• 作成日 : 2024年11月19日

誤入金されたお金を返金するには返還インボイス(適格返還請求書)が必要?

返還インボイスとは、適格請求書発行事業者が商品の返品や値引きのときに発行する書類のことです。

本記事を読めば、「返還インボイスをいつ交付すればよいかがわからない」「交付が免除される場面は?」という悩みを解決できます。

本記事で、返還インボイスの交付が必要なときや、免除されるパターンについて確認していきましょう。

返還インボイス(適格返還請求書)とは?

返還インボイスは、適格請求書を発行する事業者が値引き等で金銭を返金する際に発行される書類です。「適格返還請求書」と呼ばれることもあります。

返還インボイスを発行するのは、課税事業者との取引を行ったときのみです。そのため、個人の購入者や免税事業者との取引の返還インボイスについては、発行する必要がありません。

返還インボイスは、原則返金するときに発行しますが、適格請求書と一緒に1枚でまとめて発行することも可能です。返還インボイスと適格請求書を1枚にまとめて発行すると、返還インボイスの作成や発行する手間を削減できるため、値引き等がある場合は1枚でまとめて発行しましょう。

また、法人の返還インボイスは適格請求書などの書類と同じ7年間の保存が義務付けられているため、取引の都度発行漏れがないか確認が必要です。欠損金がある場合は保存期間が変わり10年間の保存義務があります。

返還インボイスは適格請求書に比べて発行されていない場合も多いため、返還インボイスの仕組みを理解して、適格請求書と合わせて保存できるように心がけましょう。

適格請求書と返還インボイスを同じファイル等に保存することで、発行漏れの確認ができます。とくに返還インボイスの対象取引が多い事業者は、記載要件や仕組みを理解するべきです。

返還インボイスの交付が必要な場面は?

返還インボイスは、適格請求書の発行事業者がいずれかの理由で現金等を返金する際に発行が必要です。具体例を4つ紹介します。

  • 商品の返品があった場合
  • 商品の値引きがあった場合
  • 販売奨励金を支払った場合
  • 事業分量配当金を支払った場合

返品や値引きは頻繁に発生しますが、販売奨励金や事業分量配当金は対象の事業者が限定されるため、該当の取引が予定されている場合は確認しておきましょう。

商品の返品があった場合

販売された商品の返品があった場合は、販売先が商品の代金を返金する必要があります。商品について返金するときは、販売先が返還インボイスを交付しなければなりません。

例えば商品を60万円で販売した後に、商品の一部20万円を返品した場合は20万円の返還インボイスを発行します。商品を販売したときに60万円の適格請求書を発行しているため、返品したときの返還インボイスを含めて2枚の書類を発行する必要があるでしょう。

商品の返品は販売した後から期間が空くことも多いため、返還インボイスの発行忘れがないように注意しましょう。発行忘れがあった場合は多くの場合取引先から連絡が来ますが、時間が空いてから気づいた場合はクレームになる可能性もあります。

商品の値引きがあった場合

商品を値引きする場合は、返還インボイスの発行が必要です。例えば商品を50万円で販売した後に1万円値引きすることになったときは、返還インボイスを別途発行します。

販売するときに商品の値引きが決まっていて、本体50万円の商品を49万円として販売する場合は、必要な事項を適格請求書に記載して処理します。しかし、継続的に値引きを記載するときは、値引き前の合計金額のような一部の記載項目を省略可能です。

商品の値引きは事業活動の中で発生する回数が多いことから、返還インボイスの発行や自社が受け取る立場になることも多いでしょう。

販売奨励金を支払った場合

販売奨励金は、製品を販売業者に販売してもらったときに支払う金銭のことです。

例えば、X社が販売している商品をY社が1個販売する毎に1,000円の販売奨励金を支払うという契約があります。X社はY社が販売代行してくれたことで多くの製品が売れるメリットがあり、Y社は商品を売るほどに利益を得られることで、お互いにメリットのある契約でしょう。

販売奨励金は、X社からY社に支払われる金銭のため、Y社はX社に返還インボイスを発行します。また、販売奨励金は通常の事業活動の中で発生しない金銭のため、新たに販売奨励金を支払う場合は、返還インボイスの発行に漏れがないか確認しておきましょう。

事業分量配当金を支払った場合

事業分量配当金は、商工組合や農業協同組合などが組合員に対して支払う金銭です。組合の運営で余剰金は発生したときに、事業の従事量などに応じて事業分量配当金が支払われます。

事業分量配当金は組合側が支払うため、企業側が事業分量配当金についての返還インボイスを発行することはないと思われます。しかし、組合に属している事業主は組合から配当金を受け取って、返還インボイスの発行を受ける場合もあるでしょう。

他の具体例に比べて自社が返還インボイスを発行することはないですが、返還インボイスは保存義務があるため、組合に属している場合は必ず返還インボイスが発行されているか確認が必要です。

誤入金されたお金を返金するには返還インボイスが必要?

