• 更新日 : 2024年3月8日

減価償却のしくみとは?減価償却費計算や仕訳を基本から解説

減価償却のしくみとは?計算や仕訳方法を基本から解説

事業に使用される建物、機械装置、器具備品などの資産は、通常、時間の経過や使用によって価値が減少していきます。
このような資産は「減価償却資産」と呼ばれます。減価償却とは、資産を取得する際にかかった総額を、特定の方法で年ごとに配分し計上していく手続きです。

この記事では減価償却の概要や行い方、仕訳、計算方法まで、減価償却について詳しく解説していきます。

減価償却の基本

減価償却とはどういったもので、実施する目的は何かなど、まずは減価償却の基本的な内容について解説していきます。

減価償却とは?

減価償却とは、資産の価値が時間とともに減少するとみなし、その資産を使用する期間(耐用年数)にわたって、購入額を毎期の費用として均等に配分する手続きのことです。
この手続きは企業が正確な利益と税金を計算するために行われます。

購入や自己建設などで取得した資産のうち、一定額以上のものについては取得した年に、全額が費用処理されるわけではありません。原則として、償却期間として定められた複数年にわたって費用計上していくことになります。

減価償却の目的は?

減価償却の目的は費用収益対応の原則に基づき費用を配分することです。

企業会計において本会計年度に発生した現金支出のすべてが当該年度の費用とはならず、当該年度の収益の獲得に寄与した部分だけが当該年度の費用として計上されます。
支出の効果が翌年度以降にも続く場合は、その部分は資産として繰り延べられます。
これが費用収益対応の原則です。

仮に資産の取得価額を取得した年に一括して費用計上してしまうと、実際にその資産が複数年にわたり収益に与えた影響を正確に会計へ反映させることができません。そのため、資産の使用可能期間にわたり取得価額を配分し、費用として計上していくことが適切であるとするのが減価償却の考え方です。

減価償却をしないとどうなる?

減価償却の取り扱いについては、事業体が個人事業主である場合と法人である場合とで異なります。

  • 個人事業主の場合

取得した固定資産について、原則として耐用年数に応じて減価償却処理を行わなければなりません。

  • 法人の場合

会計で償却費として計上した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額が法人税において損金(法人税の計算をするときに、益金から差し引くことができる金額のこと)の額に算入されます。

非上場企業などにおいては、会計上、必ず減価償却費を計上しなければいけないわけではありません。
ただし、減価償却を行わない場合、減価償却費が損金(法人税法上の計算において計上できる費用)に計上されないことになり、通常法人税をより多く納めることになります。

減価償却できる資産・できない資産

減価償却は取得した固定資産のすべてにおいて行われるわけではありません。資産の中でも、減価償却ができる資産と減価償却ができない資産があります。

減価償却できる資産

時間の経過や使用とともに価値が減少すると考えられる資産は減価償却できます。
主に次のような資産が挙げられます。

資産の種類
内容
建物
事務所、店舗、工場、倉庫、病院など
建物附属設備
アーケード・日よけ設備、電気設備、給排水設備、ガス設備、など
構築物
ブロック塀、用水路、貯水槽、サイロ、果樹棚、頭首工、えん堤、ひ門、など
生物
牛・馬・やぎ・豚などの家畜、りんご樹やぶどう樹などの樹木
車両・運搬具
小型車、貨物自動車、二輪・三輪自動車、自転車、など
工具
測定工具、検査工具、取付工具、ロール、金属製柱及びカッペなど
器具・備品
事務机・椅子・キャビネット、ベッド、陳列棚、冷暖房機器、コンピューター、など
機械・装置
製造業用設備、鉄鋼業用設備、農業用設備、林業用設備など
無形固定資産
ソフトウェア、特許権、工業所有権、のれんなど

減価償却できない資産

時間の経過や使用により価値が減少しないと考えられている資産は減価償却ができません。具体的には以下の固定資産などです。

  • 土地
  • 歴史的な価値や希少性があり、代替が難しい古美術品、古文書、出土品、遺物
  • 歴史的な価値や希少性があり、代替が難しい古美術品、古文書、出土品、遺物以外の美術品等で、1点の取得価格が100万円以上のもの(ただし、時が経つことによって明白に価値が減少するものは除く。)
  • 遊休固定資産
  • 建設中の建物・機械装置など

減価償却に関する用語

この章では減価償却に関する勘定科目などの専門用語について解説します。

減価償却費

減価償却費とは減価償却によって計上された費用のことです。減価償却費は資産の区分ごとに建物の減価償却によるもの、備品の減価償却によるものなど資産ごとにまとめて減価償却費勘定に計上します。

