• 更新日 : 2024年8月30日

売掛金の消し込みとは?消込漏れの原因や課題も解説

ビジネスの現場では、代金は一旦掛取引とされ、入金は複数の取引先から異なる条件で行われることが一般的です。よって、どの入金がどの売掛金に対するものか、消込によって管理する必要が出てきます。この記事では、まず入金消込の意味や相殺との違いを分かりやすく説明し、ミス・漏れ等の原因や課題を明確にしたうえで、作業を効率化する方法を紹介します。

売掛金の消し込みとは?

売掛金の消し込み(入金消込)とは、掛取引とした売掛金について、その代金の入金時に、入金実績と売掛金を突合させ、入金に相対する売掛金の残高を減額する作業です。この作業によって、取引先ごと・取引ごとの売掛金がどの程度残っているかを把握できます。

さらに、支払いが滞留し、未入金となっている売掛金も明らかになるため、取引先に対して入金の督促を行うことができ、ひいては代金の未回収を防ぐことにつながります。

売掛金の消し込みの具体例

それでは、売掛金の消し込み(入金消込)の作業がどのようなものかを、経理の実務に即して具体的に説明します。

  1. 前提として、取引先に対して掛取引で売上が計上されており、帳簿上では、借方に当該取引に対する売掛金が計上されているとします。
  2. 取引先との間では掛取引に関して、締め日と入金日を取り決めておくことが一般的です。取引先は入金日に従って、締め日までの期間内に売掛金で処理された複数の取引に対する代金をまとめて振り込みます。
  3. 銀行等から入金に関する情報を受け取ったら、経理担当者は、どの取引先からの入金かを確認します。これは振込元の口座名等から判断ができます。次に、その入金が、どの取引に対するものなのかを経理担当者側で確認します。確認は、予め計上されている売掛金と突き合わせて行います。
    ただし、複数の取引に対する代金が一回にまとめて振り込まれていることが多いため、どの売掛金に対する入金なのか分からないことは頻繁に起こります。その場合は、取引先の担当者に連絡のうえ、売掛金と突き合わせできなかった入金が何かを確かめたうえで、どの売掛金に対する入金かを特定します。
  4. 最後に、突合ができた売掛金と、それに相対する入金について、預金勘定を借方・売掛金勘定を貸方で仕訳を行うことで、売掛金の残高を減額します。
    さらに、入金管理表や売掛金元帳等の管理帳簿上で何らかの印を付けて「この売掛金に対する代金の回収は完了した」ということを記録することもあります。エクセルで管理することが可能ですが、大手会計システムには印を付ける機能が備わっていることも少なくありません。

売掛金の消し込みと相殺との違い

売掛金の消し込みと、売掛金の相殺の違いはシンプルで「入金を伴うかどうか」です。売掛金の消し込みは「入金消込」とも言うように、代金の回収に際して、その入金がなされることが前提にあります。

一方で売掛金の相殺は、代金の回収を買掛金等の債務を減額することで実現する手法です。取引先に対して債権・債務双方を有する場合に、取引先との話し合いによって、債権・債務を同額ずつ減額するもので、仕訳では、売掛金を貸方に、買掛金を借方に計上します。

売掛金の消し込み漏れの原因

ここからは、入金消込作業における課題や問題点に焦点をあて、その解決策である自動化・効率化について紹介します。まずは、入金消込の最大の課題である「消し込み漏れ」について、主たる原因を6点列挙して解説します。

銀行振込

1つ目の原因は、入金消込の際に、銀行振込した取引先を間違えてしまうケースです。誰から入金されたかは、取引先(振込人)のカナ名義を頼ることが一般的ですが、カタカナで記載されているがゆえに、名前の似ている他の取引先と混同してしまい、別の取引先の売掛金を消し込んでしまうミスがしばしば発生します。

特に、会社名が同じで「株式会社」表記が社名の前後どちらに付いているかで区別しているようなケースでは要注意です。

分割払い

2つ目の原因は、1つの取引に対する分割払いが挙げられます。これは1回の取引額が大きい場合に散見されます。

この場合、入金額と売掛金の額を一致させることはできません。よって、このような支払いが予想される場合は、事前に売掛金元帳等の該当する取引先のページに「分割払いである旨」をメモしておくとよいでしょう。

また、予め取引先と自社との間で共通の取引番号を決めておき、自社側では仕訳時に売掛金の摘要欄に取引番号をメモしておく一方、取引先には分割入金時に取引番号を連絡してもらうことで、消し込むべき売掛金の特定をスムースに進める方法もあります。

入金金額と請求金額の相違

3つ目の原因は、入金金額と請求金額の相違です。これは単純に「自社側で請求書の金額を間違えてしまった」ケース、あるいは「取引先側で入金額を間違えてしまった」ケースが考えられます。

入金消込という観点からは、後者が問題になります。取引先の入金が、どの取引の売掛金残高とも一致しなくなるからです。このような場合は、取引先に確認のうえ、どの取引に対する入金かを問い合わせるようにしましょう。

もう1つ、しばしば出てくるのが振込手数料相当額の差額が発生するケースです。振込手数料は多くの場合、代金を振り込む側(取引先側)が負担することが多いですが、取引条件によっては自社側で負担するようになっていることもあります。

経理担当者がこのことを失念し、振込手数料を考慮しない前提で入金消込を行おうとすると、入金額との不一致にぶつかります。想定している額と数百円程度の差異が発生している場合は、改めて取引先の支払条件を確認してみるとよいでしょう。

