- 更新日 : 2024年8月8日
連結決算における持分法を適用するメリットは?会計処理もわかりやすく解説
持分法とは、会社が他の会社の一部の株式を所有している場合に使用される会計方法です。
企業が連結財務諸表を作成するために必要なものとなり、特に経営陣は子会社や関連会社を含めたグループ全体の決算を行うのであれば覚えておく必要があります。
そこで本記事では、連結決算における持分法の概要や適用するメリット・会計処理などを解説します。
目次
持分法とは
持分法とは、子会社などの複数の企業で構成される企業グループが連結決算を行う際に行う会計方法の1つです。親会社が子会社や関連会社に対して持つ影響力を会計処理に反映させるために用いられます。
通常、連結決算ではすべての子会社を連結して企業グループ間の取引や債権債務の相殺消去を実施しますが、持分法を適用した会社については、会社の純資産と損益のうち、親会社に帰属する部分だけを調整します。
持分法の主な目的は、親会社の連結財務諸表に、関連会社の経済的実態を正確に反映させることです。
これにより、投資家やその他の利害関係者は、親会社グループの真の財務状態と業績をより正確に理解することができるでしょう。
持分法適用会社の種類
持分法の適用範囲は日本の会計基準と国際会計基準で異なります。日本では、親会社が経営する上で影響力があるかどうかが大切です。
一方、国際会計基準では、親会社が独裁しており大きな影響力を与えている会社が適用範囲を決定します。
ここでは、日本の会計基準における持分法適用会社の種類について解説します。
- 関連会社
- 非連結子会社
関連会社
関連会社とは、親会社がその経営または財政方針に重要な影響を及ぼすことができる企業です。これは通常、投資企業が20%から50%未満の株式を所有している場合に当てはまります。
そんな関連会社の条件は、主に以下の通りです。
- 議決権株式の保有比率が20%以上
- 議決権株式の保有率が15〜20%の場合、一定の要件に該当する
- 議決権株式の保有率が15%未満の場合、特定の者の議決権とあわせて自己所有等議決権数が20%以上かつ一定の要件に該当する
ここでいう一定の要件とは、以下5つの項目のことを指します。
- 親会社の社員等が役員等に就任している
- 親会社が重要な融資をしている
- 親会社が重要な技術を提供している
- 親会社との間にビジネス上の重要な取引(仕入・販売など)が認められる
- 財務や事業の方針決定で重要な影響があると考えられる事実が存在する
議決権株式の保有率が15〜20%の場合、上記条件のいずれか1つに該当する必要があるのです。
非連結子会社
「非連結子会社」とは、親会社が管理・支配する権限を有しているものの、財務諸表には連結対象として含まれない子会社を指します。
通常、親会社が子会社の過半数の株式を保有しているにもかかわらず、その子会社の重要性が低い場合に起こります。
そのため、親会社が子会社の財務状況や結果に対して、直接的な影響力を持っていないことを意味するのです。
持分適用会社と連結子会社の違い
「持分適用会社」と「連結子会社」は、企業会計において重要な概念ですが、それぞれ議決権株式の保有割合に違いがあります。
持分適用会社は、親会社が一定の割合(通常20%から50%未満)の持分を保有している企業ですが、連結子会社は、親会社が支配的な影響力(通常は株式の50%以上を保有)を持つ子会社です。
また、会計処理にも違いがあり、持分適用会社の場合は持分比率に応じて子会社の利益または損失が親会社の財務諸表に反映されます。
一方、連結子会社の場合、親会社の財務諸表に完全に統合され、子会社の収益や資産、負債などが、親会社の財務諸表に完全に反映される仕組みです。
これらの違いを理解することは、企業の財務分析や経営戦略を考察する上で必要不可欠となるため、しっかりと覚えておきましょう。
連結決算における持分法を適用するメリット
連結財務諸表に持分法を適用するメリットとして挙げられるのが、会計処理の負担が軽くなることです。
通常、連結決算では子会社の財務諸表を合算した後に連結修正を行う必要があるのですが、持分法を適用することで、以下2つの勘定科目を使って持分法適用会社の損益を親会社の連結財務諸表に含められます。
