- 更新日 : 2024年8月8日
法人税申告書の別表1とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人税申告書の別表1は、法人税申告の全体像がわかる申告書類のひとつです。法人申告書を社内で作成する場合どのように作成していくべきか、別表1の種類と入手方法、書き方を紹介します。
目次
法人税申告書の別表1とは
法人税申告書の別表1は、法人が納めるべき法人税額(または還付される法人税)の概要を記載する書類です。法人税を申告する法人は別表1を作成して提出しなければなりません。
別表1には、1と1の2があります。1は内国法人が作成して提出する書類です。1の2は外国法人が法人税を申告するときに使用します。
なお、別表1には、各事業年度の所得に係る申告書(青色申告・白色申告)、次葉、付表があります。青色申告と白色申告で記載する内容は同じです。青色申告を選択しているときは青色申告用の別表1を使用して申告します。
次葉は、各事業年度の所得に係る申告書に続く2枚目の書類です。法人税を申告するときは次葉も作成して提出します。
別表1の付表は、「中小通算法人等の軽減対象所得金額の計算に関する明細書」です。グループ通算制度を適用する中小法人に該当するなどで、中小企業者等の法人税率の特例の適用を受けるときに記載します。
別表1のうち、主に記載が必要な別表1の1の各事業年度の所得に係る申告書の書き方は以下に紹介します。別表1の様式は国税庁のサイトからダウンロード可能です。e-Taxソフトからのダウンロードもできます。
法人税申告書の全体的な作成方法は、以下の記事をご覧ください。
法人税申告書の別表1に記載する主な項目と書き方
別表1の法人税の書き方について、普通法人が主に申告で使用する「内国法人用の各事業年度の所得に係る申告書(青色申告・白色申告)」と「次葉」について書き方を説明します。
別表1(青色申告・白色申告)の書き方
別表1(青色申告・白色申告)の書き方を項目別に説明します。
■申告書の上部
出典:各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(様式)|国税庁
1.納税先の税務署と申告者の情報
別表1の上部の左側は、提出先と納税者の情報を記載する部分です。一番上には提出日と提出先を記載します。提出先は、原則は納税地を管轄する税務署です。たとえば、納税地が新宿区の場合、「新宿」税務署長殿と記載します。所轄の税務署は「国税庁のページ(組織(国税局・税務署・税務大学校等))」より確認できます。
納税地は、基本的に法人の本店または主たる事務所のことです。会社の住所と電話番号、法人名、法人番号(国税庁から通知を受けた番号)、代表者(代表取締役社長の名前など)、代表者住所を記載します。
2.通算グループ整理番号・通算親法人整理番号
完全支配関係のある企業グループがあるときに記載する項目です。
3.法人区分
株式会社や合同会社など一般的な会社区分に該当する場合は左側に〇をつけます。
4.事業種目
主な事業の種目(小売業、卸売業など)を記載します。
5.期末現在の資本金の額又は出資金の額
期末時点の資本金(または出資金)の額を記載します。
6.同上が1億円以下の普通法人のうち中小法人に該当しないもの
期末時点の資本金(または出資金)が1億円以下の普通法人で、中小法人でない法人は「非中小法人」に〇をつけます。非中小法人とは、中小法人以外の法人で、資本金の額5億円以上の大法人と完全支配関係がある法人などのことです。
7.同非区分
同族会社や特定同族会社に該当するかをチェックする項目です。別表二の「同族会社等の判定に関する明細書」で判定した項目に〇を付けます。
8.旧納税地及び旧法人名等
納税地や法人名を変更したときに記載する項目です。
9.添付書類
法人税申告書に添付する書類に〇をします。一般的な中小企業が添付する書類は以下のとおりです。
10.売上金額
左側の項目は税務処理欄のため、基本的に記載の必要はありません。売上金額(100万円単位)の部分のみ記載します。
11.事業年度と申告書の種類
事業年度は、申告する法人の会計期間のことです。毎年3月決算の法人の場合、上部に「令和○年4月1日」、下部に「令和○年3月31日」と記載します。
「事業年度分の法人税 申告書」や「課税事業年度分の地方法人税 申告書」の空欄の部分は申告の種類を記載する部分です。確定申告では「確定」と記載します。
右側の「翌年以降送付要否」は翌年以降税務署から申告書用紙の送付が必要か、「適用額明細書提出の有無」は本申告で添付があるかをチェックする項目です。「税理士法第30条の書面提出有」「税理士法第33条の2の書面提出有」は、顧問税理士が作成して該当の書面を提出する場合に〇をします。
■この申告書による法人税額の計算(1~15)
出典:各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(様式)|国税庁
1.所得金額又は欠損金額
別表4の52の①に記載した金額を転記します。
2.法人税額
以下に説明する別表1の次葉に記載の、48と49、50番の合計額を記載します。
3.法人税額の特別控除額
法人税額から控除する金額のことです。別表6(6)の「5」記載に額を転記します。
4.税額控除超過額相当額等の加算額
別表6(2)付表6「7の計」に金額の記載がある場合などに記載する項目です。
5.課税土地譲渡利益金額
土地譲渡益の課税に関する項目です。