減価償却累計額

減価償却累計額とは固定資産に発生した減価償却費の合計額を表す勘定科目です。資産の種類ごとに減価償却累計額を把握しやすくするため「建物減価償却累計額」「機械装置減価償却累計額」などと区分することもあります。

なお、減価償却の仕訳方法には直接法と間接法という2つの方法があります。

  • 直接法:固定資産の取得原価より直接減価償却費を引いて計算する方法
  • 間接法:減価償却費を固定資産の取得原価から直接引くのではなく、減価償却累計額を計上し、間接的に減価償却費を削減していく方法

直接法では減価償却によって固定資産の取得原価を直接減らす仕訳を行うため、減価償却累計額勘定は使用されません。一方、間接法では、減価償却費の合計額を減価償却累計額として計上する会計処理を行います。

耐用年数

減価償却資産の「耐用年数」とは、通常の維持補修を含む場合に、その資産が本来の用途や用法に従って通常予定される効果が持続する期間、つまり通常の効用が続く年数を指します。通常、各資産に定められた耐用年数が減価償却期間として扱われます。

国際財務報告基準(IFRS)では、耐用年数を実態に即した使用期間に基づき、個々の資産ごとに経済的使用可能予測期間を算出し、耐用年数を定めるべきと考えられています。しかし、資産ごとに経済的使用可能予測期間を見積もるのは大変困難であり、実務で行うのは現実的ではないという意見も少なくありません。そのため、多くの企業では税法上で定められた耐用年数を基準に減価償却を行っています。

税法上の耐用年数とは、財務省令である「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表に定められた法定耐用年数のことです。

法定耐用年数は減価償却資産の品目ごとに定められています。期間が長いものは事務所用鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物の50年から、短いものは自転車の2年までとさまざまです。

取得価額

取得価額とは資産を取得するのに要した額です。取得価額には以下が含まれます。

  1. 該当する固定資産の取得費用
  2. 付随する外部費用(運送費、荷役費、運送保険料、取得手数料、関税、その他取得に伴う支出)
  3. 該当資産を直接事業に使用するために発生した費用(内部の取り付け費用など、例えば設置費用や試運転費用など)の中で、減価償却資産として帳簿に計上されるもの

事業供用日

事業供用日とは、資産を本来の目的で使用を始めた日のことをいいます。機械装置を例に挙げると、機械を据え付けて試運転を行った後、事業のために機械を使い始めた日が事業供用日にあたります。

ただし、物理的な使用だけが目安ではありません。例えば賃貸マンションの場合、建物が完成したばかりで入居が始まっていなくても、入居者を募集していれば、それは事業供用とみなされます。

減価償却は、対象の資産を取得した日ではなく、原則として事業供用日から起算します。資産の取得日と事業供用日が異なる場合、起算日を間違えないように注意が必要です。

償却率

償却率は、減価償却資産の耐用年数や償却方法に応じて変化する値で、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(一部は「減価償却資産の償却率等表」として国税庁)で公表されています。

定額法・定率法の減価償却費は以下の算式で求められます。

定額法の場合
その事業年度の減価償却費=減価償却資産の取得価額×耐用年数に応じた定額法の償却率(※年度の途中で取得した場合は取得以後の月数分とする。)

定率法の場合(償却保証額を下回る年まで(詳細後述))
その事業年度の減価償却費=減価償却資産の期首残存価額(取得価額-前年までの減価償却費の合計額)×耐用年数に応じた定率法の償却率(※年度の途中で取得した場合は取得以後の月数分とする。)

償却保証額

「償却保証額」とは、資産の取得価額にその資産の耐用年数に基づく保証率をかけて算出される金額を指します。

定率法の減価償却費=未償却残高×償却率が償却保証額を下回る年からは、次の算式が適用されます。

改定取得価額×改定償却率

なお「改定取得価額」は、初めて償却保証額を下回る年の期首の未償却残高を指し、「改定償却率」は、改定取得価額に対してその後同一の償却費が得られるように調整された資産の耐用年数に応じた償却率を示します。

減価償却の行い方

この章では減価償却の行い方について解説します。

減価償却はどのタイミングで行う?