- 投資有価証券などそれとわかる勘定名
- 持分法による投資損益
例えば、親会社が議決権を20%保有しているのであれば、出資先企業の20%分が出資元である親会社の連結財務諸表に反映されるといった仕組みです。
このように持分法の適用によって、連結決算プロセスの複雑さとリソースの消費を大幅に削減することで会計負担を軽減する、という明確なメリットを享受できます。
持分法の会計処理
持分法の会計処理は、企業が他の企業に対して重要な影響力を持ちながら支配していない場合に適用される重要な会計手法です。
以下では、持分法の会計処理について詳しく解説します。
持分法適用会社が利益を上げたときの処理
持分法適用会社が利益を上げると、親会社は自社の持分比率に応じた利益を自社の収益として認識します。この損益は「持分法投資損益」と呼びます。
持分法適用会社が利益を上げた場合、投資会社にて「関連会社の当期純利益×持株比率」を計算し、財務諸表に反映させる作業を行います。
例えば、親会社が持分適用会社の40%の株式を保有している場合、その会社が100万円の利益を上げたら、親会社は40万円の利益として認識します。
借方 | 貸方 |
---|---|
投資有価証券:40 | 持分法による投資損益:40 |
持分法による利益の処理は、親会社の財務諸表が実際の経済的実態を反映する上で重要な役割を果たします。
持分法適用会社で営業外収益・営業外損益が生じたときの処理
持分法では、親会社は持分適用会社の純利益や純損失に対して、自社の持分比率に応じた額を自社の収益または損失として認識します。これには、営業外収益や営業外損益も含まれます。
例えば、持分法適用会社の営業外収益が100万円、投資会社の持株比率が20%の場合、投資会社の利益貢献額は20です。
借方 | 貸方 |
---|---|
投資有価証券:20 | 持分法による投資損益:20 |
持分法適用会社株式の持分が増加したときの処理
持分法適用会社の株式持分が増加した場合の会計処理は、親会社がその持分適用会社に対して持つ経済的関与を正確に反映する上で重要です。
追加取得の場合は、追加取得した株式の取得価額を、持分法適用会社株式の取得原価に加算します。一方で、新株予約権の行使の場合は、行使価額を、持分法適用会社株式の取得原価に加算します。
借方は追加取得に要した費用である現金預金となり、貸方は持分法適用会社株式の取得原価を増加させるために投資勘定となります。
また、追加取得や新株予約権の行使によって、持分法適用会社株式の持分が50%を超える場合は、連結子会社に該当するため、連結会計の適用が必要です。
借方 | 貸方 |
---|---|
投資有価証券:50 | 現金預金:50 |
まとめ
本記事では、連結決算における持分法の概要や適用するメリット・会計処理などを解説しました。持分法は、親会社が子会社や関連会社に対して持つ影響力を会計処理に反映させるために使われている会計方法となり、連結決算時に会計処理の負担を減らせるといったメリットが期待できます。
適切な会計処理を行えるよう、持分法を用いる際は連結子会社や関連会社、非連結子会社などの違いや特徴などをしっかりと理解しておきましょう。
よくある質問
持分適用会社と連結子会社の違いは?
持分適用会社と連結子会社の大きな違いは、一つに議決権株式の保有割合にあります。 通常、持分適用会社の割合は、20%から50%以下となり、連結子会社は株式の過半数を保有しています。
持分法を適用するメリットは?
持分法を適用するメリットは、会計処理の負担が軽減できることです。 全ての子会社を完全に連結する場合、財務諸表は非常に複雑になりがちですが、持分法を使用することで、投資有価証券と持分法による投資損益を財務諸表に含めることができます。 含めることで、持分法による簡素化ができ、会計処理の効率を大幅に向上させられます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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