- 更新日 : 2025年1月31日
入金消込とは?定義や手順、効率化のポイントを解説
入金消込とは、取引先から入金があったタイミングで売掛金として登録されているデータを消す会計処理のことを意味します。入金消込が正確に行われないと、取引先からの信用を失ったり、売掛金の回収漏れによって資金繰りが悪化したりするリスクがあります。こうしたリスクを軽減するためには、Excelの関数・マクロの活用や、会計システムの導入などが効果的です。
本記事では、入金消込の定義や手順、効率化のポイントを解説します。
目次
消込とは
「消込」(けしこみ)とは、売掛金・買掛金といった債権・債務の勘定科目の残高を消す経理作業のことです。
- 売掛金:商品販売やサービス提供によって、代金を受け取る権利が確定したが、代金はまだ入金されていない状態のもの
- 買掛金:商品やサービスを受けて、代金を支払う義務が確定したが、代金はまだ支払ってない状態のもの
これらの売掛金・買掛金の代金が支払われた時に、請求通りの代金支払いが完了したことを確認する作業が「消込」です。
入金消込とは
売掛金の消込と買掛金の消込のうち、売掛金の消込を「入金消込」と言います。相手企業から請求どおりに入金があったのかを確認し、債権を消します。
入金消込の定義
例えば、ある商品を取引先に販売した際、代金は後から回収するケースが多くなります。この場合、未回収の代金を売掛金とし、そのデータを一度計上する会計処理が求められます。
つまり、代金を回収する際に、計上していた売掛金を取り消す作業を「入金消込」と呼ぶのです。
入金消込の経理で用いる勘定科目
入金消込の経理を正しく行うには、勘定科目に関する基本的な知識を知っておく必要があります。
前提として、勘定科目は「資産」、「負債」、「純資産」、「収益」、「費用」の5つに大別されます。各分類の概要と具体的な勘定科目は以下のとおりです。
分類 | 概要 | 具体的な勘定科目 |
---|---|---|
資産 | 将来的に利益を生み出す源泉となる財産 | 現金、普通預金、商品、売掛金、土地、建物など |
負債 | 返済義務のあるものや資産の減少をもたらすもの | 買掛金、支払手形、長期借入金、短期借入金など |
純資産 | 資産と負債の差額であり、株主からの出資金や蓄積してきた利益など | 資本金、利益剰余金、資本剰余金、自己株式、新株予約権など |
収益 | 商品・サービスの販売や提供によって獲得した収入 | 売上、雑収入、受取利息など |
費用 | 事業のために必要とした経費 | 仕入、広告宣伝費、支払利息など |
取引ごとに、上記の勘定科目を借方(帳簿の左側)と貸方(帳簿の右側)に分けることを仕訳と呼びます。たとえば、商品を販売した場合には「売上」と「売掛金」が発生します。売上の発生(増加)は貸方、それに伴う売掛金の発生は借方に計上します。
入金消込の経理では、得に資産(売掛金や普通預金など)と収益(売上など)の勘定科目を利用します。次章では、入金消込の具体的な仕訳を紹介します。
入金消込の手順と仕訳
入金消込は、一般的に以下の2つのプロセスによって行われます。
- 売上および売掛金の計上
- 売掛金の回収
以下では、各プロセスで行う会計処理(仕訳)を解説します。
手順1: 売上および売掛金の計上
はじめに、売上と売掛金を帳簿に計上します。取引先や顧客に対して、商品・サービスを販売した時点で仕訳を実施します。
例えば、50万円の商品を掛取引で販売した場合、売掛金(資産)の増加と売上(収益)の増加をそれぞれ記帳します。前述のルールに基づくと、借方に売掛金、貸方に売上が計上されます。具体的な仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 500,000円 | 売上 | 500,000円 |
手順2: 売掛金の回収
次に、商品・サービスの代金が入金された時点で、売掛金の回収を記録するために入金消込の作業を行います。請求書の情報と実際の入金情報を照合し、内容に問題がなければ入金消込の仕訳を実施します。
50万円の売掛金を回収する場合、普通預金(資産)の増加と売掛金(資産)の減少をそれぞれ記帳します。前述のルールに基づくと、借方に普通預金、貸方に売掛金が計上されます。具体的な仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 500,000円 | 売掛金 | 500,000円 |
見てのとおり、取引時点で計上した売掛金について、同額を正反対の位置(借方→貸方)に記帳することで、売掛金を帳簿から消すことができます。以上により、入金消込の作業は完了となります。
入金消込でよくある問題と原因
入金消込は一見、請求と実際の入金の1:1の対応をチェックするだけの簡単な作業に思われますが、実際には下記のような問題が多く発生します。