売掛金が複数

4つ目の原因は、取引先からの入金が複数の売掛金残高に対する入金であるケースです。これは、少額の取引を複数回繰り返す小売業において特に一般的です。掛け取引の締め日までに行われた取引に対して、支払日に「〇月分」としてまとめて入金されます。

通常このような場合は、どの取引に対する入金なのか分かるように取引先が入金明細表を添付することが多いものの、送付されない場合は、取引先に問い合わせ、どの取引に対する入金なのかを確認する必要があります。

入金日が異なる

5つ目の原因として、入金日が異なるために入金消込時に混乱が生じることがあります。これは取引先の入金が遅れたというケースや、自社からの請求書の送付漏れにより取引先が入金を失念したというケースが考えられます。

1日程度のずれであれば、特に問題なく入金と相対する売掛金を特定できますが、入金が大きく遅延すると、他の入金と判別がつきにくくなるので注意が必要です。

イレギュラー対応

最後に、通常の入金とは異なるイレギュラーな対応により入金消込が漏れることがあります。例えば、システムエラー等によって、入金処理が正常にシステムに反映されていなかったり、財務部門からの入金情報に伝達漏れがあり、そもそも入金の事実を知らないまま時間が経過してしまったりといったケースです。

これらについては、発生の都度、入金消込を行う必要がありますが、本来予定されていた入金日からずれてしまうことも多く、入金に相対する売掛金が特定できない場合もあります。その際は、取引先に問い合わせるなどして、正しい売掛金を消し込む必要があります。

売掛金の消し込み業務の課題

売掛金の消し込み業務(入金消込業務)について、その作業の煩雑性からミスが発生するリスクを完全に排除できません。しばしば、特定不能な売掛金が残ってしまい、代金の回収が遅れたり、財務諸表に適切な数値を反映させられなかったりするリスクもあります。

ここでは、入金消込業務において、どのような課題があるのかを具体的に3点列挙します。

一連の作業に相当量の時間と手間がかかる

入金消込業務は、入金のタイミングが取引先に依存するという特性から、完全にルーティン化することはできません。特に入金遅れが発生した際には取引先への個別の確認作業が必要になり、相当量の時間と手間がかかります。

取引先と入金のタイミングや内容等を事前に情報共有し、密なコミュニケーションラインを確立することで、短縮化・省力化は可能です。それでも、経理業務においては大きなウェイトを占める業務であることに変わりはありません。

目視確認や消込入力等の手作業を回避できない

入金消込業務の作業時において、入金管理表や売掛金元帳等の管理帳簿を利用することが多いでしょう。この場合、担当者がエクセル上での目視確認や、入金済売掛金への印付けの作業等を行うため、手作業によるミスのリスクを回避できません。

経理担当者とその上長によるダブルチェックにより、エラーをある程度防止できますが、それでも完全とは言えません。

業務が特定の担当者に依存してしまう

入金消込業務は、1回の入金で複数の売掛金に対する代金が振り込まれたり、1つの取引に対して複数回の支払が行われたりと、取引先によって代金支払いのルールや特徴が異なります。

業務を長く担当している人ほど、そのようなルールや特徴を把握していることが多いでしょう。短時間で業務をこなせるため、特定の人が長く同じ業務を行い、他の経理担当者は手が出せない、いわゆる属人化が進む傾向にあります。

このような場合、その担当者が会社を休んでしまったときは、他の担当者で消し込み業務をカバーできず、その分、経理業務全体が遅れるといったリスクを抱えることになります。

売掛金の消し込みを自動化するには?

入金消込業務の課題を解決し、効率化する方法の1つが、業務の自動化です。自動化には経理担当者の手作業を一部必要とするシステムの導入と、完全に自動化するアウトソーシングなどの方法があります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットについて、簡単に紹介します。

システムを導入する

まず考えられるのが、会計ソフトの導入です。会計ソフトのなかには、未決済の売掛金と決済が完了した売掛金を区別する機能を備えた製品があります。売上計上時に自動的に未決済の売掛金が仕訳され、入金時に経理担当者が操作することで、売掛金を未決済から完了に変更できる機能です。

システムを導入すると、引き続き経理担当者の作業が必要とされるデメリットがある一方、エクセル等による別管理が不要になる点や、後に紹介するアウトソーシングに比べると比較的安価といったメリットがあります。

アウトソーシングを検討する

アウトソーシングには、売掛金の計上から入金消込までを自動化するサービスや、取引先への請求書の発行から未回収の売掛金に対する督促まで売掛金に関連する一連の業務を一括して担うサービスまで、幅広い選択肢があります。

メリットは、入金消込業務そのものがなくなるため、経理担当者がより注力するべき業務に集中できることです。また、外部の専門集団に任せることで、消し込み時のミスも相対的に減少することが期待できます。

デメリットは、一定の費用が追加で発生することです。経理担当者で現状必要としている消し込み業務への必要工数と比較しながら、検討するとよいでしょう。

売掛金の消し込み業務を理解し、業務を効率化させよう

売掛金の消し込み業務(入金消込業務)は、一筋縄ではいかない課題の多い業務です。しかし、売掛金を確実に回収し、財務諸表を適正に保つには、消し込み業務を正確に、効率的に行うことが不可欠です。

効率化するには、取引先とのコミュニケーションの強化や消込時のダブルチェックの導入など、自社で対応できるものもあれば、システム導入といった外部の力を借りる方法もあります。本記事を参考にして、自社の状況に合った方法を検討してみてください。


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