誤入金されたお金を返金する場合は、返還インボイスの発行は必要ありません。誤入金されたお金は仮受金の扱いとなるため、適格請求書や返還インボイスの対象外です。

経理業務において、誤入金が発生するのは先方の振込間違いだけではなく、当方のミスが原因のこともあるでしょう。どちらのミスであっても誤入金が発生したら、なるべく早く対応するべきです。

誤入金されたお金を返金した場合の仕訳例

誤入金されたお金を返金する場合の仕訳例を見ていきましょう。

例)

得意先に100,000円を請求したところ、110,000円の入金があった。

原因を照会した結果、先方の振込ミスによって10,000円多く振り込まれたことがわかった。

そのため、入金された翌日に10,000円の返金を行った。

①入金したときの仕訳

借方貸方摘要
普通預金110,000円売掛金100,000円A社 売掛金回収
仮受金10,000円A社 先方の誤入金振込

②返金したときの仕訳

借方貸方摘要
仮受金10,000円普通預金10,000円A社 誤入金のための返金

少額な返還インボイスの交付義務免除とは?

返還インボイスは、返金する場合に発行しなければならない書類ですが、以下の場合は交付義務が免除されます。

  • 少額な返金は返還インボイスの交付が免除される
  • 少額な返金以外に返還インボイスの交付が免除されるケース

返還インボイスが免除される取引を覚えておけば、余計な書類の作成や発行の手間を削減できます。今回紹介する取引は発生頻度が多いものや、取引の性質上返還インボイスが発行できないものもあるため、該当取引の多い事業者は確認しておきましょう。

少額な返金は返還インボイスの交付が免除される

税込1万円未満の返金で適格請求書が発行される取引については、返還インボイスの交付が免除されます。例えば振込手数料の金額分を減額して支払うような少額のときは、返還インボイスを発行する必要はありません。

そのため、商品の販売等で請求書を発行するときに端数を値引きする場合でも、少額な値引きであれば適格請求書に値引きを記載するだけで問題ないです。事業を行うに当たって1万円未満の値引きは頻繁に出てきますが、その都度返還インボイスを発行する手間がかからないために考慮されているのでしょう。

掛取引で商品や材料を仕入れる場合は、手数料や少額な値引きの発生頻度が多い傾向にあります。値引きする側が返還インボイスのような書類を発行する作業を省略できることから、値決めの障害にならない仕組みになっています。

少額な返金以外に返還インボイスの交付が免除されるケース

返還インボイスの交付が免除される取引に1万円未満の返金がありますが、適格請求書の交付が不要な場合も返還インボイスの交付は必要ありません。

適格請求書の交付義務が免除される取引は、以下の5つです。

  • 税込3万円未満の公共交通機関の運賃
  • 税込3万円未満の自動販売機や自動サービス機による商品の販売
  • 郵便ポストに差し出された郵便物
  • 生鮮食品などの卸売市場での販売
  • 森林組合、漁業協同組合、農業協同組合などに委託して行う農林水産物の販売

上記の取引は返還インボイスを交付する場合で適格請求書が発行される取引が対象となるため、返金があった場合でも適格請求書自体の交付が免除されている取引は返還インボイスも必要ありません。

多くの事業者に該当しそうなものの一例としては、新幹線の乗車券や郵便切手などがあります。出張が多い社長や営業の人は乗車券を購入するタイミングが多いですが、返金等があっても書類の心配が不要となっています。

返還インボイスが不要なケースを把握しておこう

返還インボイスが不要なケースは大きく分けて以下の2つです。

  • 1万円未満の少額な返金
  • 適格請求書の交付義務が免除されている取引

返還インボイスの発行が不要な取引を覚えておくことで、余分な書類を発行する手間を省いて効率良く経理業務を進められます。返還インボイスの仕組みを正しく理解して、取引先等に迷惑をかけないように注意しておきましょう。


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