• 更新日 : 2021年6月2日

経理初心者に必要な知識とは?経理の年間スケジュールやおすすめの勉強法を解説!

経理は企業経営になくてはならない役割の1つです。未経験者の求人募集を出している企業も多く、実務経験や知識を増やしていけば、キャリアアップを目指すことも可能となります。

しかし、その専門性の高さから「初心者でも経理事務が本当に務まるのか」と不安を抱く方も多いのではないでしょうか。そのため、実際の仕事内容や基礎知識を知っておくことで、経理に対するイメージがしやすいかもしれません。

そこで本記事では、経理の主な業務内容や年間スケジュール、経理に求められるスキル、おすすめの勉強法、持っておくと有利な資格について解説します。

経理の主な業務内容

経理とは、日々のお金に関する管理や記録を行う職種のことです。会社を経営する中では、仕入や販売、経費の支払いなど、常にさまざまなお金が動いています。経理業務ではそのお金の流れを正確に数値化して、管理することが必要です。

主な業務内容としては「日々の売上・仕入記録」「給与・保険料の計算」「税金の納付」「固定資産や減価償却の管理」など会計処理のほか、日次・月次・年次の決算業務も経理業務の重要な仕事になります。なお、詳しい業務内容は以下の記事でご確認ください。

経理の年間スケジュール

経理の仕事は、日々の収支管理から月次・年次ごとの決算処理まで、指定期日にあわせて必ずやらなければならない業務が多くあります。経理の年間スケジュールついては、以下の記事で詳しく解説していますので、初めて経理業務に携わる方は全体像を把握しておくと安心でしょう。

経理業務に求められるスキル

経理業務に求められる主なスキルは、以下のようなものです。入社後「仕事ができない」と思われないためにも、必要に応じてスキルを身に付けましょう。 

簿記の知識

経理業務の基礎知識として欠かせないのが「簿記」の知識です。簿記は日々の伝票の処理やデータの入力で必要となります。

より正確な会計処理が必要となる大企業ほど、求められる簿記知識のレベルも高くなるでしょう。中小企業においても、簿記の入門レベルとなる「資産、負債、純資産(資本)」「費用、収益の区別」「財務諸表の構造や仕組み」「仕訳の基本(借方と貸方など)」などは身に付けておきたいところです。

簿記についてはさまざまな資格試験があり、それらに合格することで知識レベルの確認にもなります。入門レベルなど、難易度の高くない資格であれば独学でも合格を目指せます。

パソコンソフトのスキル

パソコンソフトのスキルといっても、経理初心者に求められるスキルはそれほど高くありません。企業によって使用する会計ソフトや会計システムは異なり、さらには誰でも使いやすいインターフェースであることがほとんどだからです。

それよりも「文書処理ソフト」や「表計算ソフト」といった、エクセルやワードなどのスキルのほうが重要です。これらのソフトは、報告書作成や請求書作成などで使用します。エクセルならSUM(合計)などの代表的な関数、ワードなら表作成などができるとよいでしょう。

なお、エクセルやワードの使用方法や便利な操作方法については、書籍やインターネットからでも情報が集まるものばかりで、習得自体もそれほど難しくはありません。

コミュニケーションスキル

多くの企業で「会計ソフト」や「会計システム」を利用した会計処理が一般的となっています。これらの利用により、経理担当者の記帳に関する負担が大きく軽減されました。

一方、ほかの部署の社員や経営層に対して、経理的な面でアドバイスする場面が増えている企業もあります。このような状況で重要視されるのが「コミュニケーションスキル」です。

経理に関する専門的な内容をわかりやすく説明し、納得してもらえるだけのコミュニケーションスキルが求められています。

論理的に分析するスキル

お金を専門的に取り扱う経理こそ、論理的に分析するスキルが求められます。コミュニケーションスキルの部分でも挙げましたが、経理的な面でアドバイスする機会が増えている今、長期的な視点で課題や戦略を分析提案できる能力を持つ経理担当者は、経営者にとっても心強い存在です。

