• 更新日 : 2024年8月8日

固定資産税はどう抑える?計算方法や軽減措置などを解説

春はなにかと出費が多い時期です。5月以降はさらに追い打ちをかけるように固定資産税や自動車税などの納税ラッシュが始まります。今回は、経営者なら知っておきたいオフィスの固定資産税に着目。自己所有か賃貸か、居住スペースがある場合など、ケース別に固定資産税の負担を比較解説します。

固定資産税の課税の仕組み


この章では固定資産税が課税される仕組みについて解説します。

そもそも固定資産税って何?

固定資産とは、身近な土地や建物、そして会社の機械や備品などの償却資産を総称したものです。そして固定資産税とは、これらの資産に対してかかる税金です。
固定資産税は、固定資産について各市町村の定めに応じた税額を納めることになります。以下は固定資産の種類と具体例です。

  • 土地:田畑・池沼・住宅地・鉱泉地(温泉など)・山林・牧場・原野など
  • 家屋:住宅、倉庫などの建物、店舗、工場(発電所や変電所を含む)
  • 償却資産:広告塔、フェンス、飛行機、船、車両や運搬具、備品(パソコンや工具など)

固定資産税の目的は

固定資産税は日本国民の日常生活を支えるための財源として活用されています。この税金は普通税であり、徴収されたお金は市町村によって行政サービスに利用されます。例えば、道路や学校、公園などの公共施設の整備や、介護・福祉などが主な用途として挙げられます。

固定資産税は誰に対して課税される?

固定資産税の納税義務は、固定資産を所有している個人や法人に課せられます。

  • 土地の場合:納税義務者は、通常、土地補充課税台帳・登記簿に所有者として登録されている人です。
  • 家屋の場合:納税義務者は、通常、家屋補充課税台帳・登記簿に所有者として登録されている人です。
  • 償却資産の場合:納税義務者は、通常、償却資産課税台帳において所有者として登録されている人です。

固定資産税の計算方法は?

固定資産税の納税額は、次の手順で決定されます。各手順を詳しく見ていきましょう。

(1) 固定資産の評価

固定資産税の基礎となる「課税標準額」を決定するために、各自治体が固定資産の「価格(評価額)」を評価します。評価額は土地、家屋、償却資産ごとに異なり、それぞれの評価方法に基づいて算出されます。また、この評価額は適正な時価とされます。

各固定資産は、総務大臣が定めた基準である「固定資産評価基準」に基づいて評価されます。評価方法は、土地や家屋、償却資産ごとに異なります。

  • 土地:宅地や農地などの地目に応じて、売買実例価格などをもとにして評価額を算出します。宅地については、地価公示価格などの7割を目安に評価額を計算します。
  • 家屋:再建築価格に経年減点補正率などを乗じて評価額を計算します。建築後の年数の経過に応じて生じる価値の減少(減価)を考慮します。
  • 償却資産:取得後に経過した年数に対応した価値の減少(減価)を考えた上で、取得価格をもとに評価額を計算します。

(2) 評価額をもとに課税標準額を決定

評価された固定資産の資産価格(1月1日時点の価格)を課税標準額とします。低評価額や急激な価格上昇に対応するため、負担調整措置や特例措置が適用されることもあります。

(3) 課税標準額×税率(原則1.4%)=税額

課税標準額に1.4%の税率を乗じた額が税額となります。ただし、市町村によって異なる税率が条例で定められている場合もあります。また、減額措置が適用されることで、税額が減少する場合もあります。

固定資産税の納付はどうなっている?

固定資産税の納期は4月、7月、12月、2月中において、当該市町村の条例のもとに定められます。

ただし、特別な事情がある場合には、これと異なる納期を定めることができます。例えば東京23区内の2019年度の納期は6月、9月、12月、2月となっています。

納税通知書と課税明細書が届いたら何をすればいい?

税通知書または課税明細書は、納期限前10日までに納税者に交付されることとなっています。これらの書類が届いたら、まずは納期と価格を確認しましょう。

固定資産税の支払方法は?

納税の方法は、主に2通りあります。納税通知書を受け取り、それを使って納税するか、地方税の納税サイト(eLTAX)から納付するのが基本です。
他にも、金融機関の窓口や口座振替、クレジットカード、スマートフォン決済、インターネットバンキングなどの方法がありますが、各自治体によって異なるので、確認が必要です。

例えば東京都(23区内のみ)では、都税クレジットカードお支払いサイトを通じて、固定資産税をクレジットカードで一定額まで納付できます。

固定資産の価格が適正かどうかを調べる方法はある?