6.同上に対する税額
別表1の次葉に記載の、62と63、64番の合計額を記載します。
7.課税留保金額
特定同族会社に該当する場合に記載する項目です。別表3(1)の「4」から転記します。
8.同上に対する税額
特定同族会社で課税留保金額がある場合に記載する項目です。別表3(1)の「8」から転記します。
9.法人税額計
「2」の法人税額から「3」の特別控除額を差し引き、「4」と「6」と「8」を加算した金額を記載します。使用の用途を隠している使途秘匿金があるときは支出の40%相当を上書きします。
10.分配時調整外国税相当額及び外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額の控除額
外国関係会社などにかかわる項目です。
11.仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う控除法人税額
記載に更生があった事業年度開始から5年以内の事業年度で該当する控除法人税額があるときに記載します。
12.控除税額
「9」の法人税額計から「10」と「11」を控除した金額と、「18」の控除税額の合計の、どちらか少ない金額を記載します。
13.差引所得に対する法人税額
「9」の法人税額計から「10」と「11」と「12」の金額を差し引き、100円未満を切り捨てた金額を記載します。
14.中間申告分の法人税額
確定申告の場合は、中間申告で納付した法人税額を記載します。
15.差引確定法人税額
「13」の差引所得に対する法人税額から、「14」の中間申告分の法人税額を差し引いた金額から100円未満を切り捨てた額を記載します。
■この申告書による法人税額の計算(16~27)
出典:各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(様式)|国税庁
16.所得税の額
別表6(1)「6の③」に記載の額を転記します。内書きした金額があれば、内書きした金額を控除した金額を記載します。
17.外国税額
別表6(2)「23」から転記します。
18.計
「16」の所得税の額と「17」の外国税額の合計額です。
19.控除した金額
「12」の控除税額を転記します。
20.控除しきれなかった金額
「18」の計から「19」の控除した金額を差し引いた金額を記載します。
21~24.この申告による還付金額
「20」の控除しきれなかった金額があるときに記載する項目です。「20」の控除しきれなかった金額に中間納付額と欠損金の繰戻しによる還付請求税額を加算した金額が最終的な還付税額です。
25.この申告が修正申告である場合のこの申告により納付すべき法人税額又は 減少する還付請求税額
修正申告で該当する場合に記載します。
26.欠損金等の当期控除額
当期に繰り越された欠損金額があるときに記載する項目です。別表7の該当する項目から転記します。
27.翌期へ繰り越す欠損金額
当期に控除しきれない欠損金額があるときに記載する項目です。別表7(1)「5の合計」から転記します。
■この申告書による地方法人税額の計算(28~40)
出典:各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(様式)|国税庁
28~44の各項目は、地方法人税の計算にかかわる項目です。
28・29.基準法人税額
「28」に記載するのは基本的に「9」の法人税額計の額です。「29」には「8」の留保金の税額を転記します。
30.課税標準法人税額
「28」と「29」の合計額を記載します。
31.地方法人税額
別表1の次葉の「53」から転記します。
32.税額控除超過額相当額の加算額
別表6(二)付表六「14の計」から転記します。
33.課税留保金額に係る地方法人税額
別表1の次葉の「54」から転記します。
34.所得地方法人税額
「31」の地方法人税額、「32」の税額控除超過額相当額の加算額、「33」課税留保金額に係る地方法人税額の合計額を記載します。
35.分配時調整外国税相当額及び外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額の控除額
該当する場合に、別表6(5の2)や別表17(1の6)を参考に記載します。
36.仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う控除地方法人税額
更正があった事業年度開始から5年以内の事業年度で該当する控除地方法人税額があるときに記載します。
37.外国税額の控除額
「34-35-36」の額、別表1の次葉「65」のいずれか少ない金額を記載します。
38.差引地方法人税額
「34」の所得地方法人税額から、「35」「36」「37」を差し引いた金額を100円未満切り捨てで記載します。
39.中間申告分の地方法人税額
確定申告の場合、納付した中間申告分の地方法人税額を記載します。
40.差引確定地方法人税額
「38」から「39」を差し引いた金額から100円未満を切り捨てて記載します。
■この申告書による地方法人税額の計算(41~44)
出典:各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(様式)|国税庁
41~43は地方法人税額に対して還付金額があるときに記載する項目です。「41」の外国税額の還付金額は別表1の次葉「67」から転記します。
44は修正申告で納付すべき税額ある場合に記載する項目です。別表1の次葉「61」から転記します。
