- 更新日 : 2024年8月8日
美容室経営における減価償却を解説!備品などの勘定科目は?
美容室の経営でよく聞く言葉に「減価償却」があります。美容室でかかる経費には、ハサミやシャンプー台などの物にかかるお金だけでなく、内装工事なども含まれます。
本記事では、美容室経営における減価償却について紹介します。減価償却を知るうえで大切な耐用年数についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
美容室の内装や備品などの耐用年数は何年?
美容室の内装や備品などの耐用年数について、次の3つの項目を取り上げます。
- そもそも減価償却とは?
- 器具や備品の耐用年数は何年?
- 開業費の扱いは?
いずれも、美容室を経営するうえで押さえておきたいポイントばかりです。ここでは、減価償却の意味はもちろんのこと、美容機器や備品、開業費がどのような扱いになるのかをあわせて確認しておきましょう。
そもそも減価償却とは?
減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する資産を取得した際、取得するための支払額をその耐用年数に応じて費用計上していく会計処理のことです。この方法は、資産は時間が経つにつれて価値が落ちるという考え方が基になっています。
減価償却費は資産価値の目減り分を資産の価値から差し引くもので、時間の経過で価値が減らないものには適用されません。減価償却の詳しい内容については次のページでも詳しく解説しています。
器具や備品の耐用年数は何年?
耐用年数とは、簡単に言うと「資産を使用できる期間」のことです。器具・備品は、業務で使用する家具や電気機器、パソコン、時計(腕時計含む)、工具などを指します。
減価償却を計上する際の耐用年数は国税庁が定める「法定耐用年数表」を利用します。法定耐用年数表には、資産の種類ごとに耐用年数が分けられています。
一般的に使われている資産の種類とその耐用年数を表にまとめていますので参考にしてみてください。
ちなみに、美容院で使用するシャンプー台やハサミの耐用年数は、いずれも5年となっています。
開業費の扱いは?
経費に計上する際、開業にかかった費用は「開業費」と呼びます。この開業費は、合計が「10万円以上」か「10万円未満」かで扱いが変わります。
合計が10万円以上であった場合、かかった費用は「開業費」として繰延資産に計上し、減価償却の対象です。そして、確定申告時に「開業償却費」として経費に計上します。
一方、合計が10万円未満の場合は、開業日の日付で各費用内容に該当する勘定科目を使用して経費計上が可能です。
器具や備品の減価償却の仕訳例
減価償却の概要を理解したところで、次は器具や備品の減価償却の仕訳例について解説します。ここでは、次の3つの内容について見ていきましょう。
- 固定資産に含まれるもの
- 機械や装置における年償却額の計算
- 仕訳例
美容室を経営するうえで、どの項目も正しく理解しておく必要があります。実際の年償却額の計算について、例を交えながら解説します。ぜひ参考にしてみてください。
固定資産に含まれるもの
美容室における固定資産として、次のようなものが該当します。
- シャンプー台
- ハサミ
- 内装工事
- 給湯器
- アクリル看板
- 椅子
いずれの固定資産も1つ(1組)の取得金額が10万円以上となる場合は、減価償却をして会計処理をする必要があります。例えば、50万円のシャンプー台を経費にする場合、耐用年数は5年なので、1年間で経費にできるのは最大10万円までです。
ただし、前述の通り固定資産の種類によって耐用年数は異なるため、一つずつ調べておく必要があります。
固定資産についての詳しい内容は、下記記事を参考にしてください。
機械や装置における年償却額の計算式
減価償却の計算方法には、「定額法」と「定率法」があります。法人税法では、原則として定率法での計算を求めているものの、あくまでも税務上の処理であり、会計上は法人税法で定める方法以外でも問題はありません。
定率法以外で計算する場合、別途届出が必要となります。それぞれの計算式については次のとおりです。
【定率法の計算式】
減価償却費 = 未償却残高 (購入年度は取得価額) × 定率法償却率
【定額法の計算式】
減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率
仕訳例
ここでは実際に固定資産を購入した際の仕訳例を解説します。
【例】24万円のスイングチェアを資産として購入。毎年8万円を3年間で減価償却する。
- 支払時
- 決算時に3年均等償却
- 翌年の決算で再び均等償却
- 翌々年の決算で再び均等償却
一括償却資産や少額減価償却資産として扱うことも可能
通常、固定資産は耐用年数によって計上します。また「一括償却資産」や「少額減価償却資産」として扱うことも可能です。
ただし、それぞれ取得価格の上限が決まっていたり、青色申告が必要となったりと細かな条件が設定されているため、該当するかの判断が難しいと感じる方も多いでしょう。そこで、項目ごとの詳しい内容についてみていきましょう。
一括償却資産として扱う場合
一括償却資産とは取得価額が10万円以上、20万円未満の固定資産が対象になる制度で、新品でも中古でも利用できます。一般的な固定資産は、固定資産台帳に記載し月割りで減価償却費を計算しなければなりません。
しかし、それでは手間がかかるため、簡略化を目的としてこの制度が認められています。一括償却資産は個別に管理することなく一律3年で減価償却する方法で、償却を早めて費用計上の前倒しが可能です。
少額減価償却資産として扱う場合
少額減価償却資産とは、中小企業者等が取得した10万円以上30万円未満の固定資産が対象です。一括償却資産と同じく、新品でも中古でも制度が利用できます。
全額費用として計上できるのは、一事業年度につき合計300万円までです。1年間で300万円以下なら一括償却資産を使わずに処理でき、以下のような条件に該当する事業主が対象です。
- 青色申告法人である中小企業者/農業協同組合など
- 常時使用する従業員の数が1000人以下の法人
参考:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
基本的な知識を付けることで節税につながる
減価償却や耐用年数などへの正しい理解は大きな節税につながります。シャンプー台やハサミといった器具・備品はもちろんのこと、内装工事や看板などの開業にかかった費用も経費に計上できます。
美容室の減価償却について分からない場合や事務処理が追い付かない場合にはプロに頼ることも大切です。強靭な経営基盤を構築するためにも正しい知識を付けて、節税につなげましょう。
よくある質問
美容室の器具や備品の耐用年数は何年ですか?
美容院で使用する器具や備品の耐用年数は5年です。ただし、物品によっては耐用年数が異なる場合もあるため注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
美容室の器具や備品の減価償却はどう仕訳すればいいですか?
美容室の器具や備品で10万円以上のものは工具器具備品で資産計上してから減価償却費として経費処理します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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