未入金
請求期日までに入金が行われないことです。理由は、請求書の発行間違い・不着といった自社に起因するものと、振り込み先間違い・振り込み忘れ・資金不足といった請求先企業に起因するものがあります。未入金が発生した場合は、請求書の再発行や先方への督促などの手間がかかります。
金額相違
請求金額と実際の入金金額が異なる場合、消込ができません。請求先へ連絡をして正しい金額の入金にする修正作業が必要です。金額相違が起きる原因は、振込手数料・消費税計算の相違・別の月の請求と合算入金など様々です。不足金額を請求したり、翌月繰り越しにしたりといった対応を重ねると、月次の数字が合わないといった問題が発生しやすくなります。
振り込み元の相違
請求先の企業名と、実際に入金する口座の企業名が異なる場合があります。請求先企業の入金であることを確認する手間がかかります。
同額の入金
同会社名・同額の請求が複数あり、どの請求に対する入金なのか確認することが困難な場合があります。
消込ミス
類似企業名や金額など判別しにくい入金内容が原因で、消し込み時に対応する請求を間違うことがあります。また、紙の通帳やエクセルなどを利用した入金消込では、単純な行の間違いや見落としといったミスもどうしても発生しがちです。
取引件数や取引先が多い場合、こういった入金消込のトラブルの発生件数も増え、月次決算の締めが遅れる原因になります。
入金消込を効率化するためのポイント
入金消込を効率化するには、可能な限り作業の自動化を図ることがポイントとなります。作業を自動化することで、二重計上や売掛金の回収漏れといったヒューマンエラーが生じるリスクを削減できます。また、経理業務にかかる負担の軽減にもつながります。
以下では、作業の自動化によって入金消込の効率性を高める方法を2つ紹介します。
Excelの機能を最大限活用する
Excelには、入金消込の自動化に役立つさまざまな機能が搭載されています。
例えば、関数機能がその一つです。SUM関数を使えば、売掛金の残額などに関する合計を自動で算出できます。COUNTIF関数では重複のチェック、VLOOKUP関数では特定の条件(企業名など)に合致するものを一定の範囲から抜き出す処理をそれぞれ行えます。
また、マクロという機能も自動化に役立ちます。マクロとは、あらかじめ作業を記録しておくことで、その作業の繰り返しを自動化できる機能です。例えば、「入金情報と取引先の照合」などの単純な作業を自動化できます。
入金消込の全工程を完全に手作業で行う場合と比べて、大部分を自動化できる点がメリットです。ただし、データの入力は自動化できないため、その部分でヒューマンエラーが生じるリスクは残ります。また、関数やマクロを使いこなすための専門知識が必要となるため、業務が属人化しやすい点にも注意が必要です。
会計システムを活用する
より高い効率性を求める場合は、会計システムの活用がおすすめです。
会計システムには、仕訳や入金消込などの経理業務を自動化する機能が備わっています。Excelと比べて自動化できる範囲が広いため、より経理業務の負担軽減やミス防止の効果を高めることが可能です。また、多くの会計システムは簡単な操作で利用できるように設計されているため、属人化によって業務が滞るリスクも抑えられます。
ただし、会計システムの導入や運用にはコストがかかります。また、必ずしも入金消込の自動化機能が搭載されているとは限らないため、導入する会計システムで自動化できるかどうかを確認しておくことが求められます。
より一層効率化を図る際には、ERPとの連携も視野に入れることがおすすめです。ERPとは、会計や販売などの基幹システムを統合し、データの一元管理を実現するシステムです。
ERPを導入することで、入金消込などの経理業務に必要なデータをリアルタイムで自動収集できるようになります。
より詳しくERP導入のメリットを知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
入金消込をスムーズに自動化しましょう
取引先からの信用低下や資金繰りの悪化を防ぐためにも、入金消込は正確に行うことが求められます。また、取引数が多くなるほど経理の負担も増えるため、正確さだけではなく効率性も重視すべきです。
効率化のポイントは、Excelや会計システムによる作業の自動化です。特に会計システムでは入金消込における作業の大半を自動化できるため、現場の負担軽減やミス防止につながります。
入金消込の効率化やヒューマンエラーの防止を実現したい方は、会計システムやERPの導入を検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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