先述したように、減価償却は資産の事業供用日から行います。仮に期首に入手した資産の事業供用日が期中である場合、減価償却は事業供用日を基準に月割りで計算します。

資産の入手日と事業供用日が異なるケースは決して珍しいことではありません。場合によっては資産を購入した期中には使われず、事業供用日が翌期になる場合もあります。

耐用年数の確認方法

減価償却を行う際には耐用年数を確認する必要があります。実務上は、法人税などの計算で使用する法定耐用年数を基準にするケースが一般的です。資産の種類や細目ごとの法定耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令より確認できます。

取得価額の決め方

取得価額は減価償却の基準になる額です。資産を購入した際に計上する取得価額は、先述した通りです。

固定資産を自社で製作する自家建設においては、製作にかかった製造原価材料費や外注費などの合計額)を取得価額とします。自家建設に関わる借入金などの利子のうち、稼働前の期間の利子についても取得価額に含めることが可能です。

このほか、発行株式の対価として固定資産を受け入れたときは株式の発行価額、固定資産の贈与を受けたときは時価を基準にした公正な評価額など状況に応じて取得価額を決めていきます。

減価償却の計算例

減価償却の方法には、定額法、生産高比例法、級数法などがあります。中小企業では定額法、定率法、定率法、生産高比例法が採用されるケースが多いため、それらを取り上げます。

定額法
備品50万円(耐用年数5年)を取得したときの初年度の減価償却費。
※事業年度は4月1日~翌3月31日で、備品は4月1日に取得し、ただちに事業の用に供したものとする。

500,000×0.200(5年の定額法償却率)=100,000円

定率法の計算の例
定率法の計算例を見てみましょう。
機械(取得価額:6,000,000円、耐用年数:5年)の減価償却費を計算すると、以下のようになります。

定率法の償却率 0.400、保証率 0.108、改定償却率 0.500

1年目:2,400,000円(6,000,000円×0.4)
2年目:1,440,000円(6,000,000円-2,400,000円)×0.4)
3年目:864,000円(6,000,000円-2,400,000円-1,440,000円)×0.4)

4年目:648,000
(6,000,000-2,400,000-1,440,000-864,000)×0.4=518,400
6,000,000×0.10800=648,000
∴1,296,000(=6,000,000-(2,400,000+1,440,000+864,000))×0.500=648,000
4年目には償却限度額を超えたため、改定取得価額と改定償却率を用いて再計算が行われます。

5年目 647,999(備忘価格1円を残すため、648,000-1円となる)

※この計算例は、200%定率法に基づいています(平成24年4月1日以後に取得をされる減価償却資産の定率法は「200%定率法」)。なお減価償却における定率法には、旧定率法、250%定率法、200%定率法があり、その減価償却資産を取得した時期により適用する償却率は異なります。

生産高比例法で計算する方法

生産高比例法を適用するにあたっては、見積総利用量を正確に見積もる必要があるため、適用できる資産は限られます。生産高比例法が適用できる代表的な資産は、鉱業用設備などです。

生産高比例法の計算の例
自動車200万円(見積総走行距離100,000km、初年度の走行距離10,000km)を取得したときの初年度の減価償却費。

2,000,000円×10,000km÷100,000km=200,000円

減価償却費の仕訳

減価償却費の仕訳の方法には、直接法と間接法の2つの方法があります。それぞれどのような勘定科目を使用して仕訳をするのか、減価償却方法の定額法で取り上げた数値を例に説明していきます。

直接法で仕訳する方法

直接法では資産の取得価額から直接減価償却費を控除して、資産の事業年度末の帳簿価額を表すので、以下のように仕訳を行います。

借方)減価償却費100,000円貸方)備品100,000円

なお、企業が直接法を採用する場合は、注記表に減価償却累計額を注記する必要があります。

間接法で仕訳する方法

間接法は減価償却費を減価償却累計額という資産控除科目に集計して、間接的に資産より減価償却費の合計額を差し引く方法なので、以下のように仕訳を行います。

借方)減価償却費100,000円貸方)備品減価償却累計額100,000円

減価償却と決算書の関係

減価償却と各種決算書との関係を説明します。

減価償却と貸借対照表との関係

間接法の場合、減価償却累計額が貸借対照表の資産の部に控除科目として記載されます。減価償却累計額は対象資産に係る残高の一括表示、資産の種類ごとの分割表示のどちらも認められています。

貸借対照表上で固定資産の取得価額と減価償却累計額を同時に確認できるのがメリットです。減価償却累計額は控除科目であり、固定資産の取得原価から減価償却累計額を控除した額が、固定資産の帳簿価額として計算されます。

