• 更新日 : 2023年10月31日

電子帳簿保存法|PDFデータ取扱のポイント タイムスタンプは必須?

電子帳簿保存法|PDFデータ取扱のポイント タイムスタンプは必須?

書類のPDF化は経理でよくある日常的な業務です。
ただ1つ気になるのは、そのデータが法的に保存要件を満たしているかどうかです。

結局のところ、電子帳簿保存法の要件を満たさないと請求書領収書をPDFにしても電子化の意味がありません
この記事では、そもそもの電子帳簿保存法の観点からPDF保存が認められるかどうかを説明していきます。

結論は、法的要件に沿ってPDFデータ等で保存することについて、2024年1月以降「電子取引」では義務となりますので準備をしなければなりません。

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは保存義務者の帳簿書類の保存負担を軽くするために、紙ではなく電子データとして保存できることを定めた法律です。

電子帳簿保存法が対象とする書類は、国税(主に所得税や法人税)に関係する帳簿と書類です。国税関係帳簿書類の保存義務者が電子保存を行うには、ルールがあります。
国税関係帳簿書類を電子保存するだけであれば承認行為は不要ですが、「優良な電子帳簿」の要件を満たし、過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減される措置を受ける場合には承認が必要です。

また、電子帳簿保存法よりも対象書類が広いe-文書法という法律があります。
e-文書法は、税金の帳簿書類だけでなく一般的な書類も電子保存することを認める法律です。

ここまでを要約すると、帳簿や書類はe-文書法の対象のため要件を満たせば電子保存が可能です。ただし、税金に関係する帳簿と書類は電子帳簿保存法が優先され、電子帳簿保存法の要件を満たした上で保存する必要があります。

なお、当記事のテーマではファイル形式として「PDFデータ」を挙げていますが、PDF形式がデータ保存形式として一般的ではあるものの、特にファイル形式にはこだわりません。下記国税庁のサイトでも「PDF等」としており、他のファイル形式による運用もありうることがわかります。

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁
電子帳簿保存法一問一答(電子取引)

電子帳簿保存法2023年の改正のポイント

電子帳簿保存法は、1998年に施行された法律で今までに何度も改正されてきました

2023年改正を踏まえた電子帳簿保存法の概要は次のとおりです。
電子帳簿等保存制度は、次の3つの制度に区分されます。このうち、電子帳簿等保存とスキャナ保存については保存義務者の任意ですが、電子取引データの保存については、2024年1月以降は原則としてすべての保存義務者が対象となります。
なお、保存義務者とは、国税(所得税や法人税)の規定により帳簿保存を保存しなければならないとされている者を言います。詳細は国税庁のサイトでご確認をお願いします。

電子帳簿等保存

自身で一環してパソコン等で作成した帳簿や国税関係書類は、電子データのまま保存をすることができる。

  • 「優良な電子帳簿」として過少申告加算税の軽減措置を受けるための帳簿範囲が見直しされました。(2024年1月から施行)

スキャナ保存

取引先から受領した紙の書類などについては、その書類を保存する代わりに電子データで保存することができる。

  • スキャナで読み取る際の解像度・諧調・大きさに関する情報の保存が廃止されました。
  • スキャナ保存時の入力者等確認要件が不要となりました。
  • 一般書類のスキャナ保存要件が緩和されました。
    (いずれも2024年1月から施行)

電子取引データ保存

保存義務者は、取引先と電子取引(電子データによるやりとり)をした場合には、その電子データを保存しなければならない。

  • 一定の保存義務者については、電子取引データの検索機能のすべてを不要としました。
  • 新たな猶予措置が整備されました(一定の要件を満たす保存義務者は「ダウンロードの求め」や「プリントアウトの求め」などに応じることができる場合は、電子データを単に保存しておくだけでもよいこととなりました。いすれも2024年1月から施行)

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁
令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要

2023年最新の改正内容については、こちらの記事をご参照ください。

電子帳簿保存法の対象書類

電子帳簿保存法では帳簿、書類及び電子取引を以下のように分類しています。

【国税関係帳簿書類】

国税関係帳簿       最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿
例:仕訳帳総勘定元帳、得意先元帳など
国税関係書類         最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する決算書
例:貸借対照表損益計算書など、決算に関して作成されたその他の書類を含む

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁、はじめませんか、帳簿書類の電子化!

【国税関係書類のうち取引関係書類】(自己が作成する書類及び取引先から受領する書類)

重要書類資金や物の流れに直結・連動する書類
例:契約書、請求書、領収書など

一般書類資金や物の流れに直結・連動しない書類
例:見積書、注文書、検収書など

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁、はじめませんか、書類のスキャナ保存!

