が見たときの信頼性を高められます。

洗替法で仕訳した場合、損益計算書には引当金を取り崩した額および新たに見積もった金額の両方の計上が必要です。前者は当期の収益として、後者は当期の費用として扱います。

差額補充法による仕訳

差額補充法とは、前期との差額分だけ貸倒引当金を戻し入れる、もしくは繰り入れる手法です。

仕訳例)前期に貸倒引当金を500,000円設定し、当期末残高として残っている。当期末で新たに1,000,000円の貸倒引当金を計上した

借方貸方摘要
貸倒引当金繰入500,000円貸倒引当金500,000円貸倒引当金の計上

上記のように、前期末と当期末の差額分だけ、新たに貸倒引当金を設定します。差額補充法で仕訳した場合、損益計算書には貸倒引当金勘定の増減後の金額のみ計上されます。

逆に見積額が貸倒引当金の残高より少ないケースでは、余剰分を減少させる処理が必要です。

貸倒引当金戻入益は貸倒引当金を取り崩す際に使用する勘定項目

前期末に設定していた貸倒引当金を取り崩す場合、勘定科目「貸倒引当金戻入益」を用いた仕訳が必要です。貸倒引当金戻入の仕訳は貸倒引当金の設定方法が洗替法か差額補充法かによって異なります。

洗替法の場合、全額を取り崩して一度勘定残高をゼロにした後、当期の概算見積額を計上します。一方差額補充法は見積額と勘定残高の差額のみが対象です。

貸倒引当金や貸倒引当金繰入、貸倒引当金戻入など複数の勘定科目が出てくるので、混乱しないように注意しましょう。

よくある質問

貸倒引当金戻入とは?

前期末の貸倒引当金を取り崩す際に使用する勘定項目です。詳しくはこちらをご覧ください。

貸倒引当金とは?

売掛金や受取手形のような債権を回収できないリスクに備えて設定する積立金です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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