- 更新日 : 2020年9月17日
中小企業は資本金をいくらに設定したら良いのか

会社を設立する際に決定する資本金ですが、いくらに設定するべきなのでしょうか。
そもそも資本金とは何かということから、中小企業としての税的な優遇を受けるための基準となる資本金の額などを見ていきましょう。
資本金の額の影響とは?
資本金とは、会社の設立の際に株主によって払込まれる金額を言います。もともとは商法によって最低資本金制度が定められており、株式会社の設立には1000万円の資本金が必要でした。
しかし、その最低資本金制度も平成18年に廃止され、現在は、資本金が1円でも会社の設立が可能になったため、会社設立の際の資本金の額をいくらに設定すべきなのかという起業家の声も多く聞かれるようになってきました。
そこで今回は、「会社の信用」と「税務」という二つの面から資本金の額が与える影響について確認していきたいと思います。
資本金と会社の信用について
資本金の額が大きいことは会社への大きな信用につながると思われる方も多いかもしれませんが、この考え方は中小企業に関して言えばそうとは限りません。
資本金というのは、あくまでも会社設立の際に払い込まれた金額であり、その現預金を現在その会社が保有しているかは定かではありません。従って、資本金の額を大きく設定したからと言っても、この会社は信用できるという評価を得られるということはあまり期待できません。
しかし、逆に資本金の額が少な過ぎると、銀行からの融資などの点で苦労するかもしれません。融資の面から見ると、事業内容も重要ですがその企業の財務内容も必ず確認されます。
特に創業時の融資は、事業としての実績がないために、自己資本がいくらあるかという点は大きなポイントとなります。創業の際に融資を考えている場合は、この点も意識して資本金を設定する必要があるということですね。
資本金を1000万円以上に設定するデメリットとは?
資本金を設定する上で、基準となる金額が1000万円です。資本金が1000万円以上かそうでないかによって、主に消費税と法人住民税の均等割の金額に影響が出るのです。
まず、消費税について説明していきます。そもそも、消費税はすべての事業者が納税義務者であるとは限りません。納税義務を免除されている事業者もいるのです。
その消費税の納税義務の判定は、前々事業年度の売上高によって行われます。基本的には、前々事業年度の売上高が1000万円を超える場合は消費税の納税義務があり、1000万円以下である場合には小規模事業者として消費税の納税義務が免除される免税事業者となるのです。
では、会社を設立した第一期、第二期はいかがでしょうか。前々事業年度が存在しませんので、免税事業者となります。すなわち、一般的な新規の事業者については、会社設立後の二期分については消費税を納める義務は免除されるのです。
しかし、この納税義務の免除は零細企業の事務負担を考慮して設けられた制度です。すべての企業に第一期、第二期の消費税の納税義務を無条件に免除するのは適当でないという考え方から、資本金が1000万円以上である企業については免税事業者にはならないことになっています。
したがって、資本金を1000万円以上に設定すると、第一期と第二期は消費税の納税義務が免除されるという税的なメリットが受けられなくなることになります。
法人住民税の均等割
法人税については、赤字(所得の金額がマイナス)であれば納税額は発生しませんが、法人住民税は、赤字か黒字かにかかわらず課税される均等割があります。
この法人税の均等割は、資本金の額に応じて変動します。その金額は都道府県や市町村によって異なりますが、基本的には資本金の額が1000万円を超えると増加します。
その増加額というのは、だいたい数万円から十数万円の範囲ですが、均等割の性質として、事業を継続する上で毎期必ず課税されるものですので、こちらも影響が少ないとは言い切れません。資本金の額を決定する上で、この法人住民税についても意識しておきましょう。
さて、ここまで資本金を1000万円以上に設定することで消費税や法人住民税に影響があるということを確認してきました。その他にも、資本金の額と税法的な関係として、1億円という額も基準となります。
資本金が1億円以下の「中小企業者」の場合であると、法人税の計算において、所得の金額の800万円までは軽減税率(15%)が適用されたり、交際費、減価償却の計算など、様々な面で特例を受けることができます。
ところが、資本金の額が1億円を超えると「中小企業者」として税的な優遇を受けられなくなります。
中小企業の場合、創業時に資本金を1億円超に設定することはあまり考えられませんが、会社の発展に伴う増資なども考えられるので、1億円という基準もあるのだということも押さえておきましょう。
まとめ
最後に、今回のポイントをもう一度確認していきましょう。
・中小企業の場合は資本金の額が会社の信用につながるとは言えない
・創業時に融資を受けることを考えている場合は、資本金の額を低く設定し過ぎない
・中小企業の税務面のメリットを考えると、資本金は1000万円より低く設定する方が良い
資本金の設定は自由に行うことができますが、特に融資の面での信用や税務的なメリットを考慮して決定して下さい。
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