【電子取引】

電子取引(※)の
取引情報
取引に関して受領又は交付する書類(電磁的記録)
例:注文書、契約書、領収書など

参考:パンフレット(過去の主な改正を含む)|国税庁、電子取引データの保存方法をご確認ください

※電子取引の具体例は、EDI取引やインターネット等による取引、電子メールの取引などがあります。

上記でも述べましたが、電子取引は税務署の手続きが不要で電子保存が義務化されます。

電子帳簿保存法に関してより詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。

電子帳簿保存法における電子データ保存の可否

各書類の電子データ保存の可否は以下のとおりです。

下記のとおり国税関係帳簿書類については所得税法法人税法によって紙での保存が原則となりますが、電子帳簿保存法による特例が認められています。

ただし、この中には電子取引によるデータについては含んでいません。電子取引による電子データについては電子保存が求められます。

帳簿書類の保存紙での保存電子データ保存
(自身が電子作成)
スキャナ保存
国税関係帳簿原則
(所得税法・法人税法)
特例
電子帳簿保存法





受領したもの原則
(所得税法・法人税法)
特例
電子帳簿保存法
自社の控え原則
(所得税法・法人税法)
特例
電子帳簿保存法
特例
電子帳簿保存法

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁
電子帳簿保存法一問一答(電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係)(問1参照)

請求書などの電子データ保存で注意すべき要件

以下では、重要書類、一般書類、電子取引の取引情報をPDF保存することに特化して注意すべき要件を説明していきます。決算書類については、作成の最初から一貫して電子データで作成すればほとんどの要件が満たされるため省略します。

なお、他の細かな要件(スキャナ保存要件)は以下の記事が参考になります。

タイムスタンプ要件

タイムスタンプとは、次の2点について証明する技術のことです。

  • 電子データがある時点に存在していたこと
  • 電子データ内容が改ざんされていないこと

タイムスタンプが付与されたデータ自体の改ざんをすることができなくなります。ただし、訂正や削除の履歴を残してデータを加工することは認められます。

次に、スキャナ保存において求められるタイムスタンプ要件を説明します。

スキャナ保存については、入力期間内にタイムスタンプを添付することとされています。(なお、タイムスタンプは(一財)日本データ通信協会が定める基準を満たすものであること。)

ここで入力期間とは、国税関係書類の受取から「最長で2カ月と7営業日以内」とされます。

また、入力期間内に「訂正削除履歴が残るシステム」又は「訂正削除ができないシステム」を利用する場合にはタイムスタンプの付与がなくてもよいとされています。

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁
電子帳簿保存法一問一答(スキャナ保存関係)(問30及び問31参照)

次に、電子取引におけるタイムスタンプ要件について説明します。

電子取引においては、真実性確保の観点からタイムスタンプを含む次のいずれかの措置を行うこととされています。したがって、電子取引においてタイムスタンプは必須要件ではありません。

  • タイムスタンプが付された電子データを取得する
  • 電子データの受領後、速やかにタイムスタンプを付す
  • 「訂正削除履歴が残るシステム」又は「訂正削除ができないシステム」を利用する
  • 電子データの訂正削除防止に関する事務規定の備付け

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁
電子帳簿保存法一問一答(電子取引)(問4及び問14参照)

検索機能の要件

検索要件については、各区分の要件は次のとおりです。特にすべての保存義務者に必須となっている電子データ取引については注目しておきましょう。各区分における詳細については参考に挙げた一問一答(Q&A)などでご確認をお願いします。

  • 電子帳簿等保存「日付、金額、取引先」で電子データの内容が検索できること。
    専用システムでなくても索引簿を作成したり、規則的なファイル名を付す方法でもよい。
    税務調査などで「ダウンロードの求め」に応じるなど一定の場合には、検索要件が軽減されます。

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁
電子帳簿保存法一問一答(電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係)

  • スキャナ保存
    原則として「日付、金額、取引先」で電子データの内容が検索できること他。
    日付又は金額に係る項目について、範囲指定での検索や2項目以上の組み合わせでの検索については、「ダウンロードの求め」に応じるなど一定の場合には不要となります。

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁
電子帳簿保存法一問一答(スキャナ保存関係)

  • 電子データ保存
    原則として「日付、金額、取引先」で電子データの内容が検索できること。
    税務調査などで「ダウンロードの求め」に応じるなど一定の場合には、検索要件は不要となります。

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)~令和4年1月1日以後に保存等を開始する方~|国税庁
電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)

PDF形式で電子取引データを保存する場合にはファイル名に工夫をするか、索引簿の作成が望ましいです。しかし、先述のとおり、一定の保存義務者(要件にしたがって電子データを保存できない相当の理由があると認められ、かつ、税務調査においてダウンロードの求めに応じることができる者)については、検索要件への対応は不要となります。

PDFファイル形式にこだわらず、電子取引データについてはまずはわかりやすく保存することが大原則です。

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よくある質問

電子帳簿保存法とは?

保存義務者の帳簿書類の保存負担を軽くするために、紙ではなく電子データとして保存できることを定めた法律です。詳しくはこちらをご覧ください。

電子帳簿保存法におけるPDF保存の可否は?

PDF形式にこだわらず、電子データでの保存が可能です。特に2024年1月からは電子取引ではデータ保存が義務化されますので注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。

PDF保存で注意すべき要件は?

タイムスタンプ要件、検索機能の要件などに注意する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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