納税通知書または課税明細書には、固定資産の価格などの情報が記載されています。その価格などが正しいかどうかを調べるために情報開示制度があります。情報開示制度は、固定資産課税台帳(※1)や名寄帳(※2)の閲覧、固定資産評価証明書の取得、縦覧帳簿(※3)の縦覧などがあります。

(※1)市町村は、固定資産の状況および固定資産の課税標準である固定資産の価格を明らかにするため、固定資産課税台帳を備えなければなりません。なお、固定資産課税台帳とは、土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳、償却資産課税台帳を指します。
(※2)名寄帳とは、同一の所有者の所有する土地または家屋に関する固定資産課税台帳の登録事項を、所有者ごとにまとめて記載した帳簿です。
(※3)納税者は、自己の土地または家屋の価格が他の土地や家屋の評価額と比較することにより自己の価格が適正かどうかを判断するために、土地価格等縦覧帳簿または家屋価格等縦覧帳簿を一定期間縦覧することができます。

決定された価格に不服があったらどうすればいい?

固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合は、少なくとも納税通知書の交付を受けた日から60日までの間に固定資産評価審査委員会に審査の申し出ができます。この審査の申し出をしたあとでないと訴訟することができないので、必ず審査の申し出をしましょう。

「オフィス形態別」固定資産税の負担比較


この章では「オフィス形態別」固定資産税の負担の比較を行います。

自己所有か賃貸か?

オフィスの所有形態としては、自己で所有するか賃貸するかの形態があります。自己所有物件の場合、その年の1月1日の所有者に固定資産税が課税されます。ただ、1月1日に登記はできず、建築日や購入日の翌年から固定資産税が課税されることとなります。

一方、賃貸物件の場合は、固定資産のオーナーが所有者ですので、原則として借主に固定資産税が課税されることはありません。ただし、次項で説明する特定附帯設備に該当するものについては、固定資産税が課税されるので注意しましょう。

自己所有で物件を購入するにあたって、不動産取得税、登記費用や建設資金などを銀行から借り入れるのであれば、借入金の返済なども考慮しなければなりません。したがって、オフィスを自己所有か賃貸にするかの判断は固定資産税だけの要素だけではなく、総合的に判断する必要があります。

特定附帯設備とは?

特定附帯設備とは家屋の附帯設備のことを言い、家屋の所有者以外の者が事業のために取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより家屋の所有者がその附帯設備も所有することとなったものを指します。

この特定附帯設備に関しては、取り付けた者の事業用資産の場合、償却資産として取り付けた者に申告納税義務が発生します。

特定附帯設備は、法人税法上も「当該特定附帯設備に要した費用は取り付けた者の費用として計上される」といった理由から、固定資産税においても、当該特定附帯設備に関しては家屋の所有者ではなく、取り付けた者の償却資産として課税されます。

例えば借主が賃貸オフィスに家屋と一体となっているエアコンなどの空調設備を取り付けた場合、当該空調設備については、取り付けた借主に固定資産税が課税されるので注意しましょう。

【借主に固定資産税が課税される特定附帯設備の例】
・発電機設備、蓄電池設備等の電気設備
・給排水設備、ガス設備
・スプリンクラー等の消化設備
・床、壁、天井仕上げ、店舗造作等
(注)特定附帯設備は、各市町村の条例により定められておりますので、詳細につきましては各市町村へお問い合わせ下さい。

自己所有物件でも居住スペース次第で固定資産税が安くなる?

宅地のうち住宅用地については、住宅政策上の見地から固定資産税を軽減する住宅用地の課税標準の特例が設けられています。

最低でも家屋全体の4分の1(25%)以上の居住用スペースがあれば、土地については固定資産税額が6分の1もしくは3分の1に減額されます(建物の構造、地上階数などにより割合が決定)。

また、新築住宅についても、居住用スペースが家屋全体の2分の1以上ある場合、一般住宅は3年、中高層耐火建築物は5年の間、家屋の固定資産税が最大で2分の1になります。長期優良住宅を2020年3月31日までの間に新築した場合は、新築から5年間(マンションは7年間)家屋の税額が最大2分の1に減額されます。

なお、新築住宅の減額の適用を受けるためには、居住用スペースの床面積を50㎡(貸家居住用は40㎡)以上、280㎡以下にしなければなりません(減額できる面積は、一の区画につき120㎡が上限となります)。したがって、固定資産税については一定割合の居住用スペースがあるかどうかで税負担額が変わることとなります。

固定資産税の負担を計算

例えば、土地200㎡(価格10,000万円)、2階建て家屋(長期優良住宅に該当、価格5,000万円)、1階部分(100㎡)を事業用、2階部分(100㎡)を自己の居住用スペースとして新築した場合における固定資産税の負担はどうなるでしょうか。