数字集計や資料をまとめる現場作業にとどまらず、周囲と連携しながら分析するスキルも磨いていきましょう。

経理初心者におすすめの勉強法

日々の業務の質を上げるためには、スキルアップが欠かせません。そこで、経理におすすめの勉強法について紹介します。

会計基準を読み、基本的なルールの意味を理解する

経理担当者の持つ日々のルーティンワークの1つに「伝票の起票」があります。伝票の起票(仕訳処理)には、すべて理由があって行われています。

そして、その理由が記載されているものが会計基準です。会計基準とは、企業会計審議会の公表する「企業会計基準」や、企業会計基準委員会の公表する「実務対応報告」など、企業会計に関するルールの総称を指します。

日々ルール化されているワークフローにどのような意味があるのかを考え、会計基準まで遡ることができると、大きなスキルアップが目指せるでしょう。

また、決算時においては、特定の勘定科目を割り当てられることが多いです。自身の関与する勘定科目に関する会計基準を予め確認しておくことで、突発事項への対応力や、会計処理の漏れを防止する能力が身に付きます。

経理業務と財務諸表数値とのつながりを意識する

経理担当者による日々の業務の積み重ねにより、会社の経営状態や財務状況を表す決算書が作成されます。自身の関与する業務が、決算書などの財務諸表上の科目にどう影響するのか、常に意識しましょう。

財務諸表は、会社の信頼や今後の投資においても大きな影響を及ぼします。財務諸表数値とのつながりを意識して日々の経理業務に従事することで、会社全体の金銭の流れや経営状態を把握しやすくなるのです。より広い視野を持って業務にあたることで、スキルアップにもつながるでしょう。

経理に必要な資格

経理は、未経験者でも募集している求人が多く、初めての人も挑戦しやすい仕事です。多くの企業が経理担当者、あるいは経理部門を設けていますので、長期的なキャリアプランも形成しやすいといえます。

経理職に就くのに必要な資格はありませんが、持っておくと便利な資格、将来のキャリアパスに有利な資格もありますので、ここではその一部を紹介します。

日商簿記検定

簿記の資格試験はさまざまなものがありますのが、中でも認知度が高く受験者が多いのが、日商簿記検定です。財務諸表の作成や会計処理が主な学習範囲となっています。

難易度がいくつかに分かれており、簿記初心者でも受験しやすい資格です。2級以上になると、就職の際に有利に働くこともあります。2級までであれば勉強時間もあまりかからず、参考書も豊富なため独学でも学習しやすいです。

試験日年3回(6月、11月、翌2月)
※1級は6月と11月のみ
※年によって変更あり(詳しくは日商簿記公式サイトでお確かめください。)
試験会場全国の商工会議所
申し込み方法受験希望地の商工会議所に申し込む
合格率1級 9.8%
2級 28.6%
3級 49.1%
簿記初級 59.4%
原価計算初級 92.3%
(1級は2019年11月、2級と3級は2020年2月、簿記初級と原価計算初級は2019年4月~2020年3月のデータです。)

【出典】日本商工会議所・各地商工会議所|受験者データ

FASS検定

FASS検定は、経済産業省の経理・財務人材育成事業がベースとなっている資格試験です。経理・財務のスキルを測定する試験で、資産管理や決算のほか、税務申告から資金管理まで、経理と財務にかかわるスキルを幅広くカバーしています。

独学で上位のレベルに挑戦することもできますが、大企業の社内教育や人材育成として用いられることも多い試験です。日商簿記とは異なり財務も含んだ内容で、経理と財務の基礎的な能力を有しているという点で、企業にアピールすることができます。

試験日二期制
上期(5~7月)、下期11~翌1月)
※年によって変更あり(詳しくはFASS公式サイトでお確かめください。)
試験会場全国の試験センター
申し込み方法個人はインターネット上で申し込み
合格率
(※800点満点を5段階で評価する試験のため、不合格はありません)
レベルA 17.1%
レベルB 16.5%
レベルC 28.4%
レベルD 27.3%
レベルE 10.7%
(2020年3月末のデータ)
【出典】FASS|受験者データ

税理士試験

税理士試験は、独占業務のある税理士として登録するのに必須となる資格です。簿記論と財務諸表論(必須)、法人税法所得税法(選択必須)、相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税の計11科目あり、うち必須を含む5科目を取得することで税理士登録の資格を得ることができます。