■剰余金・利益の配当(剰余金の分配)の金額
出典:各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(様式)|国税庁
当期の配当や剰余金の分配などの金額を記載する項目です。別表4から転記します。
残余財産の最後の分配又は引渡しの日
法人を解散する場合で、残余財産が当期末の翌日から1カ月のうちに行われるときに記載する項目です。
決算確定の日
株主総会で承認された日などを記載します。
■還付を受けようとする金融機関等
出典:各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(様式)|国税庁
法人税の還付がある場合に記載する項目です。金融機関名と支店名、口座の種類(普通など)、口座番号を記載します。ゆうちょ銀行に還付を受けるときは記号番号のみ記載します。申告書に記載の法人名義の口座が必要です。
別表1(次葉)の書き方
出典:各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(次葉)|国税庁
別表1(次葉)の書き方を項目別に説明します。
■法人税額の計算
「45」と「48」は、軽減税率が適用される中小法人に該当する場合に記載する項目です。「45」には軽減税率の対象となる所得金額、「48」には対応する法人税額を記載します。「46」と「49」は該当する協同組合等で特例税率が適用される場合に記載する項目です。
「47」には「45」と「46」のいずれにも該当しない所得金額、「50」には対応する法人税額を記載します。
■地方法人税額の計算
「51」と「52」は別表1(1)の28と29から転記します。「53」と「54」は対応する法人税額の10.3%相当額を記載します。
この申告が修正申告である場合の計算
55~61は修正申告に該当する場合に記載する項目です。
■土地譲渡税額の内訳
法人の土地譲渡にかかわる項目で、別表3から転記します。
地方法人税額に係る外国税額の控除額の計算
該当する場合に記載する項目です。「65」の外国税額は別表6(2)の「56」から転記します。
法人税申告書の別表1を書く際の注意点
別表1「各事業年度の所得に係る申告書」の上部、税務署処理欄の上の方に申告(青色申告・白色申告)の種類が記載された項目があります。申告の種類で記載項目は変わりません。しかし、選択する申告の種類が記載された様式を使用する必要があるため注意しましょう。
また、別表1「各事業年度の所得に係る申告書」の100円未満を切り捨てて記載する項目には「差引所得に対する法人税額」と「差引確定法人税額」があります。記載すべき金額が100円未満になるとき、マイナスになるときは金額を記載しません。空欄のまま提出することに注意しましょう。
別表1は法人税の申告内容をまとめた書類
別表1の「各事業年度の所得に係る申告書」は、法人税額や控除される額など、法人税の申告内容をまとめた書類です。基本は、ほかの別表で計算した金額を転記して作成します。法人税だけでなく、地方法人税の申告内容をまとめて記載します。法人税の申告をする法人は、基本的に作成・申告が必要な書類です。青色申告と白色申告で様式が異なるため、社内で作成する際は注意しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
中小企業の税制上の優遇措置
中小企業は法人税の税率が大法人に比べて軽減されていることは、すでにご存じのことでしょう。これ以外にも、中小企業に対するさまざまな税制上の優遇措置があります。 この記事では、中小企業の税制上の優遇措置をご紹介します。 詳しい内容や手続きについ…
詳しくみる公課証明書とは?記載内容と取得方法について解説
公課証明書は固定資産の所有権の移転に伴う固定資産税の按分などに使用する書類です。 ここでは公課証明書にどのような情報が書かれているのか、どのようにすれば取得できるのかについて解説します。また公課証明書と混同しがちな書類との違いや、取得に必要…
詳しくみる平均課税を正しく理解して節税対策に役立てよう!
所得税は、所得の種類によって固定の税率または超累進税率を乗じた税額の合計となっています。 固定税率とは、例えば、利子所得や株の譲渡などで得た所得に対するもので、それぞれ固定の税率が適用されます。 課税総所得は、金額に応じて税率が変わる累進課…
詳しくみる真実性の原則とは?意義や目的、相対的真実についても解説!
真実性の原則は、企業会計において真実な報告を求めるものであり、企業会計原則の一般原則に記された会計の根本的なルールです。本記事では、会計・経理の担当者に向けて真実性の原則を分かりやすく解説しています。具体例も交えて説明していきますので、ぜひ…
詳しくみる消費税を徹底解説!10%になって何が変わった?軽減税率とは? #2
2019年10月に消費税率は10%まで引き上げられました。また、同時に日本では初めてとなる軽減税率の制度も導入され、一部の品物の消費税は8%のまま据え置かれることに。これにより全ての事業者が、消費税の引き上げと制度変更にともなう影響に対応す…
詳しくみる固定資産税を滞納したらいったいどうなる?
固定資産税は土地家屋を所有している人が、その土地・家屋の価格をもとに算定した税額を納める税金です。滞納した場合は、延滞金がかかります。さらに、悪質な場合は財産を差し押さえられることがあります。 この記事では、固定資産税を滞納するとどうなるの…
詳しくみる