直接法の場合は、減価償却累計額の貸借対照表上の表示はありません。固定資産の取得価額からこれまで計上した減価償却費の累計(=減価償却累計額)を直接控除した額が、その時点の固定資産価額として貸借対照表上に記載されます。

減価償却と貸借対照表との関係

減価償却費は損益計算書上、通常は「販売費及び一般管理費」にて表示されます。
損益計算書に表示される減価償却費は、その事業年度に発生した減価償却費の合計額です。資産ごとに減価償却費を分けることはせず、一括して減価償却費として表示されます。

なお、減価償却を行う資産は事業で使用することから、減価償却費は、営業内費用を示す「販売費及び一般管理費」の内訳として表示されることになります。

減価償却とキャッシュフロー計算書との関係

キャッシュフロー計算書の作成方法には、主要な取引ごとにキャッシュフローを把握する直接法と税金等調整前当期純利益を起点に調整を行う間接法があります。実務上は、間接法が多く採用されています。

キャッシュフロー計算書において、減価償却は、間接法を適用する場合に表示されます。税金等調整前当期純利益を基準にした場合、損益計算に含まれる減価償却費は非現金支出費用であるため、キャッシュフロー計算書においては税金等調整前当期純利益に加算することになります。

現金支出をともなわない減価償却費の性質を利用して、当期純利益+減価償却費の額で簡易的にキャッシュフローを計算することもあります。

減価償却についての注意点

減価償却に関して、注意点やポイントをいくつか紹介します。

減価償却資産の償却方法

固定資産の種類ごとに適切な方法で行うことになりますが、税法における取り決めは以下の通りです。

  • 平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産(以下、「旧減価償却資産」とします)は旧定額法・旧定率法などの償却方法を用いる
  • 平成19年4月1日以後に取得される減価償却資産は定額法・定率法などの償却方法を用いる
  • 平成10年4月1日以後に取得された建物については、旧定額法または定額法のみが適用される
  • 平成28年4月1日以後に取得された建物附属設備および構築物については、定額法が採用される

税法と会計基準の違い

企業が購入した償却資産をどれくらいの期間使用するかによって、会計上の減価償却期間が変わるという考え方もあります。
ただし、このアプローチでは、同じ償却資産を持つ企業間でも大きな差が生まれ、公正な課税が難しくなります。
そのため、税務上では償却資産の種類や用途に応じてあらかじめ設定された「法定耐用年数」に基づいて償却期間が定められています。
上場企業などでは、税務上の減価償却に合わせて会計上の減価償却を行うことが一般的です。

年途中の使用開始の場合

年度途中に事業の用に供した資産の減価償却費は、1年分ではなく、実際に使用した期間を月割りで計算します。
たとえば、3月決算の企業が10月に資産を取得した場合は、10月から翌年の3月まで、つまり6ヶ月分を計上する必要があります。%
これにより、取得した月から年度末までの実際の利用期間に基づいて減価償却費を算出します。

償却資産の除却・売却

廃棄する場合などには除却処理が必要です。通常「固定資産除却損」を計上します。また、償却資産を売却する場合、通常「固定資産売却益」又は「固定資産売却損」を計上します。

少額償却資産の取り扱い

少額償却資産(少額減価償却資産)とは、法人税法上の定義で、見積もった使用可能期間が1年未満、あるいは取得価額10万円未満の減価償却資産を指します。

少額償却資産については、減価償却を行うことなく、全額を事業の用に供した事業年度の損金にできます。少額減価償却資産は通常、資産に計上されず、「消耗品費」などの勘定科目を使って費用計上されています。

1単位として取引されるものを単位ごとに判定した取得価額が10万円未満の場合に適用されます。例えば応接セットの場合、テーブルと椅子を別々に判定するのではなく、テーブルと椅子をセットで10万円未満であるかどうか判定します。

中小企業・個人事業主の特例

中小企業・個人事業主が行う減価償却には、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の制度があります。

これは中小企業や個人事業主を対象にした制度で、取得価額30万円未満の減価償却資産について、取得価額の合計が300万円に達するまで、その事業年度の損金とできる税法上の制度です。

特例を適用するには、確定申告書に必要事項を記載することと損金経理が求められます。損金経理とは、会計処理上その事業年度の費用とすることで、中小企業者等が30万円未満の資産を取得した場合は、多くの場合費用に計上されます。

なお、特例を受けられる中小企業者などは、青色申告を提出する事業者、資本金の額(または出資金の額)1億円以下、常時雇用する従業員数500人以下(2020年3月31日以前に取得した減価償却資産については1,000人以下)の条件を満たした法人、または上記の従業員の要件を満たした個人が該当します。

