- 作成日 : 2016年11月21日
中小企業の経営戦略を立案する基本フロー

経営資源に限りのある中小企業が市場で勝ち抜くには、経営戦略を立てることが大切です。
ここでは、中小企業が経営戦略を立案し実行するために必要な環境分析や、具体的な戦術を策定する基本フローについて解説します。
中小企業の経営戦略立案には環境分析が必須
ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源に限りのある中小企業にとって、経営戦略を立てることは市場で競争優位を獲得するために欠かせないステップです。
経営戦略を立案するための重要ポイントである環境分析について見ていきましょう。
市場の環境分析とは?
経営戦略を立てるにあたっては、まず自社が置かれている経営環境を把握することが重要です。経営環境の分析を客観的かつ多面的に行うことができる手法が「SWOT(スウォット)分析」です。
SWOTとは、以下の4つの頭文字を使った経営用語です。
・Weakness(弱み)
・Opportunity(機会)
・Threat(脅威)
SWOT分析をすることで、自社の強みや弱みを洗い出し、強みを活かせるビジネスチャンスや経営に悪影響を及ぼす要素の有無を組み合わせて検討することができます。
自社の現状を整理すると、経営戦略の方向性や、どのような事業を行うかを定義する事業ドメイン(領域)を明確に打ち出しやすくなります。
SWOT分析では、以下のようなマトリクス表を用います。
内部環境 | <Strength(強み)> 他社より優れている点や得意分野 | <Weakness(弱み)> 他社より劣っている点や苦手分野 |
---|---|---|
外部環境 | <Opportunity(機会)> 自社にとって有利で安全な市場要因 | <Threat(脅威)> 自社にとって不利でリスクのある市場要因 |
強みと弱みは、人材・生産・財務・マーケティングなど自社の内部環境を抽出・分類します。そして、市場変化や経済・景気動向、法令の規制・緩和など自社でコントロールできない外部環境を、機会と脅威に分類します。
環境分析を元に事業ドメインを設定
自社を取り巻く環境を洗い出して整理し、さらに以下のように分析すると、注力すべき事業ドメインが見えてきます。
内部環境分析 | |||
---|---|---|---|
Strength(自社の強み) | Weakness(自社の弱み) | ||
外部環境分析 | Opportunity(機会) | 積極戦略 | 改善戦略 |
Threat(脅威) | 差別化戦略 | 致命傷回避・撤退対策 |
一般的には、機会に対して自社の強みを最も効果的に活かすことができ、積極的に戦略を仕掛けることができる分野を主要な事業ドメインとして設定します。
また、機会があるにも関わらず、自社の弱みの影響で機会を逸している分野は、弱みを改善・強化する戦略を検討します。
脅威はあるものの、自社の強みでカバーできる分野は差別化戦略によりビジネスチャンスを創出し、脅威も弱みもある分野は、リスク回避方法や事業縮小・撤退を検討します。
事業ドメインの方向性が見えてきたら、以下の3つの要素を検討しましょう。
・何を:どのような価値や機能を提供するのか
・どうやって:どのような技術やマーケティング手法を使うか
SWOT分析に基づいて事業ドメインを設定すると、「どこで戦うか」という主戦場と共に、戦う土俵にしない方が良い領域も明らかにすることができます。つまり、従来のコア事業の強化または縮小、新規事業への参入可否などを判断しやすくなるのです。
経営資源を適切に配分する
事業ドメインが決まったら、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源の最適な配分を検討します。中小企業は経営資源に限りがあるため、コア事業以外の複数の市場に参入する多角化戦略をとる場合は、人材配置や予算配分などを適切に行う必要があります。逆に、特定の市場のみで戦う集中化戦略をとる場合は、経営資源を集中的に投入します。
また、乏しい経営資源を補うために、他社や研究機関との提携・外部委託といったアウトソーシングも中小企業にとって有効な手段です。
競争優位を得るための戦術策定
自社の事業ドメインを設定し経営戦略の方向性が決まったら、その市場で競争優位を獲得するための戦術を策定します。それが、マーケティングミックスです。
マーケティングミックスは、顧客へどのようにアプローチし、どのように製品・サービスの魅力を伝えるかを決めるプロセスであり、以下の4つの要素で構成されます。頭文字をとって「4P」と呼ばれています。
・Price:需要と供給に応じた適切な価格設定・割引など
・Place:商品特性を踏まえた流通チャネル・立地など
・Promotion:店頭での販売促進活動・広告・インターネットの活用など
このように、何をいくらで、どこでどのように売るかを決めることは、経営戦略を具体的に戦術に落とし込む基本的なプロセスです。
PDCAでチェックする
経営戦略や戦術は、立案するだけでは不十分です。中小企業では、方針を決めてもその後の分析・チェックが行われないことが多いため、「実行した結果はどうだったのか」という成果の評価が曖昧になる傾向があります。
戦略や戦術の目標管理をするには、「PDCA」というマネジメントサイクルの考え方を取り入れると良いでしょう。PDCAとは、以下の4項目の頭文字をとったもので、業務改善やプロジェクト管理などに用いられます。
・Do(実行)
・Check(評価)
・Action(改善)
目標に対して計画・実行するだけでなく、成果を分析・評価し、問題点や課題をどのように改善するかという次のアクションまで含めて考えることは、戦略・戦術のブラッシュアップにつながります。
まとめ
大企業のような潤沢な経営資源のない中小企業にとって、自社を取り巻く環境を客観的に分析し、事業ドメインを策定することが経営戦略を立案する第一歩です。
そして、戦略に基づいて経営資源を適切に配分し、具体的な戦術としてマーケティングミックスへ落とし込むことが基本フローとなります。
さらに戦略や戦術は、PDCAの考え方に基づいて定期的に見直す仕組みを社内で共有しましょう。
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