• 作成日 : 2019年10月17日

摘要欄の有効利用と科目登録のすすめ

新しいIT関連サービスの利用料など、これまでにない経費を会計仕訳する際、勘定科目の選択に迷うことはありませんか?

今回は、通信費を例として取り上げ、今までになかった支出があったときの勘定科目の考え方を解説します。必要に応じて補助科目を新規追加するなど、仕訳のしやすい環境を整える方法も説明しますので、ぜひご一読ください。

勘定科目の選び方 通信費の例

勘定科目は、大きく分けると以下の5要素に分類できます。

勘定科目の要素内容具体例
資産会社が有する「価値」のあるもの現金、商品、不動産など
負債会社が将来支払うべき「義務」借入金、従業員の退職金など
純資産資産から負債を差し引いた金額資本金、元入金など
収益事業により得た売上や収入 売上高、受取利息など
費用収益を得るための支出や発生した債務外注費、通信費、消耗品費など

このうち、最も種類が多く、日常の会計処理でも取り扱いの多い勘定科目が費用です。例えば、費用の中で通信費として計上されている経費を例にとると次のようなものがあります。

通信費の種類具体例
インターネット関連インターネット回線利用料金、Wi-Fi利用料金、プロバイダ利用料金
電話代固定電話の月額利用料、携帯電話の月額利用料
送料切手代、宅配便の料金
テレビの放送受信料NHK放送受信料

通信費だけでもさまざまな種類の経費があります。新しい経費を会計処理する際は、どの勘定科目を選択すればいいのか迷うことも少なくありません。必要以上に迷わなくて済むように、勘定科目の基礎について再度確認してみましょう。

そもそも勘定科目とは?

勘定科目とは、企業の事業活動で発生する費用と収益を記録するための分類項目のことです。勘定科目は、誰が仕訳しても、誰が帳簿を見ても同じ理解を得られるための役割を果たします。

勘定科目を定め、日々発生する費用や収益などを記帳していくことで、具体的な企業の取引内容を決算書に反映することが可能です。企業の利害関係者や金融機関などに財務状況を理解してもらうためには、一般に従来から浸透している勘定科目によった財務諸表が信頼を得やすい傾向にあります。

また、企業会計原則のひとつに「継続性の原則」というものがあります。このルールでは、「企業における会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用する」と定められています。同じ内容の取引であれば、毎期同じ勘定科目を継続して使用することで財務諸表の安定性、信頼性が増します。

ここまで解説した勘定科目と継続性の原則を念頭に置きつつ、次に新しいサービスの仕訳をどうするのかについて考えてみましょう。

初めて発生した費用の勘定科目の選び方は?

例えば、通信会社から新しいサービスの請求書がきたケースについて検討してみましょう。通信会社からの請求なので、基本的には通信のために必要とする費用ですが、中には消耗品費広告宣伝費交際費などに分類されるケースもあり得ます。それぞれの勘定科目の内容と具体例について簡単にまとめました。

勘定科目内容具体例
通信費事業に使用される電話料金や郵便等、通信のために必要とする費用固定電話料金、切手代、携帯電話料金など
消耗品費事業に利用し、購入金額が10万円未満、使用可能期間が1年未満の物品の費用プリンター代、事務用品代、携帯電話本体の分割代金
広告宣伝費自社サービスや商品の販売促進目的で多くの人に広告宣伝するために必要とする費用 ネット広告掲載費用、ダイレクトメール作成にかかった費用
交際費取引先や事業への関係者との接待など、事業に必要な交際に関する費用結婚祝金や香典、取引先への祝電・弔電

では、初めての請求書が通信会社から届く具体的なケースとして、2例ほど検討してみましょう。

1.通信費の明細に携帯電話本体の分割代金が含まれているケース
一般的によく見られるケースです。携帯電話本体の代金を消耗品費として分けて計上するか、一括して通信費として計上するかの仕訳が考えられます。厳密に言えば通信費と消耗品費で分けて計上しますが、一括して通信費として扱っても問題ありません。

2.クラウド利用料の請求のケース    
クラウド利用料請求に関しては通信費として処理するケースが多いですが、金額が僅少の場合は雑費や支払手数料などとして計上することも考えられます。

紹介した例に共通するのは、経理担当者は証憑だけでは、使用用途や意味合いが分からず混乱するケースが多いという点です。どう仕訳すべきか分からないときには、その経費の使用者に利用の目的を聞くと解決する場合もあります。

最終的には、通信費は事業に使用される電話料金や郵便など、通信のために必要とする費用なので、これに当てはまるかどうかは経理担当者の判断に委ねられます。

すべて通信費とするか、通信費と消耗品費に分けるかを決めた後は「継続性の原則」に基づき、同じ仕訳で会計処理を進めることが重要です。一貫したルールで会計処理されていれば何の問題もありません。

ここで注意したい点は、経理担当者が仕訳に迷った費用は、後々見返したときに、なぜそう仕訳をしたのかが分からなくなる場合があることです。この混乱を回避する手段を次に紹介します。

摘要欄の有効利用と科目登録のすすめ

従来から企業会計は、「記録」と「慣習」と「担当者の個人的判断」という要素により成り立つ主観性の強いものであると言われています。しかも、技術革新などにより新たな費用が発生し続けている状況は、今後も続くでしょう。

これらを踏まえて、経理担当者におすすめの対策を2点紹介します。

1.仕訳の摘要欄を正確に記載する
仕訳の摘要欄に、業務名、対応期間、明細内容などの情報をできるだけ記載しておくと、後から見返したときに「なぜそう仕訳したのか」が分かりやすくなります。

2.補助科目の作成
今後ある程度発生すると思われる費用は、補助科目で区別できるようにすると、摘要欄に記載する内容を他の内容に振り替えることができます。補助科目とは、勘定科目の内訳を表す項目のことです。通信費で言えば、固定電話料金、携帯電話料金、送料(郵便)、送料(宅配便)などが挙げられます。

紹介した2つの対策を講じると、万が一決算の前に勘定科目の相違に気づいても、振替が容易になる、後で分かりやすいなどのメリットがあります。

ルールを一貫して摘要欄や補助科目を上手に活用しよう

仕訳に悩みやすい経費が出てきた場合は、経費の使用者に利用の目的を聞くなど判断材料を集めましょう。
最終的には、経理担当者が計上ルールを決めて会計処理をすることが重要です。計上ルールが一貫したものになるよう、摘要欄や補助科目などを積極的に利用し、財務諸表の安定性、信頼性を高めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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