ただし、連結法人や大規模法人に支配されているような中小法人など、特定の中小法人については特例を適用できません。

また、適用を受ける法人や個人の要件を満たした場合であっても、貸付けを主要な事業とする事業者は、貸付けを行うために取得した資産について特例を適用できません。

一括償却資産

一括償却資産とは、取得価額20万円未満の減価償却資産を、法定耐用年数に関わらず、3年で均等償却できる制度です。

なお取得価額10万円未満は少額償却資産となり全額費用にできます。そのため、一括償却資産が行われるのは取得価額10万円以上20万円未満の資産が対象です。さらに中小企業者等には、減価償却資産の取得価額30万円未満の特例があります。よって主に大企業や中小企業者等の特例300万円を超えた減価償却資産への適用が想定されます。

なお、一括償却資産は法人税法上の取り決めであり、会計上には同様の制度はありませんが実務上会計においても3年の均等償却に合わせるケースが少なくありません。

中古物件を購入した場合

税法上、中古資産を取得して事業の用に供した場合、その資産の使用可能期間は法定の耐用年数ではなく、事業に供するための実際の使用可能な期間に基づいて見積もることができます。そして、使用可能期間の見積りが難しい場合は、簡便法を用いて算定することもできます。

ただし、中古資産を事業に供するために支出した資本的支出がその中古資産の再取得価額の50%に相当する金額を超える場合は、使用可能期間を見積もることや簡便法での耐用年数の算定は行えず、代わりに法定耐用年数が適用されます。

簡便法による耐用年数の計算法は以下の通りです。

  • 法定耐用年数の全部を経過した資産の場合:その法定耐用年数の20%に相当する年数
  • 法定耐用年数の一部を経過した資産の場合:その法定耐用年数から過ぎた年数を差し引いた期間に、経過年数の20%に相当する年数を加える
  • 上記の計算で計算した年数が1年未満の小数点以下を切り捨て、その年数が2年未満の場合は2年とする

なお、上記はあくまでも税法上の取り扱いですが、会計上も中古資産の耐用年数を税法上の扱いと合わせるのが通例です。

固定資産を売却・廃棄した場合

減価償却の対象となる固定資産を売却または廃棄(除却)したときは、売却や除却の時点で減価償却費を計算して費用計上します。ただし、一括償却中の資産を売却または除却した場合は、会計上の処理と税務上の扱いにズレが生じ、税務調整が必要になることもありますので注意しましょう。

資産の種類によって異なる耐用年数

ここまでで減価償却のやり方や仕訳、決算書との関係などについて見てきました。最後に一点つけ加える必要があるのは、減価償却計算の元となる耐用年数は、償却対象の固定資産の種類によって異なることです。

例として、財務省令の別表で定められている、いくつかの資産の耐用年数を下に示します。

固定資産の種類耐用年数
事務所用の鉄筋コンクリート建物50年
事務所用の木造モルタル建物22年
給排水・衛生設備・ガス設備15年
一般用の小型自動車4年
金属製の事務机・事務椅子・キャビネット15年
パソコン4年
カメラ・映写機・望遠鏡5年

固定資産管理を効率化するためのツール活用

通常、固定資産管理は大変手間がかかりますが、固定資産管理システムを使用することで、企業が所有する固定資産に関する情報を一元管理することができます。固定資産の取得、移動、除去、廃棄などの状況管理や、減価償却、固定資産税の計算などの業務を、より効率的かつ正確に行うことができます。マネーフォワードクラウドERPなどのシステムには、減価償却費の計算や資産台帳の作成など、固定資産管理に関する機能が組み込まれています。

決算書とも関わりのある減価償却の基本を押さえよう

減価償却は、時間の経過とともに価値が減少する減価償却資産を取得した場合、必須の会計処理になります。法人・個人事業主を問わずに資産を取得するケースは多々ありますので、まずは基本を押さえておきましょう。

また、減価償却はそれぞれの決算書とも関わりがありますので、決算書に記載する内容や意味を合わせて確認しておくとよいでしょう。

よくある質問

減価償却とは?

時間の経過によって価値が減少していく資産を、耐用年数に応じて各事業年度に費用配分する処理を指します。詳しくはこちらをご覧ください。

減価償却のやり方は?

所有している減価償却資産の耐用年数や償却方法(定額法/定率法/生産高比例法)を確認したうえで、通常は事業年度末の決算整理仕訳として減価償却を行います。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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