難易度は経理にかかわる資格の中でもかなり高く、基本的に独学で合格するのは困難です。専門のスクールに通うのが一般的ですが、最近では、通信講座も充実してきました。取得のために必要な勉強時間は1科目でも長く、働きながら取得しようとすると長期に及ぶこともあります。

ただし難易度が高いだけに、厳格な会計処理が必要である大企業では優遇される可能性が高く、給与やキャリアパスの面でメリットが高いです。5科目すべてを取得する必要はなく、企業の会計で重要な簿記論、財務諸表論、法人税法、所得税法、国税徴収法など、一部科目取得者でも評価される可能性の高い資格といえます。

試験日年1回(8月)
※年によって変更あり(詳しくは国税庁のホームページでお確かめください。)
試験会場全国指定の都市
申し込み方法希望する受験地を管轄する国税局へ願書を郵送
合格率合格率 2.5%
一部科目合格率 15.5%
(令和元年度(第69回)試験)

【出典】国税庁|令和元年度(第69回)税理士試験結果

給与計算実務能力検定

給与計算実務検定は、給与計算に関連する技能を持っていることを証明する資格です。検定内容は、2級では基本的な給与計算や明細書作成など、1級ではより複雑な給与体系にも対応可能になります。

受験資格は不要で合格率も比較的高く、独学でも取得しやすい資格といえるでしょう。また、給与計算は経理に欠かせない業務のため、資格取得で学んだことが実務でもすぐに活用できます。

試験日年2回(3月、11月)
※1級は11月のみ
※年によって変更あり(詳しくは職業技能振興会公式サイトでご確認ください)
試験会場東京、大阪、その他主要都市
申し込み方法一般財団法人職業技能振興会に願書を送付
合格率1級 56.91%
2級 74.34%
(2020年11月29日実施データ)

【出典】一般社団法人 実務能力開発支援協会|受験者と合格率の推移

国際会計検定(BATIC)

BATICは、会計知識と英語力を測ることを目的とした検定資格です。英文簿記と国際会計理論の2科目からすべて英語で出題されますが、TOEIC450点程度の英語力があれば内容を理解して回答できます。

点数によってレベル判定され、日商簿記2級と同様とされる「アカウンティングマネジャーレベル」を取得しておくと、就職や転職の際の強みとして活かしやすいです。英語と海外基準の会計ルールの両方に精通していることを証明できるため、特に外資系や海外への進出を目指す企業で働きたい方に役立つ資格といえるでしょう。

試験日年2回(7月頃、12月頃)
※申込期間内に希望日を選択して受験
※年によって変更あり(詳しくはBATIC公式サイトでご確認ください)
試験会場自宅やオフィスなど
※受験環境の詳細あり(詳しくはBATIC公式サイトでご確認ください)
申し込み方法インターネット上で申し込み
合格率
(※合否ではなく、点数によってレベル判定されます)
コントローラーレベル 8.2%
アカウンティングマネジャーレベル  13.0%
アカウンタントレベル 43.8%
ブックキーパーレベル 24.2%
(2020年(第40回)試験)
【出典】BATIC|受験者データ

経理初心者は簿記の知識を身につけてスキルアップを目指そう

本記事では経理の主な業務内容や年間スケジュール、経理に求められるスキル、おすすめの勉強法、資格について解説しました。専門性の高い経理ですが、必ずしも資格は必要ではなく、未経験者でもチャレンジすることが可能です。

一方で、会社経営における大切なお金の流れを取り扱う経理は、事務作業以外のスキルが求められることも事実です。本記事を参考に、経理に求められる能力や知識を身につけてスキルアップを目指しましょう。

よくある質問

経理初心者に必要な知識とは?

簿記の知識はもちろん、パソコンソフトのスキルやコミュニケーションスキル、論理的に分析するスキルなども求められます。

経理におすすめの勉強法は?

会計基準を読み、基本的なルールの意味を理解することや、経理業務と財務諸表数値とのつながりを意識することがおすすめです。

経理に必要な資格は?

日商簿記検定、FASS検定、税理士試験、給与計算実務能力検定、国際会計検定(BATIC)などがあります。


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