- 更新日 : 2020年9月17日
財務諸表に関する法的根拠まとめ

財務諸表と呼ばれる代表的なものとして、
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・キャッシュ・フロー計算書
の4つを挙げることができます。
それぞれの書類が持つ数字の意味や、財務諸表がどのような法的根拠をもとに活用されているのかをまとめました。
財務諸表を構成する書類4つ
財務諸表は、決算書類と呼ばれる貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書の4つで構成されています。
貸借対照表
貸借対照表では会社が保有する財産に関する情報を、
・負債の部
・純資産の部
の3つに分けて記載します。
資産の部では、現金や預貯金、所有している土地や建物などを記載し、売掛金も「将来回収される権利のある資産」として資産の部に記載されます。
負債の部では、買掛金や借入金などの負債に関する情報を記載し、純資産の部では元入金や資本金などに関する情報を記載します。
(出典:青色申告者のための貸借対照表作成の手引き |国税庁HP)
損益計算書
損益計算書では収益と費用に関する金額を、
の7項目に分けて記載します。
貸借対照表では資産の持つ性質ごとに「資産の部」「負債の部」「純資産の部」と、それぞれまとめて記載しますが、損益計算書では収益から費用を差し引きながら記載する形式になっています。
貸借対照表のように作成するのであれば、収益の性質を持つ「売上高」「営業外収益」「特別利益」を収益としてまとめ、費用の性質を持つ「売上原価」「販売費及び一般管理費」「営業外費用」「特別損失」を費用としてまとめます。
損益計算書では収益から費用を差し引いて記載するため、「売上高」という収益に対して「売上原価」を差し引き売上総利益を明らかにし、さらに売上総利益から「販売費及び一般管理費」を差し引いて営業利益を明らかにしていきます。
営業利益から「営業外収益」、「営業外費用」、「特別利益」、「特別損失」をそれぞれ加減していき、各種税金を支払ったあと最終的に残る利益を記載する形で、損益計算書は作成されています。

株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部一会計期間における変動額のうち、主に株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成される決算書です。
貸借対照表の純資産の部で表示されている科目には、
などがあります。
株主資本等変動計算書はこれら科目に対して、
といった事由が生じたときに、どのように金額が変動したのかをまとめたものとなります。
(出典:「株主資本等変動計算書」って、何ですか?|中小企業庁)
キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書では、
・投資活動によるキャッシュ・フロー
・財務活動によるキャッシュ・フロー
・現金及び現金同等物に係る換算差額
・現金及び現金同等物の増加額又は減少額
・現金及び現金同等物の期首残高
・現金及び現金同等物の期末残高
という7つの項目に分けて資金の増減を記載します。

(出典:民間企業と同様の会計処理による財務諸表の作成と行政コストの開示|財務省)
財務諸表を作成する基礎となるデータは仕訳データとなります。
ひとつひとつの仕訳データを集積し、現金や売掛金という科目ごとに集計したデータが総勘定元帳となります。さらに総勘定元帳から試算表を作成し、決算整理仕訳を反映させたものが貸借対照表と損益計算書になります。
貸借対照表と損益計算書は企業会計基準に基づき作成されますが、貸借対照表と損益計算書で解釈が異なることがあります。
たとえば現金が前年度に比べて増加していたとしても、実際は銀行から融資を受けた借入金であった場合、売上による現金の増加とは意味が異なるため、現金の増加は収益の増加に直結しているわけではありません。
そこで切り口を変えて分析したものが、キャッシュ・フロー計算書となります。キャッシュ・フロー計算書であれば、現金が増加したとしても本質的には利益なのか借金なのかを区別することができるようになります。
そのため、貸借対照表と損益計算書は仕訳データを元に作成されますが、キャッシュ・フロー計算書は前期と当期2期分の貸借対照表と当期の損益計算書を元に作成されています。
財務諸表の作成に関するすべての方法は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」が法的根拠となっています。
財務諸表の開示義務に関する法的根拠
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」に即して作成された財務諸表は、会社の財務状況を反映したデータとして利害関係者に開示されることになります。
定時株主総会で財務諸表が報告されるのは、「会社法第438条 計算書類等の定時株主総会への提出等」が根拠となっています。
また、財務諸表は国税関係帳簿書類として保存義務が課せられていますが、
・法人税法施行規則第67条第2項では7年間
・会社法第435条第4項では10年間
と定められています。
税法関連の保存義務期間7年が終了した後、直ちに廃棄するのではなく、会社法の保存義務10年が経過するまで保存する必要があります。
有価証券を発行する会社は、金融商品取引法第24条にて各事業年度終了後3カ月以内に有価証券報告書を内閣総理大臣へ提出しなければなりません。有価証券報告書は会社の概況のほか、経理状況として財務諸表を記載することになっています。
法人税法第74条第3項では、法人税に関する確定申告書である各種別表を提出する際に、財務諸表を添付する旨が定められています。
まとめ
財務諸表はそれぞれの法的根拠をもとに、あらゆる場面で開示されたり提出したりする必要があります。公的な場面だけでなく、銀行融資や事業承継といった場面でも活用されることもあります。
財務諸表は開示されることが当然であると思われがちですが、根拠となる条文を理解することによって、正しく開示することができます。
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