住宅部分の割合が家屋全体の2分の1以上ありますので、土地については6分の1、家屋については2分の1の減額が適用されます。

【固定資産税】
土地:10,000万円×1/6×1.4%=233,333円
家屋:5,000万円×1.4%-5,000万円×1.4%×100㎡(事業用1階)×1/2=525,000円
(※家屋の減額される金額 5,000万円×1.4%×100㎡(事業用1階)×1/2=175,000円)合計 758,333円(233,333円+525,000円)
【居住用部分スペースがない場合】
土地:10,000万円×1.4%=1,400,000円
家屋:5,000万円×1.4%=700,000円合計 2,100,000円

したがって、自宅兼オフィス(併用住宅)で、居住用部分が家屋全体の2分の1以上あると固定資産税が約134万円(2,100,000円-758,333円=1,341,667円)(約△63%)減税できることになります。

家屋については一定期間で減税効果は無くなりますが、土地については一定の居住用スペースの割合があれば永続的に減税効果があります。さらに、固定資産税は毎年発生する税金であり、長い年数で考えた場合にはかなりの税負担になります。オフィスを検討する際には、居住用部分をうまく組み合わせてみてはいかがでしょうか。

固定資産税の軽減措置

この章では、固定資産税の軽減措置について説明します。

新築住宅に係る税額の減額措置・認定長期優良住宅に関する特例措置

良質な住宅の建設を奨励し、居住水準の向上と良質な住宅ストックの形成を目指して、新築住宅にかかる固定資産税は3年間(マンションなどの場合は5年間)半額に軽減されます。(適用期間:令和8年3月31日まで)

4年目(マンションなどの場合は6年目)からは、固定資産税額が元の額に戻ります。これは固定資産税が増税されるわけではなく、元の水準に戻るという意味です。

また新築の認定長期優良住宅については、固定資産税が5年間(マンションなどの場合は7年間)半額に減額される特例があります。耐震性、耐久性、可変性などに優れ、適切な維持管理が確保される認定長期優良住宅の普及を促進するため、一定の認定長期優良住宅の新築または取得に関して固定資産税などが軽減されます。

なお、固定資産税の特例は5年間(マンションなどの場合は7年間)の期間限定ですが、6年目(マンションなどの場合は8年目)からは固定資産税額が元の水準に戻ります。(適用期間:令和8年3月31日まで)

参考:国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」「認定長期優良住宅に関する特例措置

耐震改修に関する特例措置

昭和57年1月1日以前に建てられた住宅が、現在の耐震基準(昭和56年6月1日以降の耐震基準)に合致するように耐震改修を行った場合、翌年度の固定資産税が半額に減額されます。

適用条件の要点は以下の通りです。

  • 耐震改修工事費が税込みで50万円を超えること
  • 家屋が昭和57年1月1日以前に建てられたものであること
  • 店舗などの併用住宅の場合、床面積の半分以上が居住用であること
  • 現行の耐震基準に適合する耐震改修工事を行っていること
  • 令和8年3月31日までに工事が完了していること

再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置

再生可能エネルギーを利用した発電設備を所有している方のうち一定の要件を満たす方は、固定資産税の課税標準の特例が適用されます。特例を受けるためには申請手続きを行う必要があります。特例の適用期間は、その発電設備に新たに固定資産税が課税される年度から3年間限定です。

以下の特例割合に基づき、課税標準を減額します。

  • 太陽光発電設備:1,000kW以上は3/4(7/12~11/12)、1,000kW未満は2/3(1/2~5/6)
  • 風力発電設備:20kW以上は2/3(1/2~5/6)、20kW未満は3/4(7/12~11/12)
  • 中小水力発電設備:5,000kW以上は3/4(7/12~11/12)、5,000kW未満は1/2(1/3~2/3)
  • 地熱発電設備:1,000kW以上は1/2(1/3~2/3)、1,000kW未満は2/3(1/2~5/6)
  • バイオマス発電設備:1万kW以上は2/3(1/2~5/6)、1万kW未満は1/2(1/3~2/3)
    ※各自治体は、特例割合を一定の範囲内で独自に設定することができ、その数値を()内に記載しています。

参考:経済産業省資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置(固定資産税)

バリアフリー改修に関する特例措置(茨城県水戸市の例)

新築してから10年以上が経過した住宅に特定のバリアフリー改修工事を行った場合、翌年度の固定資産税から3分の1が減額されます。この特例を受けるには以下の条件を満たす必要があります。

  • 家屋が新築されてから10年以上が経過していること
  • バリアフリー改修後の床面積が50㎡以上から280㎡以下であること
  • 店舗等併用住宅の場合は、床面積の半分以上が居住用であること(賃
  • 貸住宅部分は対象外)
  • 改修工事を行う住宅に以下のいずれかに該当する者が居住していること
    • 65歳以上の者
    • 要介護又は要支援の認定を受けている者
    • 障害者である者
  • 対象工事の費用が税込みで50万円を超えていること。
  • 令和6年3月31日までに工事が完了していること。

参考:水戸市「住宅バリアフリー改修に伴う固定資産税の減額措置

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