• 作成日 : 2024年8月23日

売上原価率とは?計算式や平均、高い場合の改善方法を解説

売上原価率は、売上に直接要した仕入コストや製造コストの割合を示す指標です。この記事では、売上原価率の計算方法や売上原価率を把握することでわかることや、業界別の平均値、売上原価率が高い要因、その改善方法について解説します。

売上原価率とは

売上原価率とは、売上高に対する売上原価の割合のことです。売上総利益は売上高から売上原価を差し引いた利益であるため、売上原価率と売上総利益率の合計は100%になります。売上原価率が低いほど、売上総利益率は高くなるということです。

売上原価率の計算式

売上原価率は、以下の計算式により求められます。

売上原価率(%) = 売上原価 ÷ 売上高 × 100

売上原価は、売上高に対して直接的に発生した費用です。小売業であれば、商品の仕入代金や仕入にかかる運賃などが売上原価に含まれます。製造業であれば、製品の製造に直接要した原材料費や製造ラインの人件費などが含まれます。

なお、売上原価は期間中に発生した金額ではなく、期間中の売上に対応する部分の金額です。期中の発生額に期首棚卸高(期首時点の残高)を加算し、期末棚卸高(期末時点の残高)を差し引いた額を売上原価とします。

売上原価※ = 当期仕入高 + 期首棚卸高 - 期末棚卸高

※仕入れた商品などを販売する業種の場合

売上原価率からわかること

売上原価率から、市場での競争力や投資の余力がわかります。それぞれについて解説します。

市場での競争力

売上原価率は、同じビジネスモデルの同業他社と比較することにより、市場での競争力を把握できます。例えば、同業他社よりも売上原価率の高い企業は原価にかけるコストが多く、収益力に課題があると考えることができます。

投資の余力

売上原価率は、企業の投資余力も表します。例えば、売上原価率が低い企業は、売上に直接要するコスト以外のコストにも予算を配分しやすいと考えられるためです。生産力を上げる人員や売上拡大につながる広告宣伝、あるいは設備投資などにお金をかけられます。

売上原価率の平均

「経済産業省企業活動基本調査/2023年企業活動基本調査確報(2022年度実績)」によると、売上原価率の全体の平均は80.10%でした。

下表の数値は、主な業種の売上原価率を経済産業省企業活動基本調査より計算したものです。物品を商品とする製造業、卸売業、物品賃貸業などは、売上原価率が平均よりも高いことがわかります。

業種売上原価率
製造業81.09%
電気・ガス業90.46%
情報通信業67.25%
卸売業87.15%
小売業71.72%
クレジットカード・割賦金融業3.63%
物品賃貸業83.51%
飲食サービス業51.36%
生活関連サービス業・娯楽業55.08%

出典:「経済産業省企業活動基本調査/統計表一覧-確報(データ)/2023年企業活動基本調査確報(2022年度実績)」を基に作成

売上原価率が高くなる要因

なぜ売上原価率が競合他社や過去と比べて高くなってしまうのか、主な要因を紹介します。

仕入コストの増加

売上原価率が高い理由の一つは、仕入コストの増加です。特に近年は、コロナ禍以降の原油価格の高騰や円安などを背景に物価上昇が起きています。原材料などを海外から輸入している事業者は、特にその影響を受けやすいでしょう。

仕入コストを販売価格に転嫁できれば、仕入コストが上昇しても売上原価率の上昇を防げます。しかし、競合他社が値上げをしていない状況で安易に価格転嫁ができず、仕入れコストだけが増加してしまっている企業もあります。

在庫過多

一般的に、企業は販売機会のロスをなくすために在庫に余裕を持たせます。しかし、多すぎる在庫は売上原価率を高めてしまいます。在庫を多く抱えると、その分の仕入や生産も多く発生するためです。過剰な在庫は売上原価を増加させるだけでなく、在庫を管理するための費用も増加させ、企業の資金繰り悪化の原因にもなります。

ロス率の高さ

(在庫)ロス率とは、在庫に対するロスの割合のことです。流行遅れなどで販売機会を失ったことによる機会ロス、在庫の期限切れや劣化などによる廃棄ロス、管理している数量と合わないことによる棚卸ロスなどがあります。ロスが発生すると、ロスの分の原価を売上にできず、売上原価率が高まります。

売上原価率の改善方法

競合他社などと比べて高い売上原価率は、どのように改善できるのでしょうか。改善方法の例をいくつか紹介します。

仕入の見直し

売上原価率に大きな影響を与える要素が仕入価格です。例えば、仕入単価を下げることに成功すれば、全体の仕入コストを低減できるため、売上原価率の改善につながります。

具体的な方法としては、より低コストで仕入ができる仕入先に変更する、製品の原材料を変更して仕入れる材料を変更するなどの方法があります。

物価上昇なども売上原価の上昇につながるため、仕入コストの低減に限界があるときは、商品価格の値上げなども検討しましょう。既存の商品の値上げをせずに、商品に付加価値を加えてより高い価格で販売する、価格は据え置いて商品のサイズを変更するなどの方法もあります。

ロスの低減

ロスの低減も売上原価率の改善に役立ちます。ロスにはさまざまな種類があるため、業種ごとに発生するロスを把握したうえで、どのような対策を講じるか検討する必要があります。

例えば、製造業では生産ロスが発生します。生産ロスには、設備の故障ロスや不良・手直しロス、管理ロス、自動化置換えロス、エネルギーロス、歩留まりロスなどがあります。ロスを低減するには、設備の管理計画の見直しや作業員の教育研修の充実、廃棄していた原材料の再利用などが有効です。

小売業では、廃棄ロスや値下げロスが発生します。値下げロスとは、賞味期限や消費期限の近い商品などを値下げすることによるロスです。このような実質的なロスは、値下げ商品を選定する、値下げタイミングを変更する、値下げ幅を変更するなどで改善することがあります。

在庫管理の見直し

ロスは、在庫管理が適切に行われず過剰在庫になることでも発生します。在庫管理の見直しも、売上原価率の改善には有効です。

適正な在庫を維持する方法の一つに、在庫量を決めておくという方法があります。あらかじめ決めておいた在庫量を下回ったときに、減少した分を発注する方法です。需給の変動が少なく、予測しやすい商品の管理に向いています。

在庫管理に専用のツールを取り入れるのも、改善策の一つです。在庫をデータとして管理できるため需給予測や分析がしやすく、在庫を適正数で管理するのに役立ちます。

取り扱う商品の見直し

取り扱う商品自体の見直しも、売上原価率の改善に役立ちます。単純に利益率が低く原価の高い商品を多く売るよりも、利益率の高い商品を多く販売したほうが売上原価率は下がるためです。取り扱う商品自体を大幅に見直すのではなく、原価率の高い商品と低い商品を組み合わせて、セットで販売する方法もあります。

売上原価率を計算して比較してみよう

売上原価率は、商品の仕入にかかるコストや製造にかかるコストを表す値です。業界によって売上原価率の平均値は異なります。売上原価率が高い業界は、製造業や物品賃貸業などです。一方、サービス業や情報通信業などの売上原価率は、全体の平均値よりもが低めです。

売上原価率を使って自社を分析するなら、全体の平均値ではなく同業種の平均値や競合他社のものを参考にするとよいでしょう。同業者と比較することで、自社の仕入や製造の特徴を把握できます。売上原価率が高く利益を圧迫している場合は、原価低減対策にも取